人間の血液量は体重の何パーセント?男女差や水分との関係

人間の血液量は体重の何パーセント?男女差や水分との関係

「自分の体の中に、どれくらいの血液が流れているのだろう?」と考えたことはありますか。血液は生命を維持するために極めて重要な役割を担っています。

この記事では、「人間の血液量は体重の何パーセントを占めるのか」という基本的な疑問にお答えします。一般的に、血液量は体重の約8%と言われますが、その割合は性別や年齢によっても少しずつ異なります。

さらに、血液の大部分を占める水分との関係や、血液を健康に保つための生活習慣についても、分かりやすく掘り下げて解説していきます。ご自身の体への理解を深める一助としてください。

目次

人間の血液量は体重の約8%

私たちの生命活動を支える血液。その量は、個人の体重と密接な関係があります。一般的に、成人の血液量は体重の約8%(およそ13分の1)を占めるといわれます。

これは、血液が全身の細胞に酸素や栄養を届け、二酸化炭素や老廃物を運び出すという重要な役割を、体の隅々まで行き渡って果たすために必要な量です。

体重から自分の血液量を計算する方法

自分の血液量を知るための計算は非常に簡単です。以下の計算式で、おおよその量を把握できます。

血液量(ml) = 体重(kg) × 1000 × 0.08

例えば、体重60kgの成人であれば、60kg × 1000 × 0.08 = 4800ml、つまり約4.8リットルの血液が体内を循環していることになります。体重が50kgの人なら約4.0リットル、70kgの人なら約5.6リットルです。

このように、体格が大きくなるほど、全身に酸素や栄養を供給するために必要な血液量も多くなります。

体重別のおおよその血液量の目安

体重計算式 (体重×0.08)おおよその血液量
40kg40 × 0.08約3.2リットル
50kg50 × 0.08約4.0リットル
60kg60 × 0.08約4.8リットル
70kg70 × 0.08約5.6リットル

なぜ体重の約13分の1なのか

体重の約8%という割合は、人体が効率的に機能するための絶妙なバランスの上に成り立っています。血液がこれより少ないと、全身の細胞へ十分な酸素や栄養を供給できなくなり、臓器の機能不全につながる可能性があります。

逆に、多すぎると心臓への負担が増大し、血圧の上昇や心不全のリスクを高めることになります。進化の過程で、人間が生命活動を維持するのに最も適した量として、この「体重の約13分の1」という比率に落ち着いたと考えられます。

動物との血液量の比較

参考までに、他の動物と血液量を比較してみましょう。多くの哺乳類で、血液量が体重に占める割合は人間と近い値を示します。例えば、犬や猫も体重の約7〜8%の血液を持つといわれます。

しかし、鳥類では約10%と少し多めの傾向があります。これは、飛翔という高いエネルギーを消費する活動のために、より多くの酸素を効率よく運搬する必要があるためと考えられます。

動物の種類や生態によって、血液量の割合も変化するのは興味深い点です。

血液を構成する主な成分とその働き

血液は、単なる赤い液体ではありません。生命維持に必要な様々な機能を持つ、多種多様な細胞や物質から構成される「組織」の一つです。

血液は大きく分けて、液体成分である「血漿(けっしょう)」と、固形成分(有形成分)である「血球」の2つから成り立っています。

血液の主な構成要素

分類成分名血液全体に占める割合
液体成分血漿(けっしょう)約55%
固形成分赤血球・白血球・血小板約45%

液体成分「血漿」の役割

血液の半分以上を占める血漿は、約90%が水分で、残りの約10%にタンパク質(アルブミン、グロブリンなど)、糖質、脂質、ミネラル、ホルモン、老廃物などが溶け込んでいます。

血漿の主な役割は、これらの物質を全身に運搬することです。また、体温の調節や、体内の水分バランス(浸透圧)を一定に保つ働きも担っています。血液が液体として血管内をスムーズに流れることができるのは、この血漿のおかげです。

有形成分「赤血球」の役割

血液が赤い理由、それは赤血球の存在です。赤血球は、血球成分の約95%を占め、ヘモグロビンという赤い色素タンパク質を含んでいます。このヘモグロビンの最も重要な働きは、肺で酸素と結合し、全身の細胞へ酸素を届けることです。

そして、細胞で発生した二酸化炭素の一部を受け取り、肺まで運び出す役割も持っています。私たちの活動エネルギーを生み出す上で、赤血球による酸素運搬は生命の根幹を支える働きです。

有形成分「白血球」の役割

白血球は、外部から侵入してきた細菌やウイルスなどの異物と戦う、体の「免疫システム」の主役です。体内に異物が入ると、白血球はその情報をキャッチして数を増やし、異物を攻撃・排除しようとします。

白血球にはいくつかの種類があり、それぞれが連携して体を守っています。

  • 好中球
  • リンパ球
  • 単球(マクロファージ)
  • 好酸球
  • 好塩基球

これらの白血球がチームとして働くことで、私たちの体は感染症から守られています。

有形成分「血小板」の役割

血小板は、出血を止める「止血」の役割を担っています。血管が傷つくと、その場所に血小板が集まり、粘着して傷口を塞ぎます。これを一次止血といいます。

さらに、血小板は血液を固める他の因子(凝固因子)を活性化させ、フィブリンという強力な糊のような物質で傷口を完全に固めます。この二段階の働きによって、私たちは怪我をしても簡単に出血が止まるのです。

血球の主な働きまとめ

血球の種類主な働き特徴
赤血球酸素と二酸化炭素の運搬ヘモグロビンを含み、血液が赤い理由
白血球免疫機能(異物の排除)細菌やウイルスから体を守る
血小板止血作用(出血を止める)血管の傷を塞ぐ

性別や年齢で血液量に違いはあるのか

血液量が体重の約8%であるというのは、あくまで標準的な成人の平均値です。実際には、性別や年齢といった要因によって、その割合は少しずつ異なります。体の状態に合わせて血液量も変化するのです。

男女間の血液量の違いとその理由

一般的に、男性の方が女性よりも体重に占める血液量の割合がやや高い傾向があります。男性は体重の約8%、女性は約7%といわれることもあります。この差が生まれる主な理由は、体格と筋肉量の違いです。

男性は女性に比べて骨格が大きく、筋肉量が多い傾向にあります。筋肉は多くの酸素を必要とする組織であるため、それを供給するために血液量も多くなるのです。

また、男性ホルモンには赤血球の産生を促す作用があることも、一因として考えられます。

赤ちゃんや子どもの血液量の特徴

生まれたばかりの新生児は、体重に占める血液量の割合が成人よりも高く、約9%(およそ11分の1)に達します。これは、母親の胎内で得た血液に加えて、成長のために活発な新陳代謝を行う必要があるためです。

その後、成長とともに成人と同様の約8%の割合に近づいていきます。子どもは体重が軽いため血液の総量は少ないですが、体重に対する比率でみると、大人と遜色ない量の血液を持っていることになります。

高齢者の血液量の変化

加齢に伴い、体内の水分量が減少する傾向があります。また、筋肉量が低下し、脂肪の割合が増えることも一般的です。血液の大部分は水分であるため、体全体の水分量が減ると、血液量もわずかに減少することがあります。

さらに、骨髄の造血機能(血液をつくる能力)も若い頃に比べると低下するため、赤血球などが作られる量も減少し、全体的な血液量の低下につながることがあります。

年代別の体水分率の目安

年代体重に占める水分量の割合特徴
新生児約75%非常に高い水分率を持つ
成人男性約60%筋肉量が多いため女性より高い
成人女性約55%脂肪組織が多いため男性より低い
高齢者約50%加齢とともに水分量が減少する

この表が示すように、体内の水分量と血液量には関連性があることが分かります。

血液と水分の密接な関係

「血液」と「水分」は、切っても切れない関係にあります。血液の約55%を占める血漿、その血漿のさらに約90%は水分です。つまり、血液の約半分は水分で構成されていることになります。

この水分が、血液の流動性を保ち、生命活動を支える上で極めて重要な役割を果たしています。

血液の半分以上は水分(血漿)

血液がサラサラと血管の中を流れることができるのは、豊富な水分のおかげです。この水分がなければ、血球成分やタンパク質はうまく移動できません。

体内の水分は、栄養素やホルモンを溶かし込み、細胞まで届けるための「媒体」として機能します。また、細胞から出た老廃物を溶かして腎臓や肝臓まで運び、体外へ排出する手助けもしています。

まさに、体の内部環境を維持するための「運び屋」といえるでしょう。

体内の水分が不足すると血液はどうなるか

体内の水分が不足する、いわゆる脱水状態に陥ると、血液に直接的な影響が現れます。血液中の水分量が減少するため、血液の粘度が高まり、いわゆる「ドロドロ血」の状態になります。

血液が濃縮され、流れにくくなるのです。これにより、以下のような問題が生じる可能性があります。

  • 心臓への負担増加
  • 血圧の変動
  • 血栓(血の塊)の形成リスク上昇

血栓が脳の血管で詰まれば脳梗塞、心臓の血管で詰まれば心筋梗塞といった、生命に関わる重大な病気を引き起こす危険性も高まります。健康な血液を維持するためには、十分な水分が不可欠です。

脱水レベルと主な症状

脱水レベル (体重減少率)主な症状
軽度 (2%程度)強い喉の渇き、尿量の減少
中等度 (3〜9%)頭痛、めまい、吐き気、全身の倦怠感
重度 (10%以上)意識障害、けいれん、臓器不全のリスク

健康な血液を保つための水分補給

血液の健康、ひいては全身の健康を守るためには、こまめな水分補給が重要です。特に、喉が渇いたと感じる前に飲むことが理想的です。喉の渇きは、既に体が水分不足に陥っているサインだからです。

一度に大量に飲むのではなく、コップ1杯程度の量を、1日に6〜8回に分けて飲むのが効果的です。特に、起床時、運動前後、入浴後、就寝前などは水分が失われやすいため、意識して補給する習慣をつけましょう。

水やお茶など、糖分を含まない飲み物が日常的な水分補給に適しています。

日常生活で血液量が変動する要因

私たちの血液量は常に一定ではなく、日常生活の中の様々な要因によって、一時的に増えたり減ったりします。これらの変動は生理的な反応であることが多いですが、中には注意が必要なケースもあります。

発汗や脱水による一時的な減少

夏の暑い日や激しい運動をした後、大量の汗をかきます。汗の原料は血液中の水分(血漿)です。そのため、大量に発汗すると血液中の水分が失われ、一時的に循環する血液量が減少します。これが脱水状態です。

この状態が続くと、血液が濃縮されて流れにくくなり、熱中症やその他の健康問題を引き起こす原因になります。失われた水分を適切に補給することで、血液量は元の状態に回復します。

怪我や出血による血液量の損失

交通事故や手術、あるいは怪我によって出血すると、物理的に血液そのものが体外へ失われるため、血液量は直接的に減少します。

人間の体は、全血液量の約20%が急激に失われると生命に危険が及ぶショック状態に陥り、30%以上を失うと生命の維持が困難になるといわれます。

少量の出血であれば、体内の造血機能によって新たな血液が作られ、時間はかかりますが回復します。

妊娠中の血液量の増加

妊娠すると、母体は胎児に栄養と酸素を供給するため、循環血液量を大幅に増やします。妊娠後期には、非妊娠時に比べて血液量が約40〜50%も増加します。

これは、赤ちゃんの成長を支え、出産時の出血に備えるための、体の自然で重要な変化です。この増加分は主に血漿成分であり、赤血球の増加が追いつかないために、妊婦は貧血(希釈性貧血)になりやすい傾向があります。

特定の病気と血液量の関係

腎臓の病気は、血液量と密接に関わることがあります。

例えば、腎不全が進行すると、体内の余分な水分や塩分を尿として十分に排出できなくなり、結果として体液量が増加し、循環血液量も増加します。これが高血圧や心臓への負担増大(心不全)の原因となります。

逆に、腎臓で作られるエリスロポエチンというホルモンが不足すると、赤血球の産生が低下し、貧血(腎性貧血)となって血液の質的な問題が生じます。このように、病気によっても血液量は影響を受けます。

血液の健康を維持するための生活習慣

特別なことではなく、日々の生活習慣を見直すことが、健康な血液を維持し、全身の健康を守るための第一歩です。食事、運動、睡眠という基本的な要素を整えることが重要です。

バランスの取れた食事の重要性

血液の材料となる栄養素を、食事からバランスよく摂取することが基本です。特に、赤血球の主成分であるヘモグロビンを作るためには、鉄分が欠かせません。

また、赤血球やDNAの合成を助けるビタミンB12や葉酸も同様に重要です。これらの栄養素を偏りなく摂ることで、質の良い血液が作られます。

血液の健康に役立つ栄養素と食品例

栄養素主な役割多く含まれる食品
鉄分ヘモグロビンの材料になるレバー、赤身肉、ほうれん草、ひじき
ビタミンB12赤血球の合成を助けるしじみ、あさり、レバー、さんま
葉酸赤血球の合成を助ける枝豆、ほうれん草、ブロッコリー、のり

適度な運動が血液に与える好影響

ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動は、血行を促進し、心肺機能を高めます。運動によって筋肉への血流が増えると、血管が刺激されてしなやかさを保つのに役立ちます。

また、定期的な運動は善玉(HDL)コレステロールを増やし、悪玉(LDL)コレステロールや中性脂肪を減らす効果も期待でき、血液の質を改善します。無理のない範囲で、継続的に体を動かす習慣を持つことが大切です。

運動と心拍数の目安(有酸素運動)

運動強度感覚心拍数の目安
軽い楽に会話ができる最大心拍数の50-60%
中程度息が弾むが、会話は可能最大心拍数の60-70%
きつい息が切れ、会話が困難最大心拍数の70-85%

※最大心拍数のおおよその計算式: 220 – 年齢

十分な睡眠とストレス管理

睡眠不足や過度なストレスは、自律神経のバランスを乱し、血管の収縮や血圧の上昇を引き起こす原因になります。質の良い睡眠を十分にとることで、自律神経が整い、心身がリラックスして血圧も安定します。

また、趣味やリラックスできる時間を持つなど、自分なりの方法でストレスを上手に管理することも、健やかな血液と血管を維持するために必要です。

血液に関するよくある質問

最後に、血液に関して多くの方が疑問に思う点について、Q&A形式で解説します。

献血で抜かれる血液量はどのくらいですか?

日本の献血では、200ml献血と400ml献血、そして成分献血があります。400ml献血でも、体重50kg以上の健康な成人であれば、体内の血液量(約4000ml以上)の10%程度であり、体の機能に支障はありません。

失われた血液は、水分であれば数時間で、血球成分も数週間から数ヶ月で回復します。

血液は体内でどのようにつくられますか?

血液の細胞成分(赤血球、白血球、血小板)は、主に骨の中心部にある「骨髄(こつずい)」でつくられます。骨髄にある「造血幹細胞」という特別な細胞が、分裂・分化することで、様々な血球へと成長していきます。

この造血活動は毎日休むことなく行われ、古くなった血球と新しい血球が常に入れ替わっています。

血液型によって血液の量や質は変わりますか?

A型、B型、O型、AB型といった血液型は、赤血球の表面にある抗原の種類の違いによって決まります。この違いが、血液の量や、酸素を運ぶ能力、免疫機能といった基本的な血液の質に直接影響を与えることはありません。

どの血液型であっても、血液の働きそのものは同じです。

自分の血液量を正確に知る方法はありますか?

体重から計算する方法は、あくまで一般的な目安です。

医療機関では、色素や放射性同位体などを血液中に注入し、それがどれくらい薄まったか(希釈されたか)を測定することで、より正確な循環血液量を調べることが可能です。

ただし、これは特別な検査であり、一般的な健康診断などで行うことはありません。

以上

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大垣中央病院・こばとも皮膚科

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