血液製剤とは|透析治療における役割と使用方法

血液製剤とは|透析治療における役割と使用方法

腎機能の低下が進み、透析による治療が必要になったときに気になるのが血液に関連するさまざまな治療法です。血液製剤とは医療現場で用いる重要な手段の1つで、適切に扱うことで身体の状態を整えながら治療を継続しやすくなります。

この記事では透析治療における血液製剤の目的や使用上の注意点などを詳しく解説します。

目次

血液製剤とは何か

血液製剤とは本来の血液成分をさまざまな形に加工した医薬品で、治療の現場で大きな意義を持ちます。透析に限らず多くの診療科で使われ、適切に活用することで貧血や凝固障害などの状態改善を図りやすくなります。

血液の成分と血液製剤の関係

人間の血液には、酸素を運ぶ赤血球や免疫機能を担う白血球、出血を止めるために必要な血小板、そして栄養素や抗体が含まれた血漿など、いくつもの要素が含まれています。

血液製剤とはこうした血液の成分を分離・濃縮などの工程を経て使いやすい形にした医薬品です。赤血球製剤や血漿製剤など、それぞれの用途に合わせて処方される種類が異なり、医師の判断のもと安全管理を行いながら活用します。

医療現場での役割

血液製剤は手術や外傷などで大量に血液を失った患者の救命にも利用します。また貧血が長く続く方に対し、赤血球製剤で酸素供給能力を補い、生活の質向上を狙う場面も少なくありません。

透析治療中には腎機能低下によるホルモンバランスの乱れから貧血を起こしやすい場合があり、血液製剤が有用なサポート手段となります。投与の際は血液型や凝固因子の不足状況などを把握しながら、適切なタイミングで必要な量を調整します。

透析の患者における特性

透析中の患者は腎機能の代替として人工透析装置を使用するため、体内の老廃物を除去する一方で、必要な成分まで過度に失うリスクもあります。とくに赤血球や血漿中の蛋白質が減少すると疲労感や貧血症状が増悪しやすくなります。

そのため血液製剤を上手に活かし、日常生活の質を維持したり向上させたりする取り組みが大切です。医師や看護師と相談しながら、貧血や栄養状態を定期的に確認することで、自身に合った治療計画を立てやすくなります。

安全確保のための検査と手順

血液製剤を使用するときは感染症のリスクを最小限に抑えるため、血液を提供するドナーの検査体制を整えています。ウイルスや細菌などを調べる精密な検査を経て供給された製剤を医療機関で保管し、血液型や適合性を慎重に確認します。

さらに輸血や製剤投与時には、患者の氏名や生年月日、投与する製剤名などを二重三重にチェックして間違いを防ぎます。

血液の主な成分と役割

成分名主な役割
赤血球体中に酸素を運ぶ。ヘモグロビンと結合した酸素を各組織へ配送する。
白血球免疫反応を担い、細菌やウイルスに対する防御を行う。
血小板血管が損傷した際に傷口をふさぎ、血液の凝固に関与する。
血漿栄養素やホルモンの運搬、体液バランスの維持、凝固因子など多機能を担う。

透析治療と血液製剤の関連性

透析を受ける方にとって、血液の状態をどれほど安定させられるかは治療効果に大きく影響します。

腎機能の低下によって血液中の老廃物を排出しにくくなり、ホルモン分泌の異常から貧血を引き起こしやすい状況が出現するため、血液製剤を戦略的に用いる意義が高まります。

血液製剤の利用で血液中の必要な成分を補うと、全身の負担を軽減し、症状の進行を抑える可能性があります。

腎機能低下と貧血の関係

腎臓にはエリスロポエチンと呼ばれるホルモンを分泌して骨髄での赤血球生成を促す重要な役割があります。腎機能が落ちるとエリスロポエチンの分泌量が減少し、赤血球の産生が追いつかない状態に陥りやすくなります。

その結果、慢性貧血を抱える方が多く見受けられます。血液製剤が貧血改善に果たす役割は大きいものの、必要量を過剰に投与すると循環器系への負担が増えるため、定期的に血液検査を行いバランスを保つことが大切です。

透析中の血圧変動と血液製剤

透析治療では血液を体外に導き、ダイアライザーと呼ばれる装置を通して老廃物や余分な水分を除去します。この過程で血圧が不安定になりやすく、急激な血圧低下がめまいや倦怠感を引き起こすことがあります。

さらに貧血が重なっている方は血圧を維持しづらくなることも考えられます。血液製剤を用いてヘマトクリット値を改善し、循環動態を安定させると透析の負担軽減につながる場合があります。

栄養状態と透析治療の効果

腎不全では食事制限がかかる方が多いため、栄養状態が悪化すると身体の恒常性を保つ機能が低下し、貧血や感染症のリスクが高まります。

十分な栄養を取っても改善が見込みづらい場合、血液製剤による補充を並行して進める選択肢が考えられます。

ただし血液製剤は必要な成分を効率的に補う方法である一方、根本的な栄養補給を怠ると別の合併症を招く恐れがあるため、管理栄養士や医師と相談しながら総合的に治療プランを組み立てることが重要です。

他の治療法との併用

透析治療中の方はエリスロポエチン製剤を使い、赤血球産生を促進するアプローチを並行して進めることがあります。

血液製剤だけでなく、これらの薬剤を併用しながら貧血の程度をコントロールし、必要に応じて点滴や輸血を組み合わせるのが一般的です。

血圧や心機能などの状態を総合的に見ながら、主治医と相談して治療手段を決めると身体への負担を減らせます。

透析において血液製剤を活用する主な目的

  • 貧血の改善を促す
  • 循環動態の安定を目指す
  • 栄養状態の維持を補助する
  • 合併症リスクの低減に寄与する

血液製剤の種類と特徴

血液製剤は血液中の特定成分を分離して各成分の特性を活かせるよう加工してあり、目的によってさまざまな種類があります。

医師は患者の状態や検査結果を踏まえ、腎不全や透析の状況に合わせて必要な成分を見極めながら投与する形が一般的です。

赤血球製剤

赤血球製剤は主に酸素を運ぶ役割を補う目的で使います。透析中に貧血が進行すると体内の組織に十分な酸素が行き渡らず、疲労感や動悸、息切れなどの症状が出やすくなります。

赤血球製剤を使用しヘモグロビン値を高めて酸素供給の改善を試みることができますが、過剰投与では血液粘度が上がり心臓や血管に大きな負担をかけるため、検査でヘマトクリット値やヘモグロビン値を確認しながら投与量を調整します。

血漿製剤

血漿製剤は血液中の液体成分である血漿を濃縮・加工したもので、凝固因子や免疫グロブリン、アルブミンなどを含みます。

透析中に低アルブミン血症が問題となった場合、血漿製剤によってアルブミンを補い、血管内の浸透圧を保ちやすくする効果が期待できます。ただし投与速度や量を誤ると循環器系にストレスをかけるため、綿密な投与計画を立てます。

血小板製剤

血小板は出血を止める上で欠かせない成分です。透析が長引くと骨髄の機能低下や慢性疾患の影響で血小板が減少し、出血傾向が高まることがあります。

血小板製剤を適切に投与して不足を補うと出血リスクを抑制できますが、血小板は寿命が比較的短いため、必要に応じて繰り返し投与が必要になるケースもあります。

凝固因子製剤

血液凝固因子の欠乏や機能不全があると、出血が止まりにくくなるだけでなく血栓形成のリスクが高まる可能性があります。

凝固因子製剤は不足している特定の因子を直接補えるため有用ですが、凝固因子は相互に複雑な連携をしているため一部の因子だけ補っても十分な効果が得られない場合があります。

腎不全に伴う凝固異常や透析中の抗凝固剤使用が原因で出血リスクが高い方など、総合的な評価のもとに検討します。

主な血液製剤の種類と目的

名称主な目的注意点
赤血球製剤ヘモグロビン増加による酸素供給の改善過剰投与時は血液粘度上昇による循環負荷に注意
血漿製剤アルブミンや凝固因子の補充投与速度や量の過不足による循環障害に注意
血小板製剤出血予防と止血力強化血小板数の寿命やアレルギー反応に留意
凝固因子製剤特定凝固因子の不足補充凝固バランスを乱さないよう総合的評価が必要

透析中の血液製剤の使用方法

透析治療において血液製剤を投与するタイミングや投与量は、患者一人ひとりの病態に合わせて緻密に計画を立てます。

医療スタッフが血圧や心拍数、血液検査の数値などを随時確認しながら、適切な薬剤や補助療法と組み合わせるのが一般的です。

投与タイミングの判断

血液製剤を使うときは、ヘモグロビンやヘマトクリット、アルブミン値などを定期的に測定します。透析前後でこれらの値がどう変動するかを把握し、貧血の程度や出血リスク、栄養状態などを総合的に評価して使用のタイミングを決定します。

透析直後は体外循環の影響で血液成分が変動しやすいため、採血結果を確認し、数値が目標から外れていると判断した時点で投与を検討することもあります。

モニタリングの重要性

血液製剤を投与する際や投与後にはバイタルサイン(血圧、脈拍、呼吸数、体温)や酸素飽和度、出血の有無などを細かくチェックします。

特にアレルギー反応や輸血関連副作用が起こる可能性を視野に入れ、倦怠感の訴えや皮膚の変化、呼吸困難などを見逃さないように観察します。異常が疑われた場合にはすぐに投与を中断し、必要なら医師が適切な治療を行います。

他の薬剤や補助療法との組み合わせ

エリスロポエチン製剤などを併用すると、赤血球製剤の使用量を少なくしながら貧血の改善を狙いやすくなります。栄養補助食品やサプリメントを活用して鉄分やビタミンB群を補うと、より効率的に赤血球の産生を促進できるケースもあります。

透析後は老廃物だけでなく微量元素も変動しやすいため、医師や管理栄養士が協力して栄養状態を整える工夫が大切です。

合併症を見越したフォローアップ

心臓や血管系の合併症が進行している方、糖尿病など他の慢性疾患を併発している方は、血液製剤の投与にともなう循環器系への負担にも注意が必要です。定期検査や診察を繰り返し、透析治療と血液製剤のバランスが適切かどうかを見直します。

症状が安定している時期でも、疲れやすさや出血しやすさなどを自覚したら早めに医師へ相談し、必要に応じて投与計画を修正することが望ましいです。

血液製剤投与中の主な観察項目

項目観察内容
バイタルサイン血圧・脈拍・体温・呼吸数の変化
酸素飽和度SpO2の低下や変動の有無
アレルギー症状じんましん、発疹、呼吸苦など
出血傾向皮下出血、歯肉出血、血尿の有無
倦怠感全身のだるさ、めまいの出現度合い

血液製剤を扱う際の留意点

血液製剤の利用では安全性と有効性を両立させるための配慮が欠かせません。患者に適合しない血液型や製剤を投与すると重篤な副作用を引き起こすリスクがあるため、取り扱いの手順や保管管理を厳密に行う必要があります。

血液型や交差適合試験

血液製剤を投与する前に、患者の血液型やRh式、ABO式以外の抗原の有無、さらに不規則抗体などを調べる検査を行います。投与予定の製剤と患者の血液を混合して、凝集や溶血の有無を確かめる交差適合試験も大切です。

これらの工程を経ることで輸血後の副作用を最小限に抑えられます。

製剤の保管と温度管理

血液製剤は成分ごとに適した温度帯で保管しなければなりません。赤血球製剤は2℃~6℃、血小板製剤は20℃~24℃といった明確な基準があり、温度管理を怠ると凝固因子の活性が低下したり、細菌増殖のリスクが高まったりします。

医療機関では専用の冷蔵庫や保温器具を用い、厳重に管理します。

使用期限と廃棄処理

血液製剤には使用期限があり、期限を過ぎたものや品質に異常が疑われるものは廃棄対象となります。赤血球製剤は約21日、血小板製剤は採取後4日程度など、成分によって保存期間が異なる点を把握することが重要です。

廃棄の際には医療廃棄物として適切に処理し、院内感染や環境汚染のリスクを防ぎます。

投与後のアナフィラキシー対策

血液製剤の投与によって、まれにアナフィラキシーといった重篤なアレルギー反応が起こることがあります。

投与後はバイタルサインの変動や皮膚症状、呼吸困難などを注意深く観察し、異常があれば即座に医師や看護師が必要な治療を行えるよう準備を整えています。

事前のリスク因子チェックや予防的な抗アレルギー薬の使用など、症例に応じた対策を行うこともあります。

血液製剤の管理で意識する要点

  • 血液型と交差適合試験を正確に行う
  • 温度帯に合わせた保管ルールを厳守する
  • 使用期限を把握し、期限切れ製剤は破棄する
  • 投与後の副作用対応を常に視野に入れる

透析患者に多い合併症と血液製剤の役割

透析を継続する方は腎不全以外に多様な合併症を抱えることが珍しくありません。心臓や血管のトラブル、骨代謝異常などさまざまな問題が起こり得ますが、とりわけ貧血や感染症リスクの上昇は血液製剤の活用が検討しやすい領域です。

心血管系への負担

透析時に体外循環を行うため、血液量や血行動態が変動しやすく心臓に負担をかける場面が多くなります。貧血が進むと心拍出量を上昇させて酸素供給を補おうとするため、長期的には心肥大などの合併症リスクが高まります。

血液製剤で赤血球を補うと心臓の負担を軽減しやすいですが、同時に血液粘度の上昇も視野に入れて投与量を調整することが求められます。

感染症リスクと免疫力

透析患者は血液回路を通じて医療環境に触れる回数が多く、一般の方より感染症にかかりやすい傾向があります。栄養状態が落ち込むと免疫力が低下し、白血球や免疫グロブリンの不足が起こりやすいため重症化のリスクも高まります。

血漿製剤や免疫グロブリン製剤の投与で免疫力を補うことができますが、根本対策として透析環境の清潔保持や食生活の改善、ワクチン接種などが重要です。

骨代謝異常と貧血の関係

透析患者には骨代謝異常(腎性骨症)が多くみられます。腎臓で活性化されるビタミンDが不足するとカルシウムの吸収が阻害され、骨が弱くなるほか血中のカルシウムやリンのバランスも乱れがちです。

こうした影響が骨髄機能に及ぶと赤血球産生が滞り、貧血が進みやすくなります。血液製剤を用いたアプローチだけでは不十分な場合があるため、ビタミンD製剤やリン吸着薬などの併用を検討する必要があります。

出血傾向とその対処

透析時に抗凝固剤を使用して血液回路内の血栓形成を防ぐ一方、それが原因となり体内の止血機能まで抑制され、出血しやすくなることがあります。さらに慢性炎症や栄養不良などが重なり、血小板数や機能が低下すると出血リスクが高まります。

血小板製剤や凝固因子製剤で対処するケースもありますが、まずは抗凝固剤を適切な範囲で使い、不要な出血リスクを減らす方針を立てることが大切です。

透析患者にみられやすい主な合併症と血液製剤の活用例

合併症主な症状や問題点活用される血液製剤
心不全・心肥大息切れ、むくみ、心機能低下赤血球製剤(貧血改善による心負担軽減)
感染症リスク増大発熱、免疫力低下血漿製剤(免疫グロブリン補充)、白血球関連製剤
骨代謝異常骨の脆弱化、カルシウム・リンバランス異常必要に応じて血漿製剤(アルブミン、凝固因子)
出血傾向皮下出血、歯肉出血、内出血血小板製剤、凝固因子製剤

血液製剤の供給体制と安全対策

血液製剤は限られた資源であり、ドナーからの献血によって支えられています。透析の患者に安心して使用できるようにするには、献血体制や製剤加工の工程、輸送・保管システムなど、あらゆる段階での安全対策が重要です。

献血と製剤の製造プロセス

献血は国や地域で管理され、年齢や体調などの基準を満たしたドナーが血液を提供することで成り立ちます。提供された血液は血液センターで遠心分離やろ過、病原体検査などを行い、赤血球や血漿、血小板などに分割されます。

B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、HIVなどのウイルス検査を中心に複数の項目を実施し、合格した製剤だけが医療機関に出荷される仕組みです。

輸送と保管の品質管理

血液製剤は温度や振動に弱いため、輸送時にも管理が欠かせません。赤血球製剤は専用の保冷容器を使用し、血小板製剤は一定の温度で振とうしながら輸送して凝集や変性を防ぎます。

医療機関に到着後はすぐに所定の温度帯で保管し、期限内に使い切るよう計画を立てます。透析で血液製剤を使う場合も、このような物流面の安全対策が求められます。

医療従事者の教育とトレーニング

血液製剤の取り扱いには細心の注意が必要なため、医師や看護師、臨床検査技師は定期的な研修を行います。投与前のダブルチェックや投与後の観察要点、アレルギーや感染症の兆候を見逃さない方法など、現場での知識共有が欠かせません。

特に透析に携わるスタッフは血液回路と製剤の相互作用を理解し、患者の状態に合わせた対応ができるスキルを身につけています。

緊急時の対応計画

地震や台風などの大規模災害が発生すると、血液製剤の供給が滞るおそれがあります。院内には一定量の在庫を確保し、非常用電源や保冷設備を点検しておき、流通が止まっても一定期間はしのげる体制を準備します。

緊急時には重症患者や救急医療へ優先的に血液製剤を回すことも検討するため、透析患者を含めた優先度の共有が必要です。

血液製剤の安全性を支える取り組み

  • 献血ドナーの厳格な選定と健康調査
  • 多項目にわたる病原体検査の実施
  • 温度や振動を管理する輸送・保管体制
  • 医療従事者の継続的なトレーニング

主な病原体検査項目と対策

検査項目意義対策例
B型肝炎ウイルス肝炎や肝硬変の原因になるワクチン接種、免疫グロブリン投与
C型肝炎ウイルス慢性肝炎が進行し肝硬変や肝がんを誘発定期スクリーニング、陽性製剤の破棄
HIV(ヒト免疫不全ウイルス)AIDSの原因ドナー健康調査と抗体検査の徹底
梅毒血液を介して感染する疾病梅毒血清反応検査、陽性時の詳細検証

血液管理の重要性と受診のタイミング

血液製剤は生命維持に寄与する治療手段の1つですが、むやみに使えば副作用や合併症につながる可能性もあります。透析治療では継続的に血液成分を観察し、必要と判断されたときに正しく導入する姿勢が大切です。

定期的な検査と専門医の連携

透析を受ける方は腎臓内科だけでなく心臓内科や内分泌科など多くの診療科と連携することが重要になります。定期的に血液検査や心エコー、骨密度検査などを組み合わせ、身体全体の状態を評価します。

貧血の原因や栄養状態の問題を多角的に確認しながら、血液製剤を使うタイミングを見誤らないようにする取り組みが治療の質を高める鍵です。

自覚症状の把握と早めの相談

透析に慣れた生活を続けると、疲労感や息切れ、倦怠感などを日常的に抱える場合もあります。しかしこれらの症状が以前より強くなってきた場合は貧血が進行しているかもしれません。

血液製剤の投与を検討する際には検査データだけでなく患者自身の生活状況や自覚症状も重要な判断材料となります。小さな異変でも早めに主治医へ相談し、必要であれば追加検査や診察を受けることが望ましいです。

生活習慣の改善との両立

血液製剤には有用性がありますが、食生活や運動習慣を整えて貧血や栄養不良を予防する努力も大切です。透析食はカリウムやリンの制限があるため、栄養不足になりやすい側面があります。

栄養バランスを考慮した食事や適度な有酸素運動、休養の確保によって、血液製剤を過度に頼らなくても安定した身体状態を保ちやすくなります。

血液管理における患者の主体性

透析治療は長期にわたり身体的・精神的な負担を伴うため、医療者任せではなく患者自身が情報を集め、納得したうえで治療を選択する姿勢も重要です。

医師や看護師、薬剤師、管理栄養士などと連携し、自分がどのような血液成分を補う必要があるのか理解しておくことで合併症を予防しやすくなります。

血液製剤の投与が必要だと判断された場合でも、不安や疑問があれば率直に伝え、十分な説明を受けながら治療を進めると安心感が高まります。

受診の目安となる症状

  • 安静にしていても強い疲労感が続く
  • 透析後のめまいや息切れが増えてきた
  • 以前より顔色や爪の色が悪くなった印象がある
  • 出血傾向があり、止血に時間がかかる

定期的に確認したい主な検査項目

検査名主な内容目安頻度
血液一般検査ヘモグロビン、ヘマトクリット、白血球・血小板数週1~2回程度、施設の方針次第
生化学検査アルブミン、電解質、腎機能指標透析日の前後や月1回など
心エコー心臓のサイズや弁機能を評価3~6カ月に1回
骨密度検査骨粗鬆症や骨代謝異常の有無を把握年1回程度が多い

透析中の方に意識したい主な栄養素

栄養素役割注意点
たんぱく質筋肉維持、免疫力の向上過剰摂取は尿毒症状悪化のリスク
ヘモグロビン生成を助ける胃腸障害に留意しながらバランスを取る
ビタミンB群赤血球の形成をサポート不足すると疲労が増大しやすい
ビタミンD骨の形成とカルシウム吸収腎機能低下による活性化不足が起こりがち

日常的に自己管理で注視したいポイント

  • 体重の変動(過剰な水分摂取がないか)
  • 血圧の上下(低血圧または高血圧の傾向)
  • 食事の質(カリウムやリンの摂り過ぎをチェック)
  • 皮膚トラブルや感染症の兆候

血液製剤使用時に起こりうる主な副作用

副作用主な症状対処法
アレルギー反応じんましん、呼吸困難、血圧低下投与中断、酸素投与、医師による緊急処置
溶血赤血球破壊による黄疸や貧血悪化交差適合試験の徹底、異常時の迅速対応
感染症発熱、倦怠感、臓器障害ドナー血検査と無菌操作の遵守
循環系への負担血圧上昇、心不全リスク適量と投与速度の調整、心機能モニタリング

透析治療を続ける方にとって、血液製剤の活用は貧血や出血傾向を補う大きな選択肢になります。適切なタイミングと正しい使い方を意識しながら医療チームと連携して治療を進めると、日常生活の質をより良い状態で保ちやすくなります。

血液製剤を検討するときは、副作用やリスクも十分に理解し、必要な検査や観察を怠らないよう心がけてください。

以上

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大垣中央病院・こばとも皮膚科

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