透析患者さんが抗生剤を使う際の注意点|投与量・タイミングと副作用

透析患者さんが抗生剤を使う際の注意点|投与量・タイミングと副作用

透析治療を受けている方が感染症にかかった場合、抗生剤(抗菌薬)による治療が必要になることがありますが、透析患者さんの場合、腎臓の機能が低下しているため、お薬の体外への排泄が通常とは異なります。

このため、抗生剤を使用する際には、種類、投与量、投与のタイミングに特別な配慮が必要です。

この記事では、透析患者さんが抗生剤を安全かつ効果的に使用するために知っておきたい基本的な注意点について、分かりやすく解説します。

目次

抗生剤の使用に注意が必要な理由

透析治療を受けている方が抗生剤を使用する際、なぜ通常よりも慎重な管理が必要になるのか、その理由から見ていきましょう。背景には、お薬の排泄に関わる腎臓の働きと、透析治療そのものの影響があります。

透析と腎臓の役割

健康な腎臓は、血液をろ過して体内の老廃物や余分な水分を尿として排泄する重要な役割を担っていいて、同時に、多くのお薬やその代謝物も腎臓を通じて体外へ排泄します。

透析治療は、低下した腎臓の機能の一部を代替し、老廃物や水分の除去を行いますが、お薬の排泄に関しては、腎臓の働きを完全に代行できるわけではありません。

お薬のように複雑な物質の調整と排泄に関しては、健康な腎臓の精密な機能には及ばない側面があるのです。

薬の排泄経路の変化

腎機能が低下すると、腎臓から排泄されるはずだったお薬が体外へ出にくくなり、抗生剤の中にも、主に腎臓から排泄されるタイプのお薬が多くあります。

透析患者さんの場合、排泄経路がうまく機能しないため、お薬が体内に留まりやすくなるのです。この状態を考慮せずに通常の人と同じ量のお薬を使用すると、意図せずお薬が効きすぎてしまう可能性があります。

抗生剤が体内に残りやすくなる理由

抗生剤が体内に残りやすくなると、血液中のお薬の濃度(血中濃度)が通常よりも高い状態で維持されます。

お薬は血中濃度を保つことで効果を発揮し、同時に副作用のリスクを管理しますが、排泄が遅れると血中濃度が想定以上に高くなり、効果が強く出すぎるだけでなく、副作用が現れる危険性も高まってしまいます。

お薬の血中濃度が安全な範囲(治療域)を超えて、有害な領域(中毒域)に達しやすくなるため、透析患者さんでは、お薬の排泄の程度に合わせて、投与する量を調整することが大切です。

透析患者さんが感染症にかかりやすい背景

透析治療を受けている方は、一般の方と比べて感染症にかかりやすい傾向があるといわれていて、いくつかの要因が関係しています。

免疫機能の変動

透析患者さんは、尿毒症の影響や栄養状態の偏り、慢性的なくすぶり続ける炎症、また透析治療自体による生体への影響など、複数の要因が複合的に関与し、体を守る免疫機能が変動しやすい状態にあると考えられています。

細菌やウイルスといった病原体に対する抵抗力が弱まることがあり、感染症を発症しやすくなる一因です。健康な人であれば問題にならないような弱い菌であっても、感染症を起こすことがあります。

透析治療に伴うリスク

血液透析(HD)では、血液を体外循環させるためにシャント(バスキュラーアクセス)と呼ばれる血液の出入り口を腕などに作成します。

シャントは、皮膚を介して体内に直接アクセスする経路となるため、穿刺(針を刺すこと)の際に細菌が侵入する入り口になる可能性があります。

また、腹膜透析(PD)の場合も、カテーテルが腹部に留置されており、出口部分やカテーテル接続部からの感染には十分な注意が必要で、腹膜炎は腹膜透析を継続する上での重大な合併症の一つです。

透析患者さんに多い感染症の部位

感染部位主な感染経路注意すべき症状
シャント(バスキュラーアクセス)穿刺部からの細菌侵入シャント部の赤み、腫れ、痛み、熱感、膿
腹膜(腹膜透析の場合)カテーテル接続・出口部からの細菌侵入腹痛、透析排液の濁り、発熱
呼吸器(肺炎など)飛沫感染、誤嚥(ごえん)咳、痰、息切れ、胸痛、発熱
尿路(膀胱炎、腎盂腎炎)尿道からの細菌侵入(特に尿量が残っている場合)排尿時痛、頻尿、残尿感、発熱

透析患者さんにおける発熱

透析患者さんが発熱した場合、シャント感染やカテーテル感染、あるいは肺炎や尿路感染症など、様々な感染症の可能性を考える必要があります。

発熱は体が感染と戦っているサインですが、見過ごさずに原因を特定し、早期に治療(抗生剤の使用など)を開始することが重要です。

シャント(バスキュラーアクセス)の異常

シャント部分に赤み、腫れ、痛み、熱感、あるいは膿が出るなどの症状が見られた場合、シャント感染の可能性があります。

シャントは透析治療を続けるための命綱とも言える非常に大切なものですので、異常に気づいたら、すぐに医療スタッフに相談してください。

抗生剤の種類と透析患者さんへの影響

抗生剤には非常に多くの種類があり、それぞれ特徴が異なります。透析患者さんの場合、お薬が体からどれくらい排泄されるか、透析治療によってどれくらい除去されるかが、お薬選びの重要なポイントです。

腎臓への負担が少ない抗生剤とは

お薬の中には、主に肝臓で代謝されて便中に排泄されるため、腎機能が低下していても比較的投与量の調整が少なくて済む抗生剤もあり、マクロライド系の一部やテトラサイクリン系の一部などが該当します。

ただし、これらのお薬がすべての感染症に有効なわけではなく、原因となる菌の種類によって使い分ける必要があります。また、肝臓で代謝されるお薬であっても、肝機能が低下している場合には同様に注意深い投与が重要です。

透析で除去されやすい抗生剤

血液透析によって体から除去されやすい抗生剤もあり、透析を行うと血中濃度が大きく低下してしまうため、効果が持続しなくなる可能性があります。

せっかく投与しても、お薬が体内で働く前に失われてしまうため、感染症が治りにくくなる恐れがあります。

ペニシリン系やセフェム系の一部は、透析で除去されやすい傾向があるため、透析のタイミングを考慮して投与することが必要です。

体内に蓄積しやすい抗生剤

腎臓から排泄される割合が高く、かつ透析でもあまり除去されないタイプの抗生剤もあり、アミノグリコシド系やバンコマイシンなどが代表的です。

このようなお薬は、腎機能が低下している透析患者さんでは体内に非常に蓄積しやすく、通常量を投与すると重篤な副作用を起こす危険性があります。

蓄積によるリスクの例

アミノグリコシド系は聴覚障害(耳鳴り、難聴)や平衡感覚の障害、腎障害(残っている腎機能への影響)、バンコマイシンは聴覚障害などを起こすことが知られています。

バンコマイシンも同様に聴覚障害や腎障害のリスクがあり、急速に投与するとレッドマン症候群と呼ばれるアレルギー様の反応が出ることもあるので、使用する際は、定期的にお薬の血中濃度を測定しながら、慎重に投与量を調整します。

主な抗生剤の分類と透析への影響(簡略版)

抗生剤の主な分類(例)透析による除去透析患者さんでの主な注意点
ペニシリン系(一部)除去されやすい透析後に投与することが多い。
セフェム系(一部)除去されやすい透析後に投与することが多い。
アミノグリコシド系除去されにくい(※)蓄積しやすく、副作用に厳重注意。血中濃度の測定が必要。
バンコマイシン除去されにくい蓄積しやすく、副作用に厳重注意。血中濃度の測定が必要。
マクロライド系(一部)あまり除去されない腎機能低下での減量は比較的小さいことが多い。

抗生剤の投与量 透析患者さん特有の調整

透析患者さんに抗生剤を使用する場合、お薬の排泄が遅れることを前提とした投与量の調整が不可欠です。通常よりも少ない量で十分な効果が得られることもあれば、投与する間隔を通常より長くすることもあります。

なぜ通常量では多すぎるのか

腎臓からの排泄が期待できないため、通常の人と同じ量を投与し続けると、お薬が体内にどんどん蓄積していき、血中濃度が必要以上に高くなり、副作用のリスクが急激に高まります。

抗生剤は、感染症を治すために必要な濃度(有効濃度)を保ちつつ、副作用が出ない濃度(中毒濃度)を超えないようにコントロールすることが大切です。

透析患者さんでは、治療域が通常の人よりも狭くなる、あるいは中毒域に達しやすくなるため、投与量の厳密な調整が求められます。

腎機能に基づいた投与量の計算

医師は、患者さんの腎機能(透析患者さんの場合は、残っている腎機能や透析の状況)を評価し、お薬の添付文書や専門的なガイドラインに基づいて、投与量を設定します。

クレアチニンクリアランス(eGFR)といった指標を参考にしますが、透析患者さんでは指標だけでは判断が難しいため、お薬ごとの特性を考慮して判断します。

透析によってどれだけお薬が除去されるか(透析クリアランス)も考慮に入れる必要があるのです。

腎機能低下度と投与量調整の目安

腎機能の指標(例)一般的な投与量の目安一般的な投与間隔の目安
正常100%(通常量)通常間隔
軽度低下75%~100%通常間隔
中等度低下50%~75%通常~延長
高度低下25%~50%延長
透析患者個別に設定透析日に合わせて調整

体格や年齢を考慮した調整

投与量の設定には、腎機能だけでなく、患者さんの体重や年齢、全体的な健康状態なども影響します。特に体重が少ない方や高齢の方は、同じ投与量でも血中濃度が上がりやすくなる可能性があるため、より慎重な調整を行うことがあります。

高齢の方は、肝臓の代謝機能も低下していることが多く、その点も配慮が必要です。お薬が体内のどこに分布するか(分布容積)も個人差があり、これらを総合的に判断して投与計画を立てます。

投与量調整が必要な主な抗生剤

ほとんどの抗生剤は、透析患者さんにおいて何らかの投与量調整(減量または投与間隔の延長)を必要とし、アミノグリコシド系やバンコマイシンは、厳密な投与量管理と血中濃度のモニタリングが求められます。

ニューキノロン系や一部の抗ウイルス薬なども、慎重な調整が必要です。

特に投与量調整に注意が必要な抗生剤(例)

  • アミノグリコシド系(ゲンタマイシンなど)
  • グリコペプチド系(バンコマイシンなど)
  • ニューキノロン系(レボフロキサシンなど)
  • 一部のセフェム系・カルバペネム系
  • 抗真菌薬・抗ウイルス薬の一部

抗生剤投与のタイミング 透析との関係

透析患者さんの抗生剤治療において、投与量と並んで非常に重要なのが投与のタイミングです。血液透析(HD)は、お薬の血中濃度に大きな影響を与えるため、透析スケジュールと関連付けた投与計画が立てられます。

透析日と非透析日での違い

透析患者さんの場合、お薬の投与計画は透析日と透析のない日(非透析日)で異なることがあります。

透析によって除去されるお薬の場合、非透析日は体内に残りやすいため投与量を減らし、透析日には除去される分を見越して投与方法を工夫する、といった対応が取られます。

透析スケジュールに合わせたきめ細やかな投与計画(レジメン)を立てることが、治療効果の維持と副作用の防止につながるのです。

透析後に投与する理由

血液透析で除去されやすい抗生剤(一部のペニシリン系、セフェム系)は、透析の直前に投与すると、お薬が効果を発揮する前に透析により体外へ除去されてしまいうことで、血中濃度が低下し、十分な治療効果が得られなくなる可能性があります。

これを防ぐため、透析治療が終了した後に抗生剤を投与すると、次の透析までの間、有効な血中濃度を維持しやすいです。

透析で失われる分を考慮せずに透析前に投与すると、次の透析までの間、血中濃度が有効濃度を下回る時間が長くなり、菌を十分に叩けない可能性があります。

投与タイミングの考え方(例)

薬の特徴望ましい投与タイミング(HDの場合)その理由
透析で除去されやすい薬透析終了後透析による薬の除去を避け、血中濃度を維持するため。
透析で除去されにくい薬透析日に関わらず設定可能透析の影響を受けにくいため、投与間隔に基づいて投与。
血中濃度測定が必要な薬測定結果に基づき決定透析前後の濃度を測定し、投与量・タイミングを調整。

透析前に投与する場合の考え方

基本的には透析後の投与が多いですが、お薬の種類や感染症の重症度によっては、あえて透析前に投与する場合や、透析中に追加投与を行うこともあります。

感染症が非常に重篤で、一刻も早く高い血中濃度に到達させる必要がある場合や、透析で除去されにくいお薬で、投与間隔の調整が主となる場合などです。

この判断は、感染症の種類と重症度、使用するお薬の特性に基づき、医師が専門的に行います。

飲み薬(内服薬)の場合のタイミング

飲み薬の場合も、注射薬と同様の考え方が適用され、透析で除去されやすいお薬は、透析のない日は1日1回、透析日には透析後に服用する、といった指示が出ることがあります。

服用方法が通常と異なり複雑になることもありますが、治療効果を確実にするために非常に重要です。自己判断で飲む時間や回数を変えず、必ず医師や薬剤師の指示に従ってください。

注意すべき副作用

抗生剤は感染症治療に欠かせないお薬ですが、一方で副作用のリスクも伴います。透析患者さんはお薬が体内に蓄積しやすいため、副作用が通常よりも現れやすい、あるいは重篤になりやすい可能性があり、注意が必要です。

一般的な抗生剤の副作用

抗生剤に共通してみられる副作用として、下痢や軟便、吐き気などの胃腸症状や、皮膚の発疹、かゆみなどのアレルギー症状があり、お薬が腸内細菌のバランスを崩し、善玉菌が減って悪玉菌が増えやすくなることで起こります。

また、体がお薬に過敏に反応したりすることで起こるので、軽い症状であっても、自己判断で様子を見ず、医療スタッフに相談することが大切です。特に透析患者さんは体力の消耗につながりやすいため、早めの対応が重要になります。

一般的な抗生剤の副作用(例)

症状考えられる副作用対処のヒント
下痢、軟便、腹痛胃腸症状水分補給を心がけ、医師に相談する。整腸剤が処方されることも。
発疹、かゆみ、赤みアレルギー症状(薬疹)すぐに医師に連絡する。重症化する可能性もあるため注意。
吐き気、食欲不振胃腸症状無理に食事をとらず、医師に相談する。

透析患者さんで特に注意したい副作用

透析患者さんでは、一般的な副作用に加え、お薬の蓄積によって起きる重篤な副作用に注意が必要です。

神経系の副作用(意識障害、けいれんなど)

一部の抗生剤(例:一部のセフェム系、カルバペネム系、ニューキノロン系)は、血中濃度が非常に高くなると、中枢神経系に影響を与え、めまい、ふらつき、眠気、混乱(意識障害)、さらにはけいれんを起こすことがあります。

中枢神経系に移行しやすい性質を持つものがあり、血中濃度が安全域を超えると毒性を示します。いつもと様子が違う、ろれつが回らない、ぼーっとするといった症状は、見逃してはならないサインです。

血液系の副作用(貧血、血小板減少など)

長期間の抗生剤使用や、特定のお薬(一部のペニシリン系)によって、血液を作る機能が抑えられたり、血液の成分(赤血球、白血球、血小板)が減ったりします。

透析患者さんはもともと貧血(腎性貧血)傾向があるため、抗生剤による影響が加わると、貧血が進行し、だるさや息切れ、動悸が強まることがあります。

また、血小板が減少すると、出血しやすくなる(鼻血、歯茎からの出血、青あざなど)ため、シャント穿刺部の止血にも時間がかかりやすいです。

特に注意すべき神経系症状(例)

  • 普段と違う強い眠気
  • めまいやふらつき
  • 話が噛み合わない、混乱
  • 手足の震え
  • けいれん

副作用の初期症状と対処法

抗生剤を使い始めてから、いつもと違う体調の変化を感じた場合は、それが軽い症状であっても副作用の初期症状である可能性があります。

特に、神経系の症状や、急な発疹、息苦しさなどが出た場合は、重篤な副作用やアレルギーの可能性があるため、ただちに医療スタッフに連絡することが重要です。

透析患者さんの場合お薬の排泄が遅いため、一度現れた副作用が長引くこともあり、早期の発見と対応が、重症化を防ぐ鍵となります。

副作用が疑われる場合の初期対応

状況推奨される行動避けるべき行動
軽い胃腸症状(下痢など)次の透析時や受診時に医師に相談する。自己判断での服薬中断。
皮膚の発疹、かゆみ早めに医師に連絡し、指示を仰ぐ。かゆみ止めを自己判断で塗る・飲む。
強い眠気、ふらつき、混乱すぐに医療機関(透析施設)に連絡する。様子を見る。車の運転。
息苦しさ、けいれん救急車を要請するか、すぐに受診する。我慢する。

医療スタッフへ正確に情報を伝えることの大切さ

透析患者さんが安全に抗生剤治療を受けるためには、医師や薬剤師、看護師といった医療スタッフが患者さんの状態を正確に把握していることが大前提となります。

お薬手帳の重要性

お薬手帳は、ご自身が使用しているすべてのお薬を記録した大切な情報源です。透析クリニックや病院だけでなく、他の医療機関(歯医者、眼科、皮膚科など)を受診する際や、薬局でお薬をもらう際も、必ず提示してください。

透析患者さんは多くのお薬を服用していることが多いため、お薬手帳による一元管理は、安全な薬物治療の基盤となります。

お薬手帳で確認する項目

  • 処方されている薬の名前
  • 用法・用量(いつ、どれだけ飲むか)
  • 処方された医療機関名
  • 過去のアレルギー歴や副作用歴

現在使用中のすべての薬を伝える

医療スタッフに伝えるべきお薬は、病院で処方された医療用医薬品だけではありません。薬局やドラッグストアで購入した市販薬、ビタミン剤、サプリメント、漢方薬なども含め、口にするお薬はすべて伝えてください。

抗生剤の効果に影響を与えたり、腎臓に負担をかけたりするものがあるためです。一部のハーブサプリメント(セントジョーンズワートなど)はお薬の代謝に影響を与え、抗生剤の効果を弱めたり強めたりすることが知られています。

伝えるべき薬の例

薬の種類なぜ伝えるか具体例
処方薬飲み合わせや重複の確認血圧の薬、リンの薬、他院の薬など
市販薬腎臓への影響や飲み合わせ風邪薬、痛み止め、胃薬など
サプリメント・健康食品成分が腎臓や薬に影響する可能性ビタミン剤、ハーブ系サプリなど

体調の変化をすぐに相談する

抗生剤の治療が始まったら、ご自身の体調変化にいつも以上に注意を払ってください。

感染症の症状が改善しているか(熱が下がった、痛みが和らいだなど)はもちろん、副作用が疑われる症状(前述の胃腸症状、発疹、神経症状など)がないか、注意深く観察しましょう。

些細なことと思っても、気になることがあればすぐに医療スタッフに相談してください。感染症の症状が改善しない場合も、お薬が効いていない(耐性菌の)可能性や、別の原因がある可能性も考えられるため、重要な情報です。

相談すべき体調変化(例)

  • いつもと違うだるさ、倦怠感
  • 食欲が全くない
  • 皮膚や白目が黄色っぽくなる(黄疸)
  • シャント部分の異常(赤み、腫れ、痛み)

他の医療機関を受診する際の注意点

透析患者さんであることは、他の医療機関を受診する際に必ず伝えなければならない最も重要な情報の一つです。

歯科治療や小規模な手術などで抗生剤が処方される可能性がある場合は、ご自身が透析中であること、現在治療を受けている透析施設名を明確に伝えてください。

必要であれば、透析施設の医師と、受診先の医師が情報を共有できるように橋渡しをすることも大切です。透析施設で使えないお薬が、他院で意図せず処方されてしまうことを防ぐためにも、患者さんご自身からの情報提供が非常に重要になります。

他院受診時に伝えること

伝える項目理由具体的な伝え方
透析治療中であること投薬量や薬の種類を決定する最重要情報現在、〇〇病院で週〇回、血液透析(または腹膜透析)を受けています。
お薬手帳の提示現在の処方内容とアレルギー歴の確認これが今飲んでいる薬です。アレルギーは〇〇があります。
かかりつけ透析施設名必要時の情報連携のため主治医は〇〇病院の〇〇先生です。

透析患者さんが抗生剤を使う際の注意点に関するよくある質問

抗生剤を自己判断でやめてもよいですか

絶対に自己判断でやめないでください。 処方された抗生剤は、症状が良くなったと感じても、医師から指示された期間、必ず飲み切るか使い切ることが大切です。

途中でやめてしまうと、生き残った細菌が再び増殖したり、お薬が効きにくい耐性菌を生み出したりする原因になります。副作用が心配な場合は、やめる前に必ず医師や薬剤師に相談してください。

風邪のたびに抗生剤が必要ですか

そうとは限りません。 一般的な風邪の多くはウイルスが原因であり、抗生剤(細菌を倒すお薬)は効果がなく、抗生剤は細菌による感染症(肺炎、尿路感染症、シャント感染など)と診断された場合に必要です。

風邪症状であっても、発熱が続く、咳がひどいなど、細菌感染が疑われる場合には医師が判断して処方します。透析患者さんは風邪から肺炎などに進行しやすいため、早めに受診し、医師の診断を受けることが大切です。

飲み忘れた場合はどうすればよいですか

気づいた時点ですぐに医師や薬剤師に相談することが、大切です。 透析患者さんの場合、お薬の飲み忘れは血中濃度の管理に大きく影響します。

抗生剤の場合、飲み忘れたからといって次に2回分をまとめて飲むことは絶対にしないでください。お薬の種類や透析のスケジュールによって、対応が異なります。

次の投与までの時間や、お薬の血中濃度への影響を考慮して、どうすればよいか、必ず専門家の指示を仰ぎましょう。

市販の風邪薬や痛み止めは飲んでも大丈夫ですか

自己判断で飲むのは避けてください。 市販の風邪薬や痛み止め(解熱鎮痛薬)の中には、腎臓に負担をかける成分が含まれていたり、透析患者さんでは使用に注意が必要なものがあります。

抗生剤と飲み合わせが悪い場合もあります。市販薬を使用したい場合は、必ず購入前にかかりつけの医師や薬剤師に相談し、飲んでも問題ないかを確認してください。


以上 

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