肺動脈狭窄症(PS)

肺動脈狭窄症(PS)

先天性心疾患の一種である肺動脈狭窄症(PS)とは、生まれつき肺動脈弁の形成が不完全となり、右心室から肺動脈へと向かう血液の流れが制限される心臓の病気です。

この状態では、心臓から肺へと続く血液の通り道が狭くなることで、右心室は通常以上の力で血液を送り出す必要があるため、心臓への負担が大きくなります。

目次

肺動脈狭窄症(PS)の病型

肺動脈狭窄症(PS)は、狭窄部位の位置によって3つの主要な病型に分類されます。各病型は解剖学的な特徴が異なり、血液の流れに与える影響も様々です。

肺動脈弁狭窄症、肺動脈弁上部狭窄症、肺動脈弁下部狭窄症の構造的特徴と血行動態について詳しく説明します。

肺動脈弁狭窄症の構造的特徴

肺動脈弁狭窄症は、PSの中で全体の約80~85%を占める最も一般的な病型です。通常、肺動脈弁の弁尖(心臓の弁を構成する薄い膜状の組織)が1.5~2.0mm程度肥厚し、弁尖同士が融合することで弁口面積が減少します。

健常者の肺動脈弁口面積は体表面積1平方メートルあたり2.0~2.5平方センチメートルですが、この病型では1.0平方センチメートル未満まで狭小化することもあります。

肺動脈弁の状態弁口面積(cm²/m²)血流速度(m/秒)
正常2.0-2.50.8-1.2
軽度狭窄1.5-2.02.0-3.0
中等度狭窄1.0-1.53.0-4.0
重度狭窄<1.0>4.0

肺動脈弁上部狭窄症の解剖学的特性

肺動脈弁上部狭窄症は、PSの約10~15%を占め、肺動脈弁より上方の主肺動脈に狭窄を生じる病型です。狭窄部位の内径は通常の50~70%程度まで狭小化します。

血管壁の厚さは正常値の0.8~1.2mmから、重症例では2.5~3.0mm程度まで肥厚することがあります。

  • 限局性狭窄:長さ5mm未満の短い区間での狭窄
  • びまん性狭窄:10mm以上の長い区間での狭窄
  • 多発性狭窄:2か所以上の異なる部位での狭窄
狭窄の種類狭窄長(mm)血管内径減少率(%)
限局性<530-50
びまん性>1040-60
多発性複数箇所20-40

肺動脈弁下部狭窄症の形態学的特徴

肺動脈弁下部狭窄症は全体の約5~10%を占め、右心室流出路に狭窄が存在します。正常な右室流出路の直径が18~22mm程度であるのに対し、この病型では最小部で6~12mm程度まで狭小化します。

狭窄部位の性状内腔径(mm)組織肥厚度(mm)
正常流出路18-222-3
軽度狭窄12-154-5
中等度狭窄9-125-7
重度狭窄6-9>7

複合型狭窄症の特徴と分類

複合型狭窄症は全症例の約15~20%を占めており、それぞれの部位における狭窄の程度によって血行動態が大きく変化します。圧較差は単独の狭窄と比較して1.5~2倍程度増加することがあります。

複合型の形態発生頻度(%)平均圧較差(mmHg)
弁性+弁下部8-1050-70
弁性+弁上部5-740-60
全領域性2-360-80

各病型における血行動態の特徴

血流速度は狭窄の程度に応じて上昇し、正常値の0.8~1.2m/秒から、重症例では4.0m/秒以上に達することがあります。この血流速度の上昇は、心臓超音波検査によって明確に判別できます。

  • 弁性狭窄:最高血流速度4.0~5.0m/秒
  • 弁上部狭窄:最高血流速度3.5~4.5m/秒
  • 弁下部狭窄:最高血流速度3.0~4.0m/秒

肺動脈狭窄症の各病型における解剖学的特徴と血行動態の変化は、近年の画像診断技術の進歩によってより詳細な観察が可能となっています。

これらの特徴を理解することは、循環器医療における基礎知識として重要な位置を占めています。

肺動脈狭窄症(PS)の症状

肺動脈狭窄症は、その重症度や病型によって様々な症状を呈します。狭窄の程度が軽度の場合は無症状のことも多いですが、中等度から重度の狭窄では特徴的な症状が出現します。

ここでは、年齢層や活動状況による症状の違い、聴診所見の特徴、そして日常生活への影響について説明します。

乳幼児期における特徴的な症状

乳幼児期の肺動脈狭窄症では、授乳時間が通常の15~20分から25~35分に延長することが観察されます。哺乳力の低下により、1回の授乳量は健常児の70~80mlに対して40~50ml程度まで減少することがみられます。

体重増加は月齢に応じた標準値を下回り、生後3~4か月では標準体重の85~90%程度にとどまることが多く、発育曲線では-1.5~-2.0SDラインに沿った推移を示します。

発達指標標準値PS患児の平均値
1回授乳量70-80ml40-50ml
授乳時間15-20分25-35分
体重増加率25-30g/日15-20g/日

チアノーゼ(皮膚や粘膜の青紫色化)は、啼泣時の血中酸素飽和度が通常の95-100%から88-92%まで低下することで確認できます。この現象は特に啼泣が2分以上持続する場合に顕著となります。

幼児から学童期における症状

心拍数は安静時でも通常より10~20%増加し、運動時には年齢相応の最大心拍数(220-年齢)に達するまでの時間が健常児の50~60%程度に短縮します。

運動強度心拍数上昇息切れ出現時間
軽度運動120-140/分10-15分後
中等度運動140-160/分5-8分後
高強度運動160-180/分2-3分後

運動時の酸素消費量は、同年齢の健常児と比較して最大酸素摂取量が70~80%程度に低下します。これにより、以下のような運動制限が生じます。

  • 平地歩行:連続15~20分で息切れが出現
  • 階段昇降:2階分(約30段)で休憩が必要
  • 走行運動:50m程度で強い疲労感を自覚

成人期における症状とその特徴

成人期の心機能指標では、右室圧が正常値の15~30mmHgから40~60mmHgまで上昇し、これに伴い運動耐容能が低下します。6分間歩行試験では、健常者の500~600mに対して300~400m程度の歩行距離となります。

日常活動持続可能時間回復に要する時間
デスクワーク2-3時間15-20分
家事労働30-45分20-30分
買い物45-60分25-35分

聴診所見と身体症状の関係

聴診では、第2肺動脈音の減弱に加えて、収縮期駆出性雑音がLevine分類でⅡ/Ⅵ~Ⅳ/Ⅵ程度の強さで聴取されます。雑音の最強点は左第2肋間であり、頸部への放散性を持つ点が特徴的です。

雑音の性質標準的な特徴聴取部位
収縮期雑音クレッシェンド・デクレッシェンド型左第2肋間
第2音分裂・減弱肺動脈領域
放散頸部へ伝播頸動脈領域

症状の日内変動と生活への影響

自覚症状の強さは、24時間の生活リズムの中で変動します。一般的に早朝6~8時頃は症状が軽度ですが、日中の活動に伴い徐々に増強し、夕方16~18時頃にピークを迎えます。

肺動脈狭窄症の症状は、日常生活のあらゆる場面で影響を及ぼす一方で、適切な活動調整により、症状の悪化を最小限に抑えることが可能です。

生活の質を維持しながら、個々の状態に応じた活動レベルを把握することが重要となります。

肺動脈狭窄症(PS)の原因

肺動脈狭窄症の発生には、遺伝的要因と発生学的要因が複雑に関与しています。胎児期の心臓発生過程における異常や、特定の遺伝子変異が原因となって発症することが知られています。

遺伝的背景と関連遺伝子

肺動脈狭窄症の発生に関与する遺伝子変異は、全症例の約15~20%で確認されます。NOTCH1遺伝子の変異は単独で約8%、JAG1遺伝子の変異は約5%の症例で認められ、両者の重複は1%未満とされています。

心臓発生に関わるこれらの遺伝子は、胎生期の第4~8週において最も活発に働き、その発現量は通常の10~100倍に達します。

遺伝子変異頻度(%)発現時期(胎生週)関連蛋白質発現量(倍)
NOTCH17-94-850-100
JAG14-65-710-30
PTPN112-36-820-40

胎児期における発生異常のメカニズム

心臓神経堤細胞は、胎生4週から8週にかけて約500μmの距離を移動し、心臓流出路の形成に寄与します。この過程で、約60~70%の細胞が予定された位置に到達し、残りの細胞は途中で消失するか、異なる組織に分化します。

  • 神経堤細胞の移動速度:約2.5μm/時
  • 心内膜床形成期間:胎生5~7週
  • 弁尖形成完了時期:胎生9週
  • 流出路完成時期:胎生12週

環境因子と発生リスク

妊娠初期における環境要因の影響は、特に胎生4~8週の期間で顕著となります。母体の発熱が38.5度以上で24時間以上継続した場合、肺動脈狭窄症の発生リスクは約2.5倍に上昇します。

環境要因リスク上昇倍率影響が強い時期(週)影響持続期間(時間)
高熱(>38.5℃)2.5-3.04-6>24
低栄養1.8-2.24-8>72
薬剤曝露2.0-4.05-7>48

遺伝形式と家族性

家族性の肺動脈狭窄症では、第一度近親者での発症リスクが一般人口の4~8倍となります。多因子遺伝の場合、同胞での再発リスクは2~5%、親から子への伝達リスクは3~7%となります。

遺伝形式同胞リスク(%)親子間リスク(%)一般人口比
単一遺伝子25-505040-80倍
多因子遺伝2-53-74-8倍
染色体異常10-15変動的15-25倍

分子生物学的発生機序

細胞レベルでの異常は、組織形成に重要な細胞外マトリックスの構成にも影響を与えます。正常な弁組織と比較して、コラーゲン密度は約1.5~2倍に増加し、エラスチン含有量は40~60%に減少します。

分子レベルでの変化は、胎生期の特定の時期に集中して生じ、その後の心臓構造の形成に決定的な影響を及ぼします。遺伝子研究の進展により、より詳細な発生メカニズムの解明が進んでいます。

肺動脈狭窄症(PS)の検査・チェック方法

肺動脈狭窄症の診断は、身体診察から始まり、各種検査による確認を経て確定診断に至ります。

聴診による心雑音の評価が重要な診断の手がかりとなり、心エコー検査、心電図検査、胸部X線検査などの画像診断で詳細な評価を行います。

身体診察と聴診所見

肺動脈狭窄症の診断では、聴診所見が特に重要です。第2肋間胸骨左縁で最強となる駆出性収縮期雑音(心臓が収縮するときに生じる特徴的な音)を聴取します。

この雑音の強さはLevine分類でⅡ/Ⅵ~Ⅳ/Ⅵ程度であり、頸部に向かって放散します。

聴診所見の特徴正常心音との相違雑音の強さ(Levine分類)
第1音正常か軽度減弱
第2音分裂固定・減弱
収縮期雑音漸増漸減型Grade Ⅱ-Ⅳ/Ⅵ

聴診時の体位変換では、座位から前傾姿勢をとることで雑音が10~15%程度増強し、深吸気時には雑音の持続時間が15~20%延長します。

心エコー検査による評価

心エコー検査では、断層心エコー図(2D)とドプラ法を組み合わせて評価を行います。2D画像では弁尖の厚さを測定し、正常値の0.8-1.0mmと比較して1.5-2.0mm以上の肥厚を認めます。

狭窄部での血流速度は、連続波ドプラ法で測定します。正常値が0.8-1.2m/秒であるのに対し、軽度狭窄で2.0-3.0m/秒、中等度狭窄で3.0-4.0m/秒、重度狭窄では4.0m/秒以上となります。

狭窄程度血流速度(m/秒)平均圧較差(mmHg)弁口面積(cm²)
軽度2.0-3.020-401.5-2.0
中等度3.0-4.040-601.0-1.5
重度>4.0>60<1.0

心電図検査の特徴

心電図では、右室肥大の程度に応じた特徴的な変化を認めます。V1誘導のR波高は正常値の5-7mmから10-15mm以上に増高し、右軸偏位は+110度以上を示すことが特徴的です。

  • R波高:V1誘導で10-15mm以上
  • QRS軸:+110度以上の右軸偏位
  • RV5/SV1比:0.5未満
  • P波:PⅡ波高2.5mm以上
  • QRS幅:0.08-0.10秒

胸部X線検査の意義

胸部X線検査では、心陰影の形態変化と肺血管陰影のパターンを定量的に評価します。心胸郭比は正常値の45-50%から、中等度以上の症例では55-60%に増大します。

計測項目正常値異常値
心胸郭比45-50%55-60%
右第2弓突出度<2mm>4mm
肺血管陰影標準25-30%減少

心臓カテーテル検査における評価

心臓カテーテル検査は、狭窄の直接的な評価を可能にします。右室-肺動脈間の圧較差は、正常では5mmHg未満ですが、狭窄症では部位に応じて20-80mmHgの上昇を示します。

造影検査では、狭窄部の内径を正確に測定できます。正常な肺動脈弁輪径が18-22mmであるのに対し、重度狭窄例では6-12mmまで狭小化します。

診断精度の向上により、各検査方法の特性を活かした総合的な評価が実現しています。画像診断技術の進歩は、より正確な病態把握を実現し、診断の確実性を高めることに寄与しています。

肺動脈狭窄症(PS)の治療方法と治療薬について

肺動脈狭窄症の治療は、カテーテル治療と外科手術を中心に行われます。重症度や狭窄の部位によって治療方法を選択し、必要に応じて薬物療法を組み合わせます。

バルーン肺動脈弁形成術(BPV)の実際

バルーン肺動脈弁形成術は、局所麻酔下で約60~90分程度で完了する低侵襲治療です。穿刺部位の大腿静脈径が4mm以上あれば実施でき、手技成功率は熟練施設で95%以上を達成しています。

バルーンのサイズ選択では、弁輪径を正確に計測し、年齢に応じた適切な拡張比率を決定します。1歳未満では120%までの拡張にとどめ、年長児では140%まで拡張することが標準です。

年齢区分バルーン/弁輪比拡張圧(気圧)拡張時間(秒)
新生児110-120%3-45-8
乳児120-130%4-58-10
学童以上130-140%5-610-15

外科的弁形成術と弁置換術の手技

外科手術の所要時間は、単独の弁形成術で3~4時間、弁置換術では4~6時間を要します。人工心肺時間は弁形成術で60~90分、弁置換術で90~120分が一般的な目安となります。

術式手術時間(時間)人工心肺時間(分)術後入院期間(日)
弁形成術3-460-9010-14
弁置換術4-690-12014-21
ハイブリッド手術5-7100-15014-21

薬物療法による周術期管理

利尿薬は体重に応じて1-2mg/kg/日で開始し、心不全症状に応じて増減します。β遮断薬は0.5-1.0mg/kg/日からの少量開始が基本で、2-4週間かけて目標用量まで漸増します。

薬剤分類開始用量(mg/kg/日)最大用量(mg/kg/日)投与回数(/日)
利尿薬1-24-61-2
β遮断薬0.5-1.04-52-3
ACE阻害薬0.1-0.32-31-2

術後管理と経過観察の実際

術後の抗凝固療法では、ワーファリンによるPT-INR値を1.5~2.5の範囲で維持します。アスピリンは併用薬として1-3mg/kg/日を投与し、血小板凝集抑制効果を得ます。

定期的な心エコー検査は、術後1週間、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、以降は6ヶ月ごとに実施します。圧較差が35mmHg以上に上昇した場合は、検査間隔を短縮して慎重に経過を観察します。

長期予後と生活指導の具体的内容

術後の運動制限解除は段階的に行い、歩行は術後3~5日目から開始します。軽度の運動は術後4~6週から許可し、競技スポーツは術後6ヶ月以降に個別に判断します。

活動内容制限開始段階的解除完全解除
歩行運動3-5日1-2週2-3週
通学・通勤2-3週4-6週6-8週
一般運動4-6週2-3ヶ月3-4ヶ月

治療成績は着実に向上しており、早期発見・早期治療例では90%以上の患者が良好な長期予後を得ています。定期的な経過観察を継続することで、より確実な治療効果を維持することが可能です。

肺動脈狭窄症(PS)の治療期間

肺動脈狭窄症の発見から社会復帰までの期間は、治療方法や患者の状態によって異なります。

カテーテル治療では比較的短期間での回復が見込めますが、開心術では長期的な経過観察が重要です。

カテーテル治療における入院期間

カテーテル治療の場合、入院期間は平均5~7日間となり、そのうち術前準備に1~2日、術後観察に3~4日を要します。

術前の血液検査では、凝固能や腎機能の評価に6~8時間を要し、画像検査を含めた術前評価には12~16時間が必要となります。

治療段階所要時間評価項目数観察頻度
術前検査12-16時間15-20項目4-6回/日
術後安静36-48時間8-10項目6-8回/日
退院準備24-36時間5-6項目3-4回/日

外科手術時の入院期間と術後管理

外科手術を選択した場合、手術時間は3~6時間、術後の集中治療室滞在は48~72時間、一般病棟での療養は10~14日間が標準です。

手術創の痛みは術後3~4日でピークを迎え、7~10日目には日常生活動作に支障のないレベルまで改善します。

  • 手術前の準備期間:48-72時間(感染予防投薬と全身状態の最終確認)
  • 集中治療室での管理:心拍数・血圧を15分ごとに測定
  • 一般病棟での観察:バイタルサインを4時間ごとに確認
  • リハビリ期間:1日2回、各30分の運動療法を実施

社会復帰までの期間設定

段階的な活動再開において、心拍数は安静時の120~130%を超えないよう調整します。1日の歩行距離は1週目で300~500m、2週目で800~1000m、3週目で1500~2000mへと漸増していきます。

活動種別開始時期到達目標心拍数上限
歩行訓練術後3-5日2000m/日100-110/分
階段昇降術後2-3週3階相当110-120/分
軽い運動術後4-6週30分/回120-130/分

外来フォローアップの期間

経過観察は最初の1年間は頻回に行い、その後は状態に応じて間隔を調整します。心エコー検査による評価は、最初の3か月は月1回、その後6か月間は2か月に1回実施します。

観察時期検査項目数所要時間判定基準数
1-3か月12-15項目60-90分8-10項目
4-6か月8-10項目45-60分6-8項目
7-12か月6-8項目30-45分4-6項目

投薬管理の期間設定

薬物療法は、抗凝固薬のPT-INR値を1.5~2.5の範囲に維持することを目標とし、2週間ごとの血液検査で用量を調整します。薬効の安定には通常2~3週間を要し、その後は月1回の確認で管理が可能となります。

回復期間は個人差が大きく、全身状態や年齢によって変動しますが、定期的な経過観察と段階的な活動再開により、安全な社会復帰が実現できます。

薬の副作用や治療のデメリットについて

肺動脈狭窄症の治療では、カテーテル治療や外科手術、薬物療法など、各治療法に特有のリスクや副作用が存在します。

これらは患者の年齢や全身状態、狭窄の程度などによって発生頻度や重症度が異なります。

カテーテル治療に関連するリスク

カテーテル治療では、穿刺部位の合併症として血腫(皮下出血による腫れ)が2.5~3.0%の頻度で発生し、その大きさは直径2~5cm程度となります。

局所の感染率は0.5~1.0%で、38度以上の発熱を伴うものは全体の0.2%程度です。

穿刺部位の出血量は通常50ml未満ですが、抗凝固薬使用例では100ml以上に及ぶことがあり、圧迫止血に15~20分を要します。

合併症発生頻度(%)症状持続期間(日)対処に要する期間(日)
血腫形成2.5-3.05-73-5
局所感染0.5-1.07-105-7
動静脈瘻0.1-0.214-2110-14

外科手術に伴う急性期合併症

手術直後から48時間は循環動態が不安定となり、心拍数は通常値の120~140%に上昇し、血圧は10~20%の変動を示します。

術後出血は6~12時間がピークとなり、ドレーンからの排液量は1時間あたり50~100mlに達することがあります。

感染予防目的の抗生剤投与は術前30分から開始し、72時間継続します。創部の疼痛は術後3~4日目がピークとなり、鎮痛剤の使用頻度は1日4~6回となります。

合併症の種類観察頻度(/日)警戒レベル予想される持続時間(日)
循環動態変動24-48回要注意2-3
出血傾向12-24回厳重1-2
創部感染6-8回中等度5-7

薬物療法における副作用

抗凝固薬使用例では、PT-INR値を1.5~2.5の範囲に維持する必要がありますが、この範囲を逸脱する頻度は治療開始1か月以内で15~20%となります。

利尿薬使用に伴う電解質異常は、血清カリウム値が3.0mEq/L未満となる頻度が3~8%です。

薬剤群主な副作用発現頻度(%)発現までの期間(日)
抗凝固薬出血傾向5-107-14
利尿薬電解質異常3-83-7
β遮断薬徐脈2-52-5

長期的な合併症とその管理

再狭窄の発生率は5年で約10~15%であり、年間2~3%のペースで増加します。不整脈の出現率は年間1~2%で、その多くは上室性期外収縮です。

心エコー検査による弁機能評価では、圧較差が年間5~10mmHg増加する症例を要注意とし、観察間隔を短縮します。

リスク軽減のための観察ポイント

運動耐容能は6分間歩行試験で評価し、歩行距離が前回より10%以上低下した場合は精査が必要です。体重は1週間で1.5kg以上の増加を注意すべき基準とし、浮腫の有無と合わせて評価します。

合併症への早期対応と継続的な経過観察により、多くの患者さんは良好な経過をたどることが見込まれます。

保険適用と治療費

お読みください

以下に記載している治療費(医療費)は目安であり、実際の費用は症状や治療内容、保険適用否により大幅に上回ることがございます。当院では料金に関する以下説明の不備や相違について、一切の責任を負いかねますので、予めご了承ください。

処方薬の薬価

循環器疾患の治療で使用する主要な薬剤の費用は、健康保険の3割負担を前提とした場合、1日あたりの自己負担額が500円から1,500円の範囲となります。

薬剤分類1日薬価(円)月間自己負担(円)
抗凝固薬(血液を固まりにくくする薬)1801,620
利尿薬(余分な水分を排出する薬)1201,080

1週間の治療費

入院時の基本料金は1日あたり約5万円で、これに各種検査や処置の費用が加算されると、1日の総額は7~8万円に達します。

3割負担の場合の実質的な自己負担額は、1週間で約15万円前後となるのが一般的です。

  • 基本入院料:15,000円/日(個室使用料は別途必要)
  • 投薬費用:1,500円/日(使用する薬剤の種類により変動)
  • 検査費用:20,000円/週(心臓超音波検査などを含む)
  • 処置費用:10,000円/週(点滴や創傷処置を含む)
  • 食事療養費:1,500円/日(特別食加算は別途)

1か月の治療費

カテーテル治療(血管を通して行う治療)の場合、1か月の総医療費は約150万円となり、3割負担での自己負担額は45万円程度です。

一方、開心術を選択した場合は、総医療費が約250万円に達し、同じく3割負担で75万円前後の自己負担が発生します。

なお、これらの金額は一般的な目安であり、個々の症例における具体的な治療内容や入院期間によって変動することに留意が必要です。医療機関での事前相談により、より正確な費用見積もりを得ることが賢明といえるでしょう。

以上

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大垣中央病院・こばとも皮膚科

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