白衣高血圧

白衣高血圧

白衣高血圧とは、診察室で血圧を測定した際に一時的に高くなりやすい状態を指します。

医療機関のスタッフや機器を前にした緊張や不安によって血圧が上昇し、普段の生活では高血圧に該当しなくても、診察室では異常値に近い数値が出ることが特徴です。

放置すると誤診につながるリスクがあるため、正しい理解が必要です。

ここでは、白衣高血圧の病型や症状、原因、検査方法から治療方法と副作用、保険の扱いまで幅広く解説し、循環器内科への受診を迷っている方に役立つ情報をお伝えします。

目次

白衣高血圧の病型

白衣高血圧には複数のタイプがあります。医療機関の状況だけでなく、ライフスタイルや遺伝的要因なども含めて考えると、血圧の上昇パターンは人によって異なります。

この章では、代表的な病型の分類や特徴、発症メカニズム、さらに生活習慣との関連性を詳しく確認してみましょう。

病型を理解する意義

白衣高血圧というと「診察室だけ高くなる血圧」というイメージが強いですが、複数の要因が複雑に絡み合って生じるケースが多いです。病型を理解することは、より適切な対応策を見つけるうえで大切です。

  • 自分の血圧パターンを知ることで、生活習慣の改善ポイントが分かる
  • 適切な治療法の選択に役立つ
  • 緊張や不安の要因を正確に把握できる
  • 将来的なリスクを見据えた健康管理につなげられる

以下の表は、白衣高血圧の代表的なパターンをまとめたものです。

病型名特徴発生頻度
診察室高血圧型医療機関でのみ血圧が高い白衣高血圧の大部分
仮面高血圧型自宅などでは高いが、診察室では正常白衣高血圧とは別概念
本態性高血圧との合併通常時も血圧がやや高めで、診察室ではより上昇しやすい少なからず存在
一過性高血圧型緊張時以外は正常、ストレスがあると一時的に上昇比較的若年層に多い

白衣高血圧型の分類

白衣高血圧の分類は大きく「診察室高血圧型」と「仮面高血圧型」に分けられます。ここでは主に、白衣高血圧を示す方に多いパターンについてさらに細かく見ていきます。

  • 診察室高血圧を繰り返すうちに、体がその状況に慣れず、慢性的に血圧が変動しやすくなるケースがある
  • 日常生活でも軽度のストレスで血圧が上下しやすい人は、後に高血圧へ移行しやすい傾向がある
  • 定期的なモニタリングによって、より正確に自分のタイプを見極めることが重要です

以下の表では、白衣高血圧の中でも特徴が似ているものをグループ分けし、主な特徴を示します。

グループ特徴対策の方向性
緊張型診察室に入るだけで不安・緊張が極度に高まるリラックス法、精神的サポートの活用
肉体的ストレス型血圧測定時の姿勢や操作に敏感姿勢改善、測定方法の工夫
環境要因型病院独特の臭いや音に強いストレスを覚える慣れと対策グッズ(耳栓やアロマ)の導入など
複合要因型上記いずれかの要因が複数重なっている総合的なアプローチでストレス軽減

発症のメカニズム

白衣高血圧の発症は、神経系やホルモン系の複雑な働きによるものです。特に、交感神経が緊張によって活性化しやすい方は、一時的に心拍数や血圧が上昇しやすくなります。

ストレスホルモンのアドレナリンやノルアドレナリンの分泌量が増加すると、血管が収縮して血圧が高まりやすいです。

  • 交感神経が敏感に反応する性質が背景にある
  • 不安・恐怖を感じやすい心理的傾向が血圧上昇を招く
  • ホルモンバランスの乱れが長期的な血圧変動の増幅要因となる

下記の表で、白衣高血圧とホルモン分泌の関連性を簡単にまとめています。

ホルモン名働き血圧への影響
アドレナリン心拍数や呼吸数の増加、筋肉の緊張一時的な血圧上昇を招く
ノルアドレナリン血管収縮作用が強く、血圧を引き上げる頻繁な放出で慢性の上昇要因
コルチゾールストレス応答と代謝に作用し、血圧や血糖値にも影響長期的に上昇要因となりやすい

生活習慣との関連

白衣高血圧は、単に「病院での緊張」に留まらない場合もあります。日頃の生活習慣が影響して血圧が上下しやすい体質を作り出していることも珍しくありません。

食習慣や運動量、睡眠、喫煙や飲酒など、さまざまな要因が交錯して血圧を不安定にしています。

  • 塩分の過剰摂取や肥満などで血圧がもともと高めの状態
  • 慢性的な睡眠不足により交感神経が過剰に活性化しやすい
  • 運動不足で血管や心肺機能の柔軟性が低下
  • 喫煙習慣で血管が収縮しやすい状態が続く

以下の表は、白衣高血圧と生活習慣の関連を示しています。

生活習慣血圧への主な影響改善のアプローチ
塩分過多水分量増加→血管・心臓に負担減塩生活、ミネラルバランスを整える
高カロリー摂取体重増加→血管抵抗が増すカロリーコントロール
睡眠不足自律神経が乱れやすい規則正しい就寝時間
運動不足血管拡張機能や心肺機能低下適度な有酸素運動
喫煙血管収縮や動脈硬化リスク増加禁煙支援やニコチン置換療法など

白衣高血圧の症状

白衣高血圧の症状は、高血圧特有のものと似ていますが、はっきりした自覚症状を訴えにくいことが多いです。診察室で測定した時のみ数値が高い状態で、日常的な症状が明確に表れない場合もあります。

それでも注意を怠ると本当の高血圧へ移行してしまうおそれがあるため、些細な兆候を見逃さないことが重要です。

自覚症状と他覚症状の違い

白衣高血圧を抱える方は、測定時こそ血圧が高めに出ても、普段は正常値に近いことが多いです。そのため、日常的な頭痛やめまいといった高血圧の典型的な症状が出にくく、本人も放置してしまいやすい特徴があります。

  • 頭痛や肩こりなど、高血圧が疑われる症状が常には出ない
  • 動悸や息切れも、一時的な緊張でしか感じない
  • 自宅測定では何事もない数値になるため、油断しがち

しかし、測定時の数値が高いということは、何らかの理由で血管に強い負担がかかっている可能性があるため、こまめなケアが重要です。

一過性の頭痛やめまい

緊張状態に陥ったときに、一過性の頭痛やめまいが起きる方もいます。医療機関での測定時は特に精神的ストレスが大きく、血管が瞬間的に収縮して急な血圧変動を起こすことが一因となります。

ほとんどの場合、診察終了後に落ち着くと症状が消えることも珍しくありません。

  • 強い不安感による交感神経の急激な高まり
  • 血圧の急上昇に伴うめまいやふらつき
  • 終了後は副交感神経が働いて速やかに収まる

以下の表に、白衣高血圧時に見られる一過性症状をまとめました。

症状出やすい状況対応策
一時的な頭痛血圧が急激に上がった瞬間深呼吸やリラクセーション
めまい・ふらつき測定時の姿勢や緊張感が強まったとき横になって体を安定させる
急な動悸・息切れ不意な心理的ストレスカウンセリングや対話
冷や汗・手足の震え初めての受診や馴染みのない施設に行った時時間をかけて慣れる努力

精神的ストレス症状との関連

白衣高血圧と精神的ストレスは、相互に影響を与え合います。病院や医師への不安感が大きいほど血圧は上昇しやすく、数値が高かったことでさらに不安が強まるという悪循環が起こります。

  • 過去の診療体験でトラウマを抱えている
  • 医療行為そのものに苦手意識が強い
  • 日常生活でのストレスが多く、緊張を解ける機会が少ない

このような状態を長く続けると、普段から交感神経が優位になりやすい体質になってしまうため、心身両面からのアプローチが大切です。

生活の質への影響

白衣高血圧そのものは、日常的な生活の質に大きな支障をきたしにくい傾向があります。しかし、病院での診察に強い苦手意識を持つと、必要な医療サービスを受ける機会を逃してしまうリスクがあります。

  • 健康診断を敬遠して重大な疾患を見逃しやすい
  • 小さな不調を後回しにして慢性化させる
  • ストレスが引き金となり、ほかの病気を誘発する可能性

白衣高血圧を軽く見ず、適度にセルフチェックや医療機関の利用を続けることが健康維持にとって重要です。

白衣高血圧の原因

白衣高血圧の原因は、物理的・精神的・環境的な要因が複合的に絡んでいます。特に、心因性の緊張や環境の変化に対する過敏さが大きな要因となるケースが多いです。

ここでは主な要因を整理し、それぞれの対策や対応のヒントを探ってみましょう。

心因性の緊張

病院に入った瞬間から脳が「特別な空間」と認識し、交感神経が優位になりやすくなる人は少なくありません。白衣や医療器具など、普段と異なる視覚的情報や匂いによって、不安や緊張が増幅されます。

  • 過去に痛い検査を受けたトラウマ
  • 病名告知への恐怖
  • 医師や看護師とのコミュニケーションへの苦手意識

心因性要因を和らげるために、緊張を解消する工夫が有効です。

以下のリストは、精神的な緊張を和らげる具体策の一例です。

  • 来院前にゆっくり深呼吸や瞑想を行う
  • 落ち着く音楽を聴きながら待合室で待つ
  • 緊張を軽減してくれる同伴者を連れていく
  • 医療スタッフに自分の不安を率直に伝えておく

環境要因

医療機関特有の消毒液や薬品の匂い、機械音、人の話し声などは、緊張を高める要因となりやすいです。さらに、狭い待合室や長時間の待ち時間がストレスを増幅します。

環境要因ストレスを感じる理由対応策・工夫
消毒液の匂い病気や医療行為を連想しやすいマスクやアロマを活用
長い待ち時間不安が長引いて落ち着かない予約の工夫、待ち時間の分散化
機械音慣れない音に驚きや不安を感じる音楽プレイヤーなどで対策
混雑状況他人の不安そうな様子に影響されることもオフピーク時間帯の受診を検討

遺伝的・体質的要因

高血圧の家族歴がある方は、血管や自律神経が高血圧に傾きやすい遺伝的傾向を持つ可能性があります。病院に対して特に強い緊張を覚える性格特性と合わさると、白衣高血圧として表面化しやすくなります。

また、体質的に交感神経が活発になりやすい人や、代謝異常のある方も要注意です。

  • もともと心拍数が高め
  • 体温調節が苦手で、外界の刺激に敏感
  • 血管が収縮しやすい体質

ライフスタイルとの相互作用

夜勤の多い仕事やストレスフルな生活を続けていると、血圧自体が不安定になりやすいです。睡眠不足や食習慣の乱れがある状態で病院に行くと、一時的に血圧が高くなりやすくなります。

  • 深夜勤務や不規則勤務の方は日常的に交感神経が過敏
  • ファストフード中心の食生活は血圧を高める要因となる
  • アルコールやカフェインの過剰摂取が交感神経を刺激

以下のリストは、生活習慣が白衣高血圧に及ぼす主な影響です。

  • 不規則な生活リズムが体内時計を乱し、血圧調節機能を低下させる
  • 食塩を多く含む食事で血圧が常に上がりやすい
  • 運動不足が交感神経と副交感神経のバランスを崩す

白衣高血圧の検査・チェック方法

白衣高血圧を正しく判断するには、診察室での測定だけでなく、自宅や職場などリラックスできる場所での血圧測定結果を総合的に比較することが重要です。

これによって、実際に高血圧が疑われるのか、一時的なストレス反応なのかを見極めやすくなります。

自宅血圧測定の重要性

家庭用の血圧計を活用して、朝起床時や就寝前など決まったタイミングで測定すると、より正確な血圧のトレンドを把握できます。自宅血圧が正常範囲でも、医療機関では高くなる場合は白衣高血圧の可能性が高いです。

  • 毎日同じ時間帯に2~3回測定し、その平均値を基準とする
  • 正しい姿勢で測定し、5分ほど安静にしてから計測を始める
  • 血圧計の精度も定期的にチェックする

以下の表に、自宅血圧測定時の基本的なポイントをまとめています。

測定のタイミング安静にする時間推奨される姿勢メモの取り方
起床直後5分椅子に座り背もたれを使う日付・時間・数値を記録
就寝前5分リラックスした姿勢その日の体調も一緒にメモ
食後1時間後5分できるだけ安定した姿勢食事内容も簡単に記載

24時間血圧モニタリング(ABPM)

白衣高血圧をより詳しく評価する場合、24時間血圧モニタリングを実施することがあります。小型の血圧計を装着して、日中や就寝中も定期的に自動で血圧を記録し続けるため、診察室では分からない時間帯の血圧変動も把握できます。

  • 日常生活を送る中でのリアルタイムな血圧データを取得
  • 夜間血圧や早朝血圧の高さを検出しやすい
  • 白衣高血圧か真の高血圧かを精密に判別できる

血圧手帳の活用

自宅や職場、外出先など、測定場所を問わず血圧を測定できる機会があれば、その都度手帳やスマートフォンのアプリに記録しておくことをおすすめします。次の外来受診時に、医師との情報共有がスムーズになります。

  • メモ内容:測定日、時間、血圧値、脈拍、体調や気分
  • 1週間ごとの平均値を出しておくと管理がしやすい
  • 測定忘れを防ぐために、通知を設定しておく

以下のリストに、血圧手帳を続ける上でのコツを挙げます。

  • 1日1回でもよいので必ず継続する
  • 忙しい日ほど測定を忘れやすいので、スマホのアラームを活用する
  • シンプルな書式で記録し続けると長続きしやすい

医療機関での追加検査

必要に応じて、より詳しい検査を行うケースがあります。心電図や心エコー検査、血液検査などを組み合わせることで、高血圧による合併症リスクを評価したり、高血圧の原因が腎臓や内分泌系にないかを確認したりします。

検査名主な目的利点
心電図不整脈や心筋虚血の有無を確認動悸や胸痛などの関連性を推測できる
心エコー検査心臓の構造・機能をリアルタイムで評価高血圧による心臓肥大をチェックしやすい
血液検査腎臓・肝臓機能やホルモンバランスを調べる二次性高血圧の可能性を探れる
尿検査タンパク尿や血尿の有無を確認腎機能の異常を早期に把握

治療方法と治療薬について

白衣高血圧は、実際に持続的な高血圧を示すわけではないため、通常の高血圧治療薬をすぐに導入しないことも多いです。

しかし、長期的に観察して真の高血圧へ移行する兆候がある場合や、生活習慣改善だけでは十分に血圧を管理できない場合は、治療薬の選択が検討されます。

生活習慣改善の優先

白衣高血圧と診断された方の多くは、まず生活習慣の見直しやストレスケアを中心に行います。大幅な血圧コントロールが必要な状態でない限り、薬より先に生活習慣改善の効果を確認することが一般的です。

  • 減塩やバランスの取れた食事
  • 定期的な有酸素運動
  • 十分な睡眠時間の確保
  • ストレスを緩和する趣味やリラクセーションの導入

以下のリストで、白衣高血圧対策として推奨される運動例を紹介します。

  • ウォーキングや軽いジョギング
  • 自宅でできるストレッチやヨガ
  • スイミングなど水中運動
  • 階段の昇り降りなどの軽い負荷運動

抗高血圧薬を用いる場合

白衣高血圧でも、診察室の数値が高いだけでなく、自宅やABPMでもやや高めの傾向が続く場合は、本態性高血圧の初期段階に入っている可能性があります。

このようなケースでは、医師が総合的に判断して抗高血圧薬を処方することがあります。主な薬には、以下のような種類があります。

薬の種類主な作用注意点
カルシウム拮抗薬血管を拡張して血圧を下げるめまいや動悸が起きる可能性がある
ACE阻害薬血管収縮ホルモンの産生を抑制まれにせきが出る場合がある
ARB血管収縮ホルモンの受容体をブロック腎機能に配慮しながら処方を検討する必要がある
β遮断薬心拍数を抑えることで血圧をコントロール徐脈や倦怠感に注意する
利尿薬体内の余分な水分や塩分を排泄して血圧を下げる脱水や電解質異常に気を付ける必要がある

処方のタイミングと方針

白衣高血圧では、全員が薬を飲むわけではありません。生活習慣改善を試みても血圧が安定しない場合や、合併症リスクを避けたいケースに限り、慎重に薬を導入します。

医師は患者の年齢・性別・家族歴・他の病気の有無などを踏まえて、薬の種類や投与量を検討します。

  • 血圧以外のリスク要因(肥満、脂質異常症、糖尿病など)の有無
  • 既存の病歴(腎臓病、心臓病など)
  • 過去に薬で副作用が起きた経験の有無
  • 患者のライフスタイルや仕事の状況

心理的アプローチの併用

薬物治療に頼りすぎず、患者本人が緊張をコントロールできるようになる取り組みも並行して行います。

必要に応じて、カウンセリングやリラクゼーション法の指導を受けると、診察室での過度な緊張を軽減し、血圧上昇を抑える効果が期待できます。

白衣高血圧の治療期間

白衣高血圧の治療は、一概に「○か月で完了」という形にならない場合が多いです。長期にわたって血圧をモニターしながら、生活習慣改善やストレスケアを続けていきます。

ここでは治療期間の目安と、その間に意識したいポイントについてお伝えします。

長期観察が基本

白衣高血圧は、診察室以外で正常血圧であれば、数か月から1年程度、生活習慣の見直しやストレスマネジメントを中心に行いながら、定期的に受診して経過を見ることが一般的です。

すぐに薬物治療を開始しない場合でも、定期的なチェックが大切です。

  • 半年から1年ほどで生活習慣改善の効果を評価
  • 高血圧傾向が強くなれば、薬物治療に切り替えを検討
  • 定期的に血圧手帳を医師に提示してフィードバックを得る

下記の表は、白衣高血圧の経過観察でよく見るタイムライン例です。

期間実施内容コメント
診断直後~3か月生活習慣指導・自宅血圧の徹底測定緊張の要因を特定し、対策を始める
3か月~6か月改善の成果を評価、必要に応じて検査や薬を検討変化が少ない場合は追加対策を検討
6か月~1年定期受診で血圧・合併症リスクを再評価生活習慣の定着が進んでいるかを確認
1年以降状況に合わせて継続的にケアを行う真の高血圧への移行がないかを確認

ライフスタイル変更に必要な時間

減塩食や運動習慣など、ライフスタイルを大きく変えるには、それなりの時間と意志が必要です。無理せず少しずつ改善していくことで、長期的な血圧安定が期待できます。

  • 塩分摂取量を1日5~6g程度に抑える習慣づくり
  • 週に3~4回、20分~30分程度の有酸素運動を続ける
  • ストレスを感じたときのリラクセーション法を体得する

以下のリストに、生活習慣改善を継続するコツを挙げます。

  • 小さな目標を設定し、達成したら新たな目標を追加
  • 目標や成果を家族や友人と共有し、モチベーションを維持
  • 失敗しても再挑戦する柔軟な姿勢を持つ

心理的要素を考慮した期間調整

白衣高血圧の背景には、不安症やうつ傾向などの心理的要素が潜んでいることもあります。

生活習慣を整えるだけでは不十分な場合、カウンセリングや精神科・心療内科との連携でより長い期間をかけて総合的にサポートすることが望ましいです。

薬を使う場合の目安

薬を使い始めた後のフォローアップでは、2週間から1か月程度のスパンで診察し、効果や副作用を確認します。

適切な薬と用量が見つかり、血圧が安定すれば、以後は1~3か月おきに受診するケースが多いです。治療期間が長引いても焦らず、医師と相談しながら続けることが重要です。

副作用や治療のデメリットについて

白衣高血圧そのものは、一時的な血圧上昇であるため、必ずしも薬の服用が必要になるわけではありません。しかし、薬を服用する場合には、一般的な高血圧治療薬と同様に副作用やデメリットを理解しておくことが大切です。

副作用の種類と頻度

高血圧治療薬の種類によって、発生しやすい副作用は異なります。

軽度のめまいや動悸などから、まれに重度のアレルギー反応が起こる場合もあり得ます。頻度は薬の種類や個人差によって変わりますが、主な副作用には以下のようなものがあります。

  • カルシウム拮抗薬:顔のほてり、頭痛、動悸
  • ACE阻害薬:空咳、稀に重度のアレルギー反応
  • ARB:めまい、腎機能の低下、カリウム過多
  • β遮断薬:倦怠感、息切れ、徐脈
  • 利尿薬:脱水、電解質バランスの崩れ
副作用の種類具体的症状対応策
めまい・立ちくらみ血圧低下が急激に起こるゆっくり立ち上がるなど注意
動悸・息切れ心拍数や呼吸数が変動して苦しくなる医師に相談し薬変更を検討
せき・のどの刺激感ACE阻害薬などで起こりやすい別の薬への切り替えを検討
だるさ・疲労感血圧が安定してくると軽減する場合が多い体調メモを取り、持続なら受診を

デメリットとリスク

白衣高血圧自体は「一時的な高血圧」に過ぎず、日常の血圧が正常ならば、薬のリスクを上回るメリットがあるとは限りません。必要以上に薬を服用すると、以下のようなデメリットが生じる可能性があります。

  • 薬の副作用によるQOL(生活の質)の低下
  • コスト負担(薬代)
  • 血圧が下がりすぎて、めまいや立ちくらみなど低血圧症状を誘発

薬物依存への懸念

高血圧治療薬は長期投与になることが多く、一度服用を始めると「ずっと飲まなければならないのでは」と感じる方もいます。

医師は患者の状態を見極めて減薬や中止を検討するため、適切なフォローアップを受けながら薬との付き合い方を決めることが大切です。

副作用を軽減する工夫

薬の副作用を軽減するためには、医師や薬剤師とのコミュニケーションが重要です。症状を早めに伝え、別の薬への切り替えや用量調整などを相談しましょう。生活習慣の改善を継続し、薬への依存度を下げる努力も必要です。

白衣高血圧の保険適用と治療費

お読みください

以下に記載している治療費(医療費)は目安であり、実際の費用は症状や治療内容、保険適用否により大幅に上回ることがございます。当院では料金に関する以下説明の不備や相違について、一切の責任を負いかねますので、予めご了承ください。

白衣高血圧の治療費は、その人が実際に「高血圧症」と診断されるかどうかや、受ける検査・治療内容によって変わります。

保険適用の範囲や自己負担額は、患者さんの年齢や加入している保険の種類によって異なるため、疑問があれば医療機関や保険者に確認することが大切です。

保険適用の範囲

白衣高血圧単独の診断では、ただちに高血圧症と決まるわけではありません。とはいえ、血圧測定や医師の診察、必要な検査(心電図、血液検査など)を受ける場合は、通常の診療行為として健康保険が適用されます。

治療・検査項目保険適用の有無費用の目安(保険適用時)
血圧測定健康保険適用基本診察料に含まれる
心電図・胸部X線検査多くの場合保険適用数百~数千円
24時間ABPM条件付きで保険適用数千円~1万円程度
通院時の診察料健康保険適用初診料・再診料が発生

自由診療との違い

一部の先進的な検査や特別なカウンセリングなどは、保険外診療となる場合があります。

白衣高血圧の診断・治療においても、最新の機器を用いた特殊検査などは自由診療扱いとなり、全額自己負担になることがあるので注意しましょう。

治療薬の費用

白衣高血圧でも薬が処方された場合は、通常の高血圧治療薬と同様に健康保険が適用されます。自己負担割合(1割~3割)に応じて月々の薬代を支払う形になります。薬の種類によってはジェネリック医薬品を選ぶことで費用を抑えられます。

以下のリストに、薬代を抑える工夫を挙げます。

  • ジェネリック医薬品を希望して処方してもらう
  • 複数の薬を飲んでいる場合は服用時間をまとめて通院回数を減らす
  • 病院から処方される薬の他に、薬局などでの自主的なサプリの重複を避ける

その他の経済的支援

高血圧が進行して合併症リスクが高まった場合、特定の条件で医療費助成制度を利用できることもあります。所得や年齢、障害の有無などによって異なるため、自治体の窓口やソーシャルワーカーに相談すると安心です。

  • 高額療養費制度を活用する
  • 自治体の独自制度(重度障害者医療など)
  • 会社員や公務員なら、健康保険組合独自の付加給付

白衣高血圧であっても、継続して通院するとその分の費用負担が生じます。保険や公的制度を上手に活用しながら、無理のないペースで治療を続けることが健康維持のカギとなります。

以上

参考文献

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大垣中央病院・こばとも皮膚科

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