低血圧とは、血圧が一般的な基準よりも低く保たれている状態を指します。めまいや立ちくらみなどの症状に加え、日常生活においてエネルギー不足を感じることも少なくありません。
原因としては体質的な要因やホルモンバランスの乱れなどが関わり、治療においては生活習慣の改善と薬物療法を組み合わせることが大切です。
症状の程度や体質によって必要な治療期間は異なりますが、無理に放置せず適切なアプローチを取ることが望ましいでしょう。
病型
低血圧には複数のタイプが存在します。症状が慢性的に続くものや、起き上がったときだけ血圧が大きく低下するものなど、人によってさまざまです。
生活習慣の影響も受けやすいため、自分に合った病型を理解することが重要です。
本態性低血圧
本態性低血圧は特定の原因がはっきりしないタイプの低血圧です。若年層や女性に比較的多いといわれ、長年にわたって低めの血圧が続きます。
軽度なら健康上の問題が少ない場合もありますが、疲れやすい、意欲が低下しやすいなどの不快な症状を感じることがあります。
日常生活では、適度な運動やバランスの良い食事など、生活習慣を整えることが大切です。起床時にゆっくりと体を起こす、温度差の激しい場所を避けるなど、簡単な工夫も必要です。
起立性低血圧
起立性低血圧は、ベッドや椅子から立ち上がったときに急に血圧が下がり、めまいやふらつきを起こす状態です。
血管の収縮や心臓の働きなど、循環調節の仕組みがスムーズに働かずに起きることが多く、高齢者や脱水傾向のある人では特に注意が必要です。
急に立ち上がる動作を避け、少しずつ体を動かすことが予防に役立ちます。体の水分量を意識して、こまめに水分補給を行うことも有効です。
二次性低血圧
二次性低血圧は、他の疾患や服用薬によって血圧が低下するタイプです。
例えば甲状腺機能低下症や心不全などの病気、または降圧薬や抗うつ薬などによって血圧が下がることがあります。原因となる病気に対する治療が重要であり、医師の判断に基づいて治療方針を決定します。
原因を特定しなければ、いつまでも血圧が低い状態が続いて生活の質が落ちる可能性があります。体調の変化を感じたら、できるだけ早く医師に相談することが望ましいです。
食後低血圧
食後低血圧とは、食事を摂った後に血圧が急激に下がる症状を指します。主に高齢者で多く見られ、食後の消化管に血液が集中しやすくなるために生じます。食後に強い眠気やだるさを感じることが特徴です。
食事の量や内容を調整するだけで症状が軽くなる場合があります。例えば血糖値が急上昇しにくい食事を意識したり、食後すぐには動作を急がない工夫などが効果的です。
次の整理で主な病型をまとめます。
分類 | 特徴 |
---|---|
本態性低血圧 | 特定の原因が明確でなく、生活習慣の調整が中心になる |
起立性低血圧 | 立ち上がった際にめまいなどを起こしやすい |
二次性低血圧 | 他の疾患や薬剤が原因となる |
食後低血圧 | 食後に血圧が低下してだるさなどを感じやすい |
低血圧の病型はひとつに絞られるとは限りません。複数の要因が重なって血圧が安定しにくいこともあるため、自己判断せず医療機関で相談することが望ましいです。
- 血圧が低くても症状が軽い場合は経過観察が可能
- めまいやふらつきが強いときは早期受診を検討
- ほかの病気が原因で低血圧が生じている可能性もある
- 食事内容や服薬状況を把握し、早めに対策したほうが安心
十分な情報を得るには、医師の診察や検査によって正確な診断を受けることが重要です。
低血圧の症状
低血圧においては、全身の血液循環が十分でない可能性があり、さまざまな症状が現れることがあります。体質や生活リズムによっては症状に個人差がありますが、疲れやすさやエネルギー不足を感じやすい点は共通しやすい傾向です。
めまいや立ちくらみ
もっとも代表的な症状はめまいや立ちくらみです。特に起床直後や長時間座ってから立ち上がったときなど、急な姿勢変化で血圧が追いつかず、頭に十分な血液がいきわたらないことが原因です。
転倒のリスクがあるので、周囲に手をついて安全を確保しながら少しずつ体を動かすとよいでしょう。
倦怠感や疲れやすさ
低血圧の人は日常的に倦怠感や疲労感を覚えやすいといわれます。
血流が十分に巡っていないと感じると、体を動かしたり脳を働かせるための酸素や栄養が不足しやすくなり、結果的に体が重だるくなりやすいです。十分な休息や適切な水分・塩分補給が必要です。
頭痛や肩こり
頭痛や肩こりが強く出るケースもあります。これは体が血行不良を起こしている可能性があるからです。
緊張型頭痛に似た鈍い痛みとして自覚することが多いとされ、長時間同じ姿勢を続ける環境で症状が強くなることがあります。適度なストレッチや姿勢の見直しも生活の質を高める要素になります。
眠気や集中力の低下
血圧が低いと脳への血流が少なくなりやすく、眠気や集中力の欠如を感じやすくなります。学業や仕事に影響しやすく、作業効率の低下につながることもあります。
普段からこまめに休憩を取り、深呼吸やストレッチなどで血流を促す習慣を取り入れると改善につながります。
次の一覧に代表的な症状と特徴を整理します。
症状 | 主な特徴 |
---|---|
めまい | 姿勢を変えた際に血圧が追いつかず感じやすい |
倦怠感 | 体がだるく、疲れやすい |
頭痛・肩こり | 血行不良が影響し、鈍い痛みが継続することも |
眠気・集中力低下 | 脳への血流不足により注意力が落ちやすい |
これらの症状は単体で見ると大きな問題に感じないかもしれませんが、継続すると生活の質が下がり、仕事や家事、学業などへ支障をきたす場合があります。
- 朝起きづらく、午前中に活動意欲を感じにくい
- 軽い立ち上がりでフラッとすることが多い
- 気温差に敏感になりやすく、寒暖差で体調を崩すことがある
- 食後に眠気が強く、活動効率が低下しがち
上記に当てはまる項目が増えてきた場合は、早めに受診することを検討するとよいでしょう。
低血圧の原因
低血圧は単に「血圧が低い」だけでなく、生活リズムやホルモンバランス、疾患などさまざまな要因が絡んで生じます。原因によって適切な対策が変わるため、自分の体がどのような影響を受けているかを知ることが重要です。
体質的な要因
遺伝的に血圧が低めになりやすい家系や、もともと血管の収縮力が弱いなど、体質が関係している場合があります。子どもの頃から血圧が低めであった人は、ある程度年齢を重ねても低血圧傾向が続きやすいです。
ただし体質であっても、適切な運動や食事管理などで状態をコントロールしやすくなります。
ホルモンバランスの乱れ
甲状腺ホルモンや副腎皮質ホルモンなど、ホルモンが正常に分泌されない場合は血圧が低下することがあります。特に甲状腺機能低下症や副腎不全などがあると、血圧調節にかかわるシステムがうまく働かず、低血圧が慢性化しやすいです。
倦怠感や体重増加など、ほかの症状が同時に出ることもあります。
不適切な生活習慣
慢性的な睡眠不足や栄養バランスの偏り、ダイエットによるエネルギー不足などの生活習慣が原因で血圧が低下するケースもあります。塩分摂取量が極端に少ない人や、水分補給が不足している人も注意が必要です。
また、ストレスが高い状態だと自律神経に影響を与え、血圧調整機能が乱れることがあります。生活リズムが不規則になりがちな方は意識的にリラックス方法を取り入れると改善が期待できます。
他の病気や薬剤の影響
心不全や甲状腺機能低下症、貧血などの病気によって血圧が低くなりやすい状態があります。また降圧薬や抗不整脈薬などを服用している場合は、血圧のコントロールが行き過ぎて低血圧に陥ることがあります。
こうした病気や薬剤の影響が疑われるときは、医師や薬剤師に相談することが大切です。むやみに薬を自己判断で中断すると、別の問題を引き起こす可能性があるので注意してください。
次の表で主な原因を一覧化します。
原因 | 具体例 |
---|---|
体質的な要因 | 血管の収縮力が弱い、遺伝的傾向 |
ホルモンバランスの乱れ | 甲状腺機能低下症、副腎不全 |
不適切な生活習慣 | 睡眠不足、極端なダイエット、偏った栄養 |
他の病気や薬剤の影響 | 心不全、降圧薬の過剰効果 |
それぞれの原因が複合的に作用している場合も少なくありません。自分の生活を振り返り、血圧が低くなる要因を探ることが早期改善の手がかりになります。
- 疲れが慢性化していて休んでも回復しにくい
- 水分を意識して摂っていない
- 塩分を極端に制限している
- 日中と就寝前の生活リズムに大きな乱れがある
以上に心当たりがある人は、生活習慣の見直しから始めると状態が改善しやすくなります。
検査・チェック方法
低血圧かどうかを判断するには、まずは家庭での血圧測定や医療機関で行う検査が役立ちます。血圧だけでなく、他の疾患との関連性も把握することが血圧改善に欠かせないポイントです。
家庭での血圧測定
家庭で血圧を測る場合は、安静にした状態で計測を行うことが基本です。腕を心臓の高さに保ち、深呼吸をしてリラックスした後、測定機器を使います。朝と夜の測定を続けると、ある程度の変動パターンがわかるでしょう。
自宅で血圧を測定する際、測定値を記録しておくと医療機関を受診する際に役立ちます。
医療機関での血圧測定
医師や看護師が行う血圧測定は、正確な結果が得られやすい方法です。医療機関では、ベッド上や座位で測定するほか、起立性低血圧を疑う場合は立ち上がった状態で血圧を測り、変化を確認します。
血液検査や心電図、場合によってはホルモン検査も実施して、原因を広く調べます。
起立試験(ヘッドアップティルト試験)
起立性低血圧や自律神経の失調を疑う場合は、専用の装置を使った起立試験を行います。患者さんをベッドに固定した状態で角度を変化させ、血圧や心拍数の変化を確認するものです。
血圧が大きく変動するようであれば、循環調節機能に何らかの問題があると推測されます。
24時間血圧モニタリング
携帯型の血圧測定器を装着して、日常生活を送りながら24時間血圧を記録する方法もあります。朝・昼・夜の血圧変動を詳細に把握できるため、夜間から朝方にかけて血圧が低下するタイプかどうかを確認しやすいです。
高血圧の検査で用いられることが多いイメージですが、低血圧傾向の人にも有用です。睡眠時の血圧が極端に低くなるケースや、日中の活動量と血圧の関連を調べる場合に活用できます。
次の一覧で主なチェック方法と特徴をまとめます。
チェック方法 | 特徴 |
---|---|
家庭での血圧測定 | 自宅で毎日同じ条件下で継続的に測定できる |
医療機関での測定 | 専門家のサポートがあるため、より正確な数値を期待できる |
起立試験 | 立ち上がったときの血圧変動や自律神経機能を確認 |
24時間モニタリング | 日常生活を通じた血圧変動を詳細に把握可能 |
検査を受ける際は、医師に普段の生活や症状を正直に伝えることが大切です。状況を正確に把握してもらうことで、適切なアドバイスや治療方針を得やすくなります。
- 朝晩の血圧記録をノートやスマホアプリに残して医師へ提示
- めまいや倦怠感の発生時刻や状況も合わせて書き留める
- 薬の服用状況、運動習慣、食事の傾向も一緒に記録
- 血圧以外に気になる症状があれば具体的に伝える
情報をできるだけ多く集めることが早期改善の近道になります。
低血圧の治療方法と治療薬について
低血圧の治療は、生活習慣の改善と薬物療法の両面からアプローチすることが一般的です。
どの方法を選ぶかは病型や原因、症状の強さなどによって異なり、一人ひとりの体質やライフスタイルに合わせて柔軟に組み合わせる必要があります。
生活習慣の改善
低血圧傾向の人は、まず日常生活のリズムを整えることを意識してください。
十分な睡眠時間を確保し、朝起きる時間を一定にするだけで体内リズムが整いやすくなります。過度なダイエットは避け、適度な塩分と水分補給を行うこともポイントです。
軽い運動を習慣にすると心肺機能が高まり、血圧を上げやすい体づくりにつながります。ウォーキングや軽いストレッチなら無理なく継続しやすいでしょう。
弾性ストッキングの活用
下肢に弾性ストッキングを着用すると、血液が下半身にたまるのを防ぎ、全身への血流を保ちやすくします。長時間の立ち仕事や通勤で立ちっぱなしになる人などは、着用するだけでめまいの回数が減ることがあります。
サイズや着圧の度合いは専門スタッフと相談して決めると良いでしょう。
薬物療法
生活習慣の改善では十分な効果が得られない、あるいはもともとの疾患が原因で低血圧が深刻な症状を引き起こしている場合は、医師が薬物療法を検討します。血管を収縮させる薬剤や、心拍数を調整する薬剤など、症状に合わせて選択します。
甲状腺機能低下症などが原因の場合は、ホルモン製剤を投与することで血圧が安定することがあります。また副腎皮質ホルモンの不足によって起きているときは、ステロイド薬を検討します。
適切な塩分摂取
極端に塩分を制限すると、低血圧傾向の人はさらに血圧が下がりやすくなります。医師や管理栄養士と相談しながら、適度な塩分摂取を心がけることも治療のひとつです。
ただし高血圧や腎臓病、心臓病を併発している場合は塩分過多に注意が必要になります。
次の表で代表的な治療法と特徴をまとめます。
治療法 | 特徴 |
---|---|
生活習慣の改善 | 適度な運動、規則正しい睡眠、栄養バランスの確保など |
弾性ストッキング | 下半身に滞留する血液量を減らし、血圧を維持しやすくする |
薬物療法 | 血管収縮薬や心拍数調整薬、ホルモン製剤など症状に応じて選択 |
適切な塩分摂取 | 必要に応じて塩分を見直して血圧低下を防ぐ |
生活習慣の改善と薬物療法を組み合わせると効果が高まりやすいですが、医師の指示に従って少しずつ始めると体への負担が小さくなります。
- 朝の起床時に急に立ち上がらず、ベッド上で軽い足の運動
- 昼食後の眠気が強い場合は短時間の仮眠か軽いストレッチ
- 夏場や運動時の水分補給でめまい予防
- 副作用や効果の現れ方を観察しながら薬の調整
地道な取り組みを続けることが、低血圧改善のカギとなります。
低血圧の治療期間
治療期間は個人差が大きく、短期で改善する場合もあれば、長期的なケアが必要なケースもあります。原因や症状の程度、生活習慣の変化による効果の現れ方などが関係してきます。
生活習慣の見直しによる期間
生活習慣の改善だけで血圧が安定する場合は、数週間から数か月ほどで効果を実感する人が多いです。
しかし完全に症状がなくなるまでにはさらに時間がかかることがあり、数か月から半年程度は継続的に取り組む姿勢が必要です。食事や睡眠など、すぐに変えられる部分から着手すると始めやすいです。
原因疾患がある場合
原因となる疾患が明確な場合は、その病気の治療期間によって低血圧の回復時期も変わります。
例えば甲状腺機能低下症の治療では、ホルモン剤の投与によって症状が徐々に改善しますが、ホルモンバランスが安定するまでには一定の時間が必要です。
心不全や貧血など、治療に長期間を要する疾患では、低血圧の改善にも長期的なケアが必要になります。
薬物療法による期間
血圧を上げる薬物療法を開始すると、速やかに症状がやわらぐケースもあります。ただし薬の効果が見られても、服薬を中断すると再び低血圧に戻る可能性があります。
自己判断でやめず、医師の指示に従って徐々に減量したり、別の薬に切り替えたりすることが重要です。
観察と調整の継続
症状が改善しても、再発や別の原因による低血圧のリスクはゼロではありません。定期的に血圧を測定し、めまいや倦怠感が再度目立ちはじめたら医師に相談すると、悪化を防ぎやすくなります。
特に季節の変わり目や生活リズムが変化したときは注意が必要です。
次に治療期間の目安をまとめます。
原因・治療の種類 | おおよその期間 |
---|---|
生活習慣の改善のみ | 数週間~半年程度 |
原因疾患の治療が必要 | 原因疾患の治療期間に左右される |
薬物療法 | 開始後すぐ効果が出る場合もあるが調整が必要 |
観察と調整の継続 | 血圧の安定後も定期的なチェックが大切 |
焦らずに続けることが低血圧改善のポイントとなります。途中で思うような効果が感じられなくても、医師に相談しながら計画を見直すことをおすすめします。
- 治療初期には定期的な診察と血液検査などを受ける
- 自宅での血圧記録を継続して医師と情報共有
- 症状の改善が感じられても一定期間は経過観察
- 季節や環境の変化に応じて生活習慣を柔軟に調整
長いスパンで考えることで、症状の改善が持続しやすくなります。
低血圧薬の副作用や治療のデメリットについて
薬物療法は低血圧の症状を和らげる効果が期待できますが、一方で副作用や服薬管理の手間など、デメリットも存在します。こうした点を十分に理解し、自分に合った治療を選択することが重要です。
血圧上昇による負荷
血管収縮薬など、血圧を上昇させる薬は心臓や血管に負荷をかける可能性があります。血圧が急激に上がりすぎると頭痛や動悸が強くなる場合があります。
高齢者や心臓病のリスクがある人は、慎重に薬の種類や投与量を選ぶ必要が出てきます。
消化器症状やアレルギー
副作用として吐き気や下痢などの消化器症状が出ることがあります。まれにアレルギー反応を示す人もいますので、異変を感じたら医師または薬剤師に相談してください。
薬の種類によっては、別の薬へ切り替えることで改善する場合があります。
他の薬との飲み合わせ
降圧薬や抗不整脈薬、精神科領域の薬など、血圧に影響を与える可能性のある薬をすでに服用しているときは、飲み合わせによる相互作用に注意します。
誤った組み合わせによって予期せぬ血圧の変動が起こる可能性があります。医師に現在使用中の薬をすべて伝えることが大切です。
投薬の継続や通院の負担
低血圧の改善にはある程度の期間が必要なことが多く、投薬も長期間続ける可能性があります。定期的な通院で経過観察を行う必要もあるため、時間的・経済的負担が増すことが考えられます。
しかし、症状をコントロールすることで日常生活の質が向上するならば、適切な治療の継続は大いに価値があるといえます。
次の表で副作用やデメリットと対処法をまとめます。
副作用・デメリット | 具体例 | 対策・対処 |
---|---|---|
血圧上昇による負荷 | 動悸、頭痛 | 投与量を調整 |
消化器症状やアレルギー | 吐き気、下痢、じんましん | 薬の種類を変更、医師相談 |
他の薬との飲み合わせ | 相互作用で血圧が乱高下する可能性 | 全部の服薬状況を伝達 |
投薬や通院の負担 | 時間や費用がかかる | 計画的な通院と治療プランの検討 |
薬物療法をスタートするときは、メリットとデメリットを医師や薬剤師とよく相談してください。
- 副作用が強く出たときはすぐに医療機関へ連絡
- 少しでも不安や疑問が生じたら遠慮せずに質問
- 自己判断で服薬を中断することは避ける
- 生活環境が大きく変わった場合は改めて治療方針の見直し
正しい情報を収集しながら、副作用をできるだけ少なく抑える工夫が必要です。
保険適用と治療費
低血圧の治療は、原因や症状の強さによって検査方法や治療内容が異なります。治療費は保険適用になるケースが多いですが、自己負担の割合や治療期間の長さなどにより個人差があります。
適切な医療保険や公的制度を活用することで、費用負担を軽減できる場合があります。
外来診療の費用
低血圧で受診した場合、基本的な血圧測定や問診、血液検査、心電図検査などは保険適用範囲に入ることがほとんどです。原因疾患が疑われるときには追加で甲状腺ホルモン検査、超音波検査などが必要となり、その分の費用がかかります。
自己負担割合は年齢や健康保険の種類によって変わりますが、一般的には3割負担が多いです。特定の病気で高度医療が必要な場合は、高額療養費制度などの公的支援を検討できます。
入院治療が必要な場合
重度の低血圧によって意識障害や転倒リスクが高いと判断された場合、入院治療が提案されることがあります。入院費には病室代や検査費、治療費、食事代などが含まれます。
保険適用になっても自己負担額が一定以上になるときは、高額療養費制度で負担を軽減する方法が考えられます。
薬剤費
血圧を上げる薬やホルモン製剤など、医師が処方する薬は基本的に保険適用になります。自己負担額は薬剤の種類や処方日数によって変わりますが、長期的な服用を続けると費用は増えていくでしょう。
一包化やジェネリック医薬品の利用でコストを抑えられる可能性があります。
継続的な通院と検査
低血圧が慢性化している場合は、定期的な通院と血液検査などが必要になります。医療機関での診察や検査ごとに自己負担額がかかるため、ある程度の予算を確保しておくと安心です。
病院や薬局での支払いだけでなく、交通費などの雑費も考慮してください。
次の一覧で主な治療費の項目を示します。
費用項目 | 内容・特徴 |
---|---|
外来診療費 | 診察料、血液検査、心電図検査など |
入院治療費 | 病室代、点滴、治療処置、検査費、食事代など |
薬剤費 | 血管収縮薬、ホルモン製剤など |
継続的な通院費 | 定期検査、経過観察の診察料、交通費など |
経済的な心配がある場合は、医療ソーシャルワーカーや保険会社に相談すると利用できる制度やサポートについての情報が得られます。
- 自宅近くの医療機関を選ぶことで交通費を削減
- ジェネリック医薬品の利用を検討
- 病院窓口で高額療養費制度など公的支援を相談
- 勤め先や自治体の健康保険組合の制度確認
治療費の心配ばかりにとらわれず、まずは健康を取り戻すための具体的なプランを考えるとよいでしょう。
以上
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