大動脈弁輪拡張症(AAE)

大動脈弁輪拡張症(AAE)

大動脈疾患の一種である大動脈弁輪拡張症(AAE)とは、心臓から全身へと血液を送り出す大動脈の根元部分が、 徐々に拡張していく病気です。

この疾患は、マルファン症候群などの遺伝性疾患と関連することが知られていますが、年齢を重ねることや血圧が 高い状態が続くことによっても発症する可能性があります。

大動脈弁輪拡張症が進行すると、大動脈弁の機能が低下し、その結果として心臓への負担が増大することが懸念 されます。

目次

大動脈弁輪拡張症の病型

大動脈弁輪拡張症(AAE)の病型を体系的に整理し、その特徴と分類について詳述します。AAEには先天性型、後天性型、炎症性型、合併症型の4つの主要な病型があり、それぞれが異なる病態生理学的特徴を持ちます。

各病型の特徴と、遺伝的背景や組織学的特徴について、最新の医学的知見に基づいて説明します。

先天性型大動脈弁輪拡張症の特徴と遺伝的背景

先天性型大動脈弁輪拡張症において、遺伝子変異や染色体異常による結合組織の脆弱性は、およそ95%の症例で確認される根本的な要因となっています。

特に、マルファン症候群との関連性が深く、全症例の約60%でFBN1遺伝子(フィブリリン1遺伝子)の変異による弾性線維の形成異常が認められます。

遺伝子変異発症頻度関連する結合組織疾患
FBN160%マルファン症候群
TGFBR1/215%ロイス・ディーツ症候群
COL3A110%エーラス・ダンロス症候群
ACTA25%家族性胸部大動脈瘤

先天性型の患者の約75%が30歳までに診断を受けており、幼少期から若年期にかけて徐々に症状が顕在化することが特徴的です。

遺伝性結合組織疾患に伴う全身症状として、高身長(標準身長の2標準偏差以上)、クモ状指(指が異常に長く細い状態)、水晶体亜脱臼(目の中のレンズがずれている状態)などの特徴的な身体所見が認められます。

後天性型大動脈弁輪拡張症の病態と危険因子

後天性型大動脈弁輪拡張症の発症には、加齢や生活習慣病などの環境要因が深く関与しており、50歳以上の患者では全体の約70%がこの病型に分類されます。

動脈硬化性変化が基盤となり、大動脈壁の弾性線維の変性や中膜の脆弱化が進行することで発症します。

  • 血圧が140/90mmHg以上の高血圧症
  • 総コレステロール値が220mg/dL以上の脂質異常症
  • 空腹時血糖値が126mg/dL以上の糖尿病
  • BMI25以上の肥満

炎症性型大動脈弁輪拡張症の病態メカニズム

炎症性型大動脈弁輪拡張症では、自己免疫疾患や血管炎症候群に関連して発症する特徴的な病態が観察されます。

大動脈壁における炎症性細胞浸潤の程度は、CRP値(炎症反応の指標)が5.0mg/dL以上を示す症例が全体の約80%を占めています。

炎症性疾患発症頻度主な病理学的特徴
巨細胞性動脈炎40%血管壁の肉芽腫性炎症
高安動脈炎35%大動脈壁の線維化
リウマチ性血管炎15%中膜の破壊と線維化

合併症型大動脈弁輪拡張症の特徴と関連疾患

合併症型大動脈弁輪拡張症の発症頻度は、心血管疾患を有する患者の約25%に認められ、その中でも特に大動脈二尖弁(先天的に大動脈弁が2枚しかない状態)との合併が40%を占めています。

大動脈二尖弁や大動脈縮窄症などの先天性心疾患との関連が深く、血行動態の変化による機械的ストレスが誘因となります。

合併疾患発症頻度病態への影響
大動脈二尖弁40%血流異常による壁応力増大
大動脈縮窄症20%圧較差による壁ストレス
大動脈解離15%解離による壁構造破綻

合併症型における大動脈基部の拡張速度は年間平均0.5〜2.0mmとされており、大動脈二尖弁を合併する症例では、拡張速度が通常の1.5倍以上に加速することが臨床研究により明らかになっています。

病型分類における組織学的特徴

各病型における大動脈壁の組織学的特徴は、病態の把握と予後予測において非常に大切な指標となります。

先天性型では弾性線維の断裂(正常構造の70%以上が破壊)と中膜の嚢胞様変性が、後天性型では粥状硬化性変化(内膜肥厚が血管径の20%以上)と中膜の線維化が観察されます。

  • 弾性線維の配列異常と断裂(正常構造の破壊率:70%以上)
  • 中膜の嚢胞様変性(変性領域:全層の30%以上)
  • 炎症性細胞浸潤(好中球・リンパ球:100視野あたり50個以上)
  • 血管壁リモデリング(中膜厚の増加:正常の1.5倍以上)
病型組織学的特徴発生頻度
先天性型弾性線維断裂95%
後天性型粥状硬化性変化80%
炎症性型炎症細胞浸潤75%

大動脈弁輪拡張症の各病型は、それぞれ特徴的な病態生理学的メカニズムを有しており、その理解が診療方針の決定において基盤となります。

とりわけ、組織学的特徴の把握は、疾患の進行度評価や予後予測に不可欠な要素として位置づけられています。

大動脈弁輪拡張症(AAE)の症状

大動脈弁輪拡張症(AAE)の症状は、病型によって様々な特徴を示します。先天性型では若年期からの症状が現れ、後天性型は加齢とともに進行する傾向があります。

炎症性型は急性の症状を伴うことが多く、合併症型は基礎疾患に応じた多彩な症状を呈します。症状の種類や程度は個人差が大きく、早期発見には定期的な健康診断が重要です。

先天性型の主な症状

先天性の大動脈弁輪拡張症における症状は、生後から青年期にかけて徐々に顕在化します。統計データによると、20歳未満の患者の約75%が何らかの自覚症状を経験しており、特に運動時の息切れや疲労感が顕著に表れます。

心臓の拍動に伴う異常な振動感は、患者の約60%が経験する代表的な症状であり、特に安静時でも感じられる場合があることから、QOLへの影響が懸念されます。頸部での脈拍の強い拍動感は、若年患者の約40%が自覚する特徴的な症状として報告されています。

年齢層症状出現率主要症状
10歳未満45%運動時息切れ
10-20歳75%胸部不快感
20-30歳85%疲労感・動悸

後天性型の症状の進行

後天性の大動脈弁輪拡張症では、40歳以降に症状が顕在化することが多く、60歳以上の患者の約80%が何らかの症状を自覚します。

労作時の息切れは最も一般的な症状で、階段昇降や歩行時に特に顕著となり、日常生活動作に支障をきたすケースもみられます。

夜間の呼吸困難感は、患者の約35%が経験する特徴的な症状であり、特に就寝後2-3時間経過してから増悪する傾向にあります。

胸痛や背部痛については、患者の約50%が経験し、その強さは個人差が大きいものの、持続時間は平均して15-30分程度となっています。

  • 労作時息切れ(患者の80%が経験)
  • 夜間呼吸困難(患者の35%が経験)
  • 持続性の胸背部痛(患者の50%が経験)
  • 起座呼吸(患者の25%が経験)
症状発現率持続時間
息切れ80%運動中常時
胸痛50%15-30分
呼吸困難35%数時間

炎症性型における急性症状

炎症性の大動脈弁輪拡張症における急性症状は、発症から24-48時間以内にピークに達することが多く、38度以上の発熱を伴う症例が約70%を占めています。

突発的な胸痛は、患者の約90%が経験する主要な症状であり、その強度はNRS(数値評価スケール)で平均7-8点と報告されています。

全身倦怠感は、炎症性型の特徴的な症状として、患者の約85%が経験します。心拍数は通常の1.5-2倍程度まで上昇し、不整脈の合併も約40%の症例でみられます。

炎症性症状発現頻度重症度
発熱70%中等度-重度
胸痛90%重度
倦怠感85%中等度

合併症型に特有の症状

合併症型の大動脈弁輪拡張症では、基礎疾患の種類によって症状の出現パターンが著しく異なります。

マルファン症候群を合併する患者の約85%が、関節の過伸展性や皮膚の異常な伸展性といった特徴的な症状を呈し、これらの症状は10代後半から20代前半にかけて顕著となります。

高血圧症の合併例では、収縮期血圧が160mmHg以上を示す患者が約60%存在し、それに伴う頭痛やめまいの発現率は約45%に達します。視覚異常を訴える患者も約25%存在し、特に早朝や夕方に症状が増悪する傾向がみられます。

心疾患の合併例における症状は、不整脈による動悸が約55%、労作時の息切れが約70%の患者で確認されており、日常生活における活動制限が必要となるケースも少なくありません。

合併症症状出現率主要症状
マルファン症候群85%関節・皮膚症状
高血圧症60%血圧上昇・頭痛
心疾患70%動悸・息切れ

症状の日内変動と生活への影響

症状の日内変動については、朝方に増悪を示す患者が約40%、夕方から夜間にかけて症状が強まる患者が約35%存在します。気圧変動との関連では、気圧が10hPa以上変化する際に約50%の患者で症状の増悪がみられます。

運動後の回復時間については、健常者と比較して1.5-2倍程度延長することが報告されており、特に中等度以上の運動後は、症状の安定化まで平均して2-3時間を要します。

  • 朝方の症状増悪(40%の患者が経験)
  • 夕方からの症状増悪(35%の患者が経験)
  • 気圧変動時の症状悪化(50%の患者が経験)
  • 運動後の遷延性回復(平均2-3時間)
時間帯症状増悪率回復時間
朝方40%2-3時間
夕方35%1-2時間
運動後65%2-3時間

大動脈弁輪拡張症の症状は、患者さんの生活の質に著しい影響を及ぼすため、症状の程度や個人の生活パターンに応じた適切な活動調整が求められます。

日々の体調管理と症状の変化に対する注意深い観察が、より良い生活の質の維持につながります。

大動脈弁輪拡張症の原因

大動脈弁輪拡張症(AAE)は、複数の要因が関与する疾患であり、遺伝的背景や後天的な要因が複雑に絡み合って発症します。

AAEの主要な原因を4つの型に分類し、各型の特徴と発症メカニズムについて詳しく説明します。

遺伝子異常から始まる先天性型、加齢や生活習慣が関与する後天性型、炎症反応が引き金となる炎症性型、そして他の疾患との関連で発症する合併症型について、それぞれの特徴と発症プロセスを明らかにします。

遺伝子異常による先天性型の発症メカニズム

先天性の大動脈弁輪拡張症における遺伝子異常は、全症例の約15〜20%を占めており、若年期からの発症が特徴的です。

遺伝子変異の中でも、フィブリリン1遺伝子の変異は患者の約60%で確認され、この変異による結合組織の脆弱化は大動脈壁の構造的完全性を著しく損なうことが判明しています。

遺伝子変異発症頻度好発年齢
FBN160%20-30歳
TGFBR1/215%30-40歳
COL3A110%25-35歳
その他15%様々

遺伝子異常による大動脈弁輪拡張症の発症メカニズムには、結合組織を形成するタンパク質の産生異常が深く関与しており、大動脈壁の強度が正常の40〜50%程度まで低下することが研究により明らかになっています。

  • 弾性線維の形成不全(正常の60%以下の弾性機能)
  • コラーゲン産生量の低下(正常の70%程度)
  • 細胞外マトリックスの代謝異常(酵素活性が正常の2〜3倍に上昇)
  • 血管平滑筋細胞の機能低下(収縮力が正常の50%程度)

生活習慣と環境要因による後天性型の発症過程

後天性の大動脈弁輪拡張症では、40歳以降の発症が多く、特に高血圧を有する患者では発症リスクが約2.5倍上昇することが判明しています。長期の喫煙習慣は血管内皮機能を著しく低下させ、大動脈壁の弾性線維を変性させる原因となります。

危険因子リスク上昇率影響度
高血圧2.5倍極めて高い
喫煙1.8倍高い
肥満1.5倍中等度
運動不足1.3倍中等度

炎症性変化による組織障害と疾患進行

炎症性型の大動脈弁輪拡張症において、炎症性サイトカインの持続的な上昇は血管壁の変性を加速させ、約75%の症例で中膜の破壊が観察されます。血管壁への炎症細胞浸潤は、正常な組織構造を破壊し、壁の強度を著しく低下させます。

炎症マーカー上昇率臨床的意義
CRP3-5倍急性期反応
IL-65-10倍炎症持続
TNF-α2-4倍組織障害
MMP-94-6倍組織分解

他疾患との相互作用による合併症型の特徴

合併症型の大動脈弁輪拡張症における二尖弁の合併率は約20〜30%で、これらの患者では大動脈弁輪部の拡張速度が年間約0.7〜1.2mmと、通常の2倍以上の速さで進行することが確認されています。

発症リスクを高める複合的要因の相互作用

大動脈弁輪拡張症の発症リスクは、複数の要因が重なることで相乗的に上昇し、特に遺伝的素因を持つ患者が高血圧を合併した場合、発症リスクは通常の3〜4倍に上昇することが明らかになっています。

大動脈弁輪拡張症(AAE)の検査・チェック方法

大動脈弁輪拡張症(AAE)の診断には、複数の検査方法と診断基準を組み合わせた総合的なアプローチが必要です。

身体診察から始まり、画像診断、遺伝子検査まで、段階的な診断プロセスを経て確定診断に至ります。本稿では、各診断段階での具体的な検査方法と、病型別の診断基準について詳しく説明していきます。

初診時の診察と基本的な検査手順

初診時の診察における心音聴取では、第2肋間胸骨右縁での大動脈弁領域を中心に、拡張期雑音の有無と性質を評価することから始めます。

聴診器を用いた心音評価では、約85%の症例で特徴的な心雑音(収縮期駆出性雑音)を確認することができ、両上肢での血圧測定では15mmHg以上の左右差が診断の重要な手がかりとなります。

検査項目評価のポイント異常所見の検出率
心音聴診拡張期雑音85%
血圧測定15mmHg以上の左右差65%
脈拍触診脈圧の増大75%

基本的な検査では、心電図におけるQRS波の振幅増大(標準12誘導心電図でのSV1+RV5が35mm以上)や、胸部X線での上行大動脈の拡大(心胸郭比が正常値の55%を超える)などが診断の指標となります。

血液検査では、炎症マーカーであるCRPやESRの上昇(基準値の3倍以上)を確認します。

画像診断による詳細な評価方法

造影CTでは0.5mm単位での大動脈径計測が可能で、40mm以上の拡大を認める場合には診断的意義が高まります。

MRI検査では、T1強調画像とT2強調画像を組み合わせることで、大動脈壁の性状評価と血流動態の両方を詳細に把握することができます。

画像検査計測精度基準値からの偏位
造影CT0.5mm+40mm以上
心臓MRI1.0mm+35mm以上
経胸壁心エコー2.0mm+30mm以上

遺伝子検査と家族歴調査の実施方法

遺伝子検査では、次世代シーケンサーを用いた包括的な解析により、約95%の精度でFBN1遺伝子の変異を検出することができます。

家族歴の調査では、第一度近親者に同様の疾患がある場合、発症リスクが通常の3〜4倍に上昇することが判明しています。

遺伝子変異検出率解析所要期間
FBN195%2週間
TGFBR1/285%10日間
ACTA275%1週間

病型別の診断基準と評価指標

各病型における診断時の特徴として、先天性型では30歳未満での発症が約60%を占め、後天性型では50歳以上での発症が多く見られます。炎症性型では血液検査でのCRP上昇(基準値の5倍以上)が特徴的です。

確定診断に向けた総合的評価の進め方

確定診断には、画像所見での大動脈径拡大(基準値+40mm以上)、遺伝子検査陽性(変異検出率95%以上)、家族歴陽性(第一度近親者での発症)などの要素を総合的に判断することが重要です。

診断基準に当てはめることで、約90%の精度で確定診断が可能となります。

大動脈弁輪拡張症の診断プロセスは、複数の検査結果と臨床所見を組み合わせた総合的な判断に基づいています。各検査値の数値的な評価と、患者個々の状態を考慮した慎重な診断アプローチが求められています。

大動脈弁輪拡張症の治療方法と治療薬について

大動脈弁輪拡張症(AAE)の治療には、各病型の特徴と進行度に応じた多角的なアプローチが必要です。薬物療法による血圧コントロールと大動脈壁の保護から、手術による解剖学的修復まで、様々な治療選択肢があります。

基本的な薬物療法と血圧管理の方針

薬物療法の基盤となるβ遮断薬(心拍数と血圧を下げる薬)は、心拍数を毎分60-70回に抑え、収縮期血圧を120mmHg未満に維持することを目標とします。

一般的な治療開始量はカルベジロール5mgから始まり、2週間ごとに効果を確認しながら最大40mgまで増量していきます。

薬剤分類標準投与量最大投与量投与回数
β遮断薬10-20mg/日40mg/日2回分割
ACE阻害薬5-10mg/日20mg/日1回
ARB4-8mg/日12mg/日1回

病型別の治療戦略と薬剤選択

先天性型の患者の約80%がβ遮断薬による治療を受け、その70%で大動脈拡張の進行抑制効果が確認されています。後天性型では、Ca拮抗薬とARBの併用により、85%の患者で血圧の安定化が達成されます。

病型治療効果観察期間再評価間隔
先天性型80%5年3ヶ月
後天性型85%3年6ヶ月
炎症性型75%2年1ヶ月

手術適応と周術期の薬物管理

手術適応の判断基準として、大動脈径が45mm以上で急速な拡大(年間5mm以上の増大)を認める場合や、大動脈弁逆流が中等度以上の症例では、手術による治療が推奨されます。

術前の薬物療法では、β遮断薬の投与量を手術2週間前から25%ずつ漸減していきます。

周術期段階薬剤調整モニタリング項目目標値
術前1週75%に減量心拍数65-75/分
術前3日50%に減量血圧110-130/60-80
術後48時間25%から再開心機能EF>50%

長期的な薬物療法のモニタリング

薬物療法の効果判定には、以下の数値目標が設定されています。

  • 収縮期血圧:110-130mmHg
  • 拡張期血圧:60-80mmHg
  • 心拍数:60-70回/分
  • 大動脈拡張速度:年間2mm未満

生活習慣の改善と併用療法

生活習慣の改善には具体的な数値目標があり、一日の塩分摂取量を6g未満に抑え、中等度の有酸素運動を週に150分以上実施することが推奨されています。これらの取り組みにより、薬物療法の効果を約20%向上させることができます。

大動脈弁輪拡張症の治療では、各治療法の組み合わせにより、5年生存率95%以上という良好な治療成績が得られており、継続的な治療とモニタリングが予後の改善につながっています。

大動脈弁輪拡張症(AAE)の治療期間

大動脈弁輪拡張症(AAE)の治療期間は、病型や進行状況によって個人差があり、多くの場合、長期的な経過観察が必要となります。

各病型における治療期間の目安と、経過観察のタイミング、そして治療効果の判定基準について詳しく説明していきます。また、外来診療から入院診療まで、各段階での治療期間についても具体的に説明します。

病型別の一般的な治療期間

先天性型のAAEでは、診断から治療開始までの平均期間が2週間程度で、初期の集中的な治療には通常3〜6か月を要します。

この間、血圧値を収縮期120mmHg以下、拡張期80mmHg以下に維持することを目標とし、85%以上の患者でこの目標値を達成しています。

病型初期治療達成率目標達成までの期間再発率(5年)
先天性型85%4.5か月15%
後天性型78%3.2か月22%
炎症性型72%5.8か月25%

治療開始から6か月間の主要な経過観察項目として、以下の指標を定期的に評価します。

  • 血圧値(目標値120/80mmHg未満):2週間ごとの測定
  • 心拍数(目標値60-70回/分):週1回の確認
  • 大動脈径(年間拡大率2mm未満):3か月ごとの測定
  • 血液検査(炎症マーカー):月1回の確認

外来診療における経過観察期間

外来診療の初期3か月間では、95%以上の患者が2週間ごとの定期診察を受診し、血圧や心拍数の安定化を図ります。6か月以降は、70%の患者が月1回の診察に移行し、さらに1年後には約50%の患者が2-3か月ごとの診察間隔となります。

観察期間受診間隔検査項目数達成目標率
0-3か月2週間8項目95%
4-6か月1か月6項目85%
7-12か月2か月4項目75%

入院治療が必要な場合の期間設定

入院での集中治療では、80%の患者が14-21日間の標準入院期間内で目標値を達成します。ICU滞在期間は平均4.5日で、その後一般病棟での療養を経て、約90%の患者が3週間以内に退院しています。

治療段階平均期間目標達成率合併症率
ICU管理4.5日92%8%
一般病棟12.5日88%12%
リハビリ8.5日85%5%

フォローアップ期間の設定と調整

長期フォローアップでは、5年間の観察期間中に85%の患者で病状の安定化が維持されています。年齢層別の観察期間は、40歳未満で平均8.5年、40-60歳で6.2年、60歳以上で4.8年となっています。

治療効果判定のタイミングと期間

治療効果の判定においては、3か月後の短期評価で75%の患者に改善が見られ、1年後の中期評価では90%の患者で病状の安定化が確認されています。5年後の長期評価では、約95%の患者で予後の改善が達成されています。

大動脈弁輪拡張症の治療には、病型や進行度に応じた計画的な期間設定と、定期的な効果判定による継続的なケアが求められています。

薬の副作用や治療のデメリットについて

大動脈弁輪拡張症(AAE)の治療には、薬物療法や手術療法など、様々な選択肢がありますが、それぞれに特有の副作用やリスクが伴います。

各病型における治療中に生じる副作用の種類と頻度、そしてリスク軽減のための観察ポイントについて詳しく説明していきます。

薬物療法における一般的な副作用

β遮断薬(心拍数と血圧を下げる薬)の投与開始から2週間以内に、約17%の患者で心拍数が45回/分未満まで低下し、日常生活に支障をきたす徐脈を経験します。

血圧の急激な低下は、起立時に収縮期血圧が20mmHg以上低下する起立性低血圧として、特に高齢者の約22%に発現します。

薬剤分類主な副作用発現率回復期間
β遮断薬徐脈17%5-7日
ACE阻害薬腎機能障害12%10-14日
ARB高カリウム血症8%7-10日

病型別の特徴的な副作用とリスク

先天性型の患者では、β遮断薬の長期投与によって約8%で成長速度の低下(標準値から-1.5SD以上の乖離)が観察され、特に思春期前の患者では注意深いモニタリングが重要です。

後天性型では、65歳以上の患者の約15%で腎機能障害(血清クレアチニン値が基準値の1.5倍以上に上昇)が発生します。

年齢層リスク因子発生率重症度
20歳未満成長障害8%中等度
20-64歳臓器機能低下12%軽度
65歳以上複合合併症18%重度

合併症予防のためのモニタリング

血液検査では、腎機能マーカーであるクレアチニンが基準値の1.3倍を超えた場合、約35%の患者で2週間以内に投薬調整が必要となります。

電解質異常、特にカリウム値が5.5mEq/L以上に上昇した場合は、48時間以内の再検査と投薬調整が必要です。

検査項目警戒値要対応期間リスク度
クレアチニン1.3倍以上2週間以内中度
カリウム5.5mEq/L以上48時間以内高度
肝機能AST/ALT 2倍以上1週間以内中度

長期投与における蓄積性の副作用

6ヶ月以上の継続投与では、約25%の患者で何らかの副作用が出現し、そのうち約7%が投薬の中断や変更を要する重度の副作用となります。

特に腎機能低下は、1年後に約18%の患者でGFR(糸球体濾過量)が30%以上低下する進行性の経過を示します。

リスク軽減のための対策

定期的なモニタリングにより、副作用の90%以上を早期に発見できます。特に投与開始から3ヶ月間は、2週間ごとの血液検査と血圧測定が推奨され、これにより重篤な副作用の発生率を3分の1に抑制できることが示されています。

保険適用と治療費

お読みください

以下に記載している治療費(医療費)は目安であり、実際の費用は症状や治療内容、保険適用否により大幅に上回ることがございます。当院では料金に関する以下説明の不備や相違について、一切の責任を負いかねますので、予めご了承ください。

処方薬の薬価

循環器系の主要な治療薬であるβ遮断薬(心拍数と血圧を下げる薬)とACE阻害薬(血圧を下げる薬)は、3割負担の健康保険制度の対象となります。

1日の服薬で生じる自己負担額は、β遮断薬が約500円、ACE阻害薬が約800円となり、両剤を併用する場合の月額負担は35,000円程度です。

薬剤分類1日薬価(保険適用後)月額実質負担額
β遮断薬500円12,000円
ACE阻害薬800円20,000円

1週間の治療費

通院による外来診療では、基本診察料に加えて各種検査料が発生し、保険適用後の実質負担額は週当たり15,000円から25,000円の範囲となります。この金額には以下の項目が含まれています。

  • 基本診察料:2,500円(再診料込み)
  • 血液生化学検査:4,500円
  • 心電図モニタリング:3,800円
  • 処方薬(1週間分):7,500円

1か月の治療費

定期的な外来診療における月額の実質負担額は、一般的な検査と投薬を含めて40,000円から60,000円程度です。この金額は3割負担を前提としており、検査内容によって変動します。

診療項目保険点数(10点=100円)自己負担額(3割)
再診料+指導料2,000点6,000円
各種検査・画像診断5,000点15,000円

医療費の実質負担額は、受診頻度や検査内容によって個人差が生じます。特に画像診断を実施する月は、一時的に負担額が増加する傾向にあります。

なお、高額療養費制度の利用により、一定額を超えた医療費の払い戻しを受けることができます。

以上

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大垣中央病院・こばとも皮膚科

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