052-228-1280 WEB予約 LINE予約

ニゾラール(一般名:ケトコナゾール)|抗真菌外用薬

ケトコナゾール ニゾラール

抗真菌外用薬ニゾラールは、真菌(カビ)によって引き起こされる皮膚病変に効果的な薬で、真菌の細胞膜の合成を阻害することにより、感染の進行を食い止めます。

剤型はクリームとローションがあり、使用する患部によって使い分けることが可能です。

この記事ではニゾラールについて、詳しく解説していきます。

この記事の執筆者

小林 智子(日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士)

小林 智子(こばやし ともこ)

日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長

2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。

運営ソーシャルメディア(SNSでは「こばとも」と名乗ることもあります)

XYouTubeInstagramLinkedin

著書一覧
経歴・プロフィールページ

こばとも皮膚科関連医療機関

医療法人社団豊正会大垣中央病院

目次

ニゾラールの有効成分と効果、作用機序

有効成分

ニゾラールに含まれる主要な有効成分は「ケトコナゾール」です。クリームとローションの2種類の剤型があり、それぞれケトコナゾールが2%配合。

ケトコナゾールは、幅広い真菌に対して効果を発揮します。

作用機序

抗真菌薬にはいくつかの種類があり、ケトコナゾールはイミダゾール系で、真菌の細胞膜の主要な成分であるエルゴステロールの合成を阻害します(エルゴステロール:真菌の細胞壁を形成し、生存に不可欠な成分)。

ケトコナゾールがエルゴステロールの合成を妨げることにより、真菌の細胞壁は弱まり、最終的には感染の進行を阻止することに。

効果

ケトコナゾールは、主に皮膚に生じる真菌感染症の治療に有効であり、以下のような疾患で使用されます。

  • 皮膚カンジダ症(カンジダ属菌による)
  • 白癬(はくせん、いわゆる「水虫」で皮膚糸状菌による)
  • 癜風(でんぷう、癜風菌(マラセチア)による)
  • 脂漏性皮膚炎(マラセチアが原因の一つとなる皮膚炎)

真菌感染症は、菌が寄生する場所によって表在性皮膚真菌症と深在性皮膚真菌症に分けられます。このうちニゾラールの塗布が有効なのは主に表在性の皮膚真菌症です。

深在性というのは真皮以下で菌が繁殖した状態で、スポロトリコーシスなど一部の真菌症があります。ただし、日本で報告されている真菌症のほとんどが表在性皮膚真菌症です。

表在性の皮膚真菌症の中でも多いものは、

  • 白癬菌(皮膚糸状菌)
  • カンジダ
  • マラセチア

の3種類です。

そのうち白癬菌に対して、ニゾラールはMIC(minimum inhibitory concentration、最小発育阻止濃度)を考慮すると効果はそれほど高くはありませんが、カンジダやマラセチアに対しては効果的です。

ニゾラールの使用方法と注意点

引用元:https://www.iwakiseiyaku.co.jp/medical_search/external_use/item_113

使用方法

白癬、皮膚カンジダ症、癜風(でんぷう)には、1日1回患部に塗布し、脂漏性皮膚炎では、1日2回患部に塗布します。

いずれも、清潔な状態で使用してください。

注意点

  • 眼や口などの粘膜には使用しない。
  • びらん(いわゆるただれ)がひどい部分には使用しない。
  • ローション剤はよく振ってから塗布。
  • 医師に指示された用量と使用頻度を守る。

適応対象となる患者さん

ニゾラールが保険適用となる疾患

  • 白癬(足、体部、股部):いわゆる水虫です。トリコフィトン属などの皮膚糸状菌による皮膚表面の感染症で、特に足などに発生しかゆみや皮膚の剥離を認めます。
  • 皮膚カンジダ症(指間糜爛症、間擦疹(乳児寄生菌性紅斑を含む)):カンジダ属の真菌によって引き起こされる感染症で、赤みやかゆみなどの症状が特徴です。
  • 癜風:皮膚の常在菌である癜風菌(Malassezia furfur)という真菌による感染症です。鱗屑(りんせつ)を伴う薄茶色の斑点で、多くは無症状ですが、軽い痒みを生じることもあります。
  • 脂漏性皮膚炎:頭皮や顔のおでこや鼻といった皮脂の分泌が多い部位に好発する、フケを伴う赤みや痒みを伴う皮膚炎です。

白癬に対しては他のイミダゾール系が処方されることが多いですが、接触皮膚炎で使用できない方には、ニゾラールになることもあります。

特定の背景を有する方への使用

お子さまへの使用

低体重児や新生児を対象とした臨床試験は実施されていませんが、小児に対しても症状に応じて処方されることはあります。

副作用などの心配は、事前に主治医にご相談ください。

ご高齢の方への使用

特に制限はありません。

妊娠または妊娠している可能性のある方への使用

治療の有益性をがリスク上回る場合にのみ使用します。これは妊娠中の使用に関する安全性が確立されていないためです。

2%ケトコナゾールクリームは皮膚からの吸収は非常に少ないですが、経口投与の動物実験では胎児への催奇形の可能性が報告されています。詳しくは専門医にご相談ください。

授乳中の方への使用

治療と母乳による栄養の有益性を考慮し、授乳を続けるか中止するかを検討したうえで処方することもあります。

ニゾラールの治療期間

引用元:https://www.iwakiseiyaku.co.jp/medical_search/external_use/item_113

治療期間は患者さんの症状や重症度によって、変わってきます。

通常、ニゾラールは表在性の真菌感染症に使用され、例えば白癬菌は、皮膚の一番外側である角質層に感染。

角質層は約4週間で新しいものに入れ替わり、この際にしっかりと外用薬を使用して完全に治療することが大切です。

症状が落ち着いたからと自己判断でやめると、再発するリスクが高くなります。

主な疾患の一般的な治療期間

  • 皮膚カンジダ症:2〜4週間程度
  • 爪カンジダ症:数ヶ月〜半年程度
  • 手・足白癬:指の間に認めるタイプの白癬で2ヶ月以上、角化を伴うタイプでは半年程度
  • 体部白癬:1ヶ月程度
  • 癜風:2〜4週間程度だが、再発も多い
  • マラセチア毛包炎(保険適用なし):1〜2ヶ月程度
  • 脂漏性皮膚炎:数年以上かかることが多い

ニゾラールの副作用

ニゾラールの副作用は、接触皮膚炎やかゆみ、肌の赤み、ピリピリするような刺激感などです。また、まれですが、灼熱感、水疱形成、発疹、蕁麻疹といった症状が発生することもあります。

もし副作用の症状があったときは、医師や薬剤師にご相談ください。

ニゾラールで効果がなかった場合

ニゾラールの効果が不十分であったり、副作用で使用できない方には、他の代替抗真菌薬が検討されることもあります。

他外用薬への変更

効果が不十分の場合、違う系統の抗真菌薬を試すことがありますが、各抗真菌薬は菌種によって適応が変わってきます。

主な真菌外用薬の種類と適応

系統有効成分商品名白癬カンジダマラセチア
モルホリン系アモロルフィン塩酸塩ペキロン
イミダゾール系ビホナゾールマイコスポール
ケトコナゾールニゾラール
ネチコナゾール塩酸塩アトラント
ラノコナゾールアスタット
ルリコナゾールルリコン
アリルアミン系テルビナフィン塩酸塩ラミシール
ベンジルアミン系ブテナフィン塩酸塩メンタックスボレー
チオカルバミン酸系リラナフタートゼフナート

〇…適応あり

△…適応だが効果は高くない

✖…不適応

内服薬の併用・変更

また、抗真菌薬には内服薬もあり、爪白癬や爪カンジダなど比較的深部での感染を認めたり広範囲だったり、再発を繰り返す場合などに考慮します。

内服薬

  • イトラコナゾール(イトリゾール)
  • ホスラブコナゾール(ネイリン)
  • テルビナフィン(ラミシール)

抗真菌の内服薬は、副作用で肝機能障害の可能性があるので、投与前や投与後1〜2ヶ月後にフォローアップ採血で肝機能のチェックをします。

また、他の疾患ですでに内服している薬があるときは、飲み合わせによる副作用があるので注意が必要です。

びらんなどがある場合

びらんや亀裂がある方は、ニゾラールのようなクリームでは刺激になることがあり、軟膏基剤(ラノコナゾール、ルリコナゾールなど)の方がいいこともあります。

接触皮膚炎などの湿疹病変を合併している場合は、先にステロイド外用薬や亜鉛華軟膏で症状を改善させた後に抗真菌外用薬に切り替えることが一般的です。

他の治療薬との併用禁忌

ニゾラールと併用禁忌となる治療薬は特にありません。

注意すべきなのは、ニゾラールが適応となる真菌感染症に、自己判断でステロイド外用薬を併用すると、症状を悪化させてしまう恐れがあることです。

他の外用薬を使用する際は、使用前に必ず専門医や薬剤師にご相談ください。

保険適用について

ニゾラールが保険適用となる疾患は白癬(足白癬、体部白癬、股部白癬)、皮膚カンジダ症(指間糜爛症、間擦疹、乳児寄生菌性紅斑))、癜風、脂漏性皮膚炎となっています。

薬価は、ニゾラールクリーム2%は21.5円/g、ニゾラールローション2%は22円/gです。

薬価に基づく薬の価格

タイプ薬価に基づく薬の価格
クリーム10g/本:215円(3割負担で64.5円)
ローション10g/本:220円(3割負担で66円)

保険の適応を受けるためには専門医による診察や診断が必要です。

この他、初診料あるいは再診料、処置料などがかかります。

詳しくはお問い合わせください。

参考文献

添付文書 医療用医薬品:ニゾラール 

岩城製薬株式会社 医療用医薬品 白癬

https://www.iwakiseiyaku.co.jp/dcms_media/other/guidanceasihakusen20230912.pdf

Choi FD, Juhasz MLW, Atanaskova Mesinkovska N. Topical ketoconazole: a systematic review of current dermatological applications and future developments. J Dermatolog Treat. 2019 Dec;30(8):760-771.

Kastarinen H, et al. Topical anti-inflammatory agents for seborrhoeic dermatitis of the face or scalp. Cochrane Database Syst Rev. 2014;2014(5):CD009446.

Fields JR, et al. Topical ketoconazole for the treatment of androgenetic alopecia: A systematic review. Dermatol Ther. 2020;33(1):e13202.

Weitzman I, et al. The dermatophytes. Clin Microbiol Rev. 1995;8(2):240-59.

Dall’Oglio F, et al. An Overview of the Diagnosis and Management of Seborrheic Dermatitis. Clin Cosmet Investig Dermatol. 2022;15:1537-1548.

Taudorf EH, et al. Cutaneous candidiasis – an evidence-based review of topical and systemic treatments to inform clinical practice. J Eur Acad Dermatol Venereol. 2019;33(10):1863-1873. 

Greer D, et al. Topical ketoconazole treatment of cutaneous candidiasis. J Am Acad Dermatol. 1988;18(4 Pt 1):748-50. 

田嶋磨美. Jpn. J. med. Mycol. 2005;46(3):163-167.

西川智 他. 基礎と臨床. 1984;18:1433-1448.

加藤卓朗 他. ケトコナゾール(KCZ)クリームの脂漏性皮膚炎に対する臨床的および真菌学的効果の検討. 西日本皮膚科. 1995;57(2):382-388.

免責事項

当院の医療情報について

当記事は、医療に関する知見を提供することを目的としており、当院への診療の勧誘を意図したものではございません。治療についての最終的な決定は、患者様ご自身の責任で慎重になさるようお願いいたします。

掲載情報の信頼性

当記事の内容は、信頼性の高い医学文献やガイドラインを参考にしていますが、医療情報には変動や不確実性が伴うことをご理解ください。また、情報の正確性には万全を期しておりますが、掲載情報の誤りや第三者による改ざん、通信トラブルなどが生じた場合には、当院は一切責任を負いません。

情報の時限性

掲載されている情報は、記載された日付の時点でのものであり、常に最新の状態を保証するものではありません。情報が更新された場合でも、当院がそれを即座に反映させる保証はございません。

ご利用にあたっての注意

医療情報は日々進化しており、専門的な判断が求められることが多いため、当記事はあくまで一つの参考としてご活用いただき、具体的な治療方針については、お近くの医療機関に相談することをお勧めします。

大垣中央病院・こばとも皮膚科

  • URLをコピーしました!
目次