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水痘・水疱瘡(みずぼうそう)

水痘・水疱瘡(みずぼうそう)(chickenpox)とは、水痘帯状疱疹(すいとうたいじょうほうしん)ウイルスにより引き起こされる感染症です。主に子供に発症しやすく、発熱や全身性のかゆみを伴う水疱が多く現れます。

感染力が非常に強く、空気感染するため、集団生活を送る子供たちにとって注意が必要な疾患です。

この記事では、水痘・水疱瘡の特徴、感染経路、治療などについて詳しく解説していきます。

この記事の執筆者

小林 智子(日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士)

小林 智子(こばやし ともこ)

日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長

2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。

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こばとも皮膚科関連医療機関

医療法人社団豊正会大垣中央病院

目次

水痘・水疱瘡(みずぼうそう)の原因・感染経路

原因

水痘・水疱瘡(みずぼうそう)は、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)と呼ばれるヘルペスウイルスが初めて感染した際に引き起こされる皮膚感染症です。

主に乳幼児〜学童期までの子どもに発生し、9歳での抗体保有率は9割以上に達します。

感染経路

水痘帯状疱疹ウイルスは空気感染するため、通常の飛沫感染するウイルス(インフルエンザなど)と比べて感染力が強いのが特徴です。

飛沫感染:患者の咳やくしゃみによって放出されるウイルス含有飛沫を他の人が吸い込むことで感染します。飛沫は重さがありすぐに落下するため患者と十分な距離を保っていれば感染するリスクは低い。

空気感染:飛沫の水分が蒸発した小さな粒子(飛沫核)が長い時間空気中にただよい、他の人が吸い込むことで感染します。飛沫核は遠くまで飛んでいくため、十分な距離をとっていても感染するリスクがある。

また、水痘帯状疱疹ウイルスは接触感染もします。いずれの場合も上気道よりウイルスが侵入し、リンパ節で増殖して第一次ウイルス血症を引き起こし、肝臓や脾臓といった臓器で増殖。その後皮膚に到達し、水疱などの症状を引き起こします。

水痘・水疱瘡(みずぼうそう)の症状

水痘・水疱瘡(みずぼうそう)は、感染から回復までの過程でさまざまな症状が現れます。

水痘・水疱瘡の一般的な経過と症状

水痘・水疱瘡の病型の進行

  • 潜伏期: ウイルスに感染してから最初の症状が現れるまでの期間。通常、この期間は2〜3週間(10〜21日)が一般的で、症状発症の1〜2日前より感染力があります。
  • 発症初期: 軽度の発熱(37〜38℃)や倦怠感といった全身症状が現れ始め、全身に赤み(紅斑)やぶつぶつ(丘疹)も見られます。
  • 水疱形成期: 丘疹が水疱へと変化し、強い痒みも伴い、水疱は口腔粘膜などにも現れます。最も感染力が強い時期です。
  • 回復期: 症状が現れてからおよそ1週間程度で水疱はかさぶた(痂皮)となり、徐々に落ち始めます。痂皮が形成されると感染力はなくなり、通常、水疱は痕にならずに治癒しますが、痒みを掻いたところが痕になることも。
引用元:https://kidcarepediatrics.com/chicken-pox/

重症化

成人で水痘帯状疱疹ウイルスに初めて感染すると、髄膜炎や脳炎、肺炎などを合併しやすく、重症化するケースがあります。免疫不全の方が感染すると、多臓器不全などを引き起こし、死亡することも。

水痘・水疱瘡の症状は、感染から回復までの過程で変化し、皮膚の症状は感染の進行を示す重要な指標となります。感染力が高い時期は他の人との接触を避けてください。

水痘・水疱瘡(みずぼうそう)の診断方法

水痘・水疱瘡(みずぼうそう)を正確に診断するためには医療機関での検査が必要です。

水痘・水疱瘡の診断法

水痘・水疱瘡の診断方法

  • 視診: 患者の症状、特に皮膚の発疹の様子を診察。
  • Tzank試験: 水疱部を採取して感染した細胞(balloon cell)を確認。
  • 血液検査: 蛍光抗体法や血清抗体価、ウイルスのPCR検査など、ウイルスの存在を確認。また、重症例で全身の合併症の有無を確認するために血液検査が行われることも。

水痘・水疱瘡の正確な診断は、治療方針の決定や感染拡大の予防に役立ちます。疑わしい症状があるときは、早急に医療機関を受診し、適切なアドバイスと治療を受けてください。

水痘・水疱瘡(みずぼうそう)の治療方法

水痘・水疱瘡(みずぼうそう)は自然に治癒する病気であるため、基礎疾患のない小児の患者さんは経過観察となることが多いです。

一方、成人や免疫が低下した方、新生児〜乳児は、重症化を避けるために抗ウイルス薬が投与されます。

水痘・水疱瘡の治療法

水痘・水疱瘡の治療で用いられる薬には以下のようなものがあります。

抗ウイルス薬

ウイルスの増殖を抑えるために投与される薬です。免疫不全の方や新生児は入院し、抗ウイルス薬の点滴が行われます。

水痘・水疱瘡で用いられる抗ウイルス薬

薬剤名成分使用方法
ゾビラックスアシクロビル1回1錠(200mg)を1日5回×5日間
バルトレックスバラシクロビル1回2錠(1000mg)を1日3回×7日間

対症療法薬

痒みや発熱などに対しては、対症療法的に薬が処方されることがあります。アスピリンはReye症候群(アスピリン内服によって肝臓の脂肪沈着を伴う急性脳症)を引き起こすリスクがあるため通常用いられません。

薬剤名成分使用目的
ブルフェンイブプロフェン発熱と痛みの緩和
カロナールアセトアミノフェン発熱と痛みの緩和
ペリアクチン、アレロック抗ヒスタミン薬かゆみの軽減

ワクチンについて

水痘・水疱瘡にはワクチンがあり、生後12ヶ月以上の小児に対して定期接種で2回接種することが推奨されています。また、50歳以上の方は帯状疱疹の予防目的でワクチンを接種することも可能です。

さらに、水痘ワクチンは水痘の患者さんと接触してから72時間以内にワクチンを接種すると、90%の割合で発症を阻止できます。

治療期間中の注意点

  • 水疱が完全にかさぶたになるまでは感染力があるため、他人との接触を避ける。
  • かさぶたは自然に落ちるのを待ち、無理に剥がさない。
  • 発熱を認める期間は水分摂取や十分な休息をとる。

水痘・水疱瘡(みずぼうそう)の治療期間

水痘・水疱瘡の典型的な一般的な治療期間

水痘・水疱瘡の治療期間

  • 感染から発症までの期間: 潜伏期間は通常10日から21日間です。
  • 発疹の出現から回復まで: 発疹が現れてから、通常は約5日から10日間でかさぶたになります。

合併症を認める場合、治療期間はさらに長引きます。

水痘・水疱瘡治療薬の副作用

水痘・水疱瘡の治療は多くの患者さんにとって効果的ですが、副作用もあります。

治療薬の副作用

水痘・水疱瘡の治療に用いられる薬剤の副作用

  • アシクロビル: 吐き気、下痢、頭痛
  • イブプロフェン: 胃腸障害、吐き気、下痢
  • 抗ヒスタミン剤: 眠気、口の渇き、めまい

保険適用について

水痘・水疱瘡の治療には、健康保険が適用されます。

選択される薬によって薬剤費は異なります。

抗ウイルス薬の薬価

薬剤名薬価
アシクロビル(ゾビラックス錠200mg(後発品))21.2円/錠
バラシクロビル(バルトレックス500mg)215.5円/錠

保険の適応を受けるためには専門医による診察や診断が必要で、この他、初診料あるいは再診料、処置料などがかかります。

詳しくはお問い合わせください。

参考文献

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大垣中央病院・こばとも皮膚科

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