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キンダベートは多くの皮膚疾患に適応するステロイド外用薬の一つです。
皮膚の炎症やかゆみをやわらげるために使用されます。
この記事ではキンダベートについて詳しく解説していきましょう。
この記事の執筆者
小林 智子（こばやし ともこ）
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長
2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。
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キンダベートの有効成分と作用機序、効果
有効成分
キンダベートに含まれる主要な有効成分は「クロベタゾン酪酸エステル」という合成ステロイドです。日本ではこの成分が0.05%配合されたキンダベート軟膏0.05%が発売されています。
ステロイドは効果の強さに応じて5段階に分けられており、キンダーベートは下から2番目の「medium / mild」です。
作用機序
- クロベタゾン酪酸エステルは合成ステロイドで、細胞内の特定の受容体に結合することで作用1)。
- 結合した後、遺伝子の発現を調節して炎症を引き起こす物質の生産を抑える2)。
- 血管を収縮する効果があり、フルオシノロンアセトニド(フルコート)に比べ約2.6倍の強さを持つという報告3)。
効果
炎症が生じると、赤みや腫れ、かゆみといった症状が現れますが、キンダベートを使用することで症状がやわらぎます。
研究によれば、アトピー性皮膚炎や乳幼児湿疹では83.5%、顔、首、わきの下、陰部に湿疹・皮膚炎のある場合で85.7%に効果が確認4)。
参考文献
1) Mehta AB, et al. Topical corticosteroids in dermatology. Indian J Dermatol Venereol Leprol. 2016;82(4):371-8.
2) Rhen T, et al. Antiinflammatory action of glucocorticoids–new mechanisms for old drugs. N Engl J Med. 2005;353(16):1711-23.
3) Munro DD, et al. Br Med J.1975;3:626-628.
4) 医薬品医療用機器情報提供HP キンダベート軟膏0.05%
キンダベートの使用方法と注意点
キンダーベートは適切に使用することで効果が発揮されます。ここでは使用方法について詳しく解説しましょう。
使用方法
通常、1日1から数回、患部に必要な量を塗布5)。
適量について「FTU（フィンガーチップユニット）」という単位がよく用いられます。1FTUとは軟膏を人差し指の第一関節から指先まで出した量（およそ0.5g）で、手のひらの面積を2枚分ほどカバー。
適切な量より少ないと十分に効果を得られない可能性があります。
使用上の注意点
- 顔や首に長期間使用する場合は特に気をつけて医師の指示に従う。
- 鼓膜に穿孔のある湿疹性外耳道炎の方は使用を控える。
- 潰瘍やひどい凍傷・熱傷のある方は使用を控える。
- 皮膚の症状が悪化した場合や変化がない場合は、医師の指示に従う。
- 他の医療品やスキンケア製品と併用する場合は、医師や薬剤師に相談。
参考文献
5) 添付文書 医療用医薬品: キンダベート 6. 用法及び用量
適応対象となる患者さん
キンダベートは、乳幼児湿疹を含むアトピー性皮膚炎や、顔・首・わきの下・陰部における湿疹や皮膚炎の症状改善に用いられます6)。
皮膚感染を伴う湿疹・皮膚炎には基本的には使用しませんが、伝染性膿痂疹（とびひ）などのケースでは、あらかじめ適切な抗菌剤・抗真菌剤による治療や、併用した治療を行なったりすることが。
参考文献
6) 添付文書 医療用医薬品: キンダベート 4. 効能または効果
お子さま、ご高齢の方への使用
キンダベートはさまざまな皮膚疾患に有効な薬ですが、小さなお子さまやご高齢の方の使用にはいくつかの注意が必要です。
お子さまへの使用
キンダベートは赤ちゃんなど小さなお子さまにも使用できる薬です。
ただし、赤ちゃんやお子さまの皮膚は大人と比べて薄く敏感で、ステロイドの吸収率が高くなる可能性があります7)。
クロベタゾン酪酸エステルと血中のコルチゾール値は成人の場合、全身に1日2回、1週間塗布しても正常範囲内だったという報告がありますが8)、小児における影響力は明らかではありません。
そのため、適切な量を必要な期間だけ使用し、医師の指示に従うことが大切です。
ご高齢の方への使用
ご高齢の方の皮膚は、薄くなったり水分量が減少したりする傾向があるので9)、キンダベートの吸収率が高まり、副作用が出やすくなる可能性があります。
加えて、ご高齢の方は、他の病気の治療でさまざまな薬を服用されていることも。
キンダベートと他の薬との相互作用による問題が生じる可能性があるため、使用前に医師や薬剤師としっかり相談することが重要です。
参考文献
7) Eichenfield LF, et al. Guidance of care for the management of atopic dermatitis. Part 2: Management and Treatment of Atopic Dermatitis with Topical Therapies. J Am Acad Dermatol. 2014;71(1):116-132.
8) Morley N, et al. Clinical evaluation of clobetasone butyrate in the treatment of children with atopic eczema, and its effect on plasma corticosteroid levels. Curr Med Res Opin. 1976; 4(3):223-228.
9) Farage MA, et al. Clinical implications of aging skin: cutaneous disorders in the elderly. Am J Clin Dermatol. 2009;10(2):73-86.
キンダベートの治療期間
キンダベートは使用する患者さんの体質や症状の程度で使用期間が変わります。これまでの報告では2週間の臨床試験のものが多く、適応疾患には2週間程度で改善効果が認められることが多いです10)。
使用開始してから1〜2週間で効果が見られなかった場合、再度医師の診察を受けることをおすすめします（後述）。
参考文献
10) Lassus A, et al. Clobetasone butyrate and hydrocortisone butyrate in the treatment of eczema: a double-blind comparison. Curr Med Res Opin. 1979; 6(3):165-167.
キンダベートの副作用や使用上の注意点
キンダベートは有効性と同時に副作用もあります。
主な副作用
キンダベートを使用する際の重大な副作用として、目の周りの皮膚に使用した場合に眼圧が上がる緑内障や白内障が挙げられます11)。
また、一部の患者さんに以下のような副作用が起こりうることが報告。
- 真菌症、細菌感染症、ウイルス感染症など皮膚感染症
- 赤みやかゆみといった過敏症状
- ステロイドざ瘡(ニキビ様の発疹)
- ステロイド皮膚(皮膚萎縮、毛細血管の拡張、紫斑)
- 多毛
- 色素脱失など
これらの副作用の起こる頻度は不明ですが、特に長期の使用によってリスクは高まる傾向にあり、この他にもいろいろな症状が出る可能性があります。
使用中に異常を感じた場合は速やかに医師の診察を受けてください。
使用時の注意点
- 医師の指示通りの量と頻度を守る。
- 長期間の連続使用は推奨されない。
- 他のステロイド薬と併用する場合は必ず医師に相談。
- 妊娠や授乳中の方は使用する前に必ず医師に相談。
参考文献
11) Beck KM, Set al. Ocular co-morbidities of atopic dermatitis. Part II: Ocular disease secondary to treatments. Am J Clin Dermatol. 2019; 20: 807-815
キンダベートで効果がなかった場合の対応
キンダベートは赤ちゃんなど小さいお子さんや、顔や首のような皮膚が薄い部位にも適応しやすい外用薬ですが、すべての方に効果があるわけではありません。
ここではキンダベートを使用して効果を認めなかった場合の対応について解説します。
キンダベートの適応ではない疾患の可能性
キンダベートは白癬などの皮膚感染症の場合、使用によって症状の悪化を認めます。症状の悪化があったときは使用を中止し、主治医に相談してください。
強力なステロイド外用薬に切り替える
キンダベートはステロイド5段階の中で下から2番目の強さである「medium / mild」です。そのため炎症所見が顕著である場合はキンダベートでは強さが適切ではなく、効果を認めないことも。
そのような時はより強い「strong」「very strong」「strongest」クラスのステロイド外用薬への切り替えが検討されます12)が、副作用のリスクを伴うため、医師の指示のもと適切に使用する必要があります。
非ステロイド性の抗炎症薬に切り替える
非ステロイド外用薬として代表的なものとしてはタクロリムス軟膏（プロトピック軟膏）やデルゴシチニブ軟膏（コレクチム軟膏）などがあります。
ステロイド外用薬とは異なる働きで炎症反応を抑え皮膚の赤みやかゆみの症状を改善13)14)するので、ステロイド外用薬の長期使用が予想される場合、副作用のリスクを回避する目的で選択されることが多いです。
そのため、これらの薬は慢性炎症疾患であるアトピー性皮膚炎おいて保険適用となっています。
抗ヒスタミン薬を併用する
かゆみが強い場合は、かゆみの症状をやわらげるために抗ヒスタミン薬を併用することも。抗ヒスタミン薬は、アレルギーや炎症反応を引き起こす物質であるヒスタミンの作用を遮断することで、症状を軽減します。
参考文献
12) 日本皮膚科学会ガイドライン;アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021
13) JC Martins, et al. Topical tacrolimus for atopic dermatitis, Cochrane Database Syst Rev. 2015; 2015(7) :CD009864.
14) H Nakagawa, et al. Delgocitinib ointment, a topical Janus kinase inhibitor, in adult patients with moderate to severe atopic dermatitis: A phase 3, randomized, double-blind, vehicle-controlled study and an open-label, long-term extension study. J Am Acad Dermatol.2020;82(4):823-831.
他の治療薬との併用禁忌
キンダベートは他の薬剤と併用禁忌になることは現時点ではありません。しかし他のステロイド外用剤と併用することにより、副作用のリスクが上昇する可能性があります。
併用薬がある場合は一度医師や薬剤師にご相談ください。
保険適用について
キンダベートが保険適応となる疾患は添付文書で、アトピー性皮膚炎(乳幼児湿疹を含む)、顔・首・わきの下・陰部における湿疹・皮膚炎となっています15)。詳しくは添付文書をご覧ください。
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00053194
薬価は、16.7円/gです。キンダベートには5gと10gのタイプがあり、薬価に基づくそれぞれの価格は以下となります。
| 薬価に基づく薬の価格 |
|---|
| 5g/本:83.5円(3割負担で約25.0円) 10g/本:167円(3割負担50.1円) |
保険の適応を受けるためには専門医による診察や診断が必要です。
この他、初診料あるいは再診療、処置代などがかかります。詳しくはお問い合わせください。
参考文献
15) 添付文書 医療用医薬品: キンダベート 4. 効能または効果