クレイは、カオリンやベントナイトなどの粘土鉱物をまとめた呼び名です。微細な粒子が皮脂や汚れを抱え込む性質を利用し、クレイパックやクレイ洗顔に配合されています。
肌表面の余分な皮脂を落としやすくする一方、毛穴を消したり、炎症性ニキビを治したりする成分ではありません。洗浄後の一時的なすっきり感と治療効果は分けて考える必要があります。
使うときは製品の放置時間を守り、完全に乾く前に洗い流すことが大切です。乾燥肌や敏感肌では頻度を控え、刺激や赤みが続く場合は使用を中止しましょう。
この記事の執筆者

小林 智子(こばやし ともこ)
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長
2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。
こばとも皮膚科関連医療機関
クレイとはどのようなスキンケア成分?
化粧品のクレイは単一の物質ではなく、産地や鉱物組成が異なる天然由来の微粒子です。種類によって吸着力、膨らみやすさ、使用感が変わるため、名称だけで同じ性質とは判断できません。
古くから泥や粘土を肌に使ってきた歴史がある
粘土や泥を皮膚に塗る習慣は古くから各地にあり、洗浄や保護を目的に用いてきました。現在は採掘した原料を精製し、粒子の大きさや微生物、金属などを管理して化粧品に配合されています。
天然由来という言葉だけで、刺激がないとはいえません。産地によって成分が変わり、不純物を含む可能性もあるため、顔には化粧品として品質管理した製品を使うことが重要です。
化粧品の成分表示ではクレイの種類を確かめる
成分表示では「クレイ」ではなく、カオリン、ベントナイト、モンモリロナイト、モロッコ溶岩クレイなどの名称が使われている場合があります。複数の鉱物を組み合わせた製品も少なくありません。
クレイという総称自体は、毛穴改善やニキビ予防を効能とする医薬部外品の有効成分名ではありません。多くは吸着剤、基剤、製品の粘度を整える成分として配合されます。
主なクレイの性質を比べる
| 表示で見かける名称 | 主な特徴 | 使うときの着眼点 |
|---|---|---|
| カオリン | カオリナイトを主とし、比較的膨らみにくい | 穏やかな使用感か、処方全体で確認する |
| ベントナイト | モンモリロナイトを多く含み、水で膨らみやすい | 皮脂を取りすぎない頻度を選ぶ |
| モンモリロナイト | 層状で表面積が大きく、吸着性を持つ | 配合量や併用成分でも使用感が変わる |
| モロッコ溶岩クレイ | 北アフリカ由来の粘土で、ガスールとも呼ぶ | 産地名だけで安全性を決めない |
ホワイトやグリーンなどの色名は組成を保証しない
ホワイトクレイ、レッドクレイ、グリーンクレイという呼び方は、含まれる鉄などの鉱物や産地による色の違いを示していることが多いですが、統一された化学分類ではありません。
色が濃いほど吸着力が高い、白ければ敏感肌向け、と一律には判断できません。
色名よりも全成分表示、使用方法、香料や洗浄成分の有無を確認しましょう。
クレイパックに期待できる効果
クレイパックの効果は、肌表面の皮脂や汚れを物理的に吸着し、洗い流しやすくすることです。毛穴の形や皮脂腺そのものを変える働きとは区別しましょう。
余分な皮脂を吸着してべたつきを洗い流しやすくする
クレイの微細な粒子には広い表面積があり、表面に皮脂や物質を引き寄せる性質があります。水分を取り込む種類もあり、パックをすすぐ際に付着した皮脂や汚れも一緒に落とします。
洗浄後は、脂っぽさやざらつきが一時的に軽く感じられるかもしれません。ただし皮脂は肌を守る膜の一部でもあり、取りすぎるとつっぱりや乾燥につながります。
クレイが体内の毒素を引き出すという説明には、化粧品として確立した根拠がありません。スキンケアで期待する範囲は、肌表面の洗浄補助と使用感の調整にとどめるのが適切です。
毛穴の黒ずみやいちご鼻への効果
いちご鼻と呼ばれる黒い点には、皮脂と角質が混ざった角栓、毛穴周囲の色素、産毛の影など複数の原因があります。クレイで対応しやすいのは、表面にある皮脂や落とし残した汚れです。
余分な皮脂を洗い流すと、毛穴周囲がなめらかに見えることはあります。一方、詰まった角栓を根元から抜く、開いた毛穴を閉じる、黒ずみを消すといった効果は期待できません。
指や器具で角栓を押し出すと、皮膚を傷つけて赤みや色素沈着を招くおそれがあります。
クレイパックも強くこすらず、ぬるま湯でやさしくすすぐことが大切です。
ニキビ肌では治療と分けて皮脂ケアの補助にとどめること
皮脂が多い肌では、クレイ洗顔やパックがべたつきの調整に役立つ可能性があります。ただし、ニキビは毛穴の詰まり、皮脂、細菌、炎症などが関わる皮膚疾患です。
クレイだけでニキビを治療できるとはいえず、乾燥させすぎれば肌の刺激になります。赤く腫れたニキビ、痛みや膿を伴うニキビ、跡が増える状態は化粧品で粘らず皮膚科へ相談してください。
傷になった部分へパックを重ねると、洗い流す刺激も加わります。炎症のある部分を避けて使うか、顔全体の使用を休み、まず症状の評価を受けるほうが安全です。
臨床研究はあるものの全製品に同じ結果とは限らない
脂性肌または混合肌の成人75人が登録された研究では、カオリンとベントナイトを含むパックを週2回、4週間使い、皮脂量や一部のニキビ指標の改善が報告されました。
ただしこの研究は特定の完成処方を調べたもので、クレイ単独の効果を示す試験ではありません。毛穴面積には有意な変化がなく、参加人数や期間も限られるため、結果の一般化には注意が必要です。
別の研究では採掘残渣由来のクレイを含むゲルと乳液を健康な成人53人に貼付し、刺激や感作を認めませんでした。ただし、短期間の試験結果だけで敏感肌を含む全員の安全性を保証することはできません。
効果が期待できる範囲と期待しにくい変化
| 肌の悩み | クレイで考えられる範囲 | 注意したい誤解 |
|---|---|---|
| べたつき | 表面の余分な皮脂を洗い流しやすくする | 皮脂分泌を恒久的に止めるわけではない |
| 毛穴・いちご鼻 | 汚れによる目立ちを一時的に整える | 毛穴を消す、閉じる効果ではない |
| ニキビ | 脂性肌の洗浄を補助する可能性がある | 炎症性ニキビの治療にはならない |
クレイパックとクレイ洗顔の使い方
クレイは洗い流すパック、洗顔料、部分用マスクなどに配合します。製品ごとに濃度や乾き方が違うため、放置時間と頻度は表示を優先し、肌の反応を見ながら調整しましょう。
洗い流すパックや洗顔料の特徴で選ぶ
クレイパックはペーストを数分置いてから流すため、皮脂が気になる鼻や額へ部分使いしやすい剤形です。クレイ洗顔は短時間で流すので、日常の洗浄に組み込みやすいでしょう。
「おすすめ」や順位だけでは自分の肌に合うか判断できません。乾燥しやすい人は保湿成分を含む処方、脂性肌でもつっぱる人は洗浄力が強すぎない処方を選びます。
粉末を自分で水と混ぜる方法は、濃さ、衛生状態、原料の品質を一定にしにくいのが難点です。粉を吸い込むおそれもあるため、顔には使用方法を明記した化粧品が扱いやすいといえます。
クレイパックはこすらず完全に乾く前に流す
洗顔後の清潔な肌に、目と口の周囲、傷、炎症部位を避けて薄く均一に広げます。厚く塗っても効果が比例するわけではなく、落としにくさや摩擦が増える可能性があります。
放置時間は製品表示に従い、指定が曖昧なら乾いてひび割れる前にすすぎます。表面が乾いて強くつっぱるまで待つと、水分や皮脂を取りすぎて刺激を感じやすくなります。
ぬるま湯でクレイを十分にやわらかくしてから、手のひらで包むように流します。粒子をスクラブのようにこすらず、タオルは押し当てて水分を取ってください。
- 傷や炎症部位を避ける
- 表示された放置時間を守る
- 乾ききる前にぬるま湯で流す
- 洗い流したらすぐ保湿する
クレイパックの頻度と洗顔の順番
初めてなら週1回程度から始め、翌日まで乾燥や赤みが残らないかを見ます。皮脂が多く刺激がない人でも週1〜2回ほどを目安とし、毎日の使用は製品が認める場合に限りましょう。
基本の順番は、メイクや日焼け止めを落とす、通常の洗顔、クレイパック、洗い流す、保湿です。クレイ洗顔を使う日は、それ自体を洗顔料として扱い、何度も洗わないようにします。
朝に使う場合も、その後の保湿と紫外線対策が必要です。夜に使えば肌質が変わるわけではないため、時間帯よりも、急がずすすげて刺激を確認できるタイミングを選びます。
保湿成分は合わせやすく、角質ケアとの重ね使いは控える
洗い流した後は、セラミドやヒアルロン酸などを含む保湿化粧品で水分を補いましょう。クレイと混ぜるのではなく、すすいだ後に使うと、放置時間や濃度を変えずに済みます。


酵素洗顔、スクラブ、酸を使う角質ケアは、いずれも肌表面へ負担をかけることがあります。同じ日に重ねる必要はなく、別の日に分けると乾燥やひりつきを避けやすくなります。
初めての製品を同時に複数使うと、刺激が出た際に原因を特定しにくくなります。まずクレイだけを狭い範囲で試し、問題がなければ普段の保湿へ戻す使い方が現実的です。
クレイパックのデメリットと使用上の注意点
クレイパックの主なデメリットは、皮脂と水分を取りすぎて乾燥や刺激を招くことです。天然由来でも接触皮膚炎や不純物の問題は否定できず、長く置くほど良いとはいえません。
乾燥や赤みが出たら頻度を下げる
使用中の強いつっぱり、ひりつき、かゆみ、赤みは、肌に合っていないサインです。すぐに十分洗い流し、同じ日に洗浄や角質ケアを重ねず、低刺激の保湿だけで様子を見ます。
症状が翌日も続く、腫れや水疱が出る、範囲が広がる場合は使用を中止し、皮膚科を受診してください。目に入ったときはこすらず流水で洗い、異常が残れば医療機関へ相談してください。
乾燥肌や敏感肌は部分使いから慎重に試す
乾燥肌、敏感肌、アトピー性皮膚炎がある人は、皮膚の守る力が弱っていることがあります。症状が落ち着いていても、腕やあごの一部で試してから短時間の部分使いにとどめましょう。
日焼け直後、顔そりや脱毛の直後、湿疹、傷、強いニキビ炎症があるときも避けましょう。妊娠中や授乳中は肌が敏感になりやすい時期で、香料など他成分の確認も必要です。使用が心配な場合は、事前に医師へ相談してください。
乾かしきる使い方と角質ケアの併用を避ける
パックが白く乾いてひび割れるまで待つと、落とす際の摩擦が増えます。吸着力を高めようと長く置いたり、厚く重ねたりする必要はありません。表示時間内でも強くつっぱれば早めに流してください。
酵素洗顔やピーリング、スクラブを同日に行うと、乾燥や刺激が重なるおそれがあります。刺激が出やすい人は数日空け、肌が落ち着いてからどちらか一方を再開しましょう。
化粧品のクレイと処方薬は目的が異なる
クレイ配合化粧品の目的は、洗浄、皮脂吸着、使用感の調整などです。ニキビの原因へ薬理的に働きかける処方薬とは、成分、濃度、評価された目的が異なります。
化粧品で改善しない炎症、繰り返すニキビ、かゆみを伴う発疹には、自己判断でパックを続けないでください。診断に応じた治療が必要な場合があるため、皮膚科で相談しましょう。
肌の状態別の使用可否
| 肌の状態 | 判断の目安 | 対応 |
|---|---|---|
| 脂性肌で刺激がない | 短時間から試せる | 皮脂の多い部分を中心に使う |
| 乾燥・敏感肌 | 刺激に注意が必要 | 部分試用し、頻度を控える |
| 赤いニキビ・湿疹・傷 | 使用を避ける | 症状が続けば皮膚科へ相談する |
クレイと似た吸着・洗浄成分の違い
クレイ、炭、シリカ、酵素は、毛穴向け化粧品で並ぶことがありますが、同じ成分ではありません。汚れへの働き方と刺激の出方が異なり、強そうな成分を重ねても効果が増すとは限りません。
カオリンとベントナイトは膨らみ方が異なる
カオリンは比較的膨らみにくく、粉体やパックの基剤として広く使います。ベントナイトは水を含むと膨らみ、粘度を出しやすいため、密着感のあるペーストを作るのに向く鉱物です。
モンモリロナイトはベントナイトの主な構成鉱物で、両者を完全な別物として比べられない場合があります。成分名だけで刺激の強さを決めず、処方全体と使用時間を見てください。
炭やシリカはクレイと同じ粘土鉱物ではない
炭は多孔質な炭素系材料で、表面へ物質を吸着する性質を利用します。シリカは二酸化ケイ素を主とする粉体で、皮脂吸着や感触調整に使います。層状の粘土鉱物ではありません。
酵素洗顔は酵素によって汚れや角質へ働きかける点が、物理的に吸着するクレイと異なります。いずれも洗浄に関わるため、同日に重ねると負担が強くなることがあります。
吸着・洗浄成分の違い
| 成分群 | 主な働き方 | 注意点 |
|---|---|---|
| クレイ | 鉱物粒子が皮脂や汚れを吸着する | 乾燥と摩擦に注意する |
| 炭 | 多孔質の表面へ物質を吸着する | 色や印象だけで洗浄力を判断しない |
| シリカ | 皮脂吸着や感触の調整に使う | 配合目的を成分表示だけで断定しない |
| 酵素 | たんぱく質などの汚れへ作用する | 他の角質ケアと重ねすぎない |
肌質と処方全体を見てクレイ化粧品を選ぶ
脂性肌なら皮脂吸着力だけでなく、使用後につっぱらないかを確認します。混合肌は鼻や額だけに使い、頬は避けると、必要な部分の皮脂を残しやすくなります。
乾燥肌や敏感肌では、香料、精油、スクラブ粒子、複数の洗浄成分も刺激の原因になり得ます。「天然」「毛穴向け」といった表示より、短い放置時間と保湿しやすい処方を優先しましょう。
色、産地、流行だけでは品質や効果を比較できません。使用期限、容器の衛生、注意表示が明確で、化粧品として販売する製品を選び、肌に合わなければ中止してください。
クレイパックの効果と使い方まとめ
クレイパックは、皮脂や汚れによるべたつきを洗い流す補助として取り入れる化粧品です。毛穴やニキビへの過度な期待を避け、短時間、低頻度、十分な保湿を基本にしましょう。
- クレイは複数の粘土鉱物の総称
- 中心的な働きは皮脂や汚れの吸着
- 毛穴を消す成分ではない
- 週1回程度から始めて乾く前に流す
- 炎症性ニキビや湿疹には使わない
赤み、痛み、かゆみ、繰り返すニキビなど気になる症状がある場合は皮膚科を受診してください。
よくある質問
参考文献
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