腰や脚の激痛で歩けなくなったとき、真っ先に確かめてほしいのは排尿と排便の変化です。ここに異常があれば、椎間板ヘルニアの中でも緊急手術の対象になりうる状態で、時間の余裕はありません。
反対に、痛みは激しくても症状が片脚にとどまり、排尿も股まわりの感覚も保たれているなら、当日から翌日の整形外科受診で間に合う場合が大半を占めます。
救急外来へ急ぐ症状と通常の外来で足りる症状、その分かれ目と、痛みが最も強い時期をどう乗り切るかを順に整理しました。夜間や休日の相談先も併せてまとめています。
この記事の執筆者

臼井 大記(うすい だいき)
日本整形外科学会認定専門医
医療社団法人豊正会大垣中央病院 整形外科・麻酔科 担当医師
2009年に帝京大学医学部医学科卒業後、厚生中央病院に勤務。東京医大病院麻酔科に入局後、カンボジアSun International Clinicに従事し、ノースウェスタン大学にて学位取得(修士)。帰国後、岐阜大学附属病院、高山赤十字病院、岐阜総合医療センター、岐阜赤十字病院で整形外科医として勤務。2023年4月より大垣中央病院に入職、整形外科・麻酔科の担当医を務める。
椎間板ヘルニアで激痛が出たとき、すぐ救急へ向かうべきサイン
判断を分けるのは痛みの強さではなく、排尿・排便と股まわりの感覚です。どちらかに変化があれば、その場で救急外来へ向かう場面といえます。
| 気づいた症状 | 疑われる状態 | 向かう先と時間 |
|---|---|---|
| 尿が出ない、漏れる | 馬尾の強い圧迫 | その場で救急外来へ |
| 股や肛門まわりが鈍い | 馬尾の強い圧迫 | その場で救急外来へ |
| 両脚に急に力が入らない | 神経の広い障害 | その場で救急外来へ |
| 足首やつま先が上がらない | 神経根の麻痺 | 当日中に整形外科へ |
| 片脚だけが激しく痛む | 神経根の圧迫 | 翌日までに整形外科へ |
上の三つがそろう状態は馬尾症候群と呼ばれ、背骨の管を走る神経の束が広く押されています。痛みだけの場合と違い、時間が経つほど後遺症が残りやすくなります。
尿が出ない、漏れるときは待たずに救急外来へ
排尿の異常は、椎間板ヘルニアで最も緊急性の高い症状です。膀胱を働かせる神経は腰の下部から出ており、馬尾が強く押されると尿意そのものが鈍り、たまっていても出せない状態に陥ります。
本人が気づきにくいのも、この症状のやっかいなところでしょう。下腹部が張って苦しい、出始めるまでに時間がかかる、済んだあとも残っている感じが消えないといった変化は、いずれも見過ごせない訴えです。
国際的な診療指針を集めた系統的レビューでも、膀胱と直腸の働きの異常は、収載されたすべての指針が危険信号に挙げていました。疑わしい段階で緊急のMRI撮影へ進む点も共通しています。
股や肛門のまわりがしびれるサドル型の感覚障害
自転車のサドルが当たる範囲、つまり股や肛門、内ももの付け根の感覚が鈍る変化を、サドル型の感覚障害と呼びます。馬尾の障害を示す代表的な所見で、排尿の異常と並んで緊急性の高い症状です。
トイレで紙が触れている感じが分からない、下着の感触が左右で違う、座ったときに片側だけ鈍いといった訴えが手がかりになります。激しい痛みに意識が向くため、聞かれて初めて気づく方も多いところです。
先ほどの系統的レビューでは、会陰部の感覚の異常もすべての指針が危険信号に含めていました。診察の場では肛門まわりの感覚や締まり具合まで確かめ、必要に応じて残尿量も測ります。
両脚の急な脱力と足首の麻痺
両脚に同時に力が入らなくなる変化も、馬尾が広く押されている合図です。片脚だけなら一本の神経根の問題ですが、左右にまたがる症状は圧迫の範囲が広いと示します。
立ち上がれない、階段を上がれない、つま先立ちができないといった形で表れます。痛みで動けないのか力そのものが入らないのかは区別しにくく、座ったまま足首を反らせてみると見当がつきます。
片脚でも、足首が上がらず歩くたびにつま先が引っかかる状態は麻痺の一種です。単施設の前向き研究では、中等度から高度の麻痺で72時間以内に治療を受けた群の1年後の完全回復率が高い結果でした。
発熱や体重減少を伴う腰痛は別の原因も疑う
激しい腰痛の背景に、椎間板以外の病気が潜む場合もあります。発熱、理由の分からない体重の減少、がんの治療歴、夜間だけ強まる痛みは、感染や腫瘍を考える手がかりです。
救急外来を受診した腰痛の患者を集めた系統的レビューでは、急を要する重い脊椎の病気が前向き研究で2.5〜5.1%を占めました。脊髄や馬尾の圧迫に限れば0.1〜1.9%という値です。
割合としては多くないものの、見落とせば取り返しがつきません。だからこそ問診では全身の状態まで確かめ、痛みの説明がつかない場合は椎間板以外の原因へ視野を広げていきます。
歩けないほどの痛みが出た直後にできる応急の手当て
まず、痛みがいちばん軽くなる姿勢を探します。無理に立って動こうとするより、楽な体勢を確保するほうが、そのあとの受診も落ち着いて進められます。
痛みが引きやすい寝方と起き上がり方
多くの方が楽に感じるのは、あお向けで膝の下にクッションを入れ、股関節と膝を軽く曲げた姿勢です。腰の反りがゆるみ、神経の通り道に少し余裕が生まれます。
横向きになって膝を抱えるように丸まる姿勢が合う方もいます。どちらが楽かは押されている位置によって変わるため、両方を試して痛みの少ないほうを選ぶと無駄がありません。
起き上がるときは、いったん横を向いてから腕で上体を押し上げ、脚を寝台の外へ下ろす順に動くと腰のひねりが減ります。あお向けから腹筋だけで起きる動きは、椎間板の後ろ側に強い力を集めるため避けたいところです。
冷やすか温めるかの判断
発症から数日は、炎症が強く出ている時期にあたります。このあいだはタオルで包んだ保冷剤を15分ほど当て、間隔をあけて繰り返す方法が向いています。
痛みの急な立ち上がりが落ち着き、動き始めに固まった感じが強くなる時期へ入れば、温めるほうが楽だと感じる方が増えます。入浴で血流が良くなると筋肉の緊張がほぐれ、夜間の眠りにもつながるでしょう。
どちらにも決まった正解はなく、当てて楽なほうを選ぶ姿勢で構いません。ただし感覚の鈍っている部位は温度を感じ取れず、低温やけどや凍傷を起こしやすいため、肌へ直接当てない工夫が要ります。
市販の鎮痛薬でしのぐときの注意
受診までの数時間から半日を市販の消炎鎮痛薬で乗り切る判断は、現実的な選択です。痛みが抑えられて眠れれば体力も保て、翌日の受診にも動きやすくなります。
一方で、薬で痛みが消えたから受診しなくてよい、とはなりません。排尿の異常や脚の脱力は痛み止めでは変わらず、危険信号の有無は薬とは切り離して確かめる必要があります。
胃の弱い方、腎臓の働きが落ちている方、血をさらさらにする薬を飲んでいる方は、飲み合わせに注意が要ります。手持ちの薬とお薬手帳を持参すると、診察の場で処方を決めるまでが早くなります。
受診までのあいだ控えたい動作
- 痛みをこらえて歩き回る
- 腰をひねりながら物を持ち上げる
- 強めのマッサージや自己流の牽引
- 熱い風呂に長く浸かる
- 痛みを試すための前かがみの繰り返し
どれも一時的に楽になったように感じても、炎症の強い時期には症状を押し戻してしまう動きです。かといって動かない時間が長く続くのも良くないため、痛みの出ない範囲でトイレや食事のために起き上がる程度は保っておきます。
激痛で受診先に迷ったときの選び方
危険信号があれば救急外来、なければ整形外科の通常外来という組み立てが基本です。夜間や休日は、電話の相談窓口を挟むと動きやすくなります。
救急外来へ向かう場面
排尿や排便の異常、股まわりの感覚の鈍り、両脚の脱力がそろえば、時間帯を問わず救急外来を受診します。痛みの強さではなく、神経の障害の広がりで判断する場面です。
自力で歩けず、車での移動さえ難しいほど痛むなら、救急車の要請も選択肢に入ります。迷う段階なら、電話相談で症状を伝えてから決める流れが無理のない進め方でしょう。
受診の際は、いつから、どの動作で強まり、どこがしびれるかを整理しておくと診察が早く進みます。飲んでいる薬と、過去に受けた腰の治療歴も伝えると判断の材料が増えます。
整形外科の通常外来で間に合う場面
症状が片脚にとどまり、排尿も感覚も保たれているなら、翌日の整形外科受診で間に合う場合がほとんどです。痛みが激しくても、この条件がそろえば緊急手術の対象にはあたりません。
通常の外来には、時間をかけて診察でき、画像検査の予約からリハビリの手配までを一度に組み立てられる強みがあります。夜間の救急では痛みを抑える処置が中心となり、翌日以降に改めて受診する流れになりがちです。
初めての受診なら、脊椎を専門とする医師のいる整形外科を選ぶと話が早く進みます。予約が取りにくい場合でも、痛みで歩けない状況を電話で伝えれば、当日枠を用意してもらえる場合があります。
夜間や休日に相談できる窓口
判断に迷ったときは、救急安心センター事業の#7119へ電話すると、看護師や相談員が緊急度の見立てを助けてくれます。地域によって実施状況が違うため、住んでいる自治体の案内を一度は確かめておくと安心でしょう。
子どもの相談は#8000が窓口になります。都道府県ごとの救急医療情報センターでは、その時間に対応できる医療機関を案内しています。
電話では、症状の始まった時刻、排尿の状態、脚の力の入り具合を先に伝えると話が早く進みます。相談の途中で意識が遠のく、呼吸が苦しいといった変化があれば、待たずに119番へ切り替えます。
症状別に見た受診先の目安
| いま出ている症状 | 向かう先 | 時間の目安 |
|---|---|---|
| 排尿や排便の異常 | 救急外来 | ただちに |
| 股や肛門まわりの感覚の鈍り | 救急外来 | ただちに |
| 両脚の脱力、足首の麻痺 | 救急外来 | ただちに |
| 片脚の激痛で歩けない | 整形外科 | 当日か翌日 |
| 痛みは強いが歩ける | 整形外科 | 数日以内 |
| 緊急度の判断に迷う | #7119などの窓口 | 迷った時点で |
上の三つは、いずれも馬尾の障害を疑う症状です。下の三つは痛みの強さに差はあっても神経の障害が広がっていない状態で、通常の外来の枠で診ていく組み立てになります。
救急外来で椎間板ヘルニアを疑われたあとの検査の流れ
到着してすぐMRIを撮るとは限りません。まず問診と神経の診察で緊急性を切り分け、必要と判断した場合に画像検査へ進みます。
問診と神経の診察でまず絞り込む
聞き取りの中心は、痛みが始まった時刻、きっかけになった動作、症状の広がり方です。数時間で急に悪化したのか、数週間かけて強まったのかによって、想定する状態が変わります。
診察台では、あお向けのまま脚を伸ばして持ち上げる検査を行います。浅い角度のうちから脚へ痛みが走れば、神経の根元が引っ張られている状態を示す所見です。
あわせて膝とアキレス腱の反射、足の甲と裏の感覚、つま先立ちとかかと立ちを左右で比べます。馬尾を疑う場面では、肛門まわりの感覚や締まり具合、残尿量の測定まで踏み込みます。
緊急でMRIを撮るのはどんなとき?
馬尾症候群を疑う所見がそろえば、夜間であっても緊急でMRIを撮ります。神経を押している中身と位置、圧迫の広がりを確かめないと、手術へ進むかどうかを決められないためです。
国際的な指針を集めた系統的レビューでも、危険信号がある場合は緊急のMRI撮影を行うという点で見解が一致していました。翌朝まで撮影を待つ判断は、限られた状況にとどまります。
レントゲンでは骨の並びと椎間の隙間しか写らず、やわらかい髄核そのものは見えません。ただし転倒や事故のあとであれば、骨折の有無を確かめる目的でレントゲンやCTを先に撮る場合もあります。
検査ごとに分かること
| 調べる方法 | 分かること | 苦手なところ |
|---|---|---|
| 問診 | 発症の時刻と経過 | 本人の記憶に左右される |
| 神経の診察 | 障害された神経の高さ | 軽い圧迫は捉えにくい |
| 残尿の測定 | 膀胱の働きの低下 | 単独では診断できない |
| レントゲン | 骨の並びと骨折の有無 | 髄核は写らない |
| MRI | 脱出した髄核の位置と広がり | 無症状の所見も写る |
どの方法にも守備範囲と限界があり、単独で結論は出せません。緊急性の判断は診察が担い、画像はその裏づけとして働くという分担を押さえておくと、検査の流れが見通しやすくなります。
入院して手術へ進む場合と、帰宅して外来で診る場合
馬尾の障害が確かめられれば、そのまま入院して緊急手術の準備に入ります。神経の圧迫を取り除くまでの時間が短いほど、排尿の働きや筋力の戻りが良いと分かっているためです。
25例を扱った検討では、症状が出てから48時間以内に手術を受けた方に感覚の完全な回復が多く見られました。18例の報告でも、48時間以内に手術を受けた完全型の患者で尿失禁が残った方はいません。
危険信号がなければ、痛み止めを処方したうえで帰宅し、翌日以降に整形外科の外来で改めて診る流れが一般的です。帰宅後に排尿の異常や脚の脱力が出た場合は、その時点で救急外来へ引き返します。
歩けない状態から日常へ戻していく保存療法
飛び出した椎間板は、時間とともに縮んでいく場合が多いと分かっています。危険信号がなければ、薬と生活の工夫で経過をみる方針が治療の中心になります。
痛みの強い時期に使う薬
最初に用いるのは消炎鎮痛薬で、神経の周りに起きた炎症を抑える狙いがあります。しびれや電気の走るような痛みが強ければ、神経の痛みに向く薬を組み合わせます。
痛みで眠れない日が続けば、体力も気力も落ちていくでしょう。夜間の睡眠を確保する目的で、就寝前の服用時刻を調整したり、筋肉の緊張をゆるめる薬を足したりする組み立ても行います。
痛みの程度は日ごとに揺れるため、薬の効き方も一定ではありません。効かないと感じた時点で自分の判断で量を増やすより、次の診察で経過を伝えて処方を見直すほうが、結果として早く落ち着きます。
ブロック注射に踏み出す場面
薬で痛みが抑えきれない、眠れない日が続く、仕事や生活が立ち行かないといった状況では、神経の周りへ薬を届けるブロック注射が選択肢に入ります。
椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛を対象にした系統的レビューとメタアナリシスでは、硬膜外へのステロイド注射が3か月以内と6か月以内の痛みの軽減に働くと示されました。長期の効果は限られていました。
同じ検討では、神経の働きそのものの改善は確かめられず、麻薬性鎮痛薬の使用量が減った点が示されています。痛みの山を越えるための手段ととらえ、運動療法へつなぐ足がかりにすると役立ちます。
安静に寝ていたほうが早く治る?
痛みの激しい数日は横になって過ごす時間が増えますが、そのまま寝込み続ける方針はすすめません。長い臥床は筋力と柔軟性を落とし、腰を支える力まで削ってしまいます。
急性の腰痛と坐骨神経痛を扱ったコクランの系統的レビューでは、安静を勧める指導と活動を保つよう勧める指導のあいだに、坐骨神経痛ではほとんど差が見られませんでした。
痛みの許す範囲でトイレや食事のために起き上がり、家の中を短く歩く程度は保っておきます。痛みが引くにつれて歩く距離を延ばし、体幹を支える運動へ移していく順序が、再発を遠ざける近道になります。
飛び出した組織が縮んでいく経過
脱出した髄核は、体の免疫の働きによって分解され、時間とともに小さくなっていきます。この変化があるからこそ、危険信号のない激痛は経過をみる価値があるといえます。
メタアナリシスでは、自然に縮む割合が全体で約67%と報告されました。線維輪を破って外へ出た型ほど縮みやすく、内側にとどまる膨らみ型では割合が低くなります。
縮んでいく変化の多くは、保存療法を始めてから3〜6か月のあいだに起こります。痛みの引き方には波があるため、良い日と悪い日を行き来しながら少しずつ底上げされていくと考えておくと、気持ちの負担も軽くなるでしょう。
時期ごとの過ごし方の目安
| 時期 | 主な目標 | 過ごし方 |
|---|---|---|
| 発症〜数日 | 炎症と痛みを抑える | 楽な姿勢で休み、短く動く |
| 1〜2週 | 動ける範囲を広げる | 家の中の歩行から始める |
| 2〜6週 | 生活の動作を取り戻す | 散歩と軽い体幹の運動 |
| 6週〜3か月 | 仕事と体力を戻す | 運動療法を続ける |
| 3〜6か月 | 再発を遠ざける | 姿勢と持ち上げ方を見直す |
区切りはあくまで目安で、進み方には大きな幅があります。数日で歩けるようになる方もいれば1か月かかる方もいて、途中で足踏みする日があっても心配は要りません。
椎間板ヘルニアで手術を急ぐ場合と待てる場合
痛みが激しいほど手術が近い、と考える方は多いものです。実際に急ぐのは、馬尾の障害と、進行する筋力の低下がある場面に限られます。
馬尾症候群は時間との勝負
排尿や排便の障害、会陰部の感覚の鈍り、両脚の脱力がそろう馬尾症候群は、緊急手術の対象です。圧迫を取り除くまでの時間が長引くほど、働きの戻りは鈍くなります。
25例の検討では、症状が出てから48時間以内に手術を受けた方で感覚の回復が良好でした。ただし膀胱の働きが戻った方は36%、腸の働きは44%にとどまり、早く手術を受けても後遺症の残る場合はあります。
だからこそ、症状に気づいた時点で動く判断が要ります。夜だから朝まで待つ、週末だから月曜に受診する、といった先送りが最も避けたい選択でしょう。
筋力の低下が進むとき
足首が上がらない、つま先立ちができないといった麻痺が出た場合も、早い対応が結果を左右します。前向きの単施設研究では、中等度から高度の麻痺で72時間以内に治療を受けた群の1年後の完全回復率が高い結果でした。
麻痺は痛みほど本人を追い立てないため、気づくのが遅れがちです。歩くたびにつま先が引っかかる、スリッパが脱げる、階段で足を高く上げてしまうといった変化が手がかりになります。
痛みが和らいだのに力が入らないままという経過にも注意が要ります。炎症だけが引いて神経の圧迫は続いている状態がありうるため、痛みの軽快だけで安心せず、力の入り具合を左右で比べておきます。
痛みが長引くときの判断
危険信号がなければ、数週間から数か月の経過をみてから手術を検討します。急ぐ理由のない状況で早く手術を受けても、長い目で見た結果は大きく変わらないと分かっています。
6〜12週続く強い坐骨神経痛の283人を対象にした比較試験では、早期に手術を受けた群のほうが痛みの引きは速いという結果でした。ただし1年後の回復の程度は、経過をみた群と差がありませんでした。
経過をみた群のうち44%は、その後に手術を受けています。急いで決めなくてよい一方、痛みが生活を壊し続けるなら手術に踏み切る意味は十分にあり、時期は担当医と相談しながら決めていきます。
手術を急ぐ判断につながる症状
- 尿が出ない、または漏れてしまう
- 便意が分からない、便が漏れる
- 股や肛門のまわりの感覚が鈍い
- 両脚に力が入らない
- 足首やつま先が上がらず、悪化している
並んでいるのは、いずれも痛みとは別の軸で緊急性を示す変化です。逆にいえば、これらがなければ激しい痛みそのものは、時間と治療で和らいでいく見通しが立つと考えて差し支えありません。
よくある質問
- 椎間板ヘルニアで歩けないほどの激痛があるとき、救急車を呼んでよいですか?
-
排尿や排便の異常、股まわりの感覚の鈍り、両脚の脱力を伴う場合は、迷わず119番へ連絡して差し支えありません。痛みだけであっても、自力での移動が難しければ要請の対象になります。
判断に迷う段階なら、救急安心センター事業の#7119へ電話し、症状を伝えたうえで決める方法もあります。
- 椎間板ヘルニアの激痛はどのくらいで和らぎますか?
-
多くは数日から数週間かけて山を越え、日常の動作が戻っていきます。飛び出した髄核が縮んでいく変化は、保存療法を始めてから3〜6か月のあいだに進むと報告されています。
引き方には波があり、良い日と悪い日を行き来しながら底上げされる経過が一般的です。
- 椎間板ヘルニアで尿が出にくいとき、朝まで様子を見てもよいですか?
-
排尿の異常は、椎間板ヘルニアの中で最も緊急性の高い症状です。夜間であっても救急外来を受診する場面で、朝まで待つ判断はすすめられません。
馬尾が押された状態では、圧迫を取り除くまでの時間が長引くほど働きの戻りが鈍くなります。下腹部の張りや残っている感じも、同じ意味を持つ変化です。
- 椎間板ヘルニアの激痛があるとき、マッサージや整体を受けても大丈夫ですか?
-
炎症の強い時期に外から強い力を加えると、症状が押し戻される場合があります。まず診断を受け、危険信号の有無を確かめてから判断する順序が安全です。
診断がついたあとの運動療法やリハビリは回復を支えます。どの時期に何を行うかは、担当医や理学療法士と相談しながら決めていくと無理がありません。
- 椎間板ヘルニアで歩けない状態になると、手術は避けられませんか?
-
歩けないほどの痛みがあっても、それだけで手術が決まるわけではありません。馬尾の障害や進行する麻痺がなければ、薬と運動療法で経過をみる方針が中心になります。
6〜12週続く坐骨神経痛を対象にした比較試験でも、1年後の回復の程度は早期に手術を受けた群と経過をみた群で差がありませんでした。
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