ポテンツァは、肝斑に対して真皮(しんぴ)レベルから働きかけられる数少ないRFマイクロニードル治療器です。
従来のレーザートーニングでは表皮のメラニンを砕くことはできても、色素を作り続ける真皮の環境そのものには手を出しにくいという課題がありました。
ポテンツァの肝斑専用チップ(S-16)は、半絶縁針を通じて真皮だけに高周波エネルギーを届け、コラーゲンの再構築と基底膜の修復をうながします。その結果、メラノサイト(色素細胞)の過剰な活動が穏やかになり、肝斑の改善と再発予防の両面で効果が期待できるとされています。
この記事では、肝斑チップの作用原理から治療回数・費用の目安、悪化リスクとその対策、さらには他の治療との組み合わせまで、診察室で患者さんからよくいただく疑問に答える形で解説します。
この記事の執筆者

小林 智子(こばやし ともこ)
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長
2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。
こばとも皮膚科関連医療機関
ポテンツァは肝斑に効く?従来レーザーでは難しかった理由
ポテンツァは肝斑治療の選択肢として有力です。肝斑が「治しにくいシミ」と言われてきた背景には、表皮だけでなく真皮の慢性的な変化が深く関わっており、従来のレーザーではその部分に十分にアプローチできなかったことがあります。
肝斑が「消えない・再発する」と言われるのはなぜか
肝斑は、紫外線・女性ホルモン・摩擦刺激などが複合的に絡んで起こる色素沈着です。通常のシミ(老人性色素斑)と異なり、メラノサイトが慢性的に刺激を受け続けているため、一度薄くなっても再び濃くなるケースが少なくありません。
近年の研究では、肝斑のある皮膚では真皮の線維芽細胞が老化(細胞老化)し、メラノサイトを活性化させるシグナル物質を過剰に放出していることが報告されています。
つまり肝斑は表皮だけの問題ではなく、真皮の「土壌」が変わらない限り再発しやすいといえます。
ポテンツァのRFマイクロニードルが肝斑に選ばれる根拠
ポテンツァは、極細の針を皮膚に挿入し、針先から高周波(RF)エネルギーを真皮へ直接照射する治療器です。針の軸に絶縁加工が施されているため、表皮へのダメージを最小限に抑えながら真皮だけを加熱できます。
真皮が適度に加熱されるとコラーゲンの新生が起こり、老化した線維芽細胞の入れ替わりが促進されます。その結果、メラノサイトを過剰に刺激していた物質が減少し、肝斑の色が穏やかになるという流れです。
レーザートーニング単独では肝斑が再発しやすかった背景
Qスイッチ Nd:YAGレーザーによるトーニングは、低出力でメラニンを少しずつ砕く治療法として広く使われています。しかし、表皮のメラニンには効果があっても、真皮環境の改善までは難しいとされてきました。
炎症後色素沈着(PIH)のリスクも見逃せません。フィッツパトリック分類III〜Vの肌タイプ、すなわちアジア人に多い肌色では、レーザー単独でPIHやリバウンドが起きやすいことが複数の研究で示されています。
ポテンツァは表皮への熱損傷を抑える設計のため、PIHの発生率が低い点が大きな違いです。
| 比較項目 | レーザートーニング | ポテンツァ(RF) |
|---|---|---|
| 主な作用部位 | 表皮のメラニン | 真皮の線維芽細胞 |
| PIHリスク | やや高い | 低い |
| 再発予防 | 限定的 | 真皮環境を改善 |
肝斑チップ(S-16)が色素にアプローチする仕組み
ポテンツァの肝斑チップS-16は、2MHzのバイポーラ高周波を半絶縁針から照射し、表皮を傷つけずに真皮のみをピンポイントで加熱します。表皮温存と真皮リモデリングの両立が、肝斑治療に適している最大の理由です。
半絶縁針が表皮を守りながら真皮へ熱を届ける
ポテンツァの針は軸の部分が絶縁コーティングされ、先端だけが通電します。針が皮膚に入ると、先端周囲の真皮組織だけにRFエネルギーが流れ、表皮は通電しません。
この構造によって表皮のバリア機能を維持しながら真皮を加熱でき、炎症後色素沈着のリスクが大幅に下がります。
照射の深さは0.5〜1.0mm程度に設定されることが多く、出力は3〜5W、パルス幅は10ms前後が一般的な条件です。施術者は患部の厚みや肌質に合わせてパラメータを細かく調整します。
真皮リモデリングがメラノサイトの過活動を落ち着かせる
肝斑のある皮膚では、真皮の線維芽細胞がp16INK4Aという老化マーカーを高発現し、エンドセリン-1やbFGFといったメラノサイト刺激因子を大量に分泌しています。
ポテンツァの熱刺激はこの老化線維芽細胞のターンオーバーを促進し、プロコラーゲン1の産生を増やすと報告されています。
IV型コラーゲンの増加による基底膜の修復も確認されており、表皮と真皮の境界が安定することでメラニンの真皮側への漏出が抑えられます。つまり、ポテンツァは「色素を壊す」のではなく「色素をつくりにくい環境を整える」治療と言い換えることができるでしょう。
ドラッグデリバリーで有効成分を肌の奥へ送り届ける
マイクロニードルが皮膚に開ける微細な穴(マイクロチャネル)を通じて、トラネキサム酸やシステアミンなどの美白成分を真皮層まで浸透させる方法も注目されています。ポテンツァの施術直後にこれらの薬剤を塗布すると、通常の外用よりも高い浸透効率が得られます。
ただし、どの薬剤を組み合わせるかによって効果には差があります。トラネキサム酸やシステアミンとの併用では有意なmMASIスコアの改善が報告されていますが、すべての薬剤で同じ効果が出るわけではありません。
医師と相談のうえ、肌状態に合った薬剤を選びましょう。
- トラネキサム酸:メラノサイトへのシグナル伝達を抑制し、色素産生を穏やかにする
- システアミン:チロシナーゼ活性を阻害し、メラニン合成を抑える作用が報告されている
- ポリヌクレオチド:組織修復を促すが、肝斑への上乗せ効果は限定的との報告もある
ポテンツァの肝斑治療に必要な回数・間隔・費用
3〜5回の施術を1か月おきに受けるのが一般的なプランです。ただし肝斑の重症度や肌タイプによって回数は前後するため、主治医と相談しながら治療計画を立てることが大切です。
治療回数と施術間隔はどれくらいか
臨床研究では、2週間〜4週間おきに3〜5回の施術を行うプロトコルが多く採用されています。1回の施術時間はおよそ20〜30分で、施術前に30分ほど麻酔クリームを塗布する時間が別途かかります。
肝斑は慢性的な疾患であるため、初期治療で改善が得られた後もメンテナンスが重要になります。研究報告では、初期治療後に月1回のメンテナンス照射を6か月継続したグループは、メンテナンスを行わなかったグループに比べて再発率が大幅に低かったとされています。
ポテンツァの肝斑治療にかかる費用相場
ポテンツァの肝斑治療は自由診療のため、クリニックによって価格差があります。1回あたり3万〜6万円程度が目安で、初回はカウンセリング料や麻酔代が別途加算される場合もあるでしょう。
5回コースで15万〜25万円前後に設定しているクリニックが多い傾向です。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| 1回あたりの費用 | 3万〜6万円 |
| 推奨回数 | 3〜5回 |
| 施術間隔 | 2〜4週間ごと |
| メンテナンス | 月1回を推奨 |
メンテナンス照射で肝斑の再発を抑える
肝斑は完治が難しい慢性疾患です。初期治療で色素が薄くなったとしても、紫外線やホルモン変動をきっかけに再び濃くなる方は珍しくありません。
韓国で行われた無作為化比較試験では、初期治療後に月1回のポテンツァ照射を続けた側の顔は色素改善が維持されたのに対し、メンテナンスを行わなかった側は6か月後に63.6%が治療前の状態に戻ったと報告されています。
費用はかかりますが、定期的なメンテナンスは長期的に見て効果を維持するうえで重要な投資といえるでしょう。
ポテンツァで肝斑が悪化する?リスクと対策を確認
ポテンツァによる肝斑の悪化リスクはゼロではありませんが、従来のレーザー治療と比較すると低いことが複数の研究で確認されています。リスクを正しく理解し、対策を行うと安心して治療に臨めます。
炎症後色素沈着(PIH)が起こる可能性は低い
ポテンツァは表皮を温存する設計のため、レーザー治療に比べて炎症後色素沈着(PIH)の発生率が低い傾向にあります。複数の臨床研究でPIHの発生が0%だったとの報告があり、フィッツパトリックIII〜Vの肌でも安全に使えることが示されています。
一方、レーザートーニング単独では施術後にリバウンド的な色素増強が29%の症例でみられたという報告もあるため、表皮にダメージを与えにくいポテンツァの特徴は肝斑治療において優位に働きます。
施術後に肝斑が一時的に濃くなるケース
施術直後の赤み(紅斑)や軽い腫れはほぼ全員に生じますが、通常60〜90分で落ち着きます。まれに一過性の色素増強が見られることがありますが、多くは数週間で元に戻るとされています。
施術後の肌は一時的にバリア機能が低下するため、紫外線を浴びると色素が濃くなりやすい状態です。施術後72時間は洗顔を控え、保湿と日焼け止めを徹底することが求められます。
リスクを下げるために医師が行う工夫
照射出力と針の深さを肌質に合わせて調整することが、安全な施術のポイントです。肝斑が薄い部分には浅めの0.5mm、やや厚い部分には1.0mmと、部位ごとに深さを変える医師もいます。
照射前に肌の状態を十分に観察し、炎症やかぶれがある場合は施術日を延期する判断も大切です。また施術後にコールドパックを当てて肌を鎮静させると、赤みや熱感の持続を最小限に抑えられます。
| 副反応 | 頻度 | 持続時間 |
|---|---|---|
| 紅斑・腫れ | ほぼ全員 | 60〜90分 |
| 軽い痛み | VAS 2.0〜3.8 | 施術中のみ |
| PIH | きわめて低い | — |
施術後のセルフケアと紫外線対策
施術後は肌のバリアが一時的に薄くなるため、低刺激の保湿剤でしっかり水分を補い、SPF50以上の日焼け止めを毎日塗り直してください。帽子や日傘による物理的な遮光も効果的です。
紫外線対策は施術期間中だけでなく、肝斑治療を終えた後も生涯にわたって続ける必要があります。どれほどポテンツァで真皮環境を整えても、紫外線ダメージが加われば肝斑は再燃する可能性があるからです。
ポテンツァと他の肝斑治療を組み合わせると効果は上がるのか
単独でも効果は期待できますが、内服薬やレーザートーニングと組み合わせることで相乗効果が得られるケースが増えています。肝斑は多因子疾患のため、複数のアプローチを重ねるほうが長期的な改善につながりやすいといえます。
内服薬(トラネキサム酸)との併用で色素を両面から攻める
トラネキサム酸の内服は、メラノサイトへの刺激シグナルを全身から抑える治療法です。ポテンツァで真皮環境を改善しながら、内服薬で色素合成の上流を抑えると、単独治療よりも効率よく色素を減らせます。
初期治療の2か月間はトラネキサム酸の内服と外用トリプルコンビネーションクリームを併用し、その後はポテンツァのメンテナンス照射で効果を維持するプロトコルを採用した研究もあります。
レーザートーニングとの同時施術で相乗効果を狙う
低出力Qスイッチ Nd:YAGレーザーとポテンツァを同日に施術する方法は、表皮と真皮の両方に同時にアプローチできる点が特長です。レーザーが表皮のメラニンを砕き、ポテンツァが真皮の環境を整えるため、互いの弱点を補い合えます。
韓国の複数の研究では、この併用療法がレーザー単独よりもmMASI(修正メラズマ面積重症度指数)を有意に低下させたと報告されています。さらにリバウンド的な色素増強の割合も、併用群18%に対しレーザー単独群は29%と差が出ました。
| 治療法 | mMASI改善幅 | リバウンド率 |
|---|---|---|
| レーザー単独 | 1.8ポイント | 29% |
| レーザー+ポテンツァ | 2.9ポイント | 18% |
外用薬やホームケアを加えた包括的なケア
クリニックでの施術だけでなく、自宅での外用ケアを組み合わせると効果の持続が期待できます。ハイドロキノンやシステアミンクリームを処方されるケースもあり、毎日の塗布が色素の再増加を予防します。
外用薬の効果を最大限に引き出すためには、正しい使用量と塗布順序を医師から確認してください。保湿→外用薬→日焼け止めの順序が基本です。
- ハイドロキノン:メラニン合成を抑制し、肝斑の色素を徐々に薄くする代表的な美白剤
- トレチノイン:表皮のターンオーバーを促進し、メラニンの排出を助ける
- 日焼け止め(SPF50以上):治療効果を守るための最も基本的かつ重要なケア
ポテンツァの肝斑治療を受ける前に確認しておくべきポイント
肝斑かどうかを正確に見極めることが、治療成功の第一歩です。肝斑と似た別のシミに間違った治療を行うと、かえって色素が濃くなる恐れがあるため、まずは皮膚科専門医による診断を受けましょう。
肝斑かどうかの正確な診断が治療の出発点
肝斑は頬骨の上を中心に左右対称に広がる褐色〜灰褐色の色素斑ですが、老人性色素斑やADM(後天性真皮メラノサイトーシス)と混在することがあります。ウッドランプ検査やダーモスコピーで色素の深さや分布を確認し、正確に分類することが治療方針の決定に直結します。
自己判断で市販の美白クリームを塗り続けてしまうと、かえって肌への刺激が肝斑を悪化させるケースもあるため注意が必要です。
ダウンタイムと施術当日の過ごし方
ポテンツァのダウンタイムは比較的短く、施術直後の赤みは60〜90分で引く方がほとんどです。翌日からメイクが可能な場合が多く、日常生活への影響は小さいでしょう。
施術当日は激しい運動やサウナ、飲酒を避け、肌に余計な熱がこもらないようにしてください。洗顔は当日夜からぬるま湯で優しく行い、こすらないことが大切です。
ポテンツァの肝斑治療が向いている人・慎重になるべき人
レーザートーニング単独では再発を繰り返していた方や、肌色が濃い方(フィッツパトリックIII以上)でPIHを心配している方は、ポテンツァの良い適応になります。トラネキサム酸の内服と併用すると、より安定した改善が見込めるでしょう。
| 向いている方 | 慎重になるべき方 |
|---|---|
| レーザーで再発を繰り返す方 | 妊娠中・授乳中の方 |
| PIHを避けたい肌色の濃い方 | 治療部位に炎症がある方 |
| ダウンタイムを短くしたい方 | ペースメーカー装着の方 |
よくある質問
- ポテンツァの肝斑チップは何回の施術で効果を実感できますか?
-
多くの場合、3〜5回の施術を経て色素の改善を実感される方が多い傾向にあります。施術間隔は2〜4週間おきが一般的で、1回ごとに少しずつ真皮のコラーゲンが再構築され、肝斑の色が穏やかになっていきます。
ただし肝斑の深さや範囲、肌質には個人差があるため、必要な回数は一律ではありません。初回のカウンセリングで医師と相談し、無理のないペースで治療計画を立てることをおすすめします。
- ポテンツァで肝斑治療をした後にダウンタイムはありますか?
-
施術直後は赤み(紅斑)や軽い腫れが出ますが、ほとんどの方で60〜90分以内に落ち着きます。翌日からメイクが可能な場合が多く、日常生活への支障はほとんどありません。
施術後72時間は強い洗顔や摩擦を避け、保湿と日焼け止めの徹底をお願いしています。まれに軽い乾燥やかさつきが数日続くことがありますが、通常は1週間以内に回復します。
- ポテンツァの肝斑治療は痛みが強いですか?
-
痛みの感じ方には個人差がありますが、臨床研究ではVAS(視覚アナログスケール)で10段階中2.0〜3.8程度と報告されており、「軽度〜中等度」の痛みにとどまります。施術前に麻酔クリームを30分ほど塗布するため、痛みを強く感じる方は少ない傾向です。
それでも痛みに敏感な方は、施術前に医師へ申し出てください。麻酔の量や塗布時間を調整することで、より快適に施術を受けられます。
- ポテンツァは肝斑以外のシミや色素沈着にも使えますか?
-
ポテンツァは肝斑以外にも、ニキビ跡の色素沈着や毛穴の開き、小じわ、肌のハリ改善など幅広い肌悩みに対応できる治療器です。チップを交換することで出力や針の配置を変えられるため、目的に合わせた施術が可能です。
ただし老人性色素斑(いわゆるシミ)の場合はレーザー治療のほうが効率的なこともあるため、どの治療が適しているかは医師の診断に基づいて判断してください。
- ポテンツァの肝斑治療後に日焼け止めはどの程度必要ですか?
-
日焼け止めは施術直後だけでなく、肝斑治療を続ける限り毎日欠かさず塗ることが求められます。SPF50・PA++++以上の製品を選び、2〜3時間おきに塗り直すのが理想です。
紫外線対策を怠ると、ポテンツァで整えた真皮環境が再び乱れ、肝斑が再燃するリスクが高まります。日焼け止めに加えて、帽子やサングラス、日傘を併用し、物理的に紫外線を遮るのも効果的です。
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