透析患者さんの夏の過ごし方|熱中症対策と水分・体調管理のコツ

透析患者さんの夏の過ごし方|熱中症対策と水分・体調管理のコツ

透析治療を受けている方にとって、夏は体調を崩しやすい季節です。水分制限がある中での暑さ対策は、一般の方以上に慎重な工夫を必要とします。

汗をかきやすくなる一方で、飲水量をむやみに増やせない透析患者さんは、脱水と水分過多のどちらにも注意しなければなりません。食事中の塩分やカリウムへの配慮も、暑い時期にはいっそう大切です。

この記事では、透析患者さんが夏を安全に乗り切るための熱中症対策、水分管理、食事の工夫、日常生活での注意点を幅広くお伝えします。主治医やスタッフと相談しながら、ご自身に合った対策を見つけるきっかけにしてください。

目次

透析患者さんが夏に体調を崩しやすい理由と熱中症リスク

透析を受けている方は、腎臓の機能が低下しているために体温調節や水分バランスの維持が難しく、夏場の熱中症リスクが一般の方より高くなります。その背景には、透析治療そのものが身体に与える影響と、暑さへの適応力の低下が関係しています。

腎機能の低下が体温調節に与える影響

健康な腎臓は、体内の水分量や電解質のバランスを細かく調節し、汗をかいたあとの回復にも深く関わっています。しかし腎機能が低下した透析患者さんでは、この調節能力が大幅に落ちているため、暑さに対する身体の適応が追いつきにくくなります。

さらに、透析治療で定期的に体内の水分を除去していることから、治療直後は特に脱水に近い状態になります。気温が高い日に透析後の外出をすると、ふらつきや立ちくらみが起きやすくなるのはこのためです。

透析患者さんに特有の熱中症リスクとは

高血圧の治療薬や利尿薬など、透析患者さんが服用していることの多い薬には、発汗や血圧調節に影響を及ぼすものがあります。こうした薬の作用が夏場の暑さと重なると、体内の熱を外に逃がす力が弱まりかねません。

糖尿病を合併している場合は、自律神経の障害によって発汗機能がさらに低下し、体温が上がりやすくなることもあるでしょう。国際的な研究では、透析患者さんの死亡リスクが高温多湿の環境下で上昇するという報告も出ています。

「自分は大丈夫」と思い込むことの危険性

熱中症の初期症状は、透析後のだるさや軽い頭痛と似ているため、見過ごされがちです。「いつものことだろう」と放置してしまうと、症状が急速に悪化する恐れがあります。

透析日以外でも体調の変化に敏感になり、普段と違う倦怠感やめまいを感じたら、早めに涼しい場所へ移動して身体を冷やすことが大切です。周囲のご家族にも熱中症のサインを共有しておくと安心でしょう。

熱中症の初期サインと対応

サイン症状の例対応
軽度めまい、立ちくらみ、大量の汗涼しい場所で休む
中等度頭痛、吐き気、身体のだるさ身体を冷やし医療機関へ連絡
重度意識がもうろう、けいれん救急車を呼ぶ

夏場の水分管理で透析患者さんが気をつけたいポイント

水分制限のある透析患者さんにとって、夏の水分管理は「飲みすぎないこと」と「脱水を防ぐこと」の両立が求められる難しい課題です。どちらに偏っても体調を崩す原因になるため、日々の体重変化を目安にしながら調節していく方法が有効になります。

透析間の体重増加(IDWG)を夏場に意識する

透析と透析の間に増える体重は、おもに水分と塩分の蓄積によるものです。夏は発汗で失われる水分が増える分、のどの渇きを感じやすくなり、つい飲みすぎてしまうことがあります。

国際的な調査では、気温が高い季節には透析間の体重増加が冬より少なくなる傾向が報告されています。しかしこれは「夏は水分を多めにとってよい」という意味ではなく、発汗量と飲水量のバランスが変わるためです。

のどの渇きをうまくコントロールする工夫

夏場の激しいのどの渇きは、塩分の摂りすぎが原因になっていることが少なくありません。食事の塩分を控えると、渇きそのものが和らぎ、飲水量を無理なく抑えられるようになります。

氷を少しずつ口に含む、レモン水でうがいをする、冷たいタオルで首元を冷やすなどの方法も、直接水分をとらずに爽快感を得る手段として効果的です。ただし氷も水分に含まれるため、量を把握しておくことを忘れないでください。

脱水のサインを見逃さないために

透析患者さんの脱水は、血圧の低下やふらつき、口の中のねばつきとして現れることがあります。尿量がもともと少ない方では尿の色で判断しにくいため、体重の急な減少や強い倦怠感を目安にすると分かりやすいかもしれません。

透析日でないときに体重が急に減っている場合は、発汗で水分が失われすぎている可能性があります。次の透析までに体調が悪化しないよう、少量ずつ水分を補いながら涼しい環境で過ごすことが大切です。異変を感じたら自己判断せず、透析施設へ連絡しましょう。

夏の水分管理で覚えておきたいこと

  • 毎日同じ時間に体重を測り、変化を記録する
  • 塩分を控えるとのどの渇きが和らぐ
  • 氷やレモン水のうがいで飲水量を抑える工夫をする
  • 透析間体重増加はドライウェイトの3〜5%以内を目標にする

透析中・透析後の夏の体調管理で実践したい習慣

「透析の日はいつも以上にだるい」と感じる夏場、その原因は気温と透析による身体への負担が重なっていることにあります。透析中と透析後の過ごし方を少し工夫するだけで、体調の波を小さくすることが可能です。

透析中の血圧低下(透析中低血圧)を防ぐには

暑い日に透析を受けると、除水(体内から余分な水分を取り除く処理)の際に血圧が急激に下がりやすくなります。これは、暑さによる末梢血管の拡張と除水が同時に起こるためです。

透析前に長時間炎天下を歩いたり、冷房のない場所で過ごしたりすると、透析中の血圧低下リスクがさらに高まります。透析に向かう際はなるべく涼しいルートを選び、到着後も身体をしっかり冷ましてから治療に臨むようにしましょう。

透析後の外出で注意すべき時間帯

透析直後は、体内の水分が減少しているため、暑い屋外に出るとふらつきや気分不快を起こしやすくなります。特に正午前後から午後3時ごろまでは気温がもっとも高くなる時間帯です。

可能であれば、午前中の早い時間に透析を終えて昼の暑さを避けるか、透析後は施設内で30分ほど休んでから帰宅するのがよいでしょう。帰宅時にはタクシーや家族の送迎を利用し、徒歩での長時間移動を避ける工夫も有効です。

夏に透析スケジュールを見直す相談をしてみる

猛暑日が続く時期には、透析のスケジュールや除水量の設定について主治医と相談してみてください。体重増加の傾向が夏場に変わる方もいるため、透析条件の微調整が体調の安定につながることがあります。

降圧薬の量を夏の間だけ調整するケースもあり、これは暑さによる血圧低下と薬の効果が重なりすぎるのを防ぐためです。薬の変更は必ず医師の判断のもとで行ってください。

場面工夫の内容
透析前涼しい環境で過ごし、体温を下げてから来院する
透析中寒さを感じたらブランケットを使い、血圧変動を和らげる
透析後施設内で休息をとり、暑い時間帯の外出を避ける

夏の食事で透析患者さんが意識したい塩分・カリウム・栄養バランス

暑い季節は食欲が落ちやすく、栄養バランスが偏りがちです。透析患者さんの場合、塩分とカリウムの管理は一年を通じて大切ですが、夏は特に果物や生野菜を多くとる機会が増えるため、カリウムの摂取量に注意が必要になります。

塩分を控えることが水分管理の第一歩

食事中の塩分が多いと身体は水分を溜め込もうとし、のどの渇きも強くなります。夏はそうめんや冷やし中華など、めんつゆや調味料で塩分が増えやすいメニューが多くなるため、味付けを工夫することが欠かせません。

だしの風味や酢、レモン、香辛料を活用すると、塩分を減らしても物足りなさを感じにくくなります。加工食品や漬物など、見た目以上に塩分が含まれている食品にも気をつけてください。

夏に増えがちなカリウムの摂取をどう管理するか

スイカやメロン、バナナ、トマトなど、夏に旬を迎える果物や野菜にはカリウムが豊富に含まれています。カリウムは体内に蓄積すると不整脈の原因になりうるため、透析患者さんにとっては摂取量の管理が大切です。

野菜は茹でこぼしてから使うとカリウムを減らせます。果物は種類と量を選んで少量ずつ楽しむようにしましょう。どの食材をどれくらい食べてよいかは、管理栄養士や透析スタッフに確認しておくと安心です。

食欲が落ちたときの栄養確保のコツ

暑さで食が細くなると、たんぱく質やエネルギーが不足して体力が低下してしまいます。透析患者さんは一般の方よりもたんぱく質の必要量が多い傾向にあるため、少量でも効率よく栄養をとる工夫が求められます。

卵や豆腐、鶏むね肉など消化のよい食材を冷たい料理にアレンジしたり、1日3食にこだわらず5〜6回に分けて食べたりする方法も有効です。体重減少が続くようなら、栄養補助食品の活用も主治医と相談してみてください。

夏に気をつけたい高カリウム食品

食品カリウム量の目安注意点
スイカ1切れ約320mg水分も多いため飲水量として計算する
バナナ1本約360mg半分程度に抑えるとよい
トマト中1個約210mg加熱してもカリウムはあまり減らない

透析患者さんの夏の外出と運動で気をつけること

適度な運動は透析患者さんの体力維持や心肺機能の保持に役立ちますが、夏場は熱中症の危険と隣り合わせです。外出や運動のタイミングと強度を調整すれば、暑い季節でも安全に身体を動かすことができます。

外出するなら早朝か夕方以降を選ぶ

日中の気温がもっとも高い10時から15時の外出はできるだけ避け、早朝や夕方以降に用事を済ませるようにしましょう。どうしても日中に外出する場合は、日傘や帽子、冷却タオルなどの暑さ対策グッズを必ず持参してください。

移動には冷房の効いた公共交通機関やタクシーを活用し、長時間の徒歩を避けることが安全につながります。外出先でも休憩スポットをあらかじめ確認しておくとよいでしょう。

夏場に無理のない運動を続けるための工夫

散歩やストレッチなどの軽い運動は、冷房の効いた室内で行えば熱中症のリスクを大幅に下げられます。透析日の直前や直後は身体に負担がかかりやすいため、透析のない日の涼しい時間帯を運動に充てるのがおすすめです。

プールでの水中ウォーキングは、体温の上昇を抑えながら全身を動かせる方法のひとつです。ただし、シャント(血液透析に使う血管)を保護する必要があるため、入水の可否や注意点を事前に主治医へ確認してください。

夏のレジャーや旅行で透析患者さんが確認しておくべきこと

旅行やレジャーを楽しみたい気持ちは当然のことですが、透析患者さんは出先での透析手配や薬の持参、緊急連絡先の確認など、事前準備が欠かせません。旅先の透析施設をあらかじめ予約し、かかりつけ医からの紹介状を用意しておきましょう。

飛行機での移動は気圧の変化による体調不良のリスクもあるため、長距離の場合は出発前に主治医へ相談してください。旅行中も体重測定と水分管理を怠らず、異変を感じたら無理をしないことが何よりも大切です。

  • 外出時の持ち物:帽子、日傘、冷却タオル、少量の飲み水、お薬手帳
  • 旅行前の確認事項:旅先の透析施設の予約、紹介状の準備、緊急連絡先の整理

夏を安全に過ごすための住環境と日常生活の整え方

室内で過ごす時間が長い透析患者さんこそ、住環境の温度管理が夏の体調維持の土台になります。冷房の適切な使い方や衣類の選び方など、毎日の暮らしの中でできる対策を実践していきましょう。

冷房は我慢せずに使うことが熱中症予防の基本

「電気代がもったいない」「冷房は身体に悪い」という理由でエアコンの使用を控える方がいますが、透析患者さんにとって室内の暑さは命に関わる問題です。室温は26〜28℃を目安に保ち、湿度も60%以下にすると快適に過ごせます。

冷房の風が直接身体に当たると血管が収縮し、透析後の体調に影響する場合もあります。風向きを調整するか、薄手の上着をはおるなどして、冷えすぎを防ぎながら室温を適切に維持してください。

夏の衣類と寝具を工夫して暑さを和らげる

通気性のよい綿や麻の素材を選び、ゆったりとしたデザインの服を着ると、体表からの放熱を助けてくれます。肌着は速乾性のある素材が快適です。

寝苦しい夜は、冷感素材のシーツやアイスノンなどを活用して入眠しやすい環境を整えましょう。睡眠不足は体調悪化の引き金になるため、質の高い睡眠を確保することは夏の体調管理において見落とせない要素です。

入浴やシャワーの温度にも気を配る

暑い日でも、シャワーの温度が高すぎると身体に負担がかかります。ぬるめのお湯(38〜39℃程度)で短時間の入浴やシャワーを心がけ、入浴後は水分を少量補給するようにしましょう。

長時間の入浴は血圧の変動を招きやすいため、5〜10分を目安に切り上げるのが安全です。透析日の入浴タイミングについては、透析施設の指導に従ってください。

場面目安
室温26〜28℃に設定
湿度60%以下を目標
入浴温度38〜39℃のぬるめ
入浴時間5〜10分程度

透析患者さんの夏の感染症対策と体調不良時の対応

夏は食中毒や感染性胃腸炎など、感染症のリスクが高まる季節でもあります。透析患者さんは免疫機能が低下していることが多く、一般の方よりも感染症にかかりやすく、重症化もしやすいため、予防策の徹底が大切です。

食中毒を防ぐための食品管理

高温多湿の環境では、食材の傷みが速くなります。肉や魚は購入後すぐに冷蔵庫へ入れ、調理済みの食品も常温に長時間放置しないようにしましょう。まな板や包丁は使用後にしっかり洗浄・消毒することが感染予防の基本です。

生ものはできるだけ避け、加熱調理を中心にすると安心です。お弁当を持参する場合は保冷剤を活用し、なるべく早めに食べるようにしてください。

下痢や嘔吐が起きたときに透析患者さんが注意すること

下痢や嘔吐による急な水分・電解質の喪失は、透析患者さんにとって非常に危険です。体液のバランスが崩れると血圧低下や電解質異常を引き起こし、次の透析まで待てない状態に陥ることがあります。

症状が出たら自己判断で市販薬を使わず、すぐに透析施設またはかかりつけ医に連絡してください。脱水の程度によっては、臨時の透析や点滴が必要になる場合もあります。普段から緊急連絡先を分かりやすい場所に控えておくことが安心につながります。

夏風邪や感染症への備え

手洗い・うがいの徹底は季節を問わず有効ですが、夏は冷房による室内外の温度差で体調を崩しやすくなります。薄手のカーディガンなどを持ち歩き、温度差を和らげる工夫をしましょう。

発熱が続く場合や体調がすぐれない日が続く場合は、次の透析日を待たずに医療機関を受診してください。透析患者さんの感染症は急速に進行することがあるため、早期対応がとても大切です。

よくある質問

透析患者さんは夏にどのくらいの水分をとってよいですか?

透析患者さんの適切な水分摂取量は、残っている腎機能の程度や尿量、透析間の体重増加量によって一人ひとり異なります。一般的には、透析と透析の間の体重増加がドライウェイトの3〜5%以内に収まるように飲水量を調節することが目安となります。

夏は発汗で失われる水分が増えるため、普段より少し多めにとれる場合もありますが、自己判断で飲水量を大幅に増やすのは危険です。必ず主治医や透析スタッフに相談し、体重の変化を毎日チェックしながら調節してください。

透析を受けている人が熱中症になったらどう対処すればよいですか?

めまいや強い頭痛、吐き気などの熱中症の症状が現れたら、まず涼しい場所へ移動し、衣服をゆるめて首やわきの下、太ももの付け根などを冷やしてください。

意識がはっきりしている場合でも、透析患者さんは体液バランスの崩れが急速に進む恐れがあるため、できるだけ早く透析施設またはかかりつけ医に連絡することが大切です。意識がぼんやりしている、呼びかけに反応が鈍いなどの場合は、ためらわず救急車を呼んでください。

透析患者さんがスポーツドリンクを飲んでも問題ありませんか?

市販のスポーツドリンクにはナトリウム(塩分)やカリウムが含まれているため、透析患者さんが一般の方と同じ感覚で飲むのは避けたほうがよいでしょう。特にカリウムの含有量が多い製品は、高カリウム血症のリスクを高める可能性があります。

のどの渇きが強いときは、まず少量の水や氷で対応し、スポーツドリンクを利用したい場合は水で薄めるなどの工夫を主治医や管理栄養士に相談してみてください。経口補水液についても同様に、使用の可否と量を事前に確認しておくことをおすすめします。

透析患者さんが夏の旅行で気をつけるべき点は何ですか?

旅行を計画する際は、まず旅先で透析を受けられる施設を確保することが最優先です。2〜3か月前から予約を入れ、主治医に紹介状や透析条件の書類を準備してもらいましょう。服用中のお薬は余裕をもって持参し、お薬手帳や保険証もすぐに取り出せるようにしておいてください。

旅行中も毎日の体重測定と水分管理を欠かさず、暑い時間帯の長時間の観光は避けるのが安全です。体調に異変を感じた場合はすぐに旅先の透析施設や救急医療機関を受診できるよう、連絡先をスマートフォンや手帳に控えておきましょう。

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大垣中央病院・こばとも皮膚科

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