訪問看護でマッサージはしてもらえる?看護師のリハビリマッサージ

訪問看護でマッサージはしてもらえる?看護師のリハビリマッサージ

「訪問看護でマッサージをしてもらえるのだろうか」と疑問に感じている方は少なくありません。結論からお伝えすると、訪問看護ではリハビリテーションの一環として看護師がマッサージを行うケースがあります。

街のリラクゼーションサロンとは異なり、医師の指示書にもとづいて筋緊張の緩和や関節拘縮の予防、血行促進などを目的に実施される医療的なケアです。痛みの軽減や日常生活動作の維持・回復を支えるうえで、マッサージは在宅療養において心強い手段となるでしょう。

この記事では、訪問看護で受けられるマッサージの方法や期待できる効果、利用までの流れ、そして自宅でできるセルフケアまで解説します。

目次

訪問看護のマッサージはリハビリの一環として受けられる

訪問看護で行われるマッサージは、医師の指示のもとリハビリテーションの一部として提供されるケアです。癒やし目的の施術とは位置づけが異なり、身体機能の維持や改善という明確な医療上の目標をもって実施します。

項目訪問看護のマッサージ一般的なサロン
目的リハビリ・機能回復リラクゼーション
実施者看護師・理学療法士等民間資格の施術者
根拠医師の指示書利用者の希望

看護師が行う「医療マッサージ」とは

看護師が訪問看護の現場で行うマッサージは、一般に「医療マッサージ」と呼ばれることがあります。これは筋肉や関節の状態をアセスメントしたうえで、拘縮の予防や痛みの緩和を目的に実施する手技のことです。

看護師はバイタルサインの変化を観察しながら強さや部位を調整できるため、全身状態が不安定な方にも安心して提供できます。

たとえば脳卒中後に手足がこわばる方に対して、関節可動域訓練と組み合わせながらマッサージを行うと、筋肉の柔軟性が保たれやすくなります。リラクゼーション目的のサロンでは対応できないような医療的配慮が求められる場面でこそ、看護師のマッサージが力を発揮します。

リラクゼーション目的との違いを知っておく

街のマッサージ店やエステサロンで受ける施術は、疲労回復やリフレッシュを主な目的としています。一方、訪問看護のマッサージは医療行為の一部として、身体機能の低下を防ぎ、日常生活動作(ADL)を維持・向上させることに焦点を当てています。

医療マッサージでは施術前にバイタルサインの確認を行い、皮膚の状態や浮腫の有無をチェックしたうえで手技を選びます。施術中に異常が見つかれば、すぐに主治医へ報告できる体制が整っている点も、リラクゼーション施術との大きな違いです。

さらに訪問看護記録としてマッサージの内容や利用者の反応を毎回記録に残すため、経過を振り返りながらケアの質を高めていくことができます。

理学療法士・作業療法士との連携で効果が高まる

訪問看護ステーションには看護師だけでなく、理学療法士(PT)や作業療法士(OT)が在籍しているケースがあります。看護師がマッサージで筋緊張を和らげたあとに、理学療法士が関節可動域訓練や歩行訓練を行うと、より効率的なリハビリが可能になります。

多職種がチームとしてかかわることで、それぞれの専門性を活かした計画が立てられます。マッサージだけを単独で受けるよりも、リハビリ全体のなかに組み込んだほうが、身体機能の回復につながりやすいです。

訪問看護で看護師が行うマッサージの方法と手技

訪問看護のマッサージにはいくつかの代表的な手技があり、利用者の状態に応じて使い分けます。どの手技も、医療的な知識に裏打ちされた判断のもとで実施される点が共通しています。

関節の拘縮を防ぐための軽擦法

軽擦法(けいさつほう)は、手のひらや指先で皮膚の表面をやさしくなでる手技です。強い力は加えず、皮膚を通じて筋肉や皮下組織に穏やかな刺激を与えます。とくに寝たきりの方や長時間同じ姿勢でいる方に対して、関節まわりの組織を柔らかく保つ目的で用いることが多いです。

軽擦法にはリラクゼーション効果もあるため、施術を受ける方の精神的な安定にもつながります。痛みに敏感な方や高齢で皮膚が薄くなっている方に対しても安全に行える手技として、訪問看護の現場では広く取り入れられています。

筋緊張をほぐす揉捏法

揉捏法(じゅうねつほう)は、筋肉をつかんだり揉んだりして深部の緊張をほぐす手技です。軽擦法よりもやや強い圧を加えるため、筋肉のこわばりが強い部位に対して効果を発揮します。

ただし圧の加減を誤ると痛みや内出血を引き起こす可能性があるため、看護師は利用者の表情や反応を観察しながら力加減を微調整します。手技を行いながら「痛くないですか」と声をかけ、利用者とやりとりすることも大切な看護の一場面です。

手技名特徴適した場面
軽擦法皮膚をやさしくなでる痛みに敏感な方・高齢者
揉捏法筋肉を揉みほぐす筋緊張が強い方
圧迫法一定の圧で押さえるトリガーポイントの緩和

血行を促すリンパドレナージ

リンパドレナージは、リンパ液の流れに沿ってやさしくなでるように行うマッサージ手技です。むくみ(浮腫)が目立つ方や、手術後にリンパの流れが滞りやすい方に対して看護師が行うことがあります。

リンパの流れを促すことで、余分な水分や老廃物の排出を助けるとされています。あくまで医学的なアセスメントにもとづき、禁忌事項を確認したうえで実施する手技であり、通常のマッサージとは手順や圧のかけ方が異なります。

マッサージの前後に行うバイタルチェック

訪問看護では、マッサージを行う前と後に必ずバイタルサインを測定します。血圧や脈拍、体温、酸素飽和度(SpO2)などを確認し、体調の変化がないかをモニタリングするためです。

施術前に血圧が異常に高い場合や発熱がある場合には、マッサージを見送る判断をすることもあります。施術後には「めまいはありませんか」「気分は悪くないですか」と利用者に確認し、安全を確保してから次のケアに移ります。

訪問看護マッサージがからだと心にもたらす効果

近年の研究では、マッサージが痛みの軽減や不安の緩和に一定の効果をもたらすことが報告されています。身体面だけでなく精神面にもよい影響を及ぼす可能性がある点は、在宅療養中の方にとって心強い情報でしょう。

痛みの軽減と筋肉のこわばり改善

マッサージは、慢性的な痛みを抱える方の症状を和らげる手段として注目を集めています。筋肉のこわばりを緩め、血流を改善することで、痛みの悪循環を断ち切る助けになると考えられています。

訪問看護の現場では、腰痛や肩こり、関節の痛みに悩む在宅療養者が多く見られます。定期的なマッサージを続けることで「動かすときの痛みが和らいだ」「朝の体のこわばりが軽くなった」と実感する方もいらっしゃいます。

痛み止めの薬だけに頼るのではなく、マッサージを取り入れることで薬の使用量を見直せるケースもあり、副作用の軽減という面でもメリットがあります。

血液・リンパ循環の促進とむくみ対策

寝たきりや活動量の低下によって、足や手にむくみが生じやすくなります。マッサージで筋肉やリンパに適度な刺激を加えると、滞っていた体液の循環が改善され、むくみの軽減が期待できます。

訪問看護師は、むくみの原因が心臓や腎臓の疾患にある可能性も念頭に置きながら施術を進めます。単にマッサージで楽になったかどうかだけでなく、根本的な原因を見落とさないよう注意を払う姿勢が、医療者ならではの視点です。

不安やストレスの緩和にも期待できる

在宅で療養を続けていると、社会との接点が減り、孤独感や不安を抱える方は珍しくありません。人の手によるやさしい触れ合いには、オキシトシンの分泌を促しリラックス効果をもたらすとする研究もあります。

訪問看護師が「おからだの調子はいかがですか」と声をかけながらマッサージを行うこと自体が、精神的な安定につながることもあるでしょう。身体を整えるケアと心のケアが同時に成り立つ点は、マッサージという手技がもつ大きな魅力です。

期待できる効果対象となる悩み
痛みの軽減慢性腰痛・関節痛・肩こり
血行促進冷え・むくみ・褥瘡予防
精神的安定不安・孤独感・不眠傾向
関節可動域の維持拘縮・筋力低下

どんな症状・疾患の方が訪問看護のマッサージを利用しているか

幅広い疾患や症状をもつ方が訪問看護のマッサージを活用しています。とくに運動機能の低下や慢性的な痛みを抱え、自力で通院リハビリに通うことが難しい方に選ばれる傾向があります。

脳卒中後の片麻痺や関節拘縮

脳卒中(脳梗塞・脳出血)の後遺症として片麻痺が残った方は、動かしにくい側の筋肉が徐々に硬くなりやすくなります。看護師が定期的にマッサージを行い、関節を動かす訓練と組み合わせることで、拘縮の進行を遅らせる効果が期待できます。

退院直後は回復が見込めるリハビリのゴールデンタイムともいわれるため、早期に訪問看護を導入してマッサージを開始することが望ましいとされています。本人の意欲を引き出しながら、無理のない範囲で継続することが回復への近道です。

退院前のカンファレンスで訪問看護の利用を計画しておくと、退院後の切れ目のないリハビリにつなげやすくなります。

骨折後や術後の在宅リハビリ期

大腿骨頸部骨折や人工関節置換術のあとに自宅へ退院した方にとって、訪問看護のマッサージは在宅リハビリの一部として有効な選択肢になります。手術で固定していた周囲の筋肉は萎縮しやすく、マッサージで血行を促進しながら少しずつ動かしていくことが回復を後押しします。

とくに高齢の方は安静期間中に筋力が大幅に落ちやすいため、「動かせるところからマッサージとストレッチを始める」という段階的なアプローチが採られます。無理な負荷を避けつつ、徐々に活動量を増やしていく計画を看護師が立案します。

パーキンソン病や難病による運動機能低下

パーキンソン病をはじめとする神経難病では、筋肉の固縮や震えによって日常動作が制限されることがあります。マッサージを通じて筋肉の緊張を和らげると、着替えや食事といった生活動作がスムーズになるケースもあります。

難病の方は長期にわたる療養を余儀なくされることが多く、精神的な負担も大きくなりがちです。訪問看護師による定期的なマッサージは、身体面のケアに加えて「人とのつながり」を感じられる機会にもなり、療養生活を支える柱の一つとして機能します。

  • 脳卒中後遺症(片麻痺・高次脳機能障害)
  • 骨折後や整形外科的手術後の在宅リハビリ
  • パーキンソン病・ALS・多発性硬化症などの神経難病
  • がん治療中・治療後の倦怠感やむくみ
  • 廃用症候群(長期臥床による筋力低下)

訪問看護でマッサージを受けるまでの流れ

訪問看護のマッサージを利用するには、まず主治医の指示書を取得するところから始まります。手続き自体はシンプルで、多くの場合は担当のケアマネジャーが調整を手伝ってくれます。

主治医の指示書が出発点になる

訪問看護のサービスを利用するためには、主治医が発行する「訪問看護指示書」が必要です。指示書にはリハビリテーションの内容やマッサージの必要性、注意すべき病態などを記載しています。

かかりつけ医に「訪問看護でマッサージを受けたい」と相談すれば、病状に応じて指示書を出してもらえるケースがほとんどです。指示書がなければ訪問看護ステーションはサービスを開始できません。指示書の有効期間は原則6か月で、更新が必要な場合は主治医が再発行してくれます。

訪問看護ステーションの選び方

訪問看護ステーションにはそれぞれ得意分野や対応可能なエリアがあります。マッサージを含むリハビリに力を入れているかどうかを事前に確認しておくと安心です。

  • 理学療法士や作業療法士が在籍しているか
  • リハビリやマッサージの実績は豊富か
  • 自宅からのアクセスや対応エリアに含まれるか
  • 24時間対応の体制が整っているか

担当のケアマネジャーに希望を伝えると、条件に合ったステーションを紹介してもらえます。複数のステーションを比較検討してから決めても問題ありません。

初回訪問でのアセスメントと計画立案

訪問看護が始まると、初回訪問で看護師が利用者の身体状態を詳しく評価します。筋力や関節の可動域、痛みの部位と程度、既往歴、服薬状況などを丁寧に確認し、マッサージの方法や頻度を盛り込んだケア計画を作成します。

この計画は一度作ったら終わりではなく、利用者の体調や回復の状況に合わせて定期的に見直します。「最初は週2回だったマッサージを、回復に伴って週1回に減らす」といった柔軟な対応ができるのも、訪問看護ならではの強みです。

家族が覚えておきたいセルフマッサージの基本と注意点

訪問看護師から手技を教わることで、家族や本人がセルフマッサージに取り組める場面もあります。毎日の生活のなかに短時間のケアを取り入れれば、次の訪問までの間も身体の状態を維持しやすくなるでしょう。

看護師から教わるタッチケアの基礎

タッチケアとは、やさしく触れることでリラクゼーション効果をもたらす方法です。看護師が訪問時に家族へ手技を実演しながら教えることで、誰でも安全に実践できるようになります。

ポイントは「力を入れすぎない」「ゆっくりとした速度で触れる」「利用者の表情を見ながら行う」の3つです。難しいテクニックは必要なく、手のひら全体を使ってなでるだけでも十分に心地よさを感じてもらえます。

ふくらはぎ・足裏を中心にした簡単手技

下肢のむくみやだるさに悩む方には、ふくらはぎと足裏のセルフマッサージが有効です。足首から膝に向かってゆっくりとさすり上げると、血液やリンパの流れを促すことができます。足裏は親指で円を描くように軽く押すと、全身の血行がよくなるといわれています。

入浴後や就寝前など、体が温まっているタイミングで行うと効果的です。1回あたり5分程度を目安にすると、無理なく習慣化できます。保湿クリームやオイルを少量使うと滑りがよくなり、皮膚への摩擦を減らしながら心地よいケアを続けられるでしょう。

セルフマッサージで気をつけたい注意点

セルフマッサージはあくまで補助的なケアであり、痛みが強い部位や炎症が起きている部位には行わないようにしましょう。皮膚に傷や発赤がある場合、血栓症のリスクがある場合なども禁忌となります。

判断に迷ったときは、次の訪問時に看護師へ相談してください。「この部分は触ってもいいですか」と一言確認するだけで、安全なセルフケアを続けることができます。看護師のアドバイスを受けながら取り組む姿勢が何よりも大切です。

注意すべき状態対応
皮膚に傷・発赤があるマッサージを避ける
痛みが強い・炎症がある看護師に相談してから判断
血栓症のリスクがあるふくらはぎの強い揉みを避ける

よくある質問

訪問看護のマッサージはどのくらいの頻度で受けられますか?

訪問看護のマッサージの頻度は、主治医の指示書と利用者の状態によって異なります。一般的には週1回から3回の訪問のなかでマッサージを含むリハビリを行うケースが多く見られます。

症状が安定してきた段階で頻度を減らしたり、逆に状態が悪化した場合には回数を増やしたりと、柔軟に対応してもらえます。担当の看護師やケアマネジャーに希望を伝えながら、無理のないスケジュールを相談してみてください。

訪問看護のマッサージは痛みを感じることがありますか?

基本的に、訪問看護で行われるマッサージは利用者の体の状態に合わせて圧や手技を調整するため、強い痛みを感じることは少ないです。看護師は施術中に「痛みはありませんか」と確認しながら進めます。

ただし、筋肉の拘縮が進んでいる部位では軽い圧でも違和感を覚える場合があります。そのようなときは遠慮なく看護師に伝えてください。痛みを我慢したまま施術を続けると逆効果になる可能性もあるため、率直に伝えていただくことが回復への近道になります。

訪問看護のマッサージと訪問リハビリは何が違いますか?

訪問看護のマッサージは、看護師が提供するケアの一部としてリハビリテーションに組み込まれた手技です。一方、訪問リハビリテーションは理学療法士や作業療法士が主体となり、筋力トレーニングや歩行訓練、日常生活動作の練習などを行います。

どちらも在宅で受けられるリハビリサービスですが、マッサージは主に筋緊張の緩和や血行促進を担い、訪問リハビリは運動機能の回復や生活動作の自立を目標にする傾向があります。両者を組み合わせて利用できるケースもあるため、主治医やケアマネジャーと相談しながら計画を立てるとよいでしょう。

訪問看護でマッサージを受ける際に自宅で用意するものはありますか?

特別な器具を準備する必要はありません。看護師は訪問用のバッグに必要な物品を持参しますので、利用者側はベッドや布団の上で施術を受けられるスペースを確保していただければ十分です。

ゆったりとした服装を着ていると施術部位へのアクセスがしやすくなり、スムーズにマッサージを受けられます。室温を快適に保ち、リラックスできる環境を整えておくと、マッサージの効果もより実感しやすくなるでしょう。

訪問看護のマッサージは家族が見学したり一緒に学んだりできますか?

家族の方が見学したり手技を一緒に学んだりすることは歓迎されるケースがほとんどです。看護師の訪問は限られた時間ですので、日常的に家族がセルフケアとして簡単なマッサージを続けてくれると、利用者の回復をより後押しすることにつながります。

「力加減がわからない」「どこを触ればよいか不安」という方でも、看護師が実際に手を添えて教えてくれるため安心です。家族が積極的にかかわることは、利用者にとっても精神的な支えとなり、療養生活全体にプラスの影響を及ぼします。

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大垣中央病院・こばとも皮膚科

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