坐骨神経痛は何科?整形外科を受診すべき理由

お尻から足先にかけて痛みやしびれが走る坐骨神経痛。「何科を受診すればいいの?」と迷ったら、まず整形外科を選んでください。骨・関節・神経を専門に扱う診療科として、原因の診断から治療まで一貫して任せられます。

腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症といった原因疾患を画像検査で特定し、薬物療法やリハビリ、手術まで幅広い選択肢を提示してもらえるでしょう。

この記事では坐骨神経痛の症状・原因・検査・治療の流れと受診の目安をわかりやすく解説します。痛みを我慢する前に、整形外科への相談を検討してみてください。

この記事の執筆者

臼井 大記(日本整形外科学会認定専門医)

臼井 大記(うすい だいき)

日本整形外科学会認定専門医
医療社団法人豊正会大垣中央病院 整形外科・麻酔科 担当医師

2009年に帝京大学医学部医学科卒業後、厚生中央病院に勤務。東京医大病院麻酔科に入局後、カンボジアSun International Clinicに従事し、ノースウェスタン大学にて学位取得(修士)。帰国後、岐阜大学附属病院、高山赤十字病院、岐阜総合医療センター、岐阜赤十字病院で整形外科医として勤務。2023年4月より大垣中央病院に入職、整形外科・麻酔科の担当医を務める。

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目次

坐骨神経痛は整形外科を受診するのが適切な選択

坐骨神経痛で迷ったら、まず整形外科を受診してください。整形外科は運動器全般、つまり骨・関節・筋肉・末梢神経を専門に扱う診療科であり、坐骨神経痛の原因疾患を幅広くカバーできます。

整形外科が坐骨神経痛に強い理由

坐骨神経痛の多くは、腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症など腰椎の構造的な問題から生じます。整形外科では、こうした骨格・神経の異常を画像検査や身体診察によって総合的に評価できます。内科的な疾患が隠れていないかを判断する力も備えており、必要に応じて他科と連携する体制が整っている点も安心材料です。

さらに、整形外科は診断だけでなく、薬物療法・神経ブロック注射・リハビリテーション・手術まで一つの科で対応できる守備範囲の広さが特徴です。痛みの原因と治療を切れ目なく管理できるため、何度も紹介先を変える負担が少なく済みます。

内科・ペインクリニック・脳神経外科との違い

内科では筋骨格系の詳しい画像診断や手術対応が難しいケースがあります。ペインクリニックは痛みの緩和に特化していますが、原因となる疾患の根本治療まではカバーしにくい場合もあるでしょう。脳神経外科は脊椎の手術を行う施設もありますが、リハビリテーションを含む保存療法の選択肢が整形外科ほど多くないことがあります。

診療科得意な領域注意点
整形外科骨・関節・神経の診断から手術・リハビリまで一貫対応特になし
内科全身疾患のスクリーニング画像診断・手術に限界あり
ペインクリニック神経ブロック注射など痛みの緩和原因疾患の根本治療は範囲外の場合も
脳神経外科脊椎手術の専門性保存療法の幅がやや狭いことがある

かかりつけ医がいない場合の受診先の選び方

近くの整形外科クリニックを受診するのがもっとも手軽な方法です。初診でレントゲン撮影や問診を受け、MRIなど精密検査が必要と判断されれば、提携する病院への紹介状を出してもらえます。

「いきなり大きな病院に行かなければ」と構える必要はありません。まずは身近なクリニックに相談しましょう。

坐骨神経痛の症状 — お尻から足先へ走る痛みとしびれ

坐骨神経痛は病名ではなく、坐骨神経が刺激されることで起こる「症状」を指す言葉です。お尻から太ももの裏側、ふくらはぎ、足の裏にかけて痛みやしびれが広がります。

坐骨神経は人体で最も太く長い末梢神経

坐骨神経は腰椎と仙骨から出た神経の束が合流してできる、体内で最も太い末梢神経です。直径は鉛筆ほどの太さがあり、お尻の深部を通って足先まで伸びています。

この長い経路のどこかで圧迫や炎症が加わると、痛みやしびれが広範囲に出るのが特徴といえます。

片側に出る痛みが典型的なパターン

坐骨神経痛は左右どちらか一方の足に症状が出ることが多いです。座っていると悪化し、立ち上がったり歩いたりすると和らぐケースもあれば、逆に歩行で痛みが増すケースもあります。咳やくしゃみをした瞬間にビリッと電気が走るような痛みを感じる方もいるでしょう。

痛みの強さには幅があり、軽いしびれ程度で済む方がいる一方、夜も眠れないほどの激痛に悩まされる方もいます。痛みの出方は原因疾患や神経の圧迫の程度によって異なるため、自己判断せず整形外科で原因を調べることが大切です。

日常生活で痛みが強まりやすい動作

長時間のデスクワークや車の運転、重い荷物の持ち上げ、前かがみの姿勢を続けることは坐骨神経痛を悪化させやすい動作です。就寝時に仰向けで足を伸ばすと痛みが出るため、横向きで膝を軽く曲げないと眠れないという訴えも珍しくありません。

  • 長時間の座位や同じ姿勢の維持
  • 前かがみで荷物を持ち上げる動作
  • くしゃみ・咳・いきみなど腹圧が高まる場面
  • 仰向けで足をまっすぐ伸ばした姿勢

坐骨神経痛を引き起こす代表的な原因疾患

坐骨神経痛の約85%は腰椎の疾患と関連があるといわれています。整形外科ではこれらの原因を画像検査で突き止め、適切な治療方針を立てます。原因によって治療のアプローチが異なるため、まずは何が神経を圧迫しているのかを正確に把握することが出発点です。

腰椎椎間板ヘルニアが若年〜中年に多い原因

背骨の骨と骨のあいだにある椎間板(ついかんばん)の中身が飛び出し、近くを通る神経を圧迫するのが腰椎椎間板ヘルニアです。20〜50代の働き盛りに多く発症し、急に重いものを持ち上げたときや、長時間の座り仕事で腰に負担をかけ続けた結果として起こることがあります。

ヘルニアの多くは時間の経過とともに自然に小さくなり、症状が軽減するケースも少なくありません。整形外科では保存療法(手術をしない治療)を中心に対応し、症状が改善しない場合に手術を検討します。

腰部脊柱管狭窄症は50代以降に増えてくる

加齢によって腰椎の脊柱管(神経の通り道)が狭くなり、神経を圧迫するのが腰部脊柱管狭窄症です。

歩いているうちにお尻から足にかけてしびれが出て、少し休むとまた歩けるようになる「間欠性跛行(かんけつせいはこう)」が典型的な症状です。

梨状筋症候群やすべり症が隠れている場合も

お尻の奥にある梨状筋(りじょうきん)が硬くなって坐骨神経を圧迫する梨状筋症候群や、腰椎が前方にずれる腰椎すべり症も坐骨神経痛の原因になります。

これらは腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症に比べると頻度は低いものの、見逃すと適切な治療につながりにくいため、整形外科での丁寧な診察が欠かせません。

原因疾患好発年齢特徴的な症状
腰椎椎間板ヘルニア20〜50代急な腰痛と片側の足の痛み・しびれ
腰部脊柱管狭窄症50代以降歩行中のしびれ、休むと回復(間欠性跛行)
梨状筋症候群年齢を問わないお尻の奥の痛み、座ると悪化
腰椎すべり症中高年腰痛と足のしびれが持続的に出る

整形外科で行う坐骨神経痛の検査と診断

整形外科では問診と身体診察を軸にし、必要に応じて画像検査を組み合わせて原因疾患を特定します。すべての検査が毎回必要になるわけではなく、段階的に進めるのが一般的です。

問診と身体診察で痛みの範囲を絞り込む

まず、いつから痛みが始まったか、どの動作で悪化するか、しびれの範囲はどこまでかを丁寧に聞き取ります。身体診察では、仰向けに寝た状態で足をまっすぐ持ち上げる「下肢伸展挙上テスト(SLRテスト)」などを行い、どの神経が影響を受けているかを確認します。

筋力や感覚の左右差、反射の低下なども調べ、神経の障害レベルを推測します。こうした身体所見だけでも、かなりの精度で原因の見当をつけることが可能です。

MRI検査で神経への圧迫を画像で確認する

MRIは椎間板や脊柱管の状態を詳しく描出できる検査で、坐骨神経痛の原因を確定するうえで大きな役割を果たします。

ただし、画像だけで治療方針を決めるのは適切ではなく、症状や身体所見と照合して総合的に判断する点が整形外科の専門性です。骨の変形やずれの有無を把握するために、レントゲン検査を併用することもあります。

他の病気を除外するための検査

まれに、坐骨神経痛に似た症状が糖尿病性の末梢神経障害や骨盤内の腫瘍、感染症など別の疾患から起こっている場合があります。

整形外科ではこうした可能性も考慮し、血液検査や追加の画像検査を行って鑑別診断を進めます。原因が整形外科の範囲外と判明した場合は、適切な専門科へ速やかに紹介する体制が整っています。

検査名目的わかること
問診・身体診察症状の把握と神経障害レベルの推測痛みの範囲、筋力低下の有無
レントゲン骨の変形やずれの確認腰椎すべり症、骨棘の有無
MRI軟部組織・神経の状態を描出椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄の程度

整形外科で受けられる坐骨神経痛の治療法

坐骨神経痛の治療は、まず手術をしない保存療法から始めるのが原則です。多くの方は保存療法で症状が改善し、手術に至るのは全体の一部にとどまります。

薬物療法で痛みとしびれを和らげる

消炎鎮痛薬(NSAIDs)や神経障害性疼痛の薬を処方し、日常生活に支障が出ない程度まで痛みを抑えるのが薬物療法の目標です。痛みが強い急性期には、筋弛緩薬を短期間併用する場合もあります。

薬はあくまで痛みを和らげる対症療法であり、原因を取り除くものではありません。薬で痛みをコントロールしつつ、運動療法やリハビリテーションを並行して行うことが回復への近道です。

神経ブロック注射で強い痛みを素早く抑える

痛みが非常に強く、内服薬だけでは十分にコントロールできないとき、整形外科では硬膜外ブロック注射や神経根ブロック注射を検討します。炎症を起こしている神経の周囲に直接ステロイドや局所麻酔薬を注入し、痛みの伝達を遮断する方法です。

効果は個人差がありますが、注射によって痛みの悪循環を断ち切り、リハビリに取り組めるようになるケースが多く見られます。

リハビリテーションと運動療法が回復を支える

急性期の痛みが落ち着いたら、理学療法士の指導のもとでストレッチや体幹の安定化エクササイズに取り組みます。腰椎周囲の筋力を高めることで、神経への負担を軽減し、症状の再発を予防できます。

「安静にしていれば治る」と思いがちですが、過度な安静はかえって筋力の低下や柔軟性の低下を招きます。適度に身体を動かしながら回復を目指す方が、長期的な予後は良好です。

手術が検討されるのはどんなとき?

6〜8週間の保存療法で改善が見られない場合や、排尿・排便に障害が出ている場合(馬尾症候群)、足の筋力が著しく低下している場合などは、手術を検討するタイミングです。整形外科では、椎間板ヘルニアの摘出術や脊柱管の除圧術など、原因疾患に応じた手術法を提案できます。

治療法期待できる効果適応の目安
薬物療法痛みの軽減、炎症の抑制まず最初に試みる治療
神経ブロック注射強い痛みの速やかな緩和内服薬だけでは不十分な場合
リハビリ・運動療法筋力強化、再発予防急性期の痛みが落ち着いた後
手術神経圧迫の根本的な解除保存療法で改善しない場合

こんな症状があれば早めに整形外科を受診すべきサイン

「少し様子を見よう」と思っているうちに症状が進行してしまうケースがあります。以下に挙げるような兆候がある場合は、早い段階で整形外科を受診してください。

排尿や排便のコントロールに異変があるとき

尿が出にくい、残尿感がある、便意が感じにくいなどの症状は「馬尾症候群(ばびしょうこうぐん)」を疑うサインです。

馬尾症候群は腰の神経が広範囲に圧迫されて起こり、放置すると回復が難しくなることがあるため、すぐに整形外科を受診する必要があります。

足の筋力が急に落ちたと感じたら要注意

つま先が上がりにくくなった、スリッパがすぐ脱げる、階段で足が引っかかるといった変化は、運動神経の障害が進んでいるサインかもしれません。

痛みだけでなく筋力の低下を伴う場合、神経へのダメージが深刻化している可能性があるため、速やかな受診をお勧めします。

痛みが3週間以上続くなら一度は整形外科へ

坐骨神経痛の多くは数週間〜数か月で自然に改善する傾向があります。しかし、3週間を超えても痛みが一向に和らがない場合や、日に日に痛みが増している場合は、自然回復を待たずに整形外科で原因を調べましょう。早期に適切な診断を受けることで、治療の選択肢が広がり、結果として回復までの期間を短縮できることがあります。

夜間に痛みで目が覚める、安静にしていても痛みが治まらないといった症状は、単純な筋肉の疲労とは異なる原因が潜んでいる可能性を示しています。「いつか治るだろう」と我慢するよりも、整形外科で正確な診断を受けたほうが結果的に早く日常生活に復帰できるでしょう。

坐骨神経痛の再発を防ぐために整形外科医が勧める生活習慣

一度痛みが治まっても、生活習慣を見直さなければ坐骨神経痛は再発しやすい症状です。日々の工夫で腰への負担を減らすことが、再発予防の鍵になります。

体幹を支える筋肉を鍛える習慣づくり

腹筋や背筋などの体幹筋は、腰椎を安定させるコルセットのような役割を果たしています。整形外科のリハビリで指導されるドローインやプランクなどのエクササイズを、痛みのない範囲で継続することが効果的です。激しい運動ではなく、毎日5〜10分程度の地道なトレーニングが腰を守ります。

座り方・立ち方・ものの持ち上げ方を見直す

椅子に座るときは浅く腰掛けず、背もたれに骨盤を立てるように深く座ることが腰への負担軽減につながります。ものを持ち上げる際は、腰を曲げるのではなく膝を曲げて腰を落とし、身体に引き寄せてから立ち上がる動作を意識しましょう。

日常のなにげない動作の積み重ねが、腰椎への過度な負荷を減らします。立ち仕事が多い方は、片足を低い台に載せて体重を左右交互にかけるだけでも腰への集中的な圧力を分散できます。

  • デスクワーク中は1時間に1回は立ち上がって軽く体を動かす
  • 長時間の車の運転では、腰当てクッションを活用する
  • 就寝時は横向きで膝のあいだにクッションを挟むと腰が楽になる

定期的な通院で状態を確認する

症状が改善した後も、整形外科で定期的に状態を確認してもらうことで、再発の兆候を早期に発見できます。「痛みがなくなったから大丈夫」と通院をやめてしまう方は多いですが、経過観察を続けることで小さな変化に気づきやすくなり、悪化する前に対処が可能になります。

よくある質問

坐骨神経痛は放置しても自然に治りますか?

坐骨神経痛の症状は、軽度であれば数週間から数か月で自然に和らぐこともあります。ただし、原因となっている疾患が改善しないまま放置すると、痛みが慢性化したり神経のダメージが進行したりする恐れがあります。

特に足の筋力低下や排尿障害を伴う場合は自然回復を待たず、早めに整形外科を受診することをお勧めします。適切な診断と治療によって、回復を早められる可能性が高まります。

坐骨神経痛の痛みを和らげるために自宅でできることはありますか?

急性期には無理をせず、痛みが強い動作を避けることが大切です。ただし、長期間の安静は筋力低下を招くため、痛みが落ち着いてきたら軽いストレッチやウォーキングを少しずつ始めましょう。

温めることで筋肉の緊張がほぐれ、痛みが楽になる場合もあります。市販の消炎鎮痛薬を一時的に使うことも選択肢ですが、長期間の自己判断での服用は避け、整形外科で原因に合った治療方針を確認してください。

坐骨神経痛で整形外科を受診した場合、初診ではどのような検査を受けますか?

初診ではまず問診で症状の経過や痛みの範囲を詳しく伺い、その後にSLRテストなどの身体診察を行います。レントゲン撮影で骨の状態を確認するのが一般的な流れです。

症状が強い場合や身体所見から精密検査が必要と判断された場合には、MRI検査を追加することがあります。初診の段階で治療方針の大まかな見通しを説明してもらえるため、不安な点があれば遠慮なく質問してください。

坐骨神経痛の手術にはどのような方法がありますか?

坐骨神経痛の手術は、原因疾患に応じて方法を選びます。腰椎椎間板ヘルニアでは、飛び出した椎間板の一部を取り除く「椎間板摘出術」が代表的です。内視鏡を使った低侵襲な術式も普及しており、入院期間が短いケースも増えています。

脊柱管狭窄症では、狭くなった神経の通り道を広げる「除圧術」が行われます。いずれの手術も、保存療法で十分な改善が得られなかった場合に整形外科医が慎重に適応を判断します。

坐骨神経痛は若い人にも発症しますか?

坐骨神経痛は年齢を問わず発症する可能性があります。若い方の場合、腰椎椎間板ヘルニアが原因となるケースが多く、スポーツ中の急な動作やデスクワークでの長時間の同じ姿勢が引き金になることがあります。

「若いから大丈夫」と思わず、足にしびれや痛みが続くようであれば整形外科を受診してください。早い段階で適切な治療を受けることで、症状の長期化を防ぎやすくなります。

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大垣中央病院・こばとも皮膚科

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