介護認定を受けていなくても、訪問看護を利用する方法はあります。医療保険を使えば、介護認定の有無にかかわらず訪問看護を受けることが可能です。
「申請中だから何もできない」と思い込んでいる方は少なくありません。しかし実際には、主治医の指示書があれば申請中でも訪問看護を開始できるケースがあり、必要な医療ケアを待たずに受けられる道が用意されています。
この記事では、介護認定なしや申請中に訪問看護を受ける具体的な方法、医療保険と介護保険の使い分け、申請手続きの流れまで、解説します。
介護認定がなくても訪問看護を受けられる仕組み
介護認定がなくても訪問看護は利用できます。訪問看護には「医療保険」と「介護保険」の2つの利用ルートがあり、介護認定は介護保険ルートで必要となるものです。医療保険による訪問看護であれば、年齢や介護度に関係なく、主治医が必要と判断すれば誰でも利用を始められます。
訪問看護には医療保険と介護保険の2つのルートがある
訪問看護は、介護保険だけのサービスだと誤解されがちですが、医療保険でも利用できます。介護保険での訪問看護は65歳以上で要介護・要支援の認定を受けた方が対象となり、40歳から64歳の方は特定疾病に該当する場合に限って申請が可能です。
一方、医療保険による訪問看護は年齢制限がありません。主治医が「訪問看護指示書」を発行すれば、赤ちゃんから高齢者まであらゆる年代の方が利用できます。2つの保険制度を理解しておくことで、「介護認定がないから利用できない」という思い込みを解消できるでしょう。
医療保険で訪問看護を利用するために必要な条件
医療保険で訪問看護を受けるには、主治医から「訪問看護指示書」を交付してもらう必要があります。指示書には病名や治療内容、看護師に求められる処置の内容などが記載され、有効期間は最長6か月です。
指示書を受け取った訪問看護ステーションが、利用者の自宅でケアを提供します。介護認定の手続きとは独立した制度であるため、認定結果を待つ必要がない点が大きな利点です。
なお、医療保険による訪問看護は原則として週3日までですが、病状や疾患の種類によってはこの制限が緩和される場合があります。急性増悪など緊急性が高い場合には、主治医が「特別訪問看護指示書」を発行し、連日の訪問が可能になることもあります。
介護保険と医療保険で変わる自己負担の割合
介護保険で訪問看護を利用した場合、自己負担は原則1割(一定以上の所得がある方は2割または3割)となります。医療保険の場合は、現役世代であれば3割、70歳以上75歳未満は2割、75歳以上は1割が基本です。
どちらの保険を使うかによって自己負担額が異なるため、ご自身の状況に合った選択が大切です。主治医やケアマネジャー、訪問看護ステーションに相談することで、負担を抑えた利用方法を見つけやすくなります。
| 項目 | 介護保険 | 医療保険 |
|---|---|---|
| 介護認定 | 必要 | 不要 |
| 必要書類 | ケアプラン・指示書 | 訪問看護指示書 |
| 自己負担 | 原則1割 | 年齢により1〜3割 |
医療保険で訪問看護を受けられる対象者と疾患の範囲
40歳未満の方や、介護認定を受けていない方でも、医療保険の訪問看護なら利用対象です。とくに厚生労働大臣が定める疾病等に該当する方は、週4日以上の訪問も認められるなど手厚い支援が受けられます。
厚生労働大臣が定める疾病等の具体例
厚生労働大臣が指定する疾病等には、末期の悪性腫瘍、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病関連疾患などが含まれます。これらに該当する場合は、介護認定を受けていても医療保険を優先して適用します。
該当する疾病をお持ちの方は、週に4日以上の訪問看護や、複数のステーションからの同時利用が認められるケースもあります。重い病気を抱える方にとって、在宅での生活を支える大きな助けとなるでしょう。
精神科訪問看護の対象となる方
精神科に通院中の方で、主治医が訪問看護の必要性を認めた場合には「精神科訪問看護指示書」に基づいたケアを受けられます。統合失調症やうつ病、認知症などが対象に含まれ、服薬管理や日常生活の支援を看護師が自宅で行います。
精神科訪問看護は介護認定の有無とは無関係に利用でき、生活リズムの安定や症状の悪化予防に大きく寄与します。孤立しがちな方ほど、定期的な訪問が安心感につながるかもしれません。
訪問の頻度は週3日までが基本ですが、退院直後など集中的な支援が必要な時期には回数を増やせる場合もあります。担当の精神科医と訪問看護師が密に連携し、症状の変化に応じた柔軟なケアを提供します。
小児や若年層にも広がる訪問看護の利用
訪問看護の対象は高齢者だけではありません。医療的ケアが必要な小児や、難病を抱える若年層も、医療保険を通じて訪問看護を利用できます。
人工呼吸器の管理やたんの吸引、経管栄養の管理など、在宅での医療的ケアを看護師がサポートし、ご家族の負担を軽減します。介護認定とは別の仕組みで成り立っているため、年齢による制限を気にする必要はありません。
- 末期がん、ALS、パーキンソン病関連疾患などの指定難病
- 人工呼吸器や気管カニューレを装着している方
- 精神科に通院中で主治医が訪問を必要と判断した方
- 医療的ケアが必要な小児
介護保険申請中でも訪問看護を開始できる方法
「介護認定の結果が出るまで訪問看護を使えない」というのは誤解で、申請中であっても、いくつかの方法で訪問看護を開始することは十分に可能です。
申請日にさかのぼってサービスを利用する「暫定ケアプラン」
介護保険の申請を行った日から、認定結果が出る前でもサービスを利用する方法があります。ケアマネジャーが「暫定ケアプラン」を作成し、想定される介護度に基づいて訪問看護を組み込むことが可能です。
認定結果が出た後に正式なケアプランへ切り替え、利用したサービスの費用を介護保険で精算する流れとなります。ただし、想定した介護度よりも軽い認定が出た場合には、超過分を自己負担しなければならないリスクがあるため、ケアマネジャーと慎重に話し合いましょう。
暫定ケアプランを利用する際は、想定介護度を低めに見積もっておくことがリスク軽減のコツです。ケアマネジャーの経験に基づく助言を参考にしながら、無理のない範囲でサービスを組み立てましょう。
認定結果を待たず医療保険で先に始める
もうひとつの現実的な方法は、介護認定の結果を待たずに医療保険で訪問看護を開始することです。主治医に相談して訪問看護指示書を発行してもらえば、申請中でもすぐに利用を始められます。
認定結果が出て介護保険が使えるようになった時点で、保険の切り替えを行えばよいため、必要なケアを先送りにせずに済みます。退院直後で早急にケアが必要な方にとって、この方法は有効な選択肢となるでしょう。
申請から認定までにかかる期間と手続きの流れ
介護認定の申請から結果通知までには、おおむね30日程度かかるのが一般的です。市区町村に申請書を提出し、認定調査員による訪問調査と、主治医の意見書をもとに介護認定審査会で判定が行われます。
調査員が心身の状態を確認し、コンピュータによる一次判定と専門家による二次判定を経て、要支援1〜2または要介護1〜5の区分が決まります。地域によっては30日以上かかることもあるため、その間のケアをどうするか事前に計画しておくことが大切です。
| 手順 | 内容 | 目安期間 |
|---|---|---|
| 申請 | 市区町村の窓口に提出 | 即日 |
| 訪問調査 | 調査員が心身の状態を確認 | 申請後1〜2週間 |
| 一次判定 | コンピュータ判定 | 調査後数日 |
| 二次判定 | 審査会で最終判定 | 一次判定後1〜2週間 |
| 結果通知 | 認定結果の通知書が届く | 申請から約30日 |
申請は本人以外でも代行できる
介護認定の申請は、本人だけでなく家族や地域包括支援センター、居宅介護支援事業所が代行して行うことも可能です。入院中や体調がすぐれない場合でも、家族や支援機関が窓口で手続きを進められます。
「本人が動けないから申請できない」と諦める必要はありません。まずは地域包括支援センターに電話で相談してみてください。
訪問看護の利用回数は介護度によってどう変わるか
介護保険で訪問看護を利用する場合、介護度ごとに設定された「区分支給限度基準額」の範囲内で利用回数が決まります。介護度が高いほど利用できる総額が大きくなり、訪問看護に充てられる回数も増える傾向です。
要支援と要介護では利用上限にどのくらい差がある?
要支援1〜2と要介護1〜5では、1か月に使える介護保険サービスの上限額が大きく異なります。要支援1の場合、月あたりの限度額は約5万円程度ですが、要介護5では約36万円まで利用可能です。
訪問看護だけでなく、訪問介護やデイサービスなど複数のサービスを組み合わせて利用するため、限度額の中でバランスよくプランを組む必要があります。ケアマネジャーと相談しながら、優先すべきサービスを見極めましょう。
医療保険適用時は介護度に左右されない
医療保険で訪問看護を受ける場合は、介護度による利用制限を受けません。原則として週3日までの訪問が基本ですが、厚生労働大臣の定める疾病等に該当する場合や、急性増悪時の特別訪問看護指示書が出た場合には、それ以上の頻度での訪問が可能です。
介護認定を受けている方でも、病状が重い場合には医療保険が優先適用される場合があります。制度を柔軟に使い分けることで、在宅生活の継続がより現実的になるでしょう。
特別訪問看護指示書は最長14日間有効で、主治医が必要と判断すれば月に1回(気管カニューレ使用者や真皮を超える褥瘡がある場合は月2回)まで発行が可能です。急な体調悪化にも柔軟に対応できる仕組みが整っています。
| 介護度 | 区分支給限度基準額(月額目安) | 利用可能な訪問看護回数の傾向 |
|---|---|---|
| 要支援1 | 約5万円 | 週1回程度 |
| 要支援2 | 約10万円 | 週1〜2回程度 |
| 要介護1 | 約17万円 | 週1〜2回程度 |
| 要介護3 | 約27万円 | 週2〜3回程度 |
| 要介護5 | 約36万円 | 週3回以上も可能 |
ケアプランの見直しで訪問回数を増やせることもある
「今の訪問回数では足りない」と感じたら、ケアマネジャーにケアプランの見直しを依頼しましょう。他のサービスとの配分を調整することで、限度額の範囲内でも訪問看護の回数を増やせる場合があります。
状態が悪化した場合には、区分変更申請を行い、より高い介護度の認定を受けることで限度額自体を引き上げることも選択肢のひとつです。区分変更申請は認定の有効期間中いつでも行えるため、身体の状態に変化が出たときは早めにケアマネジャーへ連絡してください。
介護福祉士と看護師では訪問看護で担う業務が異なる
訪問看護と訪問介護は名称が似ていますが、提供する内容と担い手がまったく異なります。訪問看護は看護師や保健師、理学療法士などの医療職が行う医療的ケアであり、訪問介護は介護福祉士やホームヘルパーが担う生活援助や身体介護です。
訪問看護師が行う医療的ケアの範囲
訪問看護師は、バイタルサインの測定や点滴の管理、褥瘡(床ずれ)の処置、服薬管理、カテーテルの管理など、医師の指示に基づく医療的な処置を自宅で行います。病状の観察や急変時の対応も訪問看護師の役割に含まれます。
リハビリテーション専門職が同行する場合には、在宅でのリハビリも訪問看護の一環として提供されることがあります。医師と連携しながら在宅療養を支える専門的なサービスです。
介護福祉士が担う生活援助・身体介護との違い
介護福祉士やヘルパーが行う訪問介護は、食事・入浴・排泄の介助といった身体介護や、掃除・洗濯・買い物などの生活援助が中心です。医療行為は原則として行えず、たんの吸引や経管栄養など一部の行為に限って、研修を修了した介護職員が実施できるにとどまります。
「介護福祉士が訪問看護を行う」のではなく、それぞれが専門領域で連携して在宅生活を支えるという理解が正しいです。
両方を組み合わせることで在宅生活を支える
在宅での療養生活をより安定させるには、訪問看護と訪問介護を組み合わせて利用するのが効果的です。看護師が医療面を管理し、介護職が日常生活を支える体制を整えることで、ご本人とご家族双方の負担が軽くなります。
ケアマネジャーがそれぞれのサービスを調整し、無理のないプランを作成してくれます。訪問看護師と介護福祉士が情報を共有しながら連携することで、体調変化の早期発見や生活環境の改善にもつながるでしょう。
とくに退院直後は医療的ケアと生活支援の両方が求められやすい時期です。両サービスを上手に活用することが、再入院の予防にも寄与します。
| 比較項目 | 訪問看護 | 訪問介護 |
|---|---|---|
| 担い手 | 看護師・保健師・理学療法士等 | 介護福祉士・ヘルパー |
| 主な内容 | 医療的ケア・病状観察 | 身体介護・生活援助 |
| 医師の指示 | 必要(指示書) | 不要 |
訪問看護をスムーズに始めるための相談先と準備
訪問看護の利用を検討し始めたら、早い段階で適切な相談先に連絡を取ることが重要になります。どこに相談すれば良いか迷っている間にも、必要なケアが後回しになってしまうことは避けたいものです。
まず主治医に相談して訪問看護指示書を依頼する
訪問看護を始めるうえで欠かせないのが、主治医からの訪問看護指示書です。外来受診時や退院時に、「自宅で看護が必要」と伝えれば、多くの場合スムーズに発行してもらえます。
病院の医療ソーシャルワーカー(MSW)や退院支援担当の看護師に相談することで、退院前から訪問看護ステーションとの連携を始められるケースもあります。
地域包括支援センターは無料で相談できる窓口
各市区町村に設置されている地域包括支援センターは、高齢者やそのご家族が介護・医療に関する相談を無料で行える窓口です。介護認定の申請代行も受け付けているため、何から始めてよいかわからない方にとって心強い存在でしょう。
保健師や社会福祉士、主任ケアマネジャーなどの専門職が在籍しており、状況に応じて適切なサービスを紹介してくれます。電話一本で相談を始められる気軽さも大きなメリットです。
- 主治医(かかりつけ医)への訪問看護指示書の依頼
- 地域包括支援センターでの介護・医療相談
- 訪問看護ステーションへの直接問い合わせ
- 病院の医療ソーシャルワーカーへの退院前相談
訪問看護ステーションを選ぶときのポイント
訪問看護ステーションは全国に約1万5000か所あり、規模や得意分野もさまざまです。自宅からの距離、24時間対応の有無、リハビリ職の在籍状況などを確認すると、ご自身のニーズに合ったステーションを見つけやすくなります。
複数のステーションに問い合わせて比較検討することも可能です。主治医やケアマネジャーから紹介を受ける方法も一般的で、安心して任せられるステーションに出会える近道になるかもしれません。
在宅でのターミナルケア(終末期ケア)や小児の医療的ケアなど、専門性が高い分野については対応できるステーションが限られることもあります。事前にどのようなケアが必要になりそうかを整理しておくと、問い合わせの際にスムーズです。
よくある質問
- 介護認定を受けていなくても訪問看護を利用できますか?
-
介護認定がなくても、医療保険を使って訪問看護を受けることができます。主治医が訪問看護の必要性を判断し、「訪問看護指示書」を発行すれば、年齢や介護度に関係なく利用を開始できます。
まずはかかりつけ医に相談し、在宅での看護が必要かどうかを確認してみてください。必要と認められれば、介護認定の手続きを待つことなく訪問看護を受けられます。
- 介護保険の申請中に訪問看護を利用した場合の費用はどうなりますか?
-
介護保険の申請中に暫定ケアプランを作成して訪問看護を利用した場合、認定結果が出た後にさかのぼって介護保険を適用できます。認定された介護度の範囲内であれば、自己負担は通常どおり1割(所得に応じて2〜3割)です。
ただし、想定よりも軽い介護度が認定された場合には、限度額を超えた分が全額自己負担になる可能性があるため、慎重にプランを組む必要があります。医療保険で先に開始する方法であれば、こうしたリスクを回避しやすいでしょう。
- 訪問看護と訪問介護は何が違いますか?
-
訪問看護は看護師などの医療職が自宅を訪問し、病状の観察や医療的ケアを提供するサービスです。訪問介護は介護福祉士やヘルパーが食事・入浴・排泄の介助や家事の支援を行うサービスであり、担い手と提供内容が異なります。
訪問看護には主治医の指示書が必要であるのに対し、訪問介護にはそのような書類は求められません。両者はそれぞれの専門性を活かして連携し、在宅生活を支えています。
- 訪問看護の利用回数は介護度によって制限がありますか?
-
介護保険で訪問看護を利用する場合は、介護度ごとに設定された区分支給限度基準額の範囲内でサービスを利用するため、介護度が低いと回数に制限が出ることがあります。要介護5であれば月額約36万円まで利用可能ですが、要支援1では約5万円程度です。
医療保険で利用する場合には介護度による制限はなく、原則週3日までの訪問が基本となります。厚生労働大臣が定める疾病等に該当する方は、さらに多い回数での訪問も認められています。
- 介護認定の申請はどこに相談すれば良いですか?
-
介護認定の申請は、お住まいの市区町村の介護保険担当窓口で受け付けています。窓口に直接出向くことが難しい場合は、地域包括支援センターや居宅介護支援事業所に代行を依頼することも可能です。
地域包括支援センターでは介護に関する幅広い相談を無料で受け付けているため、申請の進め方がわからない方は、まず電話で問い合わせてみてください。保健師や社会福祉士などの専門職が、状況に応じたアドバイスをしてくれます。
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