精神科訪問看護の利用回数は、原則として週3回までと定められています。ただし、症状が重い場合や退院直後など特別な事情がある場合には、主治医の指示により週4日以上、最大で毎日の訪問が認められることもあります。
「もっと頻繁に来てほしいのに回数が足りない」「週3回では不安が残る」と感じている方は少なくありません。回数の上限や増やせる条件を正しく把握しておくと、主治医や訪問看護ステーションへの相談がスムーズになるでしょう。
この記事では、精神科訪問看護の回数制限の根拠から、週4日以上・週5回の利用が認められる条件、複数回訪問の仕組みまでを解説します。訪問回数で悩んでいる方が、自分に合った支援を受けるための手がかりになれば幸いです。
精神科訪問看護は原則「週3回」が上限
精神科訪問看護を医療保険で利用する場合、基本的な訪問回数は週3回までです。この上限は診療報酬制度のルールに基づいており、すべての利用者に一律に適用される原則となっています。
週3回の根拠となる診療報酬上のルール
精神科訪問看護の回数制限は、厚生労働省が定める診療報酬の算定基準によって規定されています。精神科訪問看護基本療養費は、同一日に1回の算定を原則とし、かつ週3日を限度として算定できるとされているため、通常の利用では週3回が上限になります。
この制限は医療保険(健康保険)で精神科訪問看護を利用する場合に適用されます。介護保険では算定の仕組みが異なりますが、精神科に特化した訪問看護は医療保険で提供されるケースが多く、多くの利用者にとって「週3回まで」が基本的な枠組みです。
1回あたりの訪問時間と訪問で行われる支援
精神科訪問看護の1回あたりの訪問時間は、30分以上60分未満が標準的です。状態が落ち着いている方であれば30分程度の訪問で経過観察や服薬確認を行い、症状の波が大きい方や生活支援が多く必要な方には60分程度の訪問で対応することもあります。
訪問では、服薬管理の支援や体調の確認にとどまらず、生活リズムの維持に向けた助言、日常生活の困りごとへの相談対応なども行います。看護師が定期的に自宅を訪れることで、利用者が安心して地域で暮らし続けるための土台を築いていく点が精神科訪問看護の大きな特徴です。
利用者の状態によって訪問回数は柔軟に調整できる
週3回という原則はあくまで上限であり、実際の訪問回数は利用者一人ひとりの状態に合わせて決まります。症状が安定している方であれば週1回や2回で十分な場合もありますし、不安定な時期には週3回をフルに活用するケースも珍しくありません。
訪問回数は固定ではなく、定期的な見直しによって増減します。主治医の判断と利用者本人の希望を踏まえて、その時々の状態にふさわしい頻度を設定していくことが大切です。
| 利用者の状態 | 標準的な訪問回数 | 主な支援内容 |
|---|---|---|
| 症状が安定している | 週1〜2回 | 服薬確認・生活リズムの維持支援 |
| やや不安定な時期 | 週2〜3回 | 症状観察・日常生活のサポート強化 |
| 急性増悪や退院直後 | 週4回以上も可能 | 危機介入・集中的な生活再建支援 |
精神科訪問看護を週4日以上受けられる条件
一定の要件を満たせば、精神科訪問看護を週4日以上利用することが認められます。すべての利用者に適用されるわけではなく、主治医の判断と所定の手続きが前提となるため、どのような条件で回数が増えるのかを知っておくと申請時に役立ちます。
GAF尺度30以下など重度の精神障害がある場合
GAF(機能の全体的評定)尺度で30以下と評価されるなど、日常生活に著しい支障がある場合は週4日以上の訪問が認められることがあります。GAFとは精神的な健康状態と社会的な機能を0から100で評価する指標で、30以下は意思疎通に重大な障害がある水準です。
この水準にある利用者は服薬の自己管理や身の回りのことが困難だったり、幻覚や妄想が強く出ていたりするケースが多く、看護師による頻回な見守りが大切です。主治医がGAFスコアを含む総合評価を行い、週4日以上の訪問が必要と判断した場合に指示書へ記載されます。
退院直後や急性増悪時に回数制限が緩和される
精神科病院を退院した直後は、環境の変化や通院の中断リスクなどから症状が再燃しやすい時期です。退院後の一定期間は集中的な訪問看護が認められており、週3回の制限を超えて訪問を受けることが可能になります。
同様に、自宅で療養中に症状が急激に悪化した「急性増悪」の状態でも、主治医が特別な指示を出すことで訪問回数を増やせます。こうした措置は、入院を回避しながら地域での生活を維持するために設けられた制度上の仕組みです。
精神科特別訪問看護指示書が発行されるとき
週4日以上の訪問を行うには、主治医から「精神科特別訪問看護指示書」が発行される必要があります。通常の精神科訪問看護指示書とは別に交付されるもので、急性増悪や退院直後など緊急性の高い状態に限って発行が認められています。
この指示書には有効期間があり、原則として14日間を限度に繰り返し発行できます。月に1回の交付が基本ですが、気分障害の急性増悪など特定の状態においては月2回まで交付されることもあるため、主治医に状態を正確に伝えることが欠かせません。
- 精神科特別訪問看護指示書の有効期間は原則14日間
- 急性増悪・退院直後などが主な発行事由
- 月1回が原則だが、特定の状態では月2回まで交付可能
精神科訪問看護の回数が週5回になるケースとは
精神科特別訪問看護指示書が発行されている期間中であれば、週5回はもちろん、毎日の訪問も制度上可能です。週5回以上の訪問が実施される場面は限られますが、制度の仕組みを知っておくと安心につながります。
特別指示書による最大14日間の集中訪問
精神科特別訪問看護指示書が出されると、その有効期間中(最大14日間)は週3回の上限が解除され、主治医の指示のもとで毎日の訪問が可能になります。通常の「週3回まで」という制限は適用されず、利用者の状態に応じて柔軟に訪問日数を設定できる点が特徴です。
ただし「毎日訪問できる」ことと「毎日訪問が必要」なことは異なります。実際には利用者の状態や生活環境を日々評価しながら、必要十分な頻度で訪問スケジュールが組まれるのが一般的です。
週5回以上の訪問が想定される具体的な症状
たとえば統合失調症の急性期で幻聴や妄想が激しく服薬の自己管理ができない状態では、毎日の訪問によって服薬確認と病状観察を行うケースがあります。うつ病の重度エピソードで日常の生活行為が停滞している場合にも、高頻度の訪問が組まれることがあるでしょう。
自傷行為のリスクが高い時期や、退院直後で一人暮らしに戻ったばかりの時期にも、週5回以上の訪問が検討されます。いずれも主治医が「通常の回数では安全を確保できない」と判断したうえで特別指示書を発行し、訪問看護ステーションと連携して支援計画を立てる流れです。
特別指示書の発行手続きと有効期間の管理
精神科特別訪問看護指示書は、主治医が利用者の状態を診察したうえで発行します。訪問看護ステーション側から主治医へ状態の報告を行い、指示書の発行を依頼するケースも少なくありません。
利用者や家族が「今の訪問回数では足りない」と感じたら、まず訪問看護師や主治医にその旨を伝えることが出発点になります。日常の困りごとや症状の変化を具体的に共有するほど、主治医が指示書の発行を判断しやすいです。
有効期間が終了すると、再び週3回の原則に戻ります。状態が引き続き不安定であれば、主治医が改めて指示書を発行することも可能ですが、漫然と長期間にわたって特別指示を継続することは想定されていません。あくまで集中的な支援が必要な時期に限定して活用する制度です。
| 指示書の種類 | 訪問回数の上限 | 有効期間 |
|---|---|---|
| 精神科訪問看護指示書(通常) | 週3回まで | 最長6か月 |
| 精神科特別訪問看護指示書 | 制限なし(毎日可) | 最長14日間 |
精神訪問看護の訪問回数はどのように決まるのか
訪問回数の決定には、主治医の医学的判断を起点として、訪問看護ステーションとの調整、そして利用者本人の意向が関わります。一方的に決められるものではなく、関係者間の対話を通じて設定されるのが基本です。
主治医の訪問看護指示書が回数決定の起点
精神科訪問看護を開始するには、主治医が「精神科訪問看護指示書」を交付する必要があります。この指示書には訪問の頻度や留意事項が記載されており、訪問看護ステーションはこの内容に基づいて訪問計画を立てます。
主治医は診察のなかで、症状の程度や日常生活の自立度、服薬の遵守状況などを総合的に評価し、適切と考える訪問頻度を指示書に記載します。指示書がなければ訪問看護は実施できないため、回数を増やしたい場合も減らしたい場合も、まず主治医への相談が欠かせない仕組みです。
利用者や家族の希望はどこまで反映される?
訪問回数は医学的な判断が中心ですが、利用者本人や家族の希望もきちんと考慮されます。「週2回では不安が強い」「仕事の日程と合わない」といった生活上の事情を伝えれば、主治医や訪問看護ステーションが調整に応じてくれる場合があります。
ただし、医学的に必要な範囲を超えた回数を保険で算定することはできません。希望と制度上の制約が折り合わないときには、訪問看護以外のサービス(デイケアや地域の相談支援など)を組み合わせることで、全体としてのサポート体制を厚くするという選択肢もあります。
定期的な見直しで訪問回数が変わることもある
訪問回数は固定ではなく、利用者の状態に応じて定期的に見直されます。症状が安定してきた時期には訪問を減らし、逆に体調が崩れかけたときには一時的に増やすなど、柔軟な対応が取られるのが一般的です。
訪問看護師は毎回の訪問で利用者の様子を観察し、変化があれば主治医に報告します。その報告を踏まえて主治医が指示書を見直すことで訪問回数が増減します。利用者自身も「調子が悪い」「自分でやれそう」といった感覚を率直に伝えると、適切な頻度調整につながるでしょう。
| 関係者 | 訪問回数決定への関わり |
|---|---|
| 主治医 | 指示書の交付と訪問頻度の指示 |
| 訪問看護師 | 状態の観察・評価・主治医への報告 |
| 利用者・家族 | 希望や生活上の事情の共有 |
複数回訪問と複数名訪問・複数事業所利用の違い
「回数を増やす」と一口にいっても、同じ看護師が週に何度も来る場合と、1回の訪問に複数のスタッフが同行する場合、あるいは別々の事業所から訪問を受ける場合では、制度上のルールが異なります。
1日に2回以上訪問が認められるケース
精神科特別訪問看護指示書が発行されている期間中は、1日に複数回の訪問が行われることもあります。たとえば朝と夕方にそれぞれ訪問し、朝は服薬確認、夕方は生活状況の確認を行うといった運用です。
1日複数回の訪問を実施した場合には「精神科複数回訪問加算」として診療報酬上の加算が算定されます。1日2回の場合と1日3回以上の場合で加算額が異なり、回数が増えるほど利用者の自己負担額も変動するため、事前に訪問看護ステーションに費用面を確認しておくと安心です。
複数名訪問看護加算の条件
利用者の状態によっては、1回の訪問に看護師が2名以上で訪れる「複数名訪問」が行われる場合があります。暴力のリスクがあるケースや、身体介助を伴うケースなど、安全面や介助量の観点から1名では対応が難しいと判断されたときに算定されるものです。
複数名訪問は、同行スタッフが看護師か准看護師か、あるいは看護補助者かによって加算区分が異なります。主治医の指示と訪問看護計画書への記載が前提となるため、利用者側から「2名で来てほしい」と申し出ることもできますが、最終的には医学的な必要性に基づいて判断されます。
2か所以上の訪問看護ステーションを利用するとき
通常は1か所の訪問看護ステーションが担当しますが、週4日以上の訪問が必要と主治医が判断した場合には、2か所以上のステーションから訪問を受けることも認められています。複数のステーションが役割を分担することで、サポート体制がより手厚くなります。
複数の事業所を利用する場合は、それぞれのステーション間での情報共有が欠かせません。主治医を中心に訪問計画を共有し、支援内容が重複したり抜け落ちたりしないよう調整を図ることが求められます。
精神科訪問看護の回数に不安があるときの相談先
現在の訪問回数に不安や不満を感じたら、一人で悩まずに相談することが解決への近道です。相談できる窓口は医療機関だけではなく、地域の行政機関や支援センターにも広がっています。
まずは主治医に現在の状態と希望を伝える
訪問回数を変更する権限を持っているのは主治医です。「最近眠れない日が増えた」「薬の飲み忘れが多くなった」など、具体的な困りごとを診察時に伝えることで、主治医が訪問頻度の見直しを検討するきっかけになります。
遠慮して伝えずにいると、主治医は「現在の回数で問題ない」と判断したままになるかもしれません。些細に感じることでも率直に話すことが、自分に合った支援につながる第一歩です。
訪問看護ステーションの管理者に相談する
訪問看護ステーションの管理者やスタッフも、利用者の生活に最も身近な相談相手です。訪問時に感じている不安や回数への要望を直接伝えれば、ステーション側から主治医へ状態報告や回数変更の提案を行うことができ、主治医に言いにくい場合の橋渡し役にもなります。
費用面の不安がある場合も、ステーションに問い合わせれば自己負担額の概算を教えてもらえます。回数が増えた場合にどの程度の費用がかかるかをあらかじめ把握しておくことで、安心して相談に臨めるでしょう。
地域の精神保健福祉センターや自治体窓口も頼れる
各都道府県や政令指定都市に設置されている精神保健福祉センターでは、精神科の医療や福祉サービスに関する相談を幅広く受け付けています。訪問看護の利用に関する疑問や、制度面で分からないことがあれば、電話や来所で相談することが可能です。
市区町村の障害福祉課や保健センターでも、訪問看護を含めた在宅支援サービスについての情報提供や助言を行っています。医療機関に直接相談しづらいと感じる場合には、こうした行政窓口を経由して情報を得る方法も有効な手段の一つです。
- 主治医への相談が回数変更の最短ルート
- 訪問看護ステーションが主治医との橋渡し役になれる
- 精神保健福祉センターや市区町村窓口でも制度の相談が可能
よくある質問
- 精神科訪問看護は最大で週何回まで利用できますか?
-
通常の精神科訪問看護指示書のもとでは、週3回が上限です。ただし、主治医が「精神科特別訪問看護指示書」を発行した場合には、その有効期間中(最大14日間)は週3回の制限が解除され、毎日の訪問も可能になります。
週4日以上や毎日の訪問が認められるのは、急性増悪や退院直後など緊急性の高い状態に限られます。利用者の状態が落ち着いてくれば、再び週3回以内の訪問へと移行していく流れが一般的です。
- 精神科訪問看護の回数を増やしたいときはどこに相談すればよいですか?
-
まずは主治医に現在の状態や日常生活で感じている不安を具体的に伝えてください。訪問回数の変更は主治医が発行する指示書によって行われるため、主治医への相談が出発点になります。
直接言いにくいと感じる場合は、訪問看護ステーションの看護師や管理者に相談する方法もあります。ステーション側から主治医へ状態を報告し、回数変更を提案してもらえることがあるため、遠慮せずに声をかけてみてください。
- 精神科訪問看護を週4日以上利用するにはどのような条件がありますか?
-
GAF尺度が30以下と評価される重度の精神障害がある場合や、精神科病院からの退院直後で集中的な支援が必要な場合などが該当します。いずれも主治医が医学的に判断したうえで、精神科特別訪問看護指示書を発行することが条件です。
利用者や家族の希望だけで週4日以上に増やすことはできませんが、「現在の回数では不安がある」という声を主治医に届けることで、指示書の発行につながる場合もあります。困っていることがあれば、率直に伝えてみることをおすすめします。
- 精神科訪問看護の特別指示書はどのようなときに発行されますか?
-
精神科特別訪問看護指示書は、症状の急性増悪や精神科病院からの退院直後など、通常の週3回の訪問では対応しきれない緊急性の高い状態に対して発行されます。有効期間は原則14日間で、月1回の交付が基本です。
気分障害の急性増悪など一部の状態に限り、月に2回の交付が認められるケースもあります。主治医が診察を通じて必要性を判断し、訪問看護ステーションと連携して発行する形となるため、利用者側からは主治医やステーションに現状を詳しく伝えることが大切です。
- 精神科訪問看護で1日に複数回の訪問を受けることはできますか?
-
精神科特別訪問看護指示書が発行されている期間中であれば、1日に2回以上の訪問を受けることが可能です。たとえば朝に服薬確認、夕方に生活状況の観察といった形で、時間帯を分けて訪問が行われます。
1日複数回の訪問には「精神科複数回訪問加算」が適用され、回数に応じて自己負担額が変わります。費用面が気になる場合は、事前に訪問看護ステーションへ確認しておくとよいでしょう。
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