尿素は、私たちの肌にもともと存在する天然の保湿成分です。ハンドクリームやボディクリームなどに広く配合されており、ドラッグストアでも手軽に手に取れる身近な存在でしょう。
一方で、「尿素クリームは顔に使っても大丈夫?」「デメリットはないの?」といった疑問を持つ方も少なくありません。濃度によって保湿効果と角質を柔らかくする効果のバランスが変わるため、正しい知識が求められます。
この記事では、皮膚科専門医の監修のもと、尿素の効果やスキンケアへの取り入れ方、使用上の注意点までわかりやすく解説します。
この記事の執筆者

小林 智子(こばやし ともこ)
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長
2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。
こばとも皮膚科関連医療機関
肌にもともと備わっている成分|尿素とは
尿素(化学式:CO(NH₂)₂)は、体内でタンパク質が分解されるときに生じる代謝産物で、肌の角質層にも天然保湿因子(NMF)の一部として存在しています。化粧品成分としては「尿素」の名称で表示され、医薬部外品の有効成分としても認められた歴史ある保湿成分です。
尿素の化学的な特徴と歴史
尿素は分子量60.06という非常に小さな有機化合物で、水に溶けやすい性質を持ちます。1828年にドイツの化学者フリードリヒ・ヴェーラーが無機物から人工的に合成したことで知られ、有機化学の歴史において画期的な出来事となりました。
皮膚科学の分野では、20世紀前半から創傷治療にタンパク質分解作用や抗菌作用を活かして使われてきました。現在のスキンケア用途としての応用は、1940年代以降に本格化したと言われています。
天然保湿因子(NMF)としての尿素
私たちの肌の角質層には、水分を引き寄せて保持する「天然保湿因子(Natural Moisturizing Factor)」と呼ばれる成分群が存在します。尿素はこのNMFを構成する成分の一つで、角質層の水分量を適切に保つうえで重要な働きを担っています。
尿素の基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 化学名 | カルバミド(尿素) |
| 化学式 | CO(NH₂)₂ |
| 分子量 | 60.06 |
| 化粧品表示名称 | 尿素 |
| 分類 | 保湿剤・角質軟化剤 |
| 医薬部外品 | 有効成分として認可済み |
化粧品と医薬部外品における位置づけ
尿素は化粧品では保湿成分として配合されるほか、医薬部外品では有効成分として一定濃度まで配合が認められています。さらに、医療用医薬品としても処方されることがあり、濃度や用途に応じて扱いが異なる点がこの成分の特徴でしょう。
スキンケア製品に使われる尿素は合成品ですが、天然の尿素と化学的にまったく同じ構造です。体内の尿素と区別するために「合成尿素」と呼ばれることもありますが、効果に違いはありません。
尿素クリームの効果|保湿だけではない多彩な働き
尿素には水分を引き寄せる保湿効果と、硬くなった角質を柔らかくする角質軟化効果という二つの主要な働きがあります。さらに近年の研究では、皮膚のバリア機能を高める遺伝子レベルでの効果も注目を集めています。
水分を引き込んで肌をうるおす保湿効果
尿素は「吸湿性」という水分を周囲から吸い寄せる性質を持っています。角質層に浸透した尿素が周囲の水分を取り込むことで、肌のうるおいを内側からサポートするわけです。
Grether-Beckらの研究(2012年)では、健康なボランティア21名に20%尿素クリームを4週間塗布したところ、経皮水分蒸散量(TEWL)が約31%減少したことが報告されています。TEWLとは肌から失われる水分量のことで、この数値が低いほど肌のバリア機能が良好であることを示します。
硬くなった角質を柔らかくする角質軟化効果
尿素は高濃度で使用した場合、ケラチンという角質のタンパク質の水素結合を壊したり、タンパク質の構造を変化させたりすることで角質を柔らかくします。かかとのガサガサや肘・膝の硬くなった角質を滑らかにする効果が期待できるのは、こうした作用のおかげです。
一般的に、10%未満の低濃度では保湿効果が中心で、10〜30%の中濃度では保湿と角質軟化の両方の効果が得られるとされています。30%以上の高濃度になると角質軟化作用が主体となり、医療現場でも厚くなった角質の除去に活用されています。
皮膚のバリア機能と抗菌防御を高める効果
2012年のJournal of Investigative Dermatologyに掲載された研究では、尿素が表皮の角化細胞(ケラチノサイト)に取り込まれると、フィラグリン、ロリクリン、トランスグルタミナーゼ-1といった皮膚バリアに関わる遺伝子の発現を高めることが示されました。
フィラグリンは角質層の構造を支える重要なタンパク質で、その遺伝子変異はアトピー性皮膚炎や魚鱗癬との関連が指摘されています。尿素がフィラグリンの産生を促すことは、単なる保湿を超えた「バリア機能の修復」につながる可能性があるといえるでしょう。
加えて、抗菌ペプチド(カテリシジンやβ-ディフェンシン2)の産生も促進されることが確認されており、肌表面の感染防御にも寄与すると考えられています。
- 低濃度(2〜10%):保湿・バリア機能の向上
- 中濃度(10〜30%):保湿に加えて角質軟化・薬剤浸透促進
- 高濃度(30%以上):角質除去・壊死組織の除去
尿素クリームの使い方|スキンケアへの正しい取り入れ方
尿素は主にクリームやローションに配合されており、乾燥が気になる部位に塗布して使います。顔への使用は慎重さが求められるため、体用とは分けて考えることが大切です。
どんな化粧品に尿素は配合されている?
尿素が配合されるスキンケア製品としてもっとも一般的なのは、ハンドクリームとボディクリームです。ドラッグストアで見かける「尿素配合」の表記がある製品の多くは、10%もしくは20%の尿素を含んでいます。
そのほかにも、ローション、乳液、かかと専用クリーム、フットケア製品、化粧水などさまざまな剤形で使われています。ただし、顔用の化粧品に高濃度の尿素が配合されているケースは少なく、配合されていても低濃度にとどまる場合がほとんどです。
効果を引き出す塗り方のコツ
尿素クリームの効果を十分に得るためには、入浴後や手洗い後など、肌がまだしっとりしているタイミングで塗るのがおすすめです。水分が残っている状態で塗ることで、尿素の吸湿性が効率よく発揮されます。
塗る量はケチらず、しっかりと肌を覆うくらいの量を使いましょう。かかとや肘など角質が厚い部位には朝と夜の1日2回の使用が効果的です。手の場合は、手洗いのたびに塗りなおすことで保湿効果が持続しやすくなります。
尿素クリームの効果的な使用タイミング
| 部位 | おすすめの使い方 |
|---|---|
| 手 | 手洗い後にその都度塗布 |
| かかと・肘・膝 | 入浴後に1日2回 |
| すね・腕 | 入浴後に1日1回 |
| 顔 | 低濃度品に限り使用可(後述の注意点参照) |
相性の良い成分と避けたい組み合わせ
尿素と併用して相性が良い成分として、セラミドやヒアルロン酸が挙げられます。セラミドは肌のバリア機能を構成する細胞間脂質の主成分で、尿素の保湿効果と補い合う関係にあります。

ヒアルロン酸も同じく保湿成分ですが、尿素が角質層の内部で水分を保持するのに対し、ヒアルロン酸は肌表面で水分の膜を形成するという違いがあります。両方を組み合わせることで、内側と外側から保湿をサポートできるでしょう。

一方で注意したい組み合わせは、レチノール(ビタミンA誘導体)やAHA(グリコール酸・乳酸など)といったピーリング効果のある成分との併用です。尿素自体にも角質軟化作用があるため、角質ケア成分を重ねると刺激が強くなりすぎる恐れがあります。
尿素クリームのデメリット|知っておきたい注意点
尿素は安全性が高い成分ですが、使い方を誤ると刺激を感じたり、肌トラブルを招いたりする場合があります。とくに濃度と使用部位の選択が大切です。
刺激やヒリヒリ感を感じるケース
尿素クリームを塗ったときにヒリヒリ感やかゆみを感じることがあります。とくに肌荒れやひび割れが生じている部位、湿疹のある部位に塗ると、浸透した尿素が刺激となる場合があるでしょう。
高濃度(20%以上)の製品ほど刺激のリスクが高まります。もし使用中に強い痛みや赤みが出た場合は、使用を中断して水で洗い流してください。症状が続く場合は皮膚科への受診をおすすめします。
尿素クリームを顔に使うときの注意
「尿素クリーム 顔」という検索をされる方は多いのですが、顔の皮膚は手足に比べて薄くデリケートです。10%以上の尿素クリームを顔に塗ると刺激が強すぎる可能性があります。
顔に使用する場合は、5%以下の低濃度製品を選び、目の周りや口元など皮膚が特に薄い部位は避けるのが無難です。赤みやかゆみが出たらすぐに使用を中止してください。
使用を控えたほうがよい方
傷口や強い炎症がある部位には尿素クリームの使用を避けてください。尿素のタンパク質変性作用が傷を刺激し、痛みや炎症を悪化させるリスクがあります。
乳幼児の肌も大人より薄いため、使用前に小児科や皮膚科に相談することが望ましいでしょう。妊娠中・授乳中の方は安全性データが限られているため、使用を避けるか、医師にご相談ください。
化粧品と処方薬では何が違う?
市販の尿素クリームは一般的に10%または20%の濃度で販売されています。一方、皮膚科で処方される尿素製剤には20%のものが多く、有効成分として医薬品の基準で製造されています。
化粧品と処方薬の大きな違いは、基剤(クリームのベースとなる成分)の品質管理や安定性にあります。処方薬はより厳格な基準で製造されており、症状に応じて医師が使用法を指導するため安心感が高いといえます。
皮膚疾患の治療目的で尿素を使いたい場合は、皮膚科を受診しましょう。
| 区分 | 濃度の目安 | 用途 |
|---|---|---|
| 化粧品 | 1〜10% | 日常の保湿ケア |
| 医薬部外品 | 10〜20% | 手荒れ・かかとケア |
| 処方薬 | 10〜20% | 皮膚疾患の治療補助 |
尿素とセラミド・ヘパリン類似物質は何が違う?
保湿成分として比較されやすいセラミドやヘパリン類似物質と尿素は、それぞれ異なるアプローチで肌のうるおいをサポートします。自分の肌悩みに合った成分を選ぶための参考にしてください。
尿素とセラミドの違い
セラミドは角質層の細胞と細胞の間を埋める脂質(細胞間脂質)の主成分です。水分を「挟み込んで保持する」タイプの保湿成分であり、バリア機能の土台を構成しています。

対する尿素は水溶性の小さな分子で、水分を「引き寄せて保持する」ヒューメクタント型の保湿成分です。さらに角質軟化作用を持つ点がセラミドにはない特徴でしょう。肌が硬くゴワついている場合は尿素、バリア機能の低下が気になる場合はセラミドが向いているかもしれません。
尿素とヘパリン類似物質の違い
ヘパリン類似物質は医療現場で広く処方される保湿成分で、水分保持作用に加えて血行促進作用や抗炎症作用を持つとされています。乾燥肌だけでなく、しもやけや傷あとのケアにも用いられることがあります。
尿素との違いは、ヘパリン類似物質には角質軟化作用がない点です。逆に、ヘパリン類似物質には穏やかな抗炎症効果が期待できるため、炎症を伴う乾燥肌にはヘパリン類似物質のほうが適しているケースもあるでしょう。

保湿成分の比較
| 成分名 | 保湿の仕組み | 特徴 |
|---|---|---|
| 尿素 | 水分を引き寄せて保持 | 角質軟化作用あり |
| セラミド | 水分を挟み込んで保持 | バリア機能の補強 |
| ヘパリン類似物質 | 水分保持・血行促進 | 抗炎症作用あり |
| ワセリン | 油膜で水分蒸発を防止 | 保湿というより保護 |
肌の状態に合わせた使い分け
角質が硬くなったかかとや肘には尿素クリーム、顔や全身の乾燥ケアにはセラミド配合の製品というように使い分けるのが賢い方法です。もちろん、一つの製品に尿素とセラミドの両方が配合されているケースもあり、その場合は双方の長所を活かせる可能性があります。
どの成分が自分に合っているかわからないときは、皮膚科で肌の状態を診てもらったうえでアドバイスを受けるとよいでしょう。

尿素クリームを味方につけるために|まとめ
尿素は肌にもともと備わっている天然保湿因子(NMF)の一成分であり、保湿と角質軟化という二つの効果を兼ね備えたスキンケア成分です。正しく使えば、乾燥やゴワつきの改善に大きく貢献してくれるでしょう。
この記事の要点を振り返ります。尿素は角質層の水分を保ち、硬くなった角質を柔らかくする効果が期待できます。低濃度(10%未満)は保湿、中〜高濃度は角質ケアが主な用途です。
顔への使用は低濃度品に限り、傷口や炎症部位には塗らないことが基本になります。セラミドやヘパリン類似物質とは働きが異なるため、肌の状態に応じて使い分けることが効果的です。
気になる肌の症状がある場合は、自己判断で市販品だけに頼らず、皮膚科を受診して医師のアドバイスを受けてください。
- 尿素は天然保湿因子(NMF)の構成成分で、保湿と角質軟化の両面で働く
- 濃度によって効果が異なり、10%未満は保湿、10〜30%は角質軟化効果も期待できる
- 顔に使うなら5%以下の低濃度品を選び、敏感な部位は避ける
- 傷口・炎症部位・乳幼児の肌への使用は控える
- 肌の症状が気になる場合は皮膚科を受診する
よくある質問
- 尿素クリームは顔に毎日使っても大丈夫?
-
尿素クリームを顔に使用する場合は、5%以下の低濃度製品を選ぶことが大切です。10%以上の尿素クリームは顔の薄い皮膚には刺激が強く、赤みやヒリヒリ感を引き起こす可能性があります。
低濃度の製品であっても、目の周りや口元など特にデリケートな部位は避けたほうが安心です。使い始めは少量から試し、異常が出たら使用を中止してください。
- 尿素クリームでかかとのガサガサはどのくらいで改善する?
-
個人差はありますが、20%程度の尿素クリームを1日2回、入浴後を中心に2〜4週間ほど継続して使用すると、角質が柔らかくなりガサガサの改善を実感しやすいとされています。
改善した後も急にやめると元に戻ることがあるため、頻度を減らしながら塗り続けるのがおすすめです。ひび割れが深い場合や痛みがある場合は、皮膚科を受診してください。
- 尿素入りハンドクリームと尿素なしのハンドクリームはどう違う?
-
尿素入りのハンドクリームは、保湿効果に加えて硬くなった角質を柔らかくする角質軟化作用を持つ点が特徴です。手指のゴワつきやささくれが気になる方には向いているでしょう。
尿素が入っていないハンドクリームでも、ワセリンやシアバターなどの油性成分で肌を保護するタイプは乾燥対策として十分に有効です。手荒れがひどく皮膚が切れている場合は、尿素が刺激になることがあるため、尿素なしの製品を選んだほうがよいかもしれません。
- 尿素クリームで肘や膝の黒ずみは薄くなる?
-
尿素には角質を柔らかくして古い角質の排出を促す効果があるため、角質の蓄積による肘や膝のくすみ・ゴワつきには一定の改善が期待できます。ただし、尿素自体に美白成分としての作用はありません。
色素沈着が原因の黒ずみには、トラネキサム酸やビタミンC誘導体など美白有効成分を含む製品のほうが適している場合があります。黒ずみの原因がわからない場合は、皮膚科で相談してみてください。
- 尿素10%と尿素20%のクリームはどちらを選ぶべき?
-
肌の乾燥が軽度で、日常的な保湿ケアとして使いたい場合は10%の製品が適しています。刺激が少なく、手や体に広く使いやすいのがメリットです。
かかとや肘など角質が厚くなった部位のケアには、20%の製品がより効果的といえるでしょう。ただし、高濃度のほうが刺激のリスクも高まるため、まずは10%から試して物足りなければ20%に切り替えるという段階的なアプローチがおすすめです。
参考文献
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