ヒアルロン酸は私たちの肌に自然に存在する保湿成分で、化粧水・美容液などスキンケア製品に最も広く配合される成分のひとつです。しかし「本当に効果はあるの?」という疑問を持つ方も少なくありません。
この記事ではスキンケア化粧品に配合されるヒアルロン酸の基本情報・期待できる効果・正しい使い方・注意点を、エビデンスをもとに解説します。
美容クリニックで行うヒアルロン酸注射(皮膚フィラー治療)については、スキンケアとは別のカテゴリとなるため、この記事では対象外とします。
この記事の執筆者

小林 智子(こばやし ともこ)
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長
2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。
こばとも皮膚科関連医療機関
ヒアルロン酸の実体と歴史──「保湿の王様」と呼ばれる理由
ヒアルロン酸は1934年に発見された歴史ある成分で、自重の最大1000倍の水を保持できる特性から、医療・美容の両分野で幅広く活用されています。皮膚に自然に存在する成分でありながら、加齢とともに減少するため、外からの補給を求める声も多い成分です。
1934年に発見された、医療と美容をつなぐ成分
ヒアルロン酸は1934年、生化学者のカール・メイヤーとジョン・パーマーが牛の眼球内の硝子体から初めて単離・発見した物質です。以来、眼科手術の補助剤や関節疾患の治療薬として医療分野で活用されてきましたが、1970〜80年代以降はスキンケア化粧品への応用も急速に広まりました。
化学的にはD-グルクロン酸とN-アセチル-D-グルコサミンという2種類の糖が交互に連なった直鎖状の多糖類(グリコサミノグリカン)です。分子量は製法によって50 kDaから数千 kDaまで幅があり、この分子量の違いが肌への浸透性や作用に大きく影響します。
現在では動物由来ではなく細菌の発酵法で大量生産できるため、純度が高く安定した成分として化粧品に配合されています。
化粧品成分表示での名前と3つの主な種類
化粧品の全成分表示では、主に「ヒアルロン酸Na(ナトリウム)」という名称で記載されます。これは最も一般的な形態で、高分子のヒアルロン酸が主体です。
ほかにも「加水分解ヒアルロン酸(低分子化)」や、保水力をさらに高めた「アセチルヒアルロン酸Na」なども流通しており、それぞれ特性が異なります。
ヒアルロン酸の主な種類と特徴
| 成分表示名 | 分子量の目安 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| ヒアルロン酸Na | 高分子(100万 Da 前後) | 肌表面にうるおいのヴェールをつくる |
| 加水分解ヒアルロン酸 | 低分子(数千 Da 以下) | 角質層深部への浸透が期待される |
| アセチルヒアルロン酸Na | 中〜高分子 | 通常より高い保水力が期待される |
日本の法令上での位置づけ
ヒアルロン酸は現在、化粧品・医薬部外品の「保湿成分」として配合が認められています。
ただし美白・シワ改善・育毛といった効能を標榜する医薬部外品の指定有効成分には含まれていません。あくまで「保湿」目的でのスキンケア成分という位置づけです。一方、関節への注射剤など医療用途については医薬品の範疇となります。
ヒアルロン酸が肌にもたらす3つの働き
外用ヒアルロン酸の主な働きは保湿ですが、近年の研究では小ジワの改善や肌バリアのサポートへの関与も報告されています。ただし効果の強さは製品の処方・分子量・使い方によって異なるため、過度な期待は禁物です。
自重の最大1000倍の水を保つ圧倒的な保湿力
ヒアルロン酸の代名詞ともいえるのが、その驚異的な保水力です。1gのヒアルロン酸が最大で約6Lもの水を保持できるとされており、肌表面に塗布することで角質層の水分量を高め、乾燥によるかさつきやつっぱりを和らげます。
臨床試験においても、ヒアルロン酸を配合したセラムを6週間使用した結果、肌の水分量・なめらかさ・ふっくら感がいずれも統計的に有意に改善したと報告されています(Draelos et al., 2021)。同試験では塗布直後に134%もの水分量向上が計測されており、即効性という面でも高い評価を得ています。
小ジワを目立ちにくくするエイジングケア効果
私たちの皮膚に含まれるヒアルロン酸の量は、25歳頃から加齢・紫外線の影響を受けて徐々に減少するとされています(Bravo et al., 2022)。それが皮膚のハリや弾力が失われる原因のひとつと考えられています。
外用ヒアルロン酸が皮膚内部のヒアルロン酸を直接補えるわけではありませんが、肌表面にうるおいのヴェールを形成することで小ジワを目立ちにくくする効果が期待できます。
特に分子量50〜130 kDaの低分子ヒアルロン酸は、高分子のものより皮膚深部への浸透性が高く、眼周りのシワの深さを有意に改善したとするランダム化比較試験の報告もあります(Pavicic et al., 2011)。
肌バリア機能と組織修復への関与
ヒアルロン酸は、その分子量によって肌への作用が大きく異なります。高分子ヒアルロン酸は抗炎症・免疫抑制的に働き、低分子ヒアルロン酸は免疫細胞を活性化して組織の修復を促す働きを持つとされています(Kaul et al., 2021)。また炎症性疾患に対する研究では、ヒアルロン酸が炎症性サイトカイン(TNF-αやIL-6)の産生を抑制する可能性も示唆されています(Marinho et al., 2021)。
スキンケア製品における濃度での臨床的な有効性は研究途上ですが、バリア機能の補助・乾燥による肌荒れの予防という観点でも注目されている成分といえます。
ヒアルロン酸の3つの主な働き
| 働き | 期待できること | 根拠 |
|---|---|---|
| 保湿 | 角質層の水分量向上・乾燥感の軽減 | 複数の臨床試験で確認 |
| エイジングケア | 小ジワの目立ちにくさ・ハリ感の改善 | 低分子HAで有意な改善報告あり |
| バリア・修復 | 炎症の抑制・肌荒れ予防のサポート | 分子量依存の作用が研究段階で示唆 |
化粧水から美容液まで──スキンケアへの正しい取り入れ方
ヒアルロン酸は配合製品の種類が豊富ですが、使う順番や重ね方を少し意識するだけで保湿効果がより持続しやすくなります。
化粧水・美容液・クリームのどれに多く配合される?
ヒアルロン酸は水溶性であることから、水ベースの化粧水(ローション)や美容液(セラム)への配合が最も一般的です。クリームや乳液にも配合されますが、油分が多い剤形では相対的に配合量が少なくなりがちです。
近年は高分子・低分子・超低分子のヒアルロン酸を複数組み合わせた「マルチウェイト(多分子量)処方」の製品も増えており、肌の表面から角質層の深部まで多層的なアプローチを目指す設計が注目されています(Robinson et al., 2022)。
朝・夜の使い方と塗布のコツ
ヒアルロン酸は朝・夜どちらの使用にも向いています。洗顔後、肌がまだしっとりしている状態のうちに化粧水(またはヒアルロン酸配合美容液)を最初に塗布するのが基本です。ヒアルロン酸は吸湿性があるため、周囲に水分があるほど効果を発揮しやすいとされています。
乾燥した環境(冬場・冷暖房の強い室内など)では、ヒアルロン酸が空気中の水分を吸収しにくく、逆に肌内部の水分を引き出してしまう場合があるという指摘もあります。そのため、ヒアルロン酸配合品の後は必ず乳液・クリームで蓋をするようにしてください。
ヒアルロン酸の効果的な使い方まとめ
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 使う順番 | 洗顔後(化粧水→美容液→乳液/クリームの順)最初のステップで使用 |
| 塗り方のコツ | 肌が少し湿った状態で薄くなじませる。強く擦らない |
| 蓋が重要 | 乾燥しやすい環境では、必ず乳液・クリームで閉じ込める |
| 使用頻度 | 朝・夜の使用が理想。低刺激なため毎日使用可 |
相性の良い成分と注意したい組み合わせ
ヒアルロン酸は水溶性で反応性が低く、多くの成分と組み合わせやすいのが特長です。特にセラミドとの組み合わせは「ヒアルロン酸で水分を引き寄せ、セラミドで蒸発を防ぐ」という相乗効果が期待でき、乾燥肌・敏感肌の方にも広く活用されています。

ナイアシンアミドやビタミンC誘導体、レチノールなどとも一般的に問題なく使用できます。
ただし、低pH(pH4以下)の製品(AHA・BHA配合のピーリング剤など)とヒアルロン酸を同一タイミングで使用すると、ヒアルロン酸が分解される可能性があるとする意見もあります。強い酸性製品と組み合わせる場合は時間をあけて使用するか、専門家に相談することをお勧めします。
ヒアルロン酸を使う前に知っておきたい注意点
外用ヒアルロン酸は一般的に安全性が高い成分ですが、使用にあたって確認しておきたいポイントもあります。
皮膚刺激・アレルギーのリスクは?
外用ヒアルロン酸は皮膚刺激性・感作性が低く、敏感肌や乾燥肌の方にも比較的安全に使用できる成分と考えられています。臨床試験では、ヒアルロン酸配合セラムの使用後に炎症マーカー(IL-1α)の有意な増加は認められず、皮膚刺激反応も報告されませんでした(Draelos et al., 2021)。
ただし、製品には他の配合成分もあるため、ごくまれに製品全体に対してアレルギーや接触性皮膚炎を起こす場合があります。初めて使用する製品はパッチテスト(二の腕の内側などに少量を塗布して24〜48時間様子を見る)を実施するのが安全です。
特定の肌状態がある方へ
アトピー性皮膚炎・接触性皮膚炎・脂漏性皮膚炎など皮膚疾患を抱える方、外用ステロイド剤などを使用中の方は、新たなスキンケア製品を導入する際は皮膚科専門医に相談することをお勧めします。
また、乳幼児の肌への使用は成人向け製品では想定されていないことが多く、小児科・皮膚科への相談が必要です。
化粧品と医療用ヒアルロン酸はまったく別物
スキンケア製品に配合されるヒアルロン酸は、主に肌表面の保湿を目的とした化粧品成分です。一方、医療分野で使用されるヒアルロン酸は、関節症の治療用注射剤・眼科手術補助剤・美容皮膚科でのフィラー(充填剤)など、医師の処方・管理のもとで用いられるものです。
化粧品と処方薬では、用途・濃度・製造管理のレベルがまったく異なります。美容クリニックで行うヒアルロン酸注射については、ヒアルロン酸注射の記事を参照してください。
化粧品と医療用ヒアルロン酸の主な違い
| 区分 | 化粧品・医薬部外品 | 医療用(処方薬・医療行為) |
|---|---|---|
| 目的 | 肌の保湿・コンディション維持 | 治療(関節症・フィラーなど) |
| 使用場所 | 自宅でのセルフケア | 医療機関のみ |
| 管理 | 薬機法(化粧品基準) | 医薬品医療機器等法・医師処方 |
セラミド・コラーゲン・グリセリン、どれを選べばいい?
ヒアルロン酸・セラミド・コラーゲン・グリセリンはいずれも保湿成分として知られていますが、働き方と肌への浸透の仕組みがそれぞれ大きく異なります。
バリア修復に特化するセラミドとの違い
セラミドは角質層の細胞間に存在する脂質成分で、皮膚バリア機能を物理的に構成しています。
ヒアルロン酸が「水分を引き寄せて保持するhumectant(湿潤剤)」として機能するのに対し、セラミドは「水分が逃げにくい構造をつくるemollient」として機能します。どちらが優れているというものではなく、両者は補完し合う関係にあります。
乾燥とバリア機能の低下が同時に気になる方には、両成分を組み合わせたケアが効果的と考えられています。
皮膚構造を支えるコラーゲンとの違い
コラーゲンは皮膚の真皮を構成するタンパク質で、ハリや弾力の基盤となります。外用コラーゲンは分子量が大きすぎるため皮膚への浸透は難しく、主に保湿・感触改善として機能するとされています。
ヒアルロン酸との本質的な違いは、ヒアルロン酸が「水分を保持すること」に特化しているのに対し、コラーゲンは「皮膚構造を支えること」が主たる役割という点です。
4つの保湿成分の比較
- ヒアルロン酸:水分を強力に引き寄せ保持するhumectant。高分子は肌表面、低分子は角質層深部に働きかける。
- セラミド:角質細胞間の脂質として皮膚バリアを構成。水分蒸発を防ぐemollient。
- コラーゲン:真皮のタンパク質として皮膚のハリ・弾力の基盤を形成。外用コラーゲンは主に保湿・感触改善。
- グリセリン:小分子のhumectant。角質層に素早く浸透し、しっとり感と柔軟性を付与する。
素早く浸透するグリセリンとの違い
グリセリンはヒアルロン酸と同じhumectantに分類されますが、分子が小さいため角質層への浸透が速く、コスト面でも優れています。ヒアルロン酸が大きな分子で肌表面に保湿膜を形成しやすいのに対し、グリセリンは即効性と浸透性に長所があります。
多くの化粧品がこの2成分を組み合わせて使用するのはそのためで、互いの弱点を補い合う設計となっています。
まとめ
ヒアルロン酸はエビデンスが比較的豊富で、幅広い肌タイプに使いやすい保湿成分です。分子量や製品の処方を意識して選び、正しい手順で使うことで保湿効果をより引き出すことができます。
日常のスキンケアに取り入れる際は、以下のポイントを参考にしてください。
- ヒアルロン酸は肌に自然に存在するグリコサミノグリカン(多糖類)で、自重最大1000倍の保水力を持つ保湿成分。
- 分子量の大小(高分子・低分子)で浸透の深さが異なり、低分子タイプはシワ改善により効果的な可能性が研究で示されている。
- 複数の臨床試験で保湿・弾力・小ジワ改善への効果が報告されており、スキンケア成分の中でも比較的エビデンスが充実している。
- 外用での皮膚刺激性は低く、敏感肌でも使いやすい。ただし製品全体に対するアレルギーが起きる可能性はあるため、パッチテストが望ましい。
- セラミドやグリセリンなど他の保湿成分と組み合わせることで、より高い保湿・バリアサポート効果が期待できる。
気になる肌の症状や皮膚炎などがある場合は、市販のスキンケア製品に頼りすぎず、皮膚科専門医を受診してください。
よくある質問
参考文献
Draelos, Z. D., Diaz, I., Namkoong, J., Wu, J., & Boyd, T. (2021). Efficacy evaluation of a topical hyaluronic acid serum in facial photoaging. Dermatology and Therapy, 11(4), 1385–1394. https://doi.org/10.1007/s13555-021-00566-0
Bravo, B., Correia, P., Gonçalves Junior, J. E., Sant’Anna, B., & Kerob, D. (2022). Benefits of topical hyaluronic acid for skin quality and signs of skin aging: From literature review to clinical evidence. Dermatologic Therapy, 35(12), e15903. https://doi.org/10.1111/dth.15903
Pavicic, T., Gauglitz, G. G., Lersch, P., Schwach-Abdellaoui, K., Malle, B., Korting, H. C., & Farwick, M. (2011). Efficacy of cream-based novel formulations of hyaluronic acid of different molecular weights in anti-wrinkle treatment. Journal of Drugs in Dermatology, 10(9), 990–1000.
Bukhari, S. N. A., Roswandi, N. L., Waqas, M., Habib, H., Hussain, F., Khan, S., Sohail, M., Ramli, N. A., Thu, H. E., & Hussain, Z. (2018). Hyaluronic acid, a promising skin rejuvenating biomedicine: A review of recent updates and pre-clinical and clinical investigations on cosmetic and nutricosmetic effects. International Journal of Biological Macromolecules, 120(Pt B), 1682–1695. https://doi.org/10.1016/j.ijbiomac.2018.09.188
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