透析シャント閉塞の原因と予防法|長持ちさせるための自己管理

透析シャント閉塞の原因と予防法|長持ちさせるための自己管理

透析治療を支える大切な命綱であるシャントは、日々の管理次第でその寿命が大きく変わります。血管の狭窄や血栓による閉塞は、透析患者さんにとって最も避けたいトラブルの一つです。

この記事では、シャントが詰まる背景にある血圧低下や脱水、外部からの圧迫といった具体的な原因を深掘りし、長持ちさせるための自己管理術を解説します。

日々の観察ポイントや生活習慣の改善策を正しく取り入れることで、緊急手術のリスクを減らし、安心して治療を続けられる環境を自分自身の手で守っていきましょう。

目次

透析シャントが突然詰まってしまう原因を正しく突き止めましょう

シャント閉塞は、血管内に血栓が生じて血液の流れが完全に止まってしまう現象です。主な要因として、透析中の急激な血圧低下や、日常生活での不注意による腕の圧迫、夏場などの脱水症状が挙げられます。

血管の狭窄が進んでいる場合、これらのきっかけが重なることで、ある日突然血流が途絶えてしまうため、リスク因子の把握が大事です。

血圧が下がりすぎることで血管内の流れが止まってしまう怖さ

透析治療において、血圧のコントロールはシャントの開通性を維持するために極めて重要です。特に透析後半に除水が進み、体内の循環血液量が減少すると、血圧が急激に低下する場面が見受けられます。

血圧が下がると、シャント内を流れる血液の勢い(血流速)が著しく低下します。もともと血管が細くなっている箇所がある場合、流れが滞った瞬間に血液が固まり始め、そのまま閉塞へと繋がります。

これは、川の流れが弱くなった時に川底に泥が溜まりやすくなる現象に似ています。一度血流が止まると、その場で急速に血栓が成長し、血管を完全に塞いでしまうのです。

また、ご自宅での低血圧も同様に危険です。降圧剤が効きすぎている場合や、体調不良で食事が摂れず血圧が低い状態が続くと、睡眠中にシャントが止まってしまうリスクが跳ね上がります。

血圧は高すぎても心臓に負担をかけますが、シャントにとっては低すぎる状態が直接的な脅威となります。主治医と連携し、自分にとっての適切な血圧範囲を維持する努力が大切です。

毎日の血圧測定を習慣化し、数値の変動に敏感になることが、血管を守る第一歩となり、血圧が低いと感じた時は、無理に動かず水分調整を見直すなど、早めの対処を心がけましょう。

睡眠中の姿勢や服装が血管を物理的に押し潰していませんか

シャント血管は皮膚のすぐ下を通っているため、外部からの圧力に対して非常に脆い性質を持っていて、日常生活の中で、無意識に腕を圧迫してしまっているケースは少なくありません。

特に注意したいのが、就寝時の姿勢です。シャント側の腕を体の下にして寝てしまったり、腕枕の姿勢を取ったりすると、自重によって数時間にわたり強い圧迫が血管に加わります。

この持続的な圧迫は、シャント内の血流を物理的に遮断し、目が覚めた時にはすでに血流が止まっており、スリルが消失しているという悲しい事態を招きかねません。

また、服装選びも慎重に行う必要があります。袖口がゴムで締まっている服や、伸縮性のない細身のシャツは、腕を曲げた際に血管を締め付ける止血帯のような役割をしてしまいます。

お洒落を楽しみたい気持ちも大切ですが、シャントの健康を優先するなら、ゆとりのあるデザインを選び、手首を締め付ける腕時計やブレスレットも、反対側の腕に着用しましょう。

カバンの持ち方についても、買い物袋を肘にかける癖がある方は注意が必要です。重い荷物が血管を直接押し潰す原因となるため、リュックサックを活用するなどの工夫を取り入れてください。

腕への外部圧力を避けるための具体的な注意点

注意すべき動作血管への影響改善のための対策
重い荷物を腕にかける血管が局所的に押し潰される反対の手を使うかリュックに変更する
きつい袖の服を着用腕全体に持続的な締め付けが加わる袖口にゆとりのある服を選ぶ
腕を下にして横になる自重による長時間の血流遮断抱き枕を活用して姿勢を安定させる

体内の水分が不足して血液がドロドロになるリスクを回避する

血液は、体内の水分量が適切に保たれている時にスムーズに流れますが、脱水状態に陥ると血液の粘稠度が高まり、いわゆるドロドロの状態になってしまいます。

透析患者さんの場合、水分制限を厳格に守るあまり、夏場や発汗時に必要な水分まで不足させてしまうことがあります。これがシャント閉塞の隠れた大きな要因です。

血液の粘りが強くなると、シャント内の血管壁に血栓が付着しやすくなり、特にもともと狭窄がある部位では、粘り気の強い血液が詰まりやすく、一気に閉塞へと進行します。

また、下痢や嘔吐などの体調不良時も、急激に水分が失われるため非常に危険です。体調を崩した際はシャントの振動を頻繁に確認し、血流の変化に目を光らせる必要があります。

お酒の飲み過ぎによる利尿作用も脱水を招きます。アルコールを摂取した翌朝は血液が濃くなりやすいため、シャントが止まっていないか念入りにチェックすることが大切です。

適切な水分管理とは、単に制限することではなく、血圧と血液の質を安定させるために必要な量をコントロールすることです。喉の渇きが異常に強い場合は、塩分摂取量を見直しましょう。

血液をサラサラに保つためには、日々の食事内容や運動、そして適切な水分補給のバランスが求められます。自分の体調を客観的に把握し、脱水の予兆を見逃さないようにしましょう。

シャントの異変にいち早く気付くためのセルフチェックを習慣にしましょう

トラブルの早期発見において、自分自身による毎日の観察に勝るものはありません。シャント閉塞は突然起こるように見えて、多くの場合、事前に血流の変化という予兆を示しています。

朝昼晩と決まった時間に血管の状態を確認し、スリル(振動)やシャント音の変化を察知することで、血管内治療などの適切な処置を間に合わせることが可能になります。

指先に伝わるスリルの振動が弱くなっていませんか

シャントが健やかに動いている証拠は、血管の上に触れた時に感じるザーザーという心地よい振動で、専門用語でスリルと呼びますが、この感覚を覚えることが重要です。

毎日決まった時間に、シャントの吻合部から静脈にかけて指を当ててみてください。昨日よりも振動が弱々しくなっていたり、振動する範囲が狭まっていたりする場合は要注意です。

血流が悪くなると、振動が消えて代わりにドクンドクンという心臓の拍動のような感覚(拍動)が強くなることがあります。これは出口が狭くなって血液が行き場を失っているサインです。

スリルの変化は、閉塞に至る数日前から現れることも少なくありません。この段階で医療機関を受診できれば、風船治療などでシャントを救える確率が飛躍的に高まります。

自分の血管に毎日語りかけるような気持ちで触れてみましょう。異常に気付くためには、まず正常な状態を誰よりも自分自身が熟知しておく必要があります。

もし振動がまったく感じられない、あるいは拍動も消えている場合は、すでに完全に閉塞している可能性が高いです。その際は一刻の猶予もありませんので、直ちに連絡してください。

家庭用の聴診器で聴くシャント音の音程が高くなっていませんか

指で触れるチェックに加えて、耳で音を聴くことも非常に有効な観察手段です。最近では家庭用の安価な聴診器も市販されており、これを使うことでより詳細な情報が得られます。

正常なシャント音は、低く太いゴーという音ですが、血管のどこかに狭い場所(狭窄)ができると、そこを流れる血液の音はヒューヒューやピーという高い音に変化します。

これは、水道ホースの先を指でつまむと、水の勢いが増して高い音が出るのと同じ原理です。高い音が聞こえ始めたら、それは血管が悲鳴を上げていると捉えてください。

また、音が途切れるようなリズムになったり、以前よりも音が小さく遠くに聞こえるようになったりした場合も、血流量が低下している深刻な兆候であると考えられます。

聴診器を当てる位置を少しずつずらしながら、血管全体の響きを確認しましょう。一部だけ音が際立って高い場所があれば、そこに狭窄が隠れている可能性が高いです。

腕の腫れや血管のコブが目立つようになっていませんか

視覚的なチェックも欠かせません。鏡の前に立ち、左右の腕を並べて見比べてください。シャント側の腕だけが全体的にむくんでいたり、不自然に太くなっていたりしませんか。

腕の腫れは、深部の静脈が狭くなって血液の戻りが悪くなっている時に現れる症状で、また、血管の一部が大きく膨らんでコブ(動脈瘤)のようになっている場合も注意が必要です。

コブそのものは透析を続ける中でできやすいものですが、急激に大きくなったり、その部分の皮膚が薄くなって光って見えたりする場合は、破裂の危険性があるため放置できません。

さらに、皮膚の色にも注目してください。赤みを帯びて熱を持っている場合は感染症の疑いがあり、逆に青白くなっている場合は極端な血流不足が懸念されます。

指先の状態も重要です。シャントに血流を奪われすぎて、指先が紫色になったり、冷たくなったりしていないか確認してください。これはスティール症候群と呼ばれる状態かもしれません。

毎日見ていると変化に気付きにくいものですが、スマートフォンのカメラで週に一度写真を撮っておくと、過去との比較が容易になり、客観的な判断を下しやすくなります。

シャントを長持ちさせるために日常生活で守るべき約束事

シャントの寿命を延ばす鍵は、特別な治療以上に、日々の暮らしの中での優しい扱いにあります。血管に過度な負担をかけない動作を身につけ、清潔な状態を維持することで、狭窄や感染のリスクを劇的に下げることが可能です。

命綱であるシャントを、体の一部として慈しみ、守り抜くための具体的な生活ルールを習慣化していきましょう。

シャント側の腕を物理的なダメージから徹底的にガードする

シャント血管は非常に高い圧力がかかっているため、怪我をすると大出血を招く恐れがあります。庭仕事やDIY、ペットとの触れ合いなど、腕に傷がつく可能性がある場面では注意しましょう。

また、血圧測定や採血は、必ずシャントがない反対側の腕で行うことを徹底し、病院だけでなく、健康診断や他科を受診する際にも自分から申告することが大切です。

万が一、事故などでシャント側の腕から出血した場合は、慌てずに穿刺部より心臓に近い側を圧迫するのではなく、出血点そのものを指で力強く押さえて、すぐに救急受診してください。

さらに、腕を激しく振る動作や、重い荷物を持ち上げ続けることも血管へのストレスとなります。運動をする際は、シャント側の腕に無理な負荷がかからない種目を選ぶことが大切です。

こうした保護意識を持つことが、血管壁を傷めず、しなやかな状態を保つことに繋がります。自分の腕を壊れ物のように大切に扱うことが、結果として長期間の安定した透析を可能にします。

穿刺部位を清潔に保って恐ろしい細菌感染をシャットアウトする

シャント感染は、一度起こると血管を破壊し、最悪の場合はシャントの抜去を余儀なくされる合併症で、感染を防ぐ基本は、穿刺部位の皮膚を常に清潔に保つことです。

透析当日は、施設によって入浴のルールが異なりますが、基本的に穿刺した箇所を不潔な手で触らないことが鉄則です。痒みがあっても、決して爪を立てて血管付近を掻いてはいけません。

また、テープかぶれや皮膚の乾燥も、感染の入り口となります。保湿クリームなどで皮膚のコンディションを整え、バリア機能を高めておくことが、間接的に血管を守ることに繋がります。

石鹸をよく泡立てて、腕を優しく洗う習慣をつけましょう。汚れを落とすだけでなく、皮膚の状態を自分の目で確認する良い機会にもなります。異常があれば、すぐにスタッフへ相談してください。

感染の予兆である発赤や痛み、膿などは、初期段階であれば抗生剤で治療可能です。様子を見すぎて悪化させるのが一番の損失ですので、早めの報告を強くお勧めします。

シャントの寿命を延ばすための日常管理表

管理項目具体的な方法期待できる効果
清潔の保持石鹸の泡で優しく毎日洗う細菌による化膿や炎症の防止
皮膚の保護保湿剤でひび割れを防ぐ傷口からの感染リスクを低減
血流の保護腕を曲げたまま長時間維持しない血管の変形や狭窄の予防

冷えから血管を守りスムーズな血液循環をサポートする

寒さによる冷えは、血管を収縮させ、血流を低下させます。冬場はもちろん、夏場の過剰な冷房も、シャントにとっては過酷な環境であることを自覚しておきましょう。

腕が冷えると血液が固まりやすくなり、血栓形成のリスクが高まるので、外出時はアームウォーマーや長袖の衣類を活用し、常にシャント部分が温かい状態を保つ工夫をしてください。

また、ぬるめのお湯でゆっくりと腕を温める入浴も、血管を広げて血流を促す効果があります。リラックス効果も得られるため、精神的な健康維持にも役立つでしょう。

ただし、熱すぎるお湯は心臓に負担をかけるだけでなく、皮膚を乾燥させる原因にもなります。心地よいと感じる温度で、無理なく継続することが、血管の柔軟性を保つ秘訣です。

冷えを感じた時は、指先を動かすなどの軽い運動をして、末梢まで血液が行き渡るように促します。

食事と水分管理がシャントの詰まりにくさに大きく関係します

血管の健康状態は、私たちが口にするもので作られています。透析患者さんの場合、食事内容が血液の質や血圧の安定に直結し、それがシャントの開通性にまで影響を及ぼします。

塩分や水分のコントロールを単なる制限と捉えず、自分のシャントを内側からメンテナンスするための積極的なセルフケアとして取り組んでいきましょう。

塩分を控える努力が血圧の安定と血管保護に直結する理由

塩分の過剰摂取は、強い喉の渇きを引き起こし、水分の摂りすぎを招きます。増えた水分は血管内の圧力を高め、透析時の除水量を増大させ、結果として血圧の急降下を招きます。

この悪循環を断ち切るのが減塩です。塩分を控えることで、透析間の体重増加を抑えることができ、透析中の血圧が安定し、シャント閉塞の最大の引き金である低血圧を防ぎます。

また、過剰な塩分は動脈硬化を進行させ、血管のしなやかさを奪います。硬くなった血管は狭窄しやすく、一度トラブルが起きると治療が難しくなる傾向があります。

減塩は最初は辛く感じるかもしれませんが、出汁の旨味やレモンの酸味、ハーブの香りを活用することで、少しずつ舌を慣らしていくことができます。

自分のシャントを長持ちさせるための最良の投資は、今日から始める一口ずつの減塩です。毎日の積み重ねが、数年後の血管の状態に大きな差をもたらすことを忘れないでください。

血液をサラサラに保つための栄養バランスを意識していますか

血液がドロドロとした状態になると、血管壁に血栓が付着しやすくなります。中性脂肪やコレステロールの値を適切に管理することは、全身の血管だけでなくシャントの保護にも重要です。

特定の食品を避けるだけでなく、リンやカリウムといった透析患者さんに特有の数値も安定させることが求められます。リンが高い状態が続くと、血管が石灰化して石のように硬くなってしまいます。

石灰化した血管は、バルーン治療で広げることが非常に難しく、シャントの寿命を一気に縮めます。食事療法は、血管というパイプの壁を綺麗に掃除し続ける作業なのです。

主治医や管理栄養士のアドバイスを仰ぎ、自分の血液データに基づいた食事改善を実践しましょう。制限の中にも楽しみを見つけ、続けられる食生活を構築することが大切です。

食事管理で意識すべき3つのポイント

  • 1日の塩分摂取量を決められた範囲内に確実に収め、喉の渇きを元から抑える。
  • リンの数値をコントロールし、血管が石灰化して硬くなるのを防ぐ。
  • 透析間の体重増加をドライウェイトの規定値以内に保ち、血圧の激変を回避する。

水分摂取のタイミングと量を自分の体に合わせて調整する

水分制限は、決して水を飲んではいけないという意味ではありません。大切なのは、体内の水分量を一定に保ち、血液の濃度を安定させるためのバランスを知ることです。

一気に大量の水を飲むのではなく、少量を口に含んでゆっくりと味わうようにしましょう。氷を口の中で溶かす方法は、少ない水分量で満足感を得るための優れた知恵です。

特に夏場などは、知らない間に汗で水分が失われています。ドライウェイトを厳守しつつ、過度の脱水に陥らないような微調整が、シャントの血流を維持するためには必要です。

毎日決まった時間に体重を測り、自分の水分バランスを客観的に把握しましょう。

シャントトラブルの予兆を感じた時に取るべき迅速な行動

もしシャントに異変を感じたら、迷っている時間はありません。血管が完全に閉塞してからの時間は、秒単位で成功率が下がっていく勝負の時間です。早急な対応ができれば、カテーテル治療で元の元気な血流を取り戻すことができます。

自分の感覚を信じ、少しでもおかしいと思ったらプロの助けを求める、その決断があなたの透析生活を救います。

スリルが完全に消えてしまう前に迷わずクリニックへ連絡する

シャントの振動(スリル)が消えるのは最終的な段階で、その前の段階、つまり振動が弱くなったり音が変わったりした時点で、医療機関へ連絡するのが最も望ましい対応です。

閉塞して数時間以内であれば、血栓を溶かしたり吸い出したりする処置がスムーズに行えます。しかし、丸一日以上放置してしまうと、血栓が血管に癒着し、再開通が困難になります。

夜間や休日であっても、緊急連絡先に電話することを躊躇しないでください。スタッフは、シャントを守るために存在しています。空振りであっても、何もなくて良かったと確認できることが大切です。

電話をする際は、症状が出始めた時刻、今のスリルの有無、痛みの有無などを簡潔に伝えましょう。

血管内治療(VAIVT)という低負担な選択肢を知っておく

シャントの狭窄や閉塞を治す方法として、現在は血管内治療(VAIVT)が主流となっていて、手術室で行われますが、皮膚を大きく切ることなく、局所麻酔で完了する治療です。

細いカテーテルを血管に通し、狭い部分を風船で広げることで、劇的に血流が改善します。この治療を定期的に受けることで、一つのシャントを10年以上使い続けている方も多くいらっしゃいます。

自分のシャントの状態をエコー検査などで定期的にチェックし、必要があれば早めにVAIVTを受けることが、シャントの長寿命化には欠かせない戦略となります。

治療への不安がある場合は、事前に手順やメリットを医師に詳しく尋ねてみましょう。正しい知識を持つことが、恐怖心を取り除き、前向きに治療を受ける力になります。

緊急時に伝えるべき情報の整理

確認項目具体的な内容医療スタッフへの伝え方
異変の発生時刻いつから症状が出たか今日の昼の12時頃からスリルが…
自覚症状の詳細振動、音、見た目の変化音がヒューヒュー高くなっています
腕の皮膚状態腫れ、色、痛み全体的にパンパンに腫れています

自己流の対処やマッサージが事態を悪化させる危険性を理解する

スリルが消えた時、血流を戻そうとして血管を強くマッサージする方がいますが、これは絶対に避けてください。血栓を肺や脳へ飛ばしてしまい、重大な合併症を引き起こすリスクがあるためです。

また、熱いタオルで温めすぎるのも、炎症を悪化させる原因となります。異変に気付いた時にすべきことは、ただ一つ、専門の医療機関に連絡し、速やかに受診することだけです。

適度な運動とリハビリテーションが血管を強く育てます

シャントは、日々の刺激によって「育てる」ことができる器官です。適切な負荷をかけることで血管の柔軟性が増し、血流の許容量がアップします。

リハビリテーションを習慣にすることで、トラブルに負けないタフな血管を作り上げることが可能です。無理のない範囲で、今日から始められる簡単なトレーニングを日常生活に取り入れて、血管を自ら鍛えていきましょう。

ハンドグリップ運動でシャント血管を太くたくましく成長させる

シャントを作った初期から継続的に行いたいのが、ハンドグリップやゴムボールを握る運動です。この動作は、シャント静脈に適度な内圧をかけ、血管を太く成熟させる効果があります。

血管が太くなると、一度の透析で取り出す血液量を確保しやすくなり、針を刺す際のエラーも減ります。また、血管が発達しているほど、将来的に狭窄が起きた際の予備能力が高まります。

1回に10秒間ぎゅっと握り、ゆっくり緩める。これを数回繰り返すだけでも効果があります。テレビを見ながら、あるいは家事の合間に、無理のないペースで継続することが大切です。

ただし、透析直後や腕に痛みがある時は控えてください。自分の体調と相談しながら、コツコツと血管を鍛える作業を楽しみましょう。努力は必ず血管の太さとして現れます。

腕全体のストレッチで筋肉をほぐし血流の通り道を確保する

シャント側の腕の筋肉が凝り固まっていると、末梢の血流が阻害されやすくなります。手首や肘、さらには肩周りを優しくストレッチすることで、腕全体の循環をスムーズに整えましょう。

特に肩が内側に入っていると、上肢の太い静脈が圧迫されることがあるので、胸を開くような動作を取り入れることで、シャントからの戻り血液が心臓へスムーズに流れるのを助けます。

ストレッチは深呼吸をしながら行い、リラックスした状態で行うのがベストです。無理な負荷をかけるのではなく、血管に酸素を届けるようなイメージで優しく体を動かしてください。

継続的なストレッチは、スティール症候群による手の痺れ緩和にも役立つことがあります。腕全体のケアを習慣化し、シャントを支える土台を整えていくことが大切です。

自宅でできる簡単リハビリメニュー

  • 柔らかいスポンジやボールを、ゆっくりとしたリズムで10回握る。
  • 肘を真っ直ぐ伸ばし、反対の手で手首を反らせて前腕をストレッチする。
  • 肩を大きく回し、胸の筋肉をほぐして腕全体の血流を促進させる。

全身の軽い運動が血管の内皮機能を改善し全身を活性化する

腕のトレーニングだけでなく、ウォーキングなどの全身運動もシャント管理には非常に有効です。適度な運動は血管の壁を構成する細胞(血管内皮細胞)を活性化し、血管を若々しく保ちます。

全身の血行が良くなることで、シャント内の血流も自ずと安定し、また、運動は適正な体重の維持や、精神的なストレス解消にも繋がり、透析生活の質(QOL)を全体的に向上させます。

「運動は体に毒」と守りに入るのではなく、医師の許可を得た範囲で積極的に体を動かしましょう。健やかな体こそが、最強のシャント保護フィルターとなります。

透析センター(人工透析) | 大垣中央病院(医療法人社団豊正会 )

よくある質問

透析シャントの閉塞を完全に防ぐ方法はありますか?

残念ながら完全に防ぐ方法はありませんが、日々の管理でリスクを最小限に抑えられます。

血管は生き物であり、針を刺す刺激で経年変化は避けられません。しかし、低血圧や脱水を防ぐことで血流を安定させ、閉塞を遠ざけることができます。

毎日のスリル確認を習慣化すれば、血管が細くなる予兆にいち早く気付けます。早期の風船治療を組み合わせることで、一つのシャントを10年以上維持することも十分に可能です。

透析シャント側にうっかり腕時計をつけてしまったらどうすべきですか?

すぐに時計を外し、指の腹で血管を触れてスリルの振動を確認してください。

短時間であれば大きな問題にならないことが多いですが、血管を圧迫し続けると血栓ができる原因になります。もし振動が弱くなっていたり、拍動のような響きに変わっていたりすれば注意が必要です。

外した後に腕が腫れたり、変色が見られたりする場合も放置してはいけません。少しでも普段と違う違和感があれば、迷わずクリニックに相談して指示を仰ぎましょう。

透析シャントの音がヒューヒュー高いのは異常の兆候ですか?

高い笛のような音は、血管の一部が狭くなっている強力なサインです。

水道ホースの先を細く絞ると水の音が鋭くなるように、シャント内でも狭窄箇所で血流が加速しています。この高い音(高音調駆出性雑音)は、閉塞へと向かう危険な予兆と捉えてください。

音が以前より高くなった、あるいは音が小さく途切れるようになったと感じたら一刻を争います。完全に詰まってスリルが消える前に、早急に血管の状態を確認してもらいましょう。

透析シャント側の腕が冷たいのは血流が悪いせいでしょうか?

血流が低下しているか、逆に血流が奪われすぎている可能性があります。

シャントに血液が過剰に流れることで、指先へ行くはずの血液が不足するスティール症候群かもしれません。この場合、手の冷えや痺れ、痛みを伴うことが多く、放置すると皮膚の潰瘍に繋がります。

また、シャント自体の血流が止まりかけていて腕全体の循環が悪くなっているケースも考えられます。いずれにせよ深刻な血流障害の予兆ですので、速やかに医師の診断を受けてください。

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大垣中央病院・こばとも皮膚科

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