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発疹がないのに全身がかゆい…原因は乾燥?ストレス?内臓の病気?考えられる理由と対処法

発疹がないのに全身がかゆい…原因は乾燥?ストレス?内臓の病気?考えられる理由と対処法

肌に赤みやブツブツが見当たらないのに全身を突き動かすような激しいかゆみに襲われることがあります。

この状態は皮膚掻痒症と呼ばれ単なる乾燥だけでなく精神的な負荷や体内の内臓疾患、さらには生活習慣の乱れが複雑に絡み合って生じます。

本記事では、目に見えないかゆみの正体を突き止め日常生活で実践できるケアから医療機関を受診すべき基準までを解説します。

この記事の執筆者

小林 智子(日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士)

小林 智子(こばやし ともこ)

日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長

2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。

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こばとも皮膚科関連医療機関

医療法人社団豊正会大垣中央病院

目次

目に見えないかゆみの正体と皮膚掻痒症の基本

見た目に異常がないにもかかわらずかゆみを感じる状態は、医学的に皮膚掻痒症と定義し、皮膚のバリア機能が低下し、本来は反応しないはずの微細な刺激に神経が過敏に反応することで発症します。

皮膚掻痒症とはどのような状態か

肌の表面を観察しても湿疹や蕁麻疹のような明らかな変化がない状態なのに、本人は我慢できないほどのむずがゆさやチクチクとした痛みにも似た感覚を覚えます。

皮膚の表面ではなくより深い部分にある神経が刺激を受けているときや、脳が誤ってかゆみの信号を受け取っているときに起こり、目に見える湿疹がないことが診断の前提です。

多くの場合、最初はわずかな違和感から始まりますが、放置すると掻きむしることで二次的な皮膚炎を起こす恐れがあり、鏡で見ても何も起きていないからと軽視してはいけません。

身体が発している何らかのサインとして受け止める姿勢が重要で、自分の感覚を信じ、なぜ脳がかゆみを感じているのかを紐解く作業が必要です。

全身にかゆみが広がる仕組み

かゆみの原因物質として知られるヒスタミンが放出されるケースもあれば、神経そのものが過敏になるケースもあり、全身に広がる場合は特定の場所への外部刺激ではありません。

血液循環や神経伝達といった身体のシステム全体に影響が及んでいる可能性が高く、血液を通じて全身を巡る物質がかゆみを誘発している状態で、内科的な要因も疑われます。

また皮膚の表面にある知覚神経が乾燥によって剥き出しになり、衣服との摩擦やわずかな温度変化にも過剰に反応するようになります。末端の神経が敏感になりすぎている証拠です。

これが全身で起こるとどこを触れてもかゆいという辛い状況に陥ります。末梢神経の興奮が収まらない限りこの感覚は持続するため、早期に神経を鎮めるアプローチが必要です。

脳がかゆみを認知する回路そのものがショートしたように活性化し、わずかな空気の動きや髪の毛の接触さえも激痛やかゆみに変換されてしまいます。

全身をめぐるリンパの流れや代謝の低下も、老廃物の滞留を招き神経を刺激する要因となり、単なる肌トラブルと侮らず、身体全体のコミュニケーションエラーが起きていると考えましょう。

皮膚掻痒症の種類と主な特徴

種類主な原因症状の範囲
汎発性皮膚掻痒症内臓疾患・薬剤・全身乾燥全身の広い範囲
局所性皮膚掻痒症局所の乾燥・衣類の摩擦背中や足など特定部位
老人性皮膚掻痒症加齢によるバリア低下四肢を中心とした全身

年齢とともに変化する肌の感受性

加齢に伴い皮膚の天然保湿因子や皮脂の分泌量は減少の一途をたどり、若い頃は耐えられた冬の寒気や乾燥した室内環境も年齢を重ねた肌にとっては過酷な刺激です。

高齢者に多い老人性皮膚掻痒症は、生理的な変化が主因で、肌の水分保持能力が低下することで外敵から身を守る壁が崩れてしまい、夜間の体温上昇がかゆみを助長します。

一方で若年層であっても過度な清潔志向によって同様の症状が出ることがあります。

入浴時にナイロンタオルで強く身体を洗う習慣や、熱すぎるお湯への入浴は肌に必要な油分を奪い去り、エアコンの効きすぎた室内や合成洗剤の使用なども肌のバリアを弱める一因となり得ます。

また、若い世代では不規則な生活やジャンクフードの摂取が、肌のターンオーバーを乱しバリア機能を脆弱にさせている側面もあります。

乾燥が起こすバリア機能の低下とかゆみの連鎖

全身のかゆみで頻度が高い原因は、肌の乾燥によるバリア機能の喪失で、皮膚の表面を覆う皮脂膜が失われると、外部からの刺激が直接神経に届くようになり、放置すると、少しの接触でも激しいかゆみを覚える敏感な身体へと変化します。

冬場に悪化するドライスキンの正体

外気の湿度が下がる冬は肌から水分が奪われやすい環境です。暖房器具の使用によって室内の空気はさらに乾燥し皮膚の角質層に含まれる水分量は急激に減少していきます。

乾いた土壌がひび割れるように角質がめくれ上がりその隙間から化学物質や物理的な刺激が侵入し、これがドライスキンによるかゆみの出発点です。

乾燥した肌は白い粉を吹いたようになり見た目には大きな変化がないように見えても触れるとザラついた感触があり、この微細な構造の変化が脳へとかゆみの信号を送り続けます。

衣服を着る際や布団に入る際のわずかな摩擦さえも、乾燥肌にとっては大きな攻撃となります。耐え難い不快感を生じさせる要因を取り除くには、徹底的な保湿習慣を確立しなければなりません。

特に冬場はコタツや電気毛布などの暖房器具が直接肌から水分を奪い、水分を失った肌細胞は縮小し、その隙間にアレルゲンや細菌が入り込みやすくなります。

バリア機能を破壊する生活習慣

良かれと思って行っている習慣が、肌を痛めつけている例は少なくありません。長時間の入浴や洗浄力の強すぎる石鹸の使用は、肌を守るべき大事な脂分を根こそぎ奪います。

ゴシゴシと力任せに洗う行為は角質層に微細な傷をつけ炎症の種を蒔いているのと同じです。清潔さを追求するあまり身体を守る盾を壊しては意味がありません。

また水分摂取の不足や偏った食生活も肌の質を左右します。外側からのケアだけでなく内側から細胞を潤すための栄養が不足すると、皮膚の再生サイクルが乱れてしまいます。

古い角質がいつまでも残り柔軟性を失った肌は環境の変化に追随できなくなり、かゆみという形での警告を発するようになります。

汗をかいたまま放置することも角質をふやかしてバリアを弱める原因になり、汗に含まれる塩分やアンモニアが乾燥した肌の亀裂に入り込み、痛痒い感覚を助長させてしまうのです。

適度な清潔さは保ちつつも、洗いすぎないことが重要で、石鹸は皮脂の多い部分だけに使い、他の部位はぬるま湯で流す程度に留める引き算のケアが肌の健康を守ります。

乾燥を防ぐための日常生活の工夫

  • 加湿器を使用して室内の湿度を50パーセント以上に保つ
  • 入浴温度は40度以下のぬるま湯に設定し10分以上の長湯を避ける
  • 化学繊維のインナーを避けて綿やシルクなど吸放湿性の高い素材を選択する
  • アルコールや香辛料など血管を広げてかゆみを誘発する食品を一時的に控える
  • 洗濯洗剤は無香料・低刺激のものを選びすすぎ回数を一回多く設定する

保湿ケアの重要性と正しい方法

かゆみを抑えるためには失われたバリア機能を外部から補うことが大切で、入浴直後で肌に水分が残っているうちに保湿剤を塗布すると、水分の蒸発を防ぐ膜を形成できます。

成分としてはヘパリン類似物質やセラミドなどが含まれたものを選び、タップリと使いましょう。

保湿剤を塗る際は強く擦り込むのではなく、優しく置くように広げるのがコツで、一度塗れば終わりではなく、乾燥を感じる前に塗り直す習慣を身につけることが重要です。

冬場だけでなく夏場もエアコンによる乾燥が深刻で、一年を通じて肌の潤い状態をチェックし、季節に合わせたテクスチャーの保湿剤を使い分けてください。

乾燥が進みすぎた肌にはまず水分を補うローションを塗り、その上から油分の多いクリームで蓋をする、二段構えの処置が有効です。

ストレスと神経系が関与する心因性のかゆみ

精神的な緊張や不安が身体の反応としてかゆみを起こす現象は珍しくありません。脳と皮膚は発生学的に同じルーツを持っており心の乱れはダイレクトに肌の感覚へと反映されます。

脳が作り出す偽りの刺激信号

過度なストレスに晒されると、脳内で快楽や痛みを司る物質のバランスが崩れ、本来であれば無視されるような軽微な感覚が、脳の過敏反応によってかゆみとして増幅されて認知されるのです。

これは心因性皮膚掻痒症と呼ばれ、リラックスしているときには感じないのに仕事中や悩み事をしているときに激しくなる特徴を持ちます。

また、かゆいから掻くという行為自体が一時的な快感をもたらし、脳がその刺激を求めるようになる側面も否定できません。掻くことで皮膚が傷つきさらにかゆみが強まる悪循環が生じます。

緊張すると身体が熱くなる、あるいは逆に冷えるといった反応も、皮膚神経に異常な信号を送る原因で、脳は身体を保護しようとするあまり、誤ったアラートを出し続けている状態です。

心因性のかゆみを確認するセルフチェック

チェック項目該当する状況かゆみの傾向
発症のタイミング忙しい時やプレゼン前緊張感に比例して強まる
就寝時の状態考え事が止まらない布団に入るとムズムズする
リラックス時旅行中や映画鑑賞中不思議とかゆみを忘れる
他部位の不調胃痛や頭痛が併発心身相関の反応が出やすい

自律神経の乱れと皮膚の関係

自律神経は全身の血管や汗腺をコントロールしており、これが乱れると皮膚の温度調整がうまくいかなくなります。急に身体が火照ったり逆に冷えたりすることで、皮膚の神経が刺激されます。

交感神経が優位になりすぎると身体は常に戦闘態勢となり、外部の変化に対して過剰な警戒を解かなくなることが、かゆみを感じやすくさせる根本的な原因です。

夜、寝る前にかゆみが強くなるのも自律神経の切り替えがスムーズにいっていない証拠で、副交感神経への移行が遅れ身体の深部温度が下がりきらないと肌は熱を帯びます。

心の休息が取れていない状態では肌も休息することができず悲鳴を上げているので、ぬるめの入浴やアロマテラピーなどを活用して強制的にリラックスする時間を作ることが必要です。

呼吸が浅くなると血中の酸素濃度が変化し末梢の神経が敏感になることも分かっていて、意図的に深い腹式呼吸を行うだけで、自律神経のバランスが整いかゆみが沈静化することがあります。

メンタルケアを通じたアプローチ

心因性のかゆみに対しては皮膚への処置と並行して、心の緊張を解きほぐす試みが効果を発揮します。深呼吸や瞑想、十分な睡眠時間の確保など脳を休める時間を意図的に設けてください。

自分が何に対して負荷を感じているのかを整理し環境を調整することで、驚くほどかゆみが引いていく場合があります。一人で抱え込まず誰かに相談することで、心が軽くなることもあります。

時には心療内科での相談も視野に入れ、抗不安薬が皮膚のかゆみを劇的に改善させることもあります。内面からのアプローチは皮膚の健康にも直結する重要な要素です。

日記をつけてかゆみが出た時の心理状況をメモすることも、自分のパターンを知るために有効です。原因が可視化されるだけで、得体の知れない不安が軽減されかゆみのコントロールが容易になります。

内臓疾患のサインとして現れる全身のかゆみ

皮膚の異常がない全身のかゆみは、重大な内臓疾患の初期症状である場合があります。肝臓や腎臓の機能が低下すると、本来排出されるべき代謝産物が血液中に滞留し、それが知覚神経を直接刺激してかゆみを起こします。

肝機能障害と胆汁の停滞

肝臓の機能が低下し胆汁の流れが滞る胆汁うっ滞という状態になると、血液中のビリルビン濃度が上昇し、強力なかゆみ誘発因子として働き全身の皮膚を激しく刺激します。

黄疸が出る前からかゆみだけが先行して現れることも多く、肝炎や胆石などが隠れている可能性を否定できません。皮膚をいくら保湿しても症状が緩和されない場合は内臓を疑うべきです。

このタイプのかゆみは非常にしつこく、夜も眠れないほどの激しさになり、掻いても解決しない身体の中から突き上げてくるような感覚がある場合は速やかに内科を受診してください。

内臓からの警告を無視せず肌以外の全身症状にも注意を払うことが大切で、倦怠感や食欲不振、尿の色の変化などが見られる場合は、血液検査による異常の早期発見が治療の鍵です。

アルコールの過剰摂取や脂肪肝、薬剤の副作用によって肝臓が悲鳴を上げている場合もあります。肝臓は沈黙の臓器と呼ばれますが、皮膚へのかゆみという形でSOSを発信しているのです。

注意すべき内臓疾患と関連症状

  • 肝臓疾患に伴う全身の強い倦怠感や眼球・皮膚が黄色くなる黄疸、足のむくみ
  • 腎臓疾患に伴う手足や顔の浮腫、尿量の極端な変化、食欲不振や吐き気
  • 糖尿病に伴う異常な喉の渇きや頻尿、多尿、傷が治りにくいといった免疫低下
  • 血液疾患に伴う持続的な微熱、リンパ節の腫れ、原因不明の体重減少、寝汗
  • 甲状腺機能の異常に伴う動悸、震え、多汗、またはその逆の冷えや意欲低下

慢性腎不全と透析に伴うかゆみ

腎臓の働きが悪くなると老廃物を尿として十分に排出できなくなり、体内に蓄積された尿毒症物質がかゆみを起こす原因となり、透析を受けている方の多くがこの問題に悩みます。

カルシウムやリンの代謝異常も関与しており、皮膚の乾燥と相まって極めて複雑なメカニズムで不快感が生成されます。単なる乾燥肌とは一線を画す深刻な痒みとして現れることが多いです。

腎性のかゆみは背中や腕など広範囲に及ぶことが多く、透析中や直後に増強する傾向もあります。近年では特定の受容体に作用する新しいタイプの内服薬が登場し、コントロールが可能になっています。

食事制限の遵守や適切な透析管理がかゆみの緩和に直結するため、医療スタッフとの密な情報共有が必要です。

腎機能の低下は皮膚の角質層の水分保持能力も削ぎ落とし、血液中に溜まったリンなどのミネラルが皮膚の神経に直接作用することで、針で刺されるような鋭い感覚を生じさせることもあります。

患者さんによっては、透析液の調整やかゆみ止めの外用薬だけでなく、紫外線を当てる光線療法が有効な場合もあります。

糖尿病や血液疾患の可能性

糖尿病によって高血糖状態が続くと、神経障害や肌の乾燥が進み全身がかゆくなりやすくなり、さらに免疫力が低下することで、わずかな菌の繁殖にも過敏に反応するようになってしまいます。

目に見えないレベルの炎症が繰り返されることもあります。血糖値のコントロールが改善されるとそれまで悩まされていたかゆみが消える例も多く、原疾患の治療が優先です。

また稀ではありますが、多血症やリンパ腫といった血液の病気がかゆみの原因となることもあります。特にお風呂上がりに全身が激しくかゆくなる水原性掻痒症は、特定の疾患に関連します。

たかがかゆみと思わず、原因不明の状態が続くのであれば、全身のスクリーニング検査を受けることが大切です。

高血糖は血管そのものを傷つけ末梢の神経への血流を阻害し、痺れとともに現れるかゆみは、神経が危機的な状況にあることを示す非常に重要なサインである可能性があります。

血液疾患の場合、夜間の激しい寝汗や微熱を伴うことがあり、こうした皮膚以外の症状がないかを観察し、診察時に細かく伝えることが重要です。

日常生活で見直すべき外部刺激とアレルギー

特定の病気ではないものの、生活環境に潜む物理的な刺激や、遅延型のアレルギー反応がかゆみを誘発しているケースも考慮します。洗剤の成分や衣服の素材、摂取している食品が、肌に負荷をかけている可能性があります。

衣服の素材と残留洗剤の影響

肌に直接触れる衣類は最も身近な刺激源で、ウールやアクリルなどの化学繊維は繊維の先端が肌を刺激しやすく、静電気の発生も手伝ってかゆみを増幅させる要因です。

また洗濯時に使用する洗剤が繊維に残っていると、汗と混じり合って皮膚に浸透し刺激反応を起こします。香料や界面活性剤に敏感な方は、洗剤の量にも注意が必要です。

対策としては、低刺激性の洗剤を選びすすぎを徹底することが挙げられ、またインナーウェアを天然素材である綿に変更するだけでも肌への摩擦ストレスは劇的に軽減されます。

タグが当たってかゆくなる場合は裏返して着る、あるいは切り取るといった工夫も有効な手段です。

最近の柔軟剤は、香りを長時間持続させるためにマイクロカプセルを使用しているものがあり、カプセルが肌に残り、摩擦によって破れる際の刺激がかゆみを招くケースも報告されています。

住環境と生活用品の見直しリスト

確認対象チェックポイント改善アクション
衣類化学繊維やレースの裏面綿・シルク・シームレスへの変更
洗濯洗剤量と柔軟剤の残留すすぎ3回設定への変更
寝具ダニ・ホコリ・湿気シーツ交換と乾燥機による防ダニ
室内乾燥度とハウスダスト空気清浄機と加湿器の併用

食品添加物や嗜好品の影響

口にするものが身体のかゆみを左右することもあります。アルコールは血管を拡張させ体温を上昇させるため、もともとあった軽微なかゆみを一気に爆発させる恐れがあります。

また香辛料などの刺激物も同様です。特定の食品添加物に対して軽度の過敏症がある場合、食後数時間してから全身がムズムズするといった遅延性の症状が現れることがあります。

自分の食生活を振り返り、特定のものを食べた際にかゆみが強まる傾向がないかを確認してください。即時型のアレルギーとは異なり気づきにくいものですが食事記録をつけると明確になります。

また、加工食品に含まれる保存料や着色料が、腸内環境を乱し肌の過敏性を高める要因になることも指摘されていて、できるだけシンプルな調理を心がけ、素材そのものの味を楽しむ工夫をしましょう。

水分補給についても、冷たい飲み物ばかりではなく常温の水や温かいお茶を選び、内臓を冷やさないようにしてください。内臓の冷えは代謝を下げ、皮膚のバリア機能の回復を遅らせます。

環境中のダニ・カビとハウスダスト

寝具やカーペットに潜むダニの死骸やカビの胞子が全身の皮膚に接触して、かゆみを起こすことがあります。アレルギー性接触皮膚炎の一種ですが、湿疹として現れないことも多く、かゆみだけでとどまることもあります。

室内の掃除や換気が不十分だと、空気中を漂う微細な粒子が常に肌を攻撃し続けることになるので、衛生環境の整備が必要です。

定期的な寝具の丸洗いや高機能な掃除機による吸引が大切で、特に寝ている間にかゆみが増す場合は枕や布団の状態を疑ってみましょう。

加湿器のフィルター汚れもカビの温床となるため、注意が必要です。住環境を整えることは肌のバリア機能を休ませ、再生を促すための重要な基盤となり、日々の清掃を怠らないでください。

目に見えない花粉やPM2.5などの汚染物質が窓から侵入し、肌に付着することも原因になります。外出から戻ったらすぐに着替え、顔を洗うことで、アレルゲンを室内に持ち込まない努力が有効です。

ペットを飼っている場合は、毛やフケが強力な刺激源となりますが、こまめなグルーミングとペットの寝場所の清掃を徹底することで、共生しながら肌の健康を守ることができます。

かゆみを抑えるための対処法

かゆみへの対処は今すぐその場を凌ぐ冷却と沈静と、体質そのものを改善する長期的なケアの両方を行う必要があります。反射的に掻いてしまうと、皮膚を傷つけさらなるかゆみ物質を呼び寄せるので、まずは正しい沈静方法を学ぶことが大切です。

冷やすことによる物理的な鎮静

かゆみが強まった際、最も安全で即効性のある方法は患部を冷やすことです。冷たい刺激はかゆみの信号を一時的に遮断し、血管を収縮させて炎症を鎮める効果を発揮してくれます。

保冷剤をタオルで包んだものや冷たく絞ったタオルを、かゆい部分に優しく当てると、神経の興奮が落ち着き、掻き壊しの衝動を抑えることができます。

ただし冷やしすぎは凍傷の原因になるため一度に当てる時間は15分程度に留めましょう。また冷やした後は水分が蒸発して乾燥しやすくなるため、速やかに保湿ケアを行うことが重要です。

熱いシャワーを浴びてかゆみを誤魔化す行為は、直後は気持ちよく感じても、皮膚の状態を悪化させます。感覚を麻痺させているだけですので、絶対に避けるべき習慣です。

外出中などで保冷剤がない場合は、冷えたペットボトルを当てるだけでも一定の効果が得られます。冷たさが知覚神経に届くことで、脳がかゆみの情報処理を後回しにしてくれるのです。

冷やすのと同時に、かゆい場所を手のひらで軽く圧迫することも有効で、叩いたり擦ったりするのではなく、静かに重みを加えることで神経の興奮を物理的に鎮静させることができます。

かゆみ発生時の行動フロー

  • 保冷剤等でかゆい部位を優しく冷やして感覚を物理的に遮断する
  • 低刺激な保湿剤を広範囲に薄く伸ばして塗り、バリアを物理的に補強する
  • 4秒吸って8秒吐く深呼吸を5回行い、副交感神経を優位にして脳を休める
  • 綿素材の手袋を着用し、寝ている間の無意識な掻き壊しを確実に防ぐ
  • 一度その場を離れて別の作業に意識を向け、かゆみのループを断ち切る

市販薬と処方薬の正しい使い分け

一時的な乾燥であれば市販の抗ヒスタミン成分配合のクリームや保湿剤で対応可能ですが、数日経っても改善しない場合や範囲が全身に広がっている場合は皮膚科を受診してください。

症状の重さに合わせて適切な強さのステロイド剤や、かゆみを抑える飲み薬を提案してもらえます。

内服薬は脳に届くかゆみの信号を遮断したり、アレルギー反応を根元から抑えたりする役割を果たします。眠気などの副作用を懸念される方もいますが、最近では改良された薬も多いです。

自己判断で薬を中断せず指示通りに服用し続けることが大切で、過敏になった神経を徐々に正常な状態へと戻していくためには、一定期間の継続的な投薬が必要となる場合があります。

最近では塗り薬の種類も豊富になり、炎症を抑えるものから、神経の過敏性を直接和らげる成分を配合したものまで登場しています。

また、漢方薬を併用することで、体質改善を図りながらかゆみを抑えるアプローチもあります。冷えやストレス、胃腸の状態を考慮した処方が、根本的な治癒をサポートしてくれることも少なくありません。

生活リズムの改善と自律神経の調整

根本的な解決には質の高い睡眠とバランスの取れた食事、適度な運動が大切で、規則正しい生活は自律神経を整え肌の再生サイクルであるターンオーバーを正常化させてくれます。

特に睡眠不足は肌のバリア機能を著しく低下させ精神的な不安定さを招くため、かゆみ対策においては最大の敵です。寝る前のスマホ操作を控え、リラックスできる環境を整えてください。

抗酸化作用のあるビタミン類や、肌の構成成分となるタンパク質を積極的に摂取することも有効です。栄養が行き届いた細胞は、外部の刺激に対しても強くなり敏感さを失っていきます。

朝日を浴びる習慣は、体内時計をリセットし自律神経のスイッチをスムーズに切り替える助けとなります。昼間にしっかり活動し、夜に自然と眠気がくるリズムが、肌の修復時間を最大化します。

適度な運動による発汗も、実は肌にとって重要です。質の良い汗は天然の保湿剤となり、皮膚を健やかに保つので、無理のない範囲でウォーキングやヨガを取り入れ、代謝の底上げを図りましょう。

よくある質問

発疹がないのに全身がかゆいという悩みを持つ方から多く寄せられる疑問をまとめました。

病院に行くタイミングはいつが良いですか?

かゆみによって夜間の睡眠が妨げられたり日常生活に支障が出始めたりした場合は、早めの受診を推奨します。またセルフケアを1週間続けても全く変化がない場合も皮膚科に相談してください。

見た目に変化がなくても、かゆみという感覚そのものが治療の対象となります。

お風呂上がりに激しくかゆくなるのはなぜですか?

入浴によって体温が上がり血管が拡張することで神経が刺激されやすくなるためで、また、お湯によって皮膚の表面にある皮脂が流れ出し急速に乾燥が進むことも原因の一つです。

湯船の温度を38度から40度のぬるめに設定し、長湯を避け、脱衣所に上がる前に浴室の中で保湿ケアを行ってください。上がった後にすぐに衣服を着ず、肌の熱が少し引くのを待つのも有効です。

ストレスで全身がかゆくなることは本当にあるのですか?

心因性皮膚掻痒症という診断名があるほど一般的な現象です。脳が精神的な負荷を処理しきれなくなった際、不快な感情をかゆみという身体症状に変換して放出することがあります。

この場合は皮膚のケアに加えて、十分な休養やリラックスできる時間を確保することが解決に必要です。

内臓の病気が原因の場合、かゆみ以外にどんな症状が出ますか?

肝疾患であれば強いだるさや尿の色が紅茶のように濃くなる現象、白目が黄色くなる黄疸などが挙げられます。腎不全ではむくみや尿量の異常、糖尿病では異常な喉の渇きなどが伴うことがあります。

肌以外の不調を感じている場合は内科の受診も併せて検討してください。

以上

参考文献

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大垣中央病院・こばとも皮膚科

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