末期腎不全の症状・余命|腹水など終末期の状態とケアについて

末期腎不全の症状・余命|腹水など終末期の状態とケアについて

末期腎不全(慢性腎臓病ステージ5)は、腎臓の機能が極限まで低下し、生命を維持するための血液浄化や水分調節が自力では不可能となった最終段階です。

この状態に達すると、体内に蓄積した猛毒の老廃物(尿毒症毒素)が全身の臓器を侵食し、頑固な痒み、耐え難い吐き気、意識障害、さらには肺水腫による激しい呼吸困難といった多彩かつ深刻な症状を誘発します。

本記事では、末期腎不全が辿る身体的プロセスの詳細から、余命予測の根拠、在宅や病院における苦痛緩和(緩和ケア)の手法まで、ご本人とご家族が最期を迎えるための情報を解説します。

目次

末期腎不全が全身に及ぼす影響と症状の変化

末期腎不全では腎機能が15%未満に低下し、尿毒症や深刻な水分の蓄積が生じ、老廃物が脳や消化器に悪影響を及ぼし、呼吸困難や意識障害、心不全を起こすのが特徴です。

尿毒症毒素による全身への侵食と神経障害

末期腎不全の段階に入ると、腎臓は生命を維持するために必要な最低限の血液の濾過すらこなせなくなります。これまで静かに進行してきた腎機能の低下が、一気に全身の不調となって噴出するのがこの段階で、機能廃絶と呼べる状況です。

腎臓は単なる排泄器官ではなく、血圧調整、造血ホルモンの分泌、ビタミンDの活性化による骨の代謝など、多くの生命活動を司る極めて重要な司令塔です。

司令塔が機能を停止することで、身体のバランスはドミノ倒しのように崩れ去り、多臓器不全に近い状態へと向かうプロセスを辿ります。

尿毒症とは、本来尿として排出されるべき数百種類もの代謝産物(老廃物)が血液中に長時間滞留し、全身の細胞を毒する病態です。

毒素が血液脳関門を通過して中枢神経に影響を及ぼすと、注意力の低下や異常な興奮、夜間の不穏状態(せん妄)を招きます。

ご家族から見ると、温厚だった本人が急に怒りっぽくなったり、つじつまの合わない話をしたりするため、認知症の急進行と誤解されることも少なくありません。

しかし、これは脳が尿毒症毒素という化学的な攻撃を受けているサインであり、代謝性の脳症として適切に理解されるべき事象です。

末梢神経への影響も甚大であり、手足の先が焼けるように痛んだり、逆に感覚が全くなくなったりする尿毒症性ニューロパチーが頻発します。

自力歩行が困難になり、転倒による骨折リスクが急増することで、加速度的に寝たきりの状態へと移ります。

さらに、白血球の貪食能が低下することによる深刻な免疫不全の状態であり、通常なら害のない常在菌であっても致死的な敗血症を招きます。

末期腎不全における死因の多くは、免疫低下に乗じた感染症であるという事実は、介護環境の清潔維持がいかに重要であるかを物語っています。

老廃物の蓄積は皮膚にも及び、皮脂欠乏とともに尿毒症性掻痒(そうよう)と呼ばれる、従来の薬が一切効かないほどの激しい痒みを起こします。

水分の排泄不全が招く致死的な肺・心臓合併症

腎臓が水分調節機能を喪失すると、摂取した水や食塩はすべて体内に留まり、重力に従って下肢や背中、さらには眼瞼へと浮腫(むくみ)を広げます。

浮腫は単なる外見の変化ではなく、血管外に溢れ出した水分が組織を圧迫し、血流障害や皮膚の壊死を招く深刻な病態です。

増えすぎた水分は循環血液量を異常に増加させ、心臓を風船のように引き伸ばし、ポンプ機能の限界を超える急性心不全の引き金となります。

心臓が全身に新鮮な血液を送り込めなくなると、各臓器は酸素欠乏に陥り、生命活動の灯火が次第に弱まっていくことになります。

最も深刻なのは、水分が肺の肺胞に漏れ出す肺水腫です。この段階では酸素吸入だけでは対応できず、強力な利尿薬の点滴や、緊急透析による除水が検討されますが、腎臓自体が反応しない場合は非常に困難な状況となります。

体内の水分貯留は血圧を制御不能な領域まで押し上げ、脳血管が耐えきれずに破綻する脳出血のリスクも常に隣り合わせです。

また、カリウムなどの電解質が排泄できなくなることで、突然心臓が停止する高カリウム血症性心停止のリスクも極めて高くなります。

末期腎不全で見られる腹水の原因と余命への影響

腹水はアルブミン不足や水分排泄の限界により生じ、予後の悪化を示す重大な指標です。大量の液体が内臓を圧迫して激しい呼吸困難や食欲不振を招くため、身体的・精神的な負担が極めて大きくなります。

腹水貯留の医学的機序と低アルブミン血症の連鎖

お腹の中に数リットルもの液体が溜まる腹水は、末期腎不全が全身のタンパク質代謝をも破壊したことを示す、極めて重い身体的徴候です。

腎機能が失われると、本来再吸収されるべきタンパク質(アルブミン)が尿中に大量漏出し、血液中の濃度が極端に低下します。

血液中のアルブミンが減少すると、血管内に水分を留めておく膠質浸透圧が維持できなくなり、水分が血管の壁を抜けてお腹の空間(腹腔)へと漏れ出します。

一度溜まり始めた腹水は、腎臓が排泄機能を失っている以上、自然に吸収されることはほぼなく、雪だるま式に増加の一途を辿ります。

膨れ上がった腹水は胃を直接的に圧迫するため、一口飲むだけで吐き気がする状態になります。

さらに、溜まった液体は横隔膜を押し上げる物理的な壁となり、肺が膨らむスペースを奪うことで、常に息が詰まるような窒息感を誘発します。

腹水はまた、腸の蠕動運動を妨げるため、頑固な便秘や麻痺性イレウスを起こし、体内での毒素生成をさらに加速させる悪循環を生みます。

腹水管理のジレンマと緩和的処置の限界

腹水の苦痛を取り除く最も直接的な方法は腹水穿刺であり、お腹に針を刺して数リットルの液体を抜き取ることで、一時的な解放感を得ることができます。

抜いた直後は呼吸が楽になり、数日ぶりに食事が摂れるようになるなど、劇的な改善を見せることも少なくありません。

ただし、末期腎不全における腹水穿刺には、抜いた液体とともに貴重な残存タンパク質を失ってしまうリスクがあり、血管の浸透圧はさらに低下し、抜いたそばから次の腹水が溜まり始めるといういたちごっこに陥ります。

抜きすぎれば急激な血圧低下や意識喪失、さらには腎血流のさらなる悪化を招き、最期の時を早めてしまうリスクも否定できません。

近年では抜いた腹水を精密なフィルターで濾過し、タンパク質だけを体内に戻すKM-CART(腹水濾過濃縮再静注法)という技術も普及していますが、末期患者の心臓が循環変動に耐えられるかは慎重な判断が必要です。

二次的な合併症としての腹膜炎と皮下組織の破綻

腹水が長期間留まることは、お腹の中に細菌の培養液を抱えているのと同じであり、特発性細菌性腹膜炎(SBP)という感染症を招きます。

自覚症状が乏しいまま進行し、ある時急激な発熱や血圧低下とともにショック状態に陥るケースが多く、末期腎不全の患者さんにとってはまさに命取りとなります。

また、腹圧によって下半身の血流が阻害されるため、陰嚢や大腿部にまで深刻な浮腫が広がり、皮膚が耐えきれずに裂けてしまう皮膚裂傷も頻発します。

腹水による体型の変化は、寝返を難しくし、特定の部位に圧力が集中することで巨大な褥瘡(床ずれ)を形成しるので、予防的なケアと早期の緩和的介入が極めて重要です。

終末期の状態を把握するための指標と予後予測

腎臓の機能が全廃し透析を行わない場合、余命は数日から数週間程度と予測されます。予後は歩行能力や食事摂取量、意識状態などの全身因子により変動しますが、尿が出なくなると多臓器不全が加速します。

透析を行わない選択(保存的治療)と余命

末期腎不全において「透析を導入しない」あるいは「透析を中止する」という選択は、かつては死を意味する消極的な判断とされてきました。

しかし現在では、過酷な治療による苦痛を避け、残された時間を自分らしく過ごすための保存的腎臓療法(CKM)という積極的な治療選択として確立されています。

透析を行わない場合の余命は、残存している腎機能(eGFR)や尿の出具合、さらには心臓の余力によって数日から数ヶ月と大きな幅があります。

しかし、尿が完全に止まる無尿の状態になってからは、血液中の毒素と水分が幾何級数的に増加するため、一般的には1週間から10日前後が生命維持の限界とされています。

余命予測を左右する社会的・精神的要因の重要性

医学的なデータ以上に、本人の「生きたい」という意志や、大切な家族との約束が、驚異的に余命を延ばす場面に医療従事者はしばしば遭遇します。

遠方の孫が来るまで、あるいは結婚式の日まで、心臓が止まりそうな状態でも持ち堪えるという事例は決して珍しくありません。

逆に、孤独感や絶望感が強い場合、身体機能の低下以上に速いスピードで衰弱が進み、突然死のような形で最期を迎えることもあります。

終末期における予後とは、単純な臓器の数値だけで決まるのではなく、その方が送ってきた人生の満足度や繋がりによっても変動するものなのです。

この時期に本人が心残りとしていることを一つでも解消してあげるスピリチュアル・ケアは、延命治療と同等の価値を持ちます。

遺言の整理、会いたい人への連絡、あるいは好きだった音楽を聴くといった行為が、残された時間を生き抜くための時間へと昇華させます。

末期腎不全の終末期における苦痛緩和とケア

終末期ケアの最優先事項は、尿毒症による痒み、嘔気、呼吸困難といった多角的苦痛の緩和です。医療用麻薬や専用薬剤の微調整に加え、保湿やマッサージ等の非薬物療法を併用することで心身の安らぎを守ります。

多職種連携によるトータル・ペインへの挑戦

末期腎不全の終末期における苦しみは、身体的な痛みだけでなく、精神的な辛さ、社会的な喪失感、そして魂の苦悩が複雑に絡み合った全人的苦痛です。

これらを解決するには医師の診断だけでなく、看護師の細やかなケア、薬剤師による精密な薬物調整、そしてソーシャルワーカーによる環境整備といった、多角的な支援体制が不可欠です。

腎不全患者さんは薬の排泄能力が極端に低いため、通常の鎮痛薬でも体内に蓄積してしまい、副作用として強い意識混濁や痙攣を招く危険があります。

そのため、腎機能を考慮した医療用麻薬(フェンタニルなど)を、数マイクログラム単位で微調整しながら投与する、極めて高度な専門知識が必要です。

「麻薬を使うと寿命が縮まるのではないか」という不安を抱くご家族も多いですが、事実はその逆で、痛みや呼吸困難から解放されることで心臓への負担が減り、穏やかに長く、家族と会話を楽しみながら過ごせる時間を生み出すことができます。

また、非薬物療法としてのタッチ・ケアやアロマテラピーも、尿毒症特有のイライラや不安を鎮めるのに驚くべき効果を発揮します。

家族が本人の足をさすったり、好きな香りを漂わせたりする日常の断片が、どの高度医療よりも本人の心を救うことがあるという事実は、看取りにおける希望の光です。

尊厳ある排泄ケアと身体の清潔維持へのこだわり

人間が最後まで最も強くこだわる尊厳の一つが排泄であり、末期腎不全においてもこの部分のケアがQOLを大きく左右します。

無尿の状態であっても、膀胱の不快感や便秘による腹痛は生じるため、おむつ交換を単なる作業にせず、常に声掛けをしながら本人の恥ずかしさに配慮した方法で行うべきです。

また、こまめな清拭(身体を拭くこと)や着替えを行い、本人が好む香水を微かに香らせるなどの工夫が、自尊心を守ることに直結します。

さらに、末期状態では口腔内の自浄作用が失われ、不快なネバつきや口臭、さらには口内炎が多発して会話の意欲を削ぎます。

柔らかなスポンジを用いた口腔ケアは、誤嚥性肺炎を予防するだけでなく、冷たい水の感触を本人が楽しむ癒やしの儀式としても機能し、最期のコミュニケーションを支えます。

「グリーフ・ケア」の始まり

終末期ケアは、患者さん本人への支援であると同時に、看取りの後に残されるご家族が後悔を背負わないための準備期間でもあります。

医療スタッフはご家族に対し、今の病状を正確に伝え、本人の苦しみが最小限に抑えられていることを何度も繰り返し、安心させてあげる必要があります。

「あの時、もっとこうしてあげればよかった」という思いは、どれだけ尽くしても必ず生じますが、それを最小化するのがプロの役割です。

家族が一人で看病を抱え込み、疲労困憊して本人に冷たい言葉を投げかけてしまうような悲劇を避けるため、休息のためのショートステイ(レスパイト)などを積極的に活用してください。

ご家族が穏やかで笑顔でいられることこそが、本人にとって最大の緩和ケアであり、安心して旅立つための条件です。

末期腎不全における食事療法の考え方と工夫

終末期の食事は、腎臓への負担軽減よりも、食べる喜びの維持を最優先します。尿毒症による味覚異常や食欲不振に対し、酸味や出汁の活用、小分け摂取、好みの飲食物の提供などで柔軟に対応します。

食事制限の解除と「最後の一口」を彩る工夫

長年、透析を避けるために塩分、カリウム、タンパク質、そして水分を厳しく制限してきた患者さんにとって、食事は苦行に近いものでした。

しかし、死を目前にしたステージにおいては、医学的な数値の改善よりも美味しいと感じる一瞬の幸福が、何物にも代えがたい薬となります。

カリウムが高いからと禁じられてきた生の果物、塩分が強いからと避けられてきた漬物など、ご本人が愛してやまなかった味を解禁してください。

たとえそれが原因で数値が悪化したとしても、心の満足が得られるのであれば、その選択は終末期においては正解となります。

味覚が麻痺している場合は、レモンの絞り汁や梅干しの酸味、あるいはワサビやカラシの刺激を隠し味に使うと、ぼんやりした味が引き締まります。

また、視覚的な彩りも重要であり、小さなお皿に季節の盛り付けをするだけで、低下していた食欲が奇跡的に呼び起こされることもあります。

一口でも、あるいは口に含んで味を確かめるだけでも十分であると考え、食事を「家族と共に過ごす豊かなイベント」として再定義することが大切です。

極限の渇きを和らげる「氷」と「口腔潤滑」のテクニック

末期腎不全患者さんを最も苦しめる身体的欲求の一つが、水分の摂取制限によって引き起こされる耐え難い喉の渇きです。

これを単に水を飲ませて解消しようとすると、すぐに肺水腫を起こして窒息の苦しみを与えてしまうという、ジレンマが生じます。

ジレンマを解決する鍵は、飲まずに潤す技術であり、その筆頭が、様々なフレーバーを凍らせた特製氷チップの活用です。

緑茶、ほうじ茶、あるいは本人が好きだったスポーツドリンクを凍らせて砕き、少しずつ口に含ませることで、少量の水分で長時間の潤いと冷涼感を与えることができます。

また、市販の口腔用保湿ジェルやスプレーを併用し、乾燥してひび割れた唇や舌を保護することで、会話をする際の痛みも劇的に軽減されます。

水分を摂りすぎたことによる浮腫の悪化を恐れるあまり、本人の渇望を無視し続けることは、終末期の尊厳を損なうことになりかねません。

医師や看護師と相談し、「この量までなら、むくみが出ても本人の快楽を優先する」というラインを決めておくことで、ご家族も迷いなくケアにあたることができます。

在宅ケアと施設・病院における看取りの選択

看取り場所の選択は、本人の希望、家族の介護力、医療支援の充実度を基に総合判断すべきです。自宅は自由度が高く心の安らぎを得られる一方、病院やホスピスは即応的な医療ケアによる安心感が得られます。

「わが家」という最高の緩和ケア

多くの日本人が「最期は自宅で」と願いながらも、実際に叶うのはわずか数割という現実は、在宅看取りへの不安の大きさを物語っています。

しかし、住み慣れた天井の模様、使い込んだ布団、家族の日常的な生活音こそが、末期腎不全による不安やせん妄を抑える最高の鎮静剤です。

在宅看取りを成功させる鍵は、24時間連絡がつく訪問看護ステーションと、緩和ケアに熟知した在宅医を見つけ、強力なバックアップ体制を組むことです。

急変時に救急車を呼ばない、という覚悟と準備ができているか、親戚を含めた家族全員の合意が得られているかが、土壇場での混乱を防ぐ決定的な要素となります。

一方で、在宅看取りはご家族の献身的な犠牲の上に成り立つ側面もあり、特に夜間の見守りが続くと家族の方が先に倒れてしまうリスクがあります。

無理をして共倒れになることは本人が最も望まない結果であり、「最期の数日間だけ自宅で」という期間限定の選択肢や、限界が来たら病院へ移るという柔軟なプランBを持っておくことが、在宅ケアを継続させる知恵です。

専門チームに委ねる安心

緩和ケア病棟(ホスピス)や一般病院での看取りの最大のメリットは、24時間プロがそばにいて、どのような苦痛にも即座に対応してくれるという心理的安全性です。

呼吸が止まりそうな時、激しい嘔吐があった時、ご家族が一人でパニックにならずに済むことは、最期の別れを穏やかに過ごすための大きな助けとなります。

また、病院では医療機器を用いたきめ細やかな症状コントロールが可能であり、自宅では難しい腹水穿刺や複雑な持続点滴もスムーズに行われます。

最近のホスピスは家族が泊まり込める個室も多く、家族が介護から解放されて、純粋に家族としての時間を過ごせるように設計されています。

場所を変えることは、決して絆を諦めることではなく、最良のケア環境を整えるという前向きな意思決定です。

どこで迎えるかよりも、誰とどう過ごしたかが本人の満足度を決め、残された家族の心の回復(レジリエンス)を支えることを忘れないでください。

Q&A

末期腎不全で腹水が溜まると余命はどのくらいですか?

腹水が出現したからといって、即座に数日単位の余命になるわけではありませんが、身体がタンパク質や水分を全く制御できなくなったという点では、非常に深刻な局面です。

適切な栄養管理や緩和的穿刺を行えば数ヶ月維持できる場合もありますが、一般的には腎機能廃絶が近く、予後は月単位、あるいは週単位と考え、延命よりも生活の質の向上(緩和ケア)に舵を切る時期です。

最期が近づいたときどのような変化が現れますか?

最も顕著なのは、意識レベルの低下に伴う傾眠(ずっと眠っている状態)です。その後、喉の分泌物がゴロゴロ鳴る喘鳴や、呼吸が一時的に止まる不規則なリズムが現れます。

身体的には尿量が極端に減るか完全に止まり、手足の冷たさや変色が目立ってきます。これらの変化は身体が静かに生命活動を閉じようとする自然なプロセスであり、苦痛はないとされていますので、静かに寄り添ってください。

末期腎不全の末期症状として痛みはありますか?

腎臓そのものが痛むことは少ないですが、全身に蓄積した毒素による「耐え難いだるさ」や「激しい痒み」、浮腫による皮膚の張り、あるいは長時間の臥床による関節痛などが生じます。

これらは末期の患者にとって「痛み」と同等かそれ以上に辛い苦痛です。医療用麻薬や最新の緩和ケア薬剤を用いれば、苦しみは大幅に軽減でき、穏やかな意識状態を保ちながら過ごすことが可能です。

終末期に水や食べ物を欲しがらない場合、無理に食べさせるべきですか?

無理に食べさせる必要はありません。終末期は内臓の消化吸収能力も低下しているため、無理な食事はかえって嘔吐や誤嚥性肺炎を招き、本人を苦しめる原因になります。

本人が欲しがる時に、欲しがるものを一口だけ提供する、あるいは口腔ケアで口の中を潤すだけで十分なケアになります。本人の「食べたくない」というサインもまた、穏やかな旅立ちに向けた準備の一つです。

以上

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大垣中央病院・こばとも皮膚科

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