顔にできた「肥厚性瘢痕」の治療法｜目立つ傷跡を改善する皮膚科でのケア

顔に残ってしまった傷跡が赤く盛り上がり、なかなか治らないことに不安を感じていませんか。それは単なる傷跡ではなく、肥厚性瘢痕と呼ばれる状態になっている可能性があります。

顔は常に人目に触れる部位であるため、精神的なストレスも大きく、早急に適切な処置を行うことが大切です。皮膚科や形成外科では、飲み薬や塗り薬、注射、レーザーなど、症状に合わせた多様な選択肢を提供しています。

この記事では、顔にできた肥厚性瘢痕の特徴や原因、そして医療機関で行う改善策について詳しく解説します。

肥厚性瘢痕が顔にできる理由と特徴

顔の皮膚は他の部位と比較して血流が豊富であり、傷の治りが早い傾向にありますが、豊富な血流や表情筋の動きが影響し、傷跡が過剰に反応してしまうことがあります。

ここでは肥厚性瘢痕がどのようなものであり、なぜ顔に発生しやすいのかという点について掘り下げていきます。

肥厚性瘢痕の定義と主な症状

皮膚が損傷を受けた後、修復の過程でコラーゲン線維が過剰に産生されることで発生する症状が肥厚性瘢痕です。

傷が治る段階で炎症が長引くと、皮膚は傷を埋めようとして必要以上の組織を作り出してしまい、傷跡が赤みを帯び、周囲の皮膚よりも硬く盛り上がった状態になります。

顔面では、わずかな赤みや隆起であっても目立ちやすく、患者さんにとって大きな悩みです。痛みや痒みを伴うことも多く、無意識に掻いてしまうことでさらに症状が悪化するという悪循環に陥ることもあります。

また、気候の変化や体温の上昇に伴って痒みが増すこともあり、日常生活における不快感の原因になります。

正常な瘢痕と肥厚性瘢痕の比較

特徴	正常な瘢痕	肥厚性瘢痕
見た目	白っぽく平坦	赤く盛り上がっている
硬さ	周囲の皮膚と同等	硬く触れる
自覚症状	ほとんどない	痒みや痛みがある

ケロイドとの違いと見分け方

肥厚性瘢痕とよく混同されるものにケロイドがあり、両者は見た目が似ていますが、病態や治療方針には明確な違いがあります。

肥厚性瘢痕は、あくまで元の傷の範囲内でのみ盛り上がりを見せ、傷を超えて周囲の健康な皮膚にまで病変が広がることはありません。これに対しケロイドは、元の傷の範囲を超えて周囲へとしみ出すように拡大していく性質を持っています。

ケロイドは遺伝的な体質が強く関与していると考えられており、再発のリスクも高い傾向にあります。一方で肥厚性瘢痕は、外傷や手術、熱傷などの物理的な刺激が主な要因であり、適切な圧迫や安静を保つことで軽快するケースが多いです。

さらに、肥厚性瘢痕は時間経過とともに色が薄くなり自然消退する傾向があるのに対し、ケロイドは治療をしなければ増大し続けることが多いという点も大きな相違点になります。

顔の皮膚特性と傷跡への影響

顔は表情を作るために常に皮膚が動いている部位です。笑ったり話したりするたびに皮膚には張力（引っ張られる力）がかかり、この張力は傷跡にとって安静を妨げる大きな要因となります。

傷は安静に保つことで綺麗に治ろうとしますが、絶えず引っ張られる環境下では、皮膚が裂けないようにと過剰に細胞増殖を行い、傷跡が太く硬くなってしまいます。

特に口輪筋や眼輪筋といったよく動く筋肉の上の皮膚は、常に伸縮を繰り返していて、絶え間ない微細な動きが傷跡にかかる負担を増大させ、炎症の鎮静化を遅らせる要因になります。

口周りや顎のラインは動きが激しく、緊張がかかりやすいため注意が必要です。また、皮脂腺が多いことも炎症を助長する一因となり得、ニキビによる炎症が深くまで及ぶと、それが引き金となって肥厚性瘢痕を形成することもあります。

顔に傷跡が残る主な原因とメカニズム

なぜ顔にこのような目立つ傷跡ができてしまうのか、背景には様々な要因が絡み合っていて、日常生活の中での怪我から、美容治療後の反応まで、きっかけは多岐にわたります。

外傷や手術後の創傷治癒過程の異常

転倒による擦り傷や切り傷、あるいはほくろ除去などの外科的な処置を受けた後、通常であれば皮膚はスムーズに再生しますが、傷が深かったり、感染を起こして治癒が遅れたりすると、炎症期が長引きます。

炎症が遷延すると、線維芽細胞というコラーゲンを作る細胞が過剰に活性化し続け、本来であれば平らに治るはずの傷が、過剰な組織によって盛り上げられてしまいます。

傷口が完全に閉じるまでに2週間以上かかった場合は、肥厚性瘢痕化するリスクが高まると言われています。

感染症を併発した場合、白血球が集まり組織を破壊する酵素を放出するため、周囲の組織ダメージが拡大し、より広範囲で深い瘢痕形成につながるのです。

主な発生要因

• 深い切り傷や裂傷
• 熱傷（やけど）による皮膚損傷
• ニキビの重症化による炎症
• 外科手術後の縫合痕
• ピアスホールなどの持続的刺激

このような要因は、いずれも皮膚の深い層である真皮網状層まで損傷が及んでいることが共通点です。表皮だけの浅い傷であれば跡形なく治ることが多いですが、真皮層が傷つくと瘢痕組織で修復されるため、リスクが高まります。

ニキビ跡が肥厚性瘢痕化するケース

若年層から大人まで悩まされることの多いニキビですが、肥厚性瘢痕の原因となることは少なくありません。特にフェイスラインや顎の下などにできる、大きく腫れ上がったニキビは注意が必要です。

内部で強い炎症が起こり、膿が溜まるような状態が続くと、周囲の組織が破壊され、身体は破壊された組織を急いで修復しようとし、過剰なコラーゲンを生成します。これが硬いしこりや盛り上がりとなって残ります。

ニキビ跡の肥厚性瘢痕は多発することも多く、顔の輪郭を変形させてしまうこともあるため、ニキビができ始めた段階での早期鎮静が大切です。

自分で潰してしまう行為は、組織破壊をさらに深部へ広げることになり、瘢痕化のリスクを著しく高めます。

皮膚にかかる張力と方向の関係

皮膚にはリラックスした状態で自然に生じるシワの方向があり、RSTL（Relaxed Skin Tension Lines）と呼びます。

傷の方向がこのラインと平行であれば、傷にかかる張力が少なく、綺麗に治りやすい傾向にありますが、ラインに対して垂直に傷が入ってしまった場合、常に傷口を開こうとする力が働き続けます。

持続的な物理的刺激に対して、皮膚は対抗しようとして組織を厚く強固にし、これが肥厚性瘢痕の形成を促進します。外科手術を行う際に、執刀医が可能な限りこのラインに沿ってメスを入れるのは、術後の傷跡を目立たなくするためです。

事故などの外傷では方向を選べないため、受傷後のケアで張力をコントロールすることが求められます。

皮膚科で受けられる治療アプローチ

セルフケアだけでは改善が難しい肥厚性瘢痕に対し、皮膚科では医学的根拠に基づいた多様なアプローチを行います。保険診療でカバーできる範囲から、より審美性を追求した自由診療まで、選択肢は広がっています。

ステロイド注射とテープ剤の活用

炎症を強力に抑える作用を持つステロイド（トリアムシノロンアセトニドなど）を用いる方法は、肥厚性瘢痕の治療において中心的な役割を果たします。

盛り上がった部分に直接注射を打つことで、線維芽細胞の働きを抑制し、過剰なコラーゲンを分解させる効果が期待できます。注射は痛みを伴いますが、効果の発現が早く、硬かった傷跡が徐々に柔らかくなり平坦化していきます。

治療効果には個人差がありますが、硬結が著しい場合は2週間から4週間に一度の間隔で注射を行います。過度な頻度での注射は皮膚の萎縮や毛細血管拡張を招く恐れがあるため、慎重な経過観察が必要です。

注射が苦手な方や、病変が広範囲で注射が困難な場合には、ステロイドを含有したテープ剤や軟膏を使用します。

ステロイド治療の種類と特徴

治療法	即効性	特徴
局所注射	高い	確実な効果が期待できるが痛みを伴う
テープ剤	緩やか	貼るだけで簡便だが皮膚かぶれに注意
軟膏塗布	緩やか	顔の凹凸部にも塗りやすい

内服薬による体内からのアプローチ

外側からの処置だけでなく、内服薬を併用することで治療効果を高めることができ、代表的な薬がトラニラスト（リザベン）です。

この薬は、炎症を起こす化学伝達物質の遊離を抑制し、線維芽細胞によるコラーゲン合成を抑える働きを持っています。元々は抗アレルギー薬として開発されましたが、ケロイドや肥厚性瘢痕の治療薬としても広く使われています。

飲み始めてすぐに効果が出るものではありませんが、数ヶ月単位で継続することで、痒みや痛みの軽減、赤みの改善に寄与します。副作用として膀胱炎様症状が出ることがあるため、服用中は体調の変化に注意を払います。

特に排尿時の違和感や頻尿が現れた場合は、速やかに服薬を中止し医師に相談することが重要です。

圧迫療法の効果と実施方法

物理的に傷跡を圧迫することで血流を制限し、酸素供給を減らすことで線維芽細胞の活動を低下させる方法を圧迫療法と呼びます。物理的な圧力がかかることで、乱雑に並んだコラーゲン線維が整列しやすくなり、傷跡が平坦化するのを助けます。

顔面の場合、シリコンジェルシートを患部のサイズに合わせて切り、長時間貼付する方法が一般的です。シリコンシートは保湿効果も兼ね備えており、乾燥による痒みを防ぐ効果もあります。

就寝中や自宅にいる間だけでも継続して行うことで、他の治療との相乗効果を生み出します。

レーザー機器を用いた先進的な改善策

従来の治療法で十分な効果が得られない場合や、より早く綺麗に治したいという要望に応えるため、レーザーを用いた治療が普及してきています。

レーザーは特定の色素や水分に反応する光のエネルギーを利用し、ターゲットとなる組織だけに作用させることができます。

血管に作用する色素レーザー（ダイレーザー）

肥厚性瘢痕が赤く見えるのは、炎症に伴って毛細血管が増生し、血流が増えているためです。

色素レーザー（Vビームなど）は、血液中のヘモグロビン（赤色）に吸収されやすい波長の光を出し、レーザーを照射すると、熱エネルギーが血管壁に伝わり、余分な毛細血管を破壊・閉塞させます。

血管が減ることで赤みが引くだけでなく、線維芽細胞への栄養供給が遮断されるため、傷跡の盛り上がりを鎮静化させる効果も期待できます。

照射後は一時的に紫斑（内出血のような跡）ができることがありますが、通常は1〜2週間程度で消失し、繰り返しの照射で徐々に色調が正常皮膚に近づいていきます。

照射直後は軽度の腫れやヒリヒリ感を伴うことがありますが、冷却パックで冷やすことで軽減し、また、内出血斑が出た場合でも、メイクで隠せる程度であることが多く、日常生活への影響は限定的です。

レーザー治療のメリット

• 赤みの改善効果が高い
• コラーゲンの再構築を促す
• ダウンタイムが比較的短い
• 正常組織へのダメージが少ない
• 注射と比べて痛みが少ない

フラクショナルレーザーによる皮膚再生

フラクショナルレーザーは、皮膚表面に目に見えないほどの極小の穴を無数に開ける技術です。点状に熱ダメージを与えることで、周囲の正常な細胞が活性化し、急速に傷を治そうとする創傷治癒反応を起こします。

この過程で、硬く固まった古いコラーゲンが排出され、新しく柔軟なコラーゲンへと置き換わっていき、肥厚性瘢痕の凸凹した質感を滑らかにし、皮膚の柔軟性を取り戻すのに役立ちます。

照射後は数日間、赤みやざらつきが出ますが、かさぶたが剥がれ落ちると新しい皮膚が現れ、硬結（しこり）が強い傷跡に対して特に有効です。

この治療は、コラーゲンの入れ替えを強力に促すため、質感の改善だけでなく、傷跡の境界線をぼかして周囲の皮膚となじませる効果にも優れています。

レーザー治療のメリットと注意点

一度のレーザー照射で完全に消えることは稀であり、通常は1ヶ月おきに5回から10回程度の通院が必要です。また、多くの場合これらの治療は自由診療となり、費用負担が発生します。

治療直後は皮膚が敏感になっているため、徹底した紫外線対策が必要で、日焼けをしてしまうと色素沈着（シミ）の原因となり、逆に傷跡を目立たせてしまうことになりかねません。

医師と相談し、費用や通院頻度、アフターケアについて十分に理解した上で開始することが大切です。治療部位に強い摩擦を与えないよう、洗顔やメイクの際も優しく触れるよう心がける必要があります。

形成外科手術による修正という選択肢

保存的療法（薬やレーザー）で改善が見込めない場合や、傷跡によるひきつれ（瘢痕拘縮）が強く、顔の表情や機能に支障が出ている場合は、手術による修正を検討します。

手術は傷跡を完全になくすものではありませんが、目立つ傷跡を目立たない細い線に変えたり、方向を変えてシワに同化させたりすることが可能です。

瘢痕拘縮形成術（Z形成術・W形成術）

単に傷跡を切り取って縫い合わせるだけでは、再び張力がかかり同じように肥厚性瘢痕になってしまうリスクがあるので、形成外科では、Z形成術やW形成術といった特殊な縫合技術を用います。

Z形成術は、傷跡を含めて皮膚をZ字型に切開し、皮膚の弁を入れ替えて縫合する方法で、傷の方向をRSTL（シワのライン）に合わせたり、突っ張っている皮膚を延長して張力を緩和したりすることができます。

W形成術は、傷跡をジグザグの線にすることで、人間の目が直線を認識しやすいという性質を逆手に取り、傷跡を視覚的にぼかすテクニックです。

このような術式は、傷の全長がわずかに長くなるという側面もありますが、直線的な傷が分断されることで、光の反射が分散し、結果としてパッと見た時の印象が大きく改善されます。

手術術式の比較

術式	目的	適応例
単純切除縫縮	傷の幅を狭くする	小さく単純な傷跡
Z形成術	ひきつれの解除	関節や動く部位の線状痕
W形成術	傷を目立たなくする	額や頬などの平坦な部位

手術を行うタイミングと適応判断

傷ができて間もない時期は、炎症が強く組織が安定していないため、すぐに手術を行うことは通常避けます。

一般的には受傷から半年から1年程度経過し、傷跡の赤みが引き、硬さが落ち着いた成熟瘢痕と呼ばれる状態になってから手術を計画します。

ただし、ひきつれが強く、目が閉じにくい、口が開けにくいといった機能障害がある場合は、時期を早めて手術を行うこともあります。

また、ケロイド体質が疑われる場合は、手術という刺激自体が新たなケロイドを誘発する恐れがあるため、慎重な判断が必要です。

術後に電子線照射療法を組み合わせることで再発を防ぐ方法もあります。電子線照射は術後24時間以内に開始し、数日間連続して行うことで、線維芽細胞の過剰な増殖を初期段階で叩く効果があります。

術後のアフターケアの重要性

手術はあくまでリセットであり、治癒過程が仕上がりを左右します。せっかく綺麗に縫合しても、術後のケアを怠れば再び肥厚性瘢痕が生じる可能性があるので、抜糸後からすぐに、テーピングによる固定を開始することが大切です。

皮膚が引っ張られるのを防ぐためで、最低でも3ヶ月、長ければ半年以上継続し、テープはマイクロポアテープなどの通気性の良いものを使用し、傷に対して垂直に貼ります。

医師の指示に従い、定期的な通院で経過を見せることが、最終的な傷跡の目立ちにくさに繋がり、この期間の自己管理が非常に重要です。

また、傷跡周辺の皮膚を指で優しくマッサージすることで、癒着を防ぎ柔軟性を保つ指導が行われることもあります。

自宅でできるセルフケアと予防策

クリニックでの治療に加えて、日々の生活の中で患者さん自身ができるケアも治療の成功には欠かせません。外部からの刺激を徹底的に避け、傷跡にとって快適な環境を作ることが、早期改善への近道です。

徹底した紫外線対策の必要性

傷跡のある皮膚はバリア機能が低下しており、紫外線の影響を非常に受けやすい状態にあり、紫外線を浴びると、皮膚は防御反応としてメラニン色素を生成し、傷跡が茶色く色素沈着してしまいます。

一度色素沈着を起こすと、赤みが引いた後も茶色いシミとして残るので、外出時はもちろん、室内でも窓から紫外線は入ってくるため、日焼け止めの使用を習慣化しましょう。

低刺激でSPF値の適度なものを選び、こまめに塗り直し、物理的に遮光するために、つばの広い帽子やマスクを活用するのも有効です。曇りの日や冬場であっても紫外線は降り注いでいるため、年間を通じた対策が求められます。

推奨される対策グッズ

• SPF30以上の日焼け止め
• 遮光率の高い日傘
• UVカット機能付きマスク
• つばの広い帽子
• 遮光テープ

保湿と摩擦回避のポイント

乾燥は皮膚の炎症を悪化させ、痒みを起こす大敵です。痒みを感じて無意識に掻いてしまうと、物理的刺激がさらなるコラーゲン増生を招きます。

洗顔後や入浴後は直ちに保湿剤を塗布し、皮膚の水分バランスを保ち、使用する保湿剤は、ヘパリン類似物質配合のものやワセリンなど、刺激の少ないものを選びます。

また、洗顔時に強くこすったり、タオルでゴシゴシ拭いたりする行為も厳禁です。泡で包み込むように優しく洗い、タオルを押し当てるように水分を拭き取ります。

メイクをする際も、スポンジやブラシが傷跡を強く擦らないよう、力加減に注意を払います。また、寝具との摩擦も無視できません。

枕カバーを柔らかい素材に変える、あるいは仰向けで寝る習慣をつけるなど、睡眠中の無意識な刺激を減らす工夫も有効です。

マスクを着用する際は、傷跡に直接触れないよう、ガーゼを挟むなどのクッション対策を行うことも皮膚への負担軽減につながります。

テープ療法を継続するコツ

前述したテープ療法は、自宅でのケアの中心ですが、顔にテープを貼ることによる見た目の問題や、テープかぶれなどのトラブルで挫折してしまう方もいます。

継続するためには、肌色の目立ちにくいテープを選んだり、メイクでカバーできるタイプのものを使用したりする工夫が有効です。かぶれやすい場合は、テープの種類を変えるか、貼る時間を短くして肌を休ませる日を作ります。

毎日貼り替える必要はなく、自然に剥がれてくるまで貼りっぱなしにする方が、皮膚への負担が少ない場合もあります。生活スタイルに合わせて、無理なく続けられる方法を医師と相談しながら見つけていきます。

テープを剥がす際は、皮膚を傷つけないよう、端からゆっくりと慎重に剥がすか、入浴時に濡らして粘着力を弱めてから剥がすようにします。

信頼できるクリニックの選び方

顔の治療を任せるクリニック選びは、結果に直結する重要な決断です。皮膚科、形成外科、美容皮膚科と標榜科目は様々ですが、肥厚性瘢痕の治療を得意としているかどうかを見極める必要があります。

専門医の有無と実績確認

治療を担当する医師が、皮膚の構造や創傷治癒に精通しているかを確認しましょう。日本形成外科学会認定の専門医や、日本皮膚科学会認定の専門医であれば、一定水準以上の知識と技術を持っていると判断できます。

特に形成外科専門医は、傷跡を綺麗に治すトレーニングを専門的に受けているので、クリニックのウェブサイトで医師の経歴を確認し、傷跡治療に関する実績や症例写真が掲載されているかを見てください。

ただし、症例写真は最良の結果を示していることが多いため、あくまで参考程度にとどめ、実際の診察での説明を重視します。

クリニック選定のチェックリスト

確認項目	チェックポイント
資格・経歴	形成外科や皮膚科の専門医であるか
治療機器	色素レーザーなど複数の機器があるか
説明の質	リスクや期間を明確に伝えてくれるか
通いやすさ	長期通院が可能な立地や診療時間か

治療機器の充実度と選択肢の多さ

肥厚性瘢痕の治療は、単一の方法だけでなく、複数を組み合わせることで高い効果を発揮するため、治療の引き出しが多いクリニックを選ぶ方が有利です。

ステロイド注射しか行っていないクリニックよりも、各種レーザー機器や手術設備も整っているクリニックの方が、経過に合わせて適した治療法への切り替えができます。

顔の治療では、審美的な要求レベルが高いため、保険診療だけでなく自由診療の選択肢も提示してくれるクリニックの方が、希望に沿った仕上がりを目指しやすいです。

カウンセリングでの説明と同意

良い医師は、治療のメリットだけでなく、デメリットや限界、副作用についても包み隠さず説明します。「絶対に消えます」といった過度な期待を持たせるような表現は避け、現実的な到達目標を共有してくれる医師が信頼できます。

また、患者さんの話をよく聞き、不安や疑問に対して丁寧に答えてくれるかどうかも重要です。

治療は長期間に及ぶことが多いため、安心して通い続けられる雰囲気があるか、質問しやすい環境かどうかを、初診時のカウンセリングで肌感覚として確かめます。

セカンドオピニオンを快く受け入れてくれるかどうかも、患者中心の医療を行っているかの指標です。

顔にできた肥厚性瘢痕を改善するケアについてよくある質問

治療を検討されている患者さんから頻繁に寄せられる質問をまとめました。

治療時の痛みはどの程度ですか？

痛みは最小限に抑える工夫がされています。ステロイド注射は針を刺す際と薬剤が入る際に痛みを感じますが、冷却や麻酔テープの使用、極細の針を使用することで痛みを軽減できます。

レーザー治療の場合も、ゴムで弾かれたような痛みがありますが、麻酔クリームを使用することで我慢できる範囲に収まることがほとんどです。

治療期間はどのくらいかかりますか？

数ヶ月から年単位の期間を要することが一般的です。肥厚性瘢痕の活動性が落ち着くまでに時間がかかるため、焦らずにじっくりと治療を続ける必要があります。

軽度であれば数回の治療で目立たなくなることもありますが、盛り上がりが強い場合は1年以上通院が必要なケースもあります。

治療中や治療直後はメイクをしても良いですか？

基本的には施術直後を除いて可能です。注射治療であれば当日から、レーザー治療や手術の場合は、医師の許可が出れば翌日や数日後からメイクができます。

カバー力のあるファンデーションやコンシーラーを使用して赤みを隠すことは、精神的なストレスを軽減するためにも有効です（カモフラージュメイク）。ただし、クレンジングの際に強く擦らないよう注意しましょう。

傷跡を完全に消すことはできますか？

完全になくすことは困難ですが、メイクで隠れる程度まで平らにしたり、白く細い線に変えて目立たなくしたりすることは十分に可能です。

治療のゴールは、傷跡が全くなかった頃の肌に戻すことではなく、他人の目から見て気にならないレベル、あるいはご自身が許容できるレベルまで改善させること設定されます。

以上

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