「人工腎臓」(ダイアライザー)と「人工透析」は何が違う?役割を解説

「人工腎臓」(ダイアライザー)と「人工透析」は何が違う?役割を解説

腎臓の働きが低下した際に検討が必要になる治療について調べていると、人工腎臓という言葉や人工透析という言葉を頻繁に目にします。

どちらも腎臓の代わりをするものだとは理解できても、二つの言葉が何を指し、どのような違いがあるのかを明確に理解している方は多くありません。

この記事では、混同しやすい二つの用語の意味や役割、そして実際の治療においてそれぞれがどのように関わり合っているのかを、わかりやすく解説します。

目次

人工腎臓と人工透析の言葉の定義と違い

医療現場では当たり前のように使われている用語でも、初めて耳にする方にとっては非常に複雑で難解に感じられることがあります。

腎不全の治療においては、似たような言葉が多く登場するため、頭の中が整理できないまま不安だけが募ってしまうことも少なくありません。まずは、この二つの言葉が指し示す対象の違いについて、基本からしっかりと確認していきましょう。

道具と治療法という明確な区別

人工腎臓は治療に使われる道具を指し、人工透析はその道具を使って行う治療行為そのもののことです。普段の生活で例えるならば、掃除機という道具と掃除をするという行動の関係に似ています。

腎臓の機能が低下してしまった場合、体内に溜まった老廃物や余分な水分を外に出す必要があり、働きを代行するために開発された精密なろ過装置が人工腎臓であり、専門的にはダイアライザーと呼ばれます。

これに対して人工透析は、血液を体外に取り出し、人工腎臓を通してきれいにした後に再び体内に戻すという一連の医療処置全体を意味します。

人工腎臓という部品がなければ人工透析という治療は成立しませんし、逆に人工透析というシステムを動かさなければ、人工腎臓単体では何の役にも立ちません。

二つは切っても切り離せない関係にあり、両者が揃って初めて腎臓の代わりの役割を果たすことができます。

なぜ二つの言葉が混同されやすいのか

患者さんやご家族が混乱してしまう原因の一つに、言葉の響きが持つイメージがあります。

人工腎臓と聞くと、まるで心臓のペースメーカーのように、機械そのものを体の中に埋め込んで使うような完全な臓器の代替品を想像される方がいらっしゃいます。

しかし、現在普及している一般的な治療において、人工腎臓は体の外にある機械に取り付けて使用する消耗品です。

また、医師や看護師が説明をする際にも、文脈によって使い分けが曖昧になることがあり、「今日は人工腎臓の調子を見ますね」と言うこともあれば、「今日の透析は順調ですね」と言うこともあります。

同じ治療の異なる側面を指しているに過ぎませんが、受け手にとっては別の治療法があるのかと勘違いしてしまう要因です。

医療におけるそれぞれの役割分担

治療全体をオーケストラに例えるならば、人工腎臓は楽器であり、人工透析は演奏することです。楽器の性能がどれほど良くても、正しい演奏方法で行わなければ美しい音楽は奏でられません。

同様に、どれほど高性能な人工腎臓を使用しても、患者さんの体調や生活習慣に合わせた適切な透析条件の設定がなされなければ、体調を維持することは難しくなります。

医師は患者様の血液検査の結果や体重の増減、血圧の変動などを細かく分析し、どのような性能を持つ人工腎臓を使うかを選定します。

そして、人工腎臓を使って、どのくらいの時間をかけて、どのくらいの量の血液をきれいにするかという透析の処方を決定します。

ハードウェアとしての道具と、ソフトウェアとしての治療計画が組み合わさることで、安全で効果的な治療が提供されているのです。

用語の整理と概念の比較

用語人工腎臓(ダイアライザー)人工透析(透析療法)
分類医療機器・消耗品(モノ)医療行為・治療法(コト)
主な役割血液中の老廃物をこし取るフィルターの役割血液浄化を行い体液バランスを整える一連の操作
設置場所透析用コンソール(監視装置)の側面透析室や病室など治療が行われる環境全体
患者様との関わり血液が通過する筒状の部品週に数回通院して受ける治療の時間

人工腎臓ダイアライザーの構造と働き

道具である人工腎臓、すなわちダイアライザーについて、もう少し深く掘り下げてみましょう。見た目はプラスチックの筒のように見えますが、この小さな筒の中で、本来の腎臓が行っている複雑な作業の多くが代行されています。

中空糸と呼ばれる微細なストローの集合体

ダイアライザーの内部を覗いてみると、中空糸と呼ばれる非常に細い繊維が約1万本も束ねられていて、繊維は髪の毛ほどの太さしかありませんが、中は空洞になっており、文字通りストローのような構造をしています。

治療中、患者様の体から取り出された血液は、この無数にある微細なストローの内側を流れていきます。

一本一本の繊維は非常に細く頼りなく見えますが、束ねることで、血液が接触する表面積は驚くほど大きくなります。一般的なダイアライザーの中空糸の表面積をすべて広げると、大人の体の表面積とほぼ同じか、それ以上の広さです。

この広大な面積を使って血液と透析液が薄い膜越しに接することで、効率よく老廃物の受け渡しが行われます。

血液はストローの内側を、透析液はストローの外側を、互いに逆方向に流れるように設計されており、これが老廃物を最大限に除去する工夫の一つです。

半透膜が選別する必要なものと不要なもの

中空糸の壁には、目には見えないレベルの微細な穴が無数に開いていて、この膜を半透膜と呼びます。半透膜の役割は、血液の中に含まれる成分のうち、体に必要なものと不要なものを選り分けることです。

大きさの異なる穴を持つざるをイメージするとわかりやすいでしょう。

水分や尿素窒素、クレアチニンといった小さな老廃物、そしてナトリウムやカリウムなどの電解質は、この穴を通り抜けることができます。

しかし、赤血球や白血球といった血球成分や、アルブミンなどの体に必要なタンパク質は、分子のサイズが大きいため穴を通り抜けることができません。

血液中の大切な成分は体内に残しつつ、不要なゴミだけを透析液側へ移動させ、捨て去ることができるのです。選別の精度は年々向上しており、より本来の腎臓に近い働きができるよう進化を続けています。

生体適合性への配慮と素材の進化

血液は本来、血管以外の異物に触れるとすぐに固まろうとする性質を持っていて、怪我をした際にかさぶたを作って止血するための重要な防御反応ですが、透析治療においては厄介な問題です。

ダイアライザーの中空糸という異物に血液が触れることで、血液が固まってしまったり、炎症反応が起きたりしては治療を続けられません。

そこで重要になるのが生体適合性という考え方です。現在主流となっているポリスルホンなどの合成高分子膜は、血液と接触しても刺激が少なく、アレルギー反応や血液凝固を起こしにくいように加工されています。

メーカー各社は、より体に優しく、かつ老廃物の除去性能が高い膜の開発を行っています。

患者さんの体質によっては特定の膜素材が合わないこともあるため、医師は相性を見極めながら、数ある製品の中からその人に適したダイアライザーを選択します。

ダイアライザーの基本スペックと特徴

項目内容・特徴備考
形状円筒形のプラスチックケース長さ30cm前後、直径3〜4cm程度
内部構造中空糸膜(ホローファイバー)の束約1万本の繊維が充填されている
膜の素材ポリスルホン、セルローストリアセテート等生体適合性に優れた合成高分子が主流
膜の機能半透膜による物質の選別穴の大きさで通す物質を決める
使い捨て原則として一回使い切り(シングルユース)感染症予防と性能維持のため

人工透析という治療法の中身

道具の仕組みを理解したところで、次は実際にその道具を使って行われる治療、すなわち人工透析の中身について解説します。週に数回、数時間をかけて行われるこの治療の時間、体の中ではどのような変化が起きているのでしょうか。

体に溜まった毒素の除去作業

腎臓が働かなくなると、本来なら尿として出るはずの毒素が血液中に蓄積し、これが尿毒症毒素です。溜まりすぎると、食欲不振、吐き気、頭痛、意識障害など、命に関わる深刻な症状を起こします。

人工透析の最大の目的は、拡散という物理現象を利用して、これらの毒素を血液から透析液へと移動させることです。

拡散とは、濃度の高い方から低い方へと物質が移動する現象のことで、紅茶のティーバッグをお湯に入れると、紅茶の成分が濃いバッグの中から薄いお湯の方へ広がっていくのと同じ理屈です。

患者さんの血液中には毒素がたくさん含まれていますが、透析液には毒素が全く含まれておらず、この二つが半透膜を挟んで接すると、毒素は濃度の低い透析液側へと自然に移動していきます。

治療中は常に新しい透析液が供給され続けるため、この移動が絶え間なく続き、血液は徐々にきれいになっていきます。

透析で除去される主な物質

  • 尿素窒素(タンパク質の代謝産物)
  • クレアチニン(筋肉の代謝産物)
  • 尿酸(痛風の原因物質)
  • 過剰な水分(むくみの原因)
  • 余分な電解質(カリウムやリンなど)

余分な水分の除去と除水コントロール

腎不全の患者さんは、尿の量が減ったり全く出なくなったりすることが多いため、飲んだ水分や食事に含まれる水分がそのまま体内に溜まり、むくみや高血圧、最悪の場合は肺に水が溜まって呼吸困難を起こす心不全の原因となります。

透析治療では毒素だけでなく、増えすぎた水分を取り除く除水という操作を行います。

除水には、限外濾過という原理が使われ、これは、血液側に圧力をかけることで、半透膜を通して水分を無理やり押し出す仕組みです。コーヒーフィルターに圧力をかけてコーヒーを抽出するイメージに近いかもしれません。

医師は、患者さんの普段の体重(ドライウェイト)を目標に、その日の治療で何キログラムの水を抜くかを決定します。

急激に水を抜きすぎると血圧が下がったり足がつったりするため、機械が自動的に計算し、時間をかけてゆっくりと安全に水分を取り除いていきます。

電解質のバランス調整と酸性化の是正

私たちの血液は、ナトリウム、カリウム、カルシウムといった電解質の濃度が一定に保たれることで正常に機能しています。

しかし腎臓が悪くなると、特にカリウムが排出できなくなり、心臓が止まってしまう危険性があり、また、体液が酸性に傾くアシドーシスという状態にもなりやすいです。

透析液には、正常な血液に近い濃度の電解質が含まれていて、血液と透析液が触れ合うことで、高すぎるカリウムは透析液側へ移動して減少し、不足しているカルシウムなどは透析液から血液側へ補充されます。

さらに、透析液に含まれるアルカリ化剤が血液に入ることで、酸性に傾いた血液を弱アルカリ性の正常な状態へと戻します。単に捨てるだけでなく、足りないものを補い、バランスを整えることも透析の重要な役割です。

透析装置コンソールと安全を守る仕組み

透析室に入ると、ベッドの横に大きな機械が置かれているのが目に入り、透析用コンソール、または透析用監視装置と呼ばれます。

ダイアライザーという小さなフィルターに血液を送り込み、安全に治療を完遂させるための司令塔となる装置です。

正確な循環を作り出す血液ポンプ

血液は自然には体外へ流れ出しませんし、フィルターを通って戻ってくる力もありません。そこで必要になるのが血液ポンプです。

コンソールには回転するポンプがついており、心臓の代わりに血液を押し出す役割を果たし、毎分200ml前後という、コップ一杯分の血液をわずか1分間で循環させるハイペースで回転し続けます。

速度が一定に保たれることで、計画通りの透析効率が得られます。

透析液の作成と温度管理

透析液は、濃い原液を精製水で正確に薄めて作られます。コンソールは、希釈作業を自動で行い、常に一定の濃度の透析液をダイアライザーへ送り続けます。

また、透析液の温度管理も非常に重要になります。冷たい液が体に入ると寒気を感じて血管が収縮し、透析効率が落ちたり血圧が不安定になったりし、逆に熱すぎても危険です。

コンソールは透析液を体温に近い36度から37度程度に温め、患者さんが快適に治療を受けられるようコントロールしています。

異常を即座に検知する監視システム

体外に血液を取り出す治療にはリスクが伴い、回路が外れて出血したり、回路の中に空気が入ってしまったりすることは絶対に避けなければなりません。そのために、コンソールには何重もの安全装置が組み込まれています。

血液漏れ検知器は、ダイアライザーの膜が破れて透析液側に血液が漏れていないかを光センサーで見張っています。

気泡検知器は、体に戻る血液に空気が混ざっていないかを監視し、万が一空気を検知した場合は瞬時にポンプを止めて血液の流れを遮断します。また、回路内の圧力を常にモニターし、針が抜けたり詰まったりしていないかをチェックしています。

透析用コンソールの主な機能一覧

機能名称役割安全対策
血液ポンプ血液を体外循環させる駆動力設定流量の維持と表示
透析液供給透析液の濃度と温度の調整濃度異常や温度異常で停止
除水制御設定した水分量を正確に除去誤差が生じないよう精密管理
気泡検知血管内への空気混入防止検知と同時に回路を遮断・警報
圧力監視回路内の詰まりや外れを検知異常圧力発生時に警報と停止

本来の腎臓と人工腎臓でできることの違い

技術の進歩により、人工腎臓は多くの患者様の命を救い、生活を支えることができるようになりましたが、本来の腎臓の機能すべてを、人工物で完全に再現することはまだできていません。

人工腎臓ができることと、できないことを正しく理解しておくことは、薬物療法や食事療法が必要な理由を知る上で大切です。

24時間365日か週12時間か

健康な腎臓は、24時間365日、休むことなく働き続け常に微調整を行い、体調の変化に合わせて尿の量や成分を変えています。これに対し、一般的な血液透析は週に3回、1回4時間程度しか行われません。

つまり、一週間のうち約12時間しか働いておらず、残りの時間は、体の中に毒素や水分が溜まり続ける時間です。

本来の腎臓が常にきれいな状態を保っているのに対し、透析患者さんの体内環境は、透析できれいになり、次の透析までにまた汚れていくという、山と谷を繰り返す状態になっています。

このため、透析をしていない間の自己管理、食事や水分の制限が非常に大切になるのです。

ホルモン産生機能の欠如

腎臓は単なるフィルターではありません。

造血ホルモンであるエリスロポエチンを作り出して骨髄に血を作るよう命令したり、血圧を調整するレニンというホルモンを出したり、骨を強くするためにビタミンDを活性化させたりする内分泌臓器としての顔も持っています。

人工腎臓(ダイアライザー)はあくまでろ過装置であるため、ホルモンを作る能力は持っていないため、透析治療を受けているだけでは、貧血になったり、骨が弱くなったりしてしまいます。

これを補うために、注射で造血ホルモンを補ったり、飲み薬で活性型ビタミンDを補充したりする必要があり、人工腎臓と薬物療法は、互いに補い合う関係です。

生体腎と人工腎臓の機能比較

機能生体腎(本来の腎臓)人工腎臓(透析療法)
稼働時間24時間連続週3回・1回4時間が基本
老廃物排泄大小様々な物質を常時排泄小分子〜中分子を中心に除去
水分調整尿量で細かく自動調整機械による強制的な除水
造血ホルモン分泌する(貧血を防ぐ)分泌できない(薬で補充)
骨の代謝ビタミンDを活性化する活性化できない(薬で補充)
血圧調整ホルモンで調整水分量や薬で調整

透析生活を送る上での注意点と自己管理

人工腎臓という強力な武器を手に入れたとしても、それだけで健康が保証されるわけではありません。機械任せにするのではなく、患者さん自身が主役となって日々の生活をコントロールすることが、合併症を防ぎ、長生きするための鍵となります。

食事療法は治療の一部

人工腎臓は本来の腎臓に比べて働く時間が圧倒的に短いため、次回の透析までに体に溜まるゴミや水の量を、できるだけ少なく抑える努力が必要です。塩分を摂りすぎれば喉が渇いて水を飲みすぎてしまい、心臓に負担がかかります。

カリウムを摂りすぎれば、次の透析を待たずに不整脈が起きるリスクがあります。

美味しいものを食べる楽しみを完全に諦める必要はありませんが、量や調理法を工夫する知恵が必要で、栄養士と相談しながら、自分に合った食事スタイルを見つけることが大切です。

注意すべき食事のポイント

  • 塩分摂取量を1日6g未満に抑える
  • カリウムの多い生野菜や果物を控える
  • 水分摂取量を尿量プラスαに管理する
  • リンの多い加工食品や乳製品に注意する
  • 適切なエネルギー量を確保し痩せすぎない

シャントの管理は命綱を守ること

血液透析を行うためには、たくさんの血液を出し入れするための出入り口が必要です。手首などの静脈と動脈をつなぎ合わせて作られた太い血管をシャントと呼び、シャントは、透析患者さんにとって命綱とも言えます。

シャントが詰まったり、感染して使えなくなったりすると、透析ができなくなってしまいます。毎日、シャントに触れて血液が流れるスリル(振動)があるかを確認し、耳を当てて流れる音を聴く習慣をつけましょう。

また、シャント側の腕で重い荷物を持ったり、腕時計をして圧迫したりすることは避け、大切に扱う必要があります。

透析中に起こりうるトラブルとその対策

治療を続けていく中で、体調の変化やトラブルに見舞われることもあり、人工的な治療を行う上でどうしても避けられない側面がありますが、原因と対策を知っておくことで、慌てずに対処することができます。

血圧低下と足のつり

透析中に最も頻繁に見られるトラブルが、急激な血圧低下で、短時間で大量の水分を抜くことで、血管の中の血液量が減り、血圧を維持できなくなるために起こります。あくびが出たり、冷や汗が出たり、気分が悪くなったりするのが前兆です。

また、これに伴って足がつる(こむら返り)こともよくあります。

防ぐためには、透析と透析の間の体重増加を抑えることが一番の近道で、除水する量が少なければ、それだけ体への負担も軽くなり、血圧も安定しやすいです。

かゆみと肌のトラブル

透析患者様の多くが悩まされるのが、全身のかゆみで、皮膚の乾燥や、透析で取りきれなかった老廃物が皮膚に沈着すること、あるいはカルシウムとリンのバランスが崩れることなどが原因です。

保湿剤をこまめに塗って肌を乾燥から守ることや、下着を肌に優しい素材に変えることなどが対策となります。

また、透析の時間を延ばしたり、より性能の高いダイアライザーに変更したりすることで、かゆみの原因物質をより多く取り除き、症状が改善する場合もあります。

よくある症状と日常での予防策

症状主な原因予防・対策
血圧低下過度な除水速度、心機能低下体重増加を抑える、除水速度を緩める
足のつり循環血液量の減少、電解質異常適度な運動、冷えを防ぐ、体重管理
全身の倦怠感透析による疲労、貧血、不均衡症候群十分な休息、十分な栄養摂取
皮膚のかゆみ乾燥、老廃物の蓄積、リンの高値保湿ケア、リン制限、透析条件の見直し

よくある質問

最後に、人工腎臓や人工透析に関して、患者さんやご家族からよく寄せられる質問にお答えします。

人工腎臓はずっと使い続けるのですか?交換は必要ですか?

人工腎臓(ダイアライザー)は使い捨ての消耗品ですので、治療のたびに新しいものに交換します。

一度血液を通したダイアライザーは、内部に血液成分が残ったり、性能が低下したりするため、衛生面と安全面、そして治療効果を最大限に保つために再利用は行いません。

毎回、滅菌された新品のダイアライザーを使用しますので、感染症などの心配も極めて低く、常に安定した性能で治療を受けていただけます。

人工透析を始めると、尿は全く出なくなるのですか?

透析を始めたからといって、すぐ尿が完全に出なくなるわけではありませんが、腎臓の機能は徐々に低下していく傾向にあり、それに伴って尿量は減っていき、最終的にはほとんど出なくなる方(無尿)が多くいらっしゃいます。

尿が出ているうちは水分制限が比較的緩やかですが、尿が出なくなると飲んだ分だけ体内に水が溜まるため、より厳密な水分管理が必要になります。

ご自身の残っている腎機能(残腎機能)を大切にするためにも、血圧管理や体調管理が重要です。

人工腎臓の性能によって、食事制限の内容は変わりますか?

基本的には、高性能な人工腎臓を使用しても、食事制限が不要になるわけではありません。高性能なダイアライザーは多くの老廃物を除去できますが、それでも24時間働く生体腎には及ばないのです。

ただし、最近普及しているオンラインHDFなどの高度な透析療法を行うことで、食欲が出て栄養状態が良くなったり、一部の制限がわずかに緩和されたりすることはあります。

あくまで医師の指示のもと、検査データを見ながら個別に判断されるべきものですので、自己判断で制限を緩めないようにしましょう。

旅行や出張で遠くへ行くことはできなくなりますか?

旅行や出張に行くことは可能です。透析治療は全国各地、また海外の多くの施設でも標準化された方法で行われています。

事前に旅行先の透析施設に予約を取り、現在通院している病院からの紹介状や透析条件のデータを送ることで、旅先でも普段と同じように透析を受けることが可能です(臨時透析)。

以上

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大垣中央病院・こばとも皮膚科

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