訪問看護で爪切りは頼める?対応可能な範囲と注意点

訪問看護で爪切りは頼める?対応可能な範囲と注意点

足の爪を見て、伸びすぎていたり、厚くなって変形していたりして、どうやって切ればよいのか悩んでしまうことはないでしょうか。

視力の低下や腰痛、身体の麻痺などがあると、足先のお手入れは想像以上に難しいものですが、こういう場合に頼りになるのが、訪問看護サービスです。

この記事では、訪問看護における爪切りの対応範囲や、ヘルパーさんとの違い、利用するための手続き、料金の目安について、分かりやすく解説していきます。

目次

訪問看護で爪切りは依頼できるのか

爪が伸びすぎて皮膚を傷つけたり、巻き爪が痛くて歩行を妨げたりすることは、全身の健康にも悪影響を及ぼすため、適切なフットケアは重要な看護ケアの一つです。ただし、どのような爪の状態でも無条件に対応できるわけではありません。

基本的に対応可能です

訪問看護を利用している方であれば、通常のケアの一環として爪切りを依頼することができます。加齢とともに爪は厚くなりやすく、また視力低下や手の力の衰えによって、自分自身で安全に爪を切ることが難しくなる方が多くいらっしゃいます。

家族が代わりに切ろうとしても、怖くて深く切れない、あるいは逆に切りすぎてしまうといった悩みを抱えることも少なくありません。

訪問看護師は、安全な爪切りの技術を習得しており、利用者の足の状態に合わせて道具を選び、ケアを行います。単に爪を短くするだけでなく、爪の周囲の皮膚の状態を観察したり、保湿を行ったりと、総合的なフットケアを提供します。

医療行為となる爪切りとそうでない爪切りの違い

爪切りは、すべてが医療行為にあたるわけではありません。

爪そのものに異常がなく、爪の周囲の皮膚にも炎症や化膿などの異常がない場合の爪切りは、医療行為ではないとされ、専門的な知識や技術がなくても、家族や介護職が行っても良い行為です。

しかし、爪が厚くて硬くなっていたり、皮膚に食い込んで炎症を起こしている場合は、専門的な判断と技術が必要な医療行為となり、訪問看護師は看護師免許を持つ医療従事者であるため、医療行為にあたる爪切りにも対応することが可能です。

爪切りの医療行為性の判断基準

判断基準医療行為ではない爪切り医療行為となる可能性がある爪切り
爪の状態変形や異常がない巻き爪、陥入爪、肥厚爪など
周囲の皮膚炎症や化膿、傷がない発赤、腫れ、痛み、出血などがある
基礎疾患特になし、または安定している糖尿病や閉塞性動脈硬化症などがある

介護保険と医療保険での扱いの違い

訪問看護は、利用者の年齢や疾患によって、介護保険または医療保険のいずれかが適用され、どちらの保険を利用する場合でも、訪問看護のサービス内容として爪切りやフットケアを受けることができます。

介護保険ではケアプランに基づき、定められた時間内で必要なケアを提供し、医療保険では、主治医の指示に基づき、週3回までなどの回数制限の中で訪問を行います。

どちらの保険であっても、爪切り自体に特別な追加料金が発生するわけではありませんが、利用時間や訪問回数に影響する場合があるため、ケアマネジャーや訪問看護ステーションと相談しながら計画を立てることが大切です。

訪問看護師が対応できる爪の状態とは

高齢になると、長年の歩行の癖や合わない靴の影響、水虫などの感染症、あるいは栄養状態の変化などにより、爪に変形が生じることが少なくありません。ここでは、訪問看護師が具体的にどのような爪の状態に対応できるのかを見ていきましょう。

通常の爪切りとやすりでの整え

特に大きなトラブルがない爪であっても、高齢者の爪は乾燥して割れやすかったり、少し厚くなっていたりすることが多いです。一般的な家庭用の爪切りでは切りにくく、力を入れると爪が割れてしまうこともあります。

訪問看護師は、ニッパー型の爪切りや医療用の爪やすりなどを使い分け、爪に負担をかけずに少しずつ短くしていき、切り口が尖って皮膚を傷つけないよう、最後は滑らかに整えます。

また、入浴後など爪が柔らかくなっているタイミングを見計らってケアを行うなど、安全に配慮した対応を心がけます。

巻き爪や陥入爪の処置

爪の端が内側に巻いてしまう巻き爪や、皮膚に食い込んで痛みや炎症を起こす陥入爪は、歩行時の痛みの原因となり、活動量を低下させる大きな要因です。

訪問看護師は、食い込んでいる部分の爪をニッパーで慎重にカットしたり、角をやすりで丸く整えたりして痛みを和らげ、炎症が起きている場合は、主治医と相談の上、消毒や軟膏の塗布などの処置を行います。

重度の巻き爪で専門的な矯正治療が必要な場合は、皮膚科や形成外科への受診を勧めることもありますが、日常的なケアによって痛みをコントロールし、悪化を防ぐための支援は訪問看護の重要な役割です。

訪問看護師が注意深く観察する足のサイン一覧

  • 爪の色の変化(白濁、黄色、黒色など)
  • 爪の形の変化(厚くなる、巻く、変形するなど)
  • 爪周囲の皮膚の赤み、腫れ、熱感
  • 足の裏や指の間の皮むけ、水疱
  • 足の冷感やしびれ、感覚の鈍さ

肥厚爪や変形爪への対応

長期間爪を切らずに放置したり、足に合わない靴を履き続けたりすることで、爪が異常に厚くなる肥厚爪や、山のように盛り上がったり横に曲がったりする変形爪になることがあります。

こうなると普通の爪切りでは歯が立たず、無理に切ろうとすると爪が根元から剥がれてしまい危険です。訪問看護師は、専用のニッパーやグラインダー(爪を削る機械)を使用して、厚くなった部分を少しずつ削り、形を整えていきます。

一度で完全にきれいにするのではなく、複数回に分けて徐々に正常な形に近づけていくアプローチをとることもあります。

水虫(爪白癬)がある場合の対応

爪が白く濁って厚くなり、ボロボロと崩れるような場合は、爪の水虫である爪白癬の可能性があります。

爪白癬は市販の塗り薬では治りにくく、放置すると家族に感染させてしまうリスクもあるので、訪問看護師は、爪の状態を観察し、爪白癬の疑いがある場合は主治医に報告することも大切な役割です。

医師から抗真菌薬の塗り薬などが処方された場合は、訪問時に薬の塗布を行ったり、正しい塗り方を本人や家族に指導したりします。

訪問看護師による爪の状態別対応可否リスト

爪の状態訪問看護での対応備考
正常な爪対応可能定期的な整えと保湿を実施
軽度の巻き爪対応可能痛みの緩和、角の整えを実施
炎症のある陥入爪対応可能(医師と連携)消毒、軟膏処置、受診勧奨
肥厚爪・変形爪対応可能専用器具で削り、整える
爪白癬(疑い含む)対応可能(医師と連携)観察、受診勧奨、薬の塗布
出血や化膿が激しい状態応急処置後、受診勧奨まずは医師の診察が必要

訪問看護以外のサービスとの違い

在宅で生活していると、訪問看護以外にも様々なサービスを利用することがあり、その中で、爪切りを頼めるサービスは他にもありますが、それぞれのサービスには役割や法律に基づいた対応範囲の違いがあります。

訪問介護(ホームヘルパー)による爪切りとの違い

最も混同しやすいのが、訪問介護のホームヘルパーによる爪切りで、爪やその周囲の皮膚に異常がなく、専門的な判断が不要な場合に限り、ヘルパーも爪切りを行うことが認められています。これは、あくまで日常生活の支援としての範囲内です。

しかし、高齢者の爪は何らかのトラブルを抱えていることが多く、一見問題なさそうに見えても、皮膚に食い込んでいたり、感染症が隠れていたりすることがあります。

ヘルパーは医療従事者ではないため、こうした異常の判断や、ニッパーなどを使った専門的な処置を行うことはできません。少しでも異常があれば、ヘルパーは医療職につなぐ必要があります。

訪問看護と訪問介護の爪切り対応比較

項目訪問看護(看護師)訪問介護(ホームヘルパー)
資格看護師免許(国家資格)介護福祉士、初任者研修など
位置づけ医療処置または療養上の世話日常生活支援
対応可能な爪正常な爪からトラブル爪まで全般異常のない正常な爪のみ
使用する道具ニッパー、グラインダーなど専門器具も可原則として一般的な爪切りのみ
医療的判断可能(異常の早期発見、医師連携)不可(異常があれば医療職へ報告)

医療機関(皮膚科・フットケア外来)受診との違い

皮膚科や整形外科、一部の病院に設置されているフットケア外来では、医師や専門的な訓練を受けた看護師による治療レベルのフットケアを受けることができます。

重度の炎症を伴う陥入爪の手術や、ワイヤーを使った高度な巻き爪矯正などは、医療機関でなければ対応できません。

訪問看護はあくまで在宅での療養生活を支えるためのサービスであり、手術室のような設備や高度な医療機器を持ち込むことはできないのです。

訪問看護師は、日々のケアを行う中で、専門的な治療が必要な状態かどうかを見極め、医療機関への受診を促す役割を担います。

訪問看護と医療機関・サロンのフットケア比較

比較項目訪問看護医療機関(皮膚科等)民間フットケアサロン
主な目的療養生活支援、健康管理疾患の診断・治療美容、リラクゼーション
施術者看護師医師、看護師民間資格者(ネイリスト等)
保険適用医療保険または介護保険医療保険(治療の場合)原則全額自費
対応場所自宅病院・クリニックサロン店舗
強み通院不要、継続的な全身管理高度な医療処置・手術が可能快適な空間、美容的アプローチ

民間のフットケアサロンとの違い

足のトラブルを専門に扱う民間のフットケアサロンやネイルサロンが増えていおり、巻き爪の補正や肥厚爪のケア、角質除去などを、快適な空間で受けることができます。

ただし、施術者は必ずしも医療国家資格を持っているわけではないため、医療行為にあたる処置(出血を伴う処置や、薬の処方など)は行うことができません。

また、費用は基本的に全額自費となるため、継続して利用するには経済的な負担が大きくなる傾向があります。訪問看護は保険制度を利用するため自己負担を抑えられ、かつ医療的な視点を持って全身状態と合わせたケアを受けられる点が強みです。

訪問看護で爪切りを依頼するメリット

単に爪を短くするだけであれば、他の方法もありますが、あえて訪問看護を利用して爪切りやフットケアを受けることには、在宅療養生活を送る上で非常に大きなメリットがあります。

専門的な視点での観察と早期発見

訪問看護師は、爪を切る際に、単に長さや形を見るだけではなく、足の色、温度、皮膚の状態、むくみの有無、傷や感染の兆候などを総合的に観察します。足は「第二の心臓」とも呼ばれ、全身の健康状態を映し出す鏡のような部位です。

足の動脈硬化が進むと足先が冷たく色が紫色になり、糖尿病があると、小さな傷が治りにくく、壊疽(えそ)などの深刻な事態につながるリスクもあります。

訪問看護師はこうした小さなサインを見逃さず、早期に医師と連携することで、重篤な疾患の進行を防ぐことができます。

訪問看護師に依頼する主な利点

  • 医療資格者による確実で安全な技術
  • 爪だけでなく全身状態を考慮したトータルケア
  • 異常の早期発見と医師への迅速な連携
  • 通院負担がなく、自宅でリラックスして受けられる
  • 本人や家族への適切なセルフケア指導

全身状態に合わせた安全なケア

利用者の身体状況は一人ひとり異なります。

糖尿病、透析を受けている方、抗凝固薬(血液をサラサラにする薬)を服用している方などは、ちょっとした傷でも血が止まりにくかったり、感染症が悪化しやすかったりするため、細心の注意が必要です。

訪問看護師は、利用者の基礎疾患や服薬状況を把握した上で、最もリスクの少ない方法でケアを行い、通常以上に器具の消毒を徹底したり、出血させないことを最優先にした慎重な手技を選択したりします。

全身の状態を理解しているかかりつけの看護師だからこそ、安心して足を任せることができます。

通院の負担軽減と自宅でのリラックスしたケア

足のトラブルを抱える高齢者にとって、病院のフットケア外来などへの通院は大きな負担となります。移動自体が困難な場合も多く、家族の付き添いが必要になるなど、時間的・体力的な制約が少なくありません。

訪問看護であれば、看護師が自宅まで来てくれるため、通院の手間が一切かからず、住み慣れた自宅のベッドや椅子で、リラックスした状態でケアを受けることができます。

また、入浴直後の爪が柔らかい時間帯に合わせて訪問してもらうなど、生活リズムに合わせた柔軟な対応も可能です。

利用開始までの流れと手続き方法

訪問看護で爪切りを依頼したいと思っても、今日電話して明日すぐに来てもらう、ということは制度上難しいです。訪問看護は医療保険や介護保険を利用する公的なサービスであり、利用を開始するためには所定の手続きが必要になります。

まずはケアマネジャーや主治医に相談

すでに介護認定を受けていてケアマネジャー(介護支援専門員)がついている方は、まず担当のケアマネジャーに相談するのが一番スムーズで、「足の爪が切れなくて困っている」「訪問看護でフットケアをしてほしい」と伝えましょう。

ケアマネジャーが現在の介護プラン(ケアプラン)を確認し、訪問看護を組み込むための調整を行います。まだ介護認定を受けていない方や、医療保険での利用を検討している方は、かかりつけの医師(主治医)に相談してください。

あるいは、地域の「地域包括支援センター」や直接「訪問看護ステーション」に相談することも可能です。

訪問看護導入の標準的なフロー

手順窓口・担当者行うこと
1. 相談ケアマネジャー、主治医など爪切りの困りごとを伝え、訪問看護利用を希望する
2. 調整ケアマネジャーケアプランの作成・変更、利用するステーションの選定
3. 依頼ケアマネジャーまたは本人主治医へ訪問看護指示書の発行を依頼する
4. 発行主治医訪問看護指示書を作成し、ステーションへ送付
5. 契約訪問看護ステーション重要事項説明、契約締結、初回訪問日の決定
6. 開始訪問看護師初回訪問、状態確認、ケア開始

訪問看護指示書の発行

訪問看護サービスを利用するためには、主治医が発行する訪問看護指示書が必ず必要で、これは、医師が医学的な見地から「この患者さんには訪問看護が必要である」と認め、ケアの内容や注意点を看護師に指示する書類です。

爪切りやフットケアを希望する場合、医師がその必要性を認めれば、指示書にその旨が記載されます。

通常はケアマネジャーや訪問看護ステーションから医師に依頼を行いますが、受診時に本人や家族から直接医師にお願いしておくとスムーズに進むことが多いでしょう。

相談時に伝えるとスムーズな情報

  • 現在の爪の状態(厚い、巻いている、痛いなど)
  • 自分で切れない理由(目が見えない、手が届かないなど)
  • これまで誰がどうやって切っていたか
  • 糖尿病などの基礎疾患や、血液をサラサラにする薬の服用の有無
  • 訪問してほしい曜日や時間帯の希望

訪問看護ステーションとの契約と初回訪問

利用する訪問看護ステーションが決まり、医師からの指示書が届いたら、ステーションの担当者と面談を行い、契約を結び、この際、サービス内容、料金、緊急時の連絡先などの重要事項について説明を受けます。

契約が完了したら、初回訪問の日程を決定します。初回訪問では、管理者が同行するなどして、利用者の全身状態や生活環境、爪の状態を詳しくアセスメント(評価)し、その上で、ケア計画を立て、実際のサービスがスタートします。

爪切りは毎回行うわけではなく、爪の伸び具合に合わせて2週間〜1ヶ月に1回程度の間隔で行うことが一般的です。

料金と費用の目安について

訪問看護は公的な保険制度が適用されるため、原則としてかかった費用の1割〜3割が自己負担となりますが、利用する保険の種類(介護保険か医療保険か)や、所得、年齢、訪問の時間帯、ステーションの体制などによって、料金は変動します。

介護保険を利用する場合の自己負担

介護保険を利用する場合、自己負担割合は原則1割ですが、一定以上の所得がある方は2割または3割負担です。

訪問看護の料金は、1回あたりの訪問時間によって基本料金が決められていて、最も一般的な「30分以上60分未満」の訪問の場合、基本単位数に地域区分単価を掛けた金額の1〜3割が自己負担となります。

目安としては、1回60分の訪問で1割負担の場合、800円〜1,000円程度になることが多いです。爪切り自体に別料金がかかるわけではなく、訪問時間内で他のケアと合わせて実施します。

その他、初回加算や緊急時対応加算など、状況に応じた加算が追加される場合があり、また、介護保険の支給限度額を超えて利用した場合は、超えた分が全額自己負担です。

介護保険における訪問看護料金体系の例(目安)

サービス区分時間区分単位数(概算)1割負担時の目安
訪問看護Ⅰ20分未満約300単位約300円強
訪問看護Ⅰ30分未満約450単位約500円弱
訪問看護Ⅰ30分〜60分未満約800単位約800円〜900円
訪問看護Ⅰ60分〜90分未満約1100単位約1200円前後

※上記は基本部分のみの目安であり、地域や事業所の体制加算等により変動します。

医療保険を利用する場合の自己負担

後期高齢者(75歳以上)の方は原則1割ですが、現役並み所得者は3割です。医療保険での訪問看護料金は訪問看護基本療養費と管理療養費の合計で構成され、週3日を限度として利用できます(例外あり)。

目安としては、1回あたりの訪問で1割負担の場合、数百円〜1,500円程度の範囲に収まることが一般的です。

医療保険には、高額療養費制度があり、1ヶ月の医療費の自己負担額が一定の上限を超えた場合、超えた分が払い戻される仕組みがあります。

その他の実費負担がかかるケース

保険適用の自己負担分とは別に、実費負担が発生する場合があり、代表的なものは、訪問にかかる交通費です。

ステーションから一定の距離範囲内であれば無料としている事業所も多いですが、遠方の場合は規定の交通費を請求されることがあります。

また、ケアに使用するガーゼやテープなどの衛生材料費、保湿クリームなどの物品代も、原則として実費負担です。ステーションが用意するものを使うか、利用者が自分で用意するかは、契約時に確認しておきましょう。

安全な爪切りのための注意点と準備

訪問看護師はプロですが、より安全で効果的なケアを行うためには、利用者や家族の協力が重要で、また、爪切りは訪問看護師が来た時だけ行えば良いというものではありません。

事前の情報共有が大切です

初めて訪問看護師に爪切りを依頼する際や、担当者が変わる際には、改めて利用者の情報を詳しく伝え、特に「血液をサラサラにする薬(抗凝固薬、抗血小板薬)」を飲んでいるかどうかは、出血リスクに関わる最重要事項です。

必ずお薬手帳を見せて確認してもらいましょう。また、糖尿病の治療歴や、過去に足のトラブル(傷が治りにくかった、壊疽したなど)があったかどうかも重要な情報です。

感覚が鈍麻している(痛みや熱さを感じにくい)場合は、看護師もより慎重にケアを行う必要があります。

爪切りに適した環境設定

安全に爪切りを行うためには、適切な環境が必要で、まず、手元がよく見えるように明るい場所を確保してください。昼間であれば窓際、夜間や暗い部屋であればスタンドライトなどで照明を補うと良いでしょう。

訪問看護師が無理な姿勢にならずに作業できるよう、足元に十分なスペースを空けておくことも大切です。ベッド上で行う場合は、看護師が座れる椅子などがあると助かります。

また、爪が飛び散らないように下に敷く新聞紙やタオル、足を拭くためのウェットティッシュなどを用意しておくとスムーズです。

入浴後であれば爪が柔らかくなって切りやすいですが、訪問直前の入浴が難しい場合は、訪問時に足浴(たらいにお湯を張って足を温める)を行うこともあります。

訪問看護師が来る前に準備しておくと良いもの

  • 明るい照明(必要な場合)
  • 看護師が座るためのスペースや椅子
  • 新聞紙やチラシ(爪の飛び散り防止)
  • ウェットティッシュや蒸しタオル
  • 保湿クリーム(普段使っているものがあれば)
  • お薬手帳(初回や変更時)

普段からのフットケアの重要性

訪問看護師による爪切りは月に1〜2回程度です。次の訪問までの間、足の状態を健康に保つためには、本人や家族による日頃のケアが欠かせません。

最も大切なのは清潔と保湿です。入浴時には指の間まで優しく丁寧に洗い、石鹸成分が残らないようによくすすぎます。上がった後はタオルで水分をしっかりと拭き取りましょう。指の間が湿ったままだと水虫の原因になります。

高齢者の皮膚は乾燥しやすいため、足の裏やかかとを中心に保湿クリームを塗って乾燥を防ぐことが大切ですが、指の間にクリームを塗ると湿気がこもる原因になるので避けてください。

足のトラブルと全身疾患の深い関係

全身疾患・状態足への影響・リスク注意点
糖尿病神経障害による感覚鈍麻、血流障害、易感染性傷に気づきにくく、治りにくい。壊疽のリスク。
閉塞性動脈硬化症(ASO)足の血行不良、冷感、歩行時疼痛小さな傷が難治性の潰瘍になりやすい。
透析治療中皮膚の乾燥、かゆみ、石灰化乾燥による亀裂、傷からの感染リスク増大。
抗凝固薬の服用出血傾向少しの傷でも血が止まりにくくなる。
認知症衛生管理不足、危険行動爪をいじって傷を作る、痛みを訴えられない。

よくある質問

家族が同居していても、訪問看護で爪切りを頼めますか?

家族が同居していても、高齢であったり、仕事で忙しかったり、あるいは専門的な技術が必要な爪の状態であったりして、適切に爪切りを行うことが難しいケースは多々あり、そのような場合は、訪問看護の対象となります。

ケアマネジャーや主治医に現状を相談し、専門職によるケアが必要であることを伝えてください。家族の介護負担を軽減することも、訪問看護の重要な役割の一つです。

巻き爪がひどくて痛いのですが、訪問看護で治せますか?

訪問看護師は、爪の角を整えたり、皮膚への食い込みを和らげる処置を行ったりして、痛みをコントロールすることはできます。

しかし、ワイヤーを用いた矯正治療や、外科的な手術が必要なレベルの巻き爪に関しては、医療機関(皮膚科や形成外科など)での対応です。

訪問看護師は状態を評価し、専門的な治療が必要と判断した場合は、適切な医療機関への受診を提案します。

爪切りだけの目的で訪問看護を利用することはできますか?

主治医が爪切り(フットケア)の必要性を認め、訪問看護指示書を発行すれば利用は可能ですが、訪問看護は全身の状態観察や健康管理を包括的に行うサービスです。

通常は、バイタルチェック(血圧や体温の測定)や全身の健康相談、療養環境の整備などと合わせて時間内で爪切りを行います。

爪を切って終わりではなく、なぜ爪が切れなくなったのかという背景にある身体機能の低下なども含めて支援します。

訪問看護に来てもらう時に、自分で用意する爪切りや道具はありますか?

訪問看護師は、ニッパーややすりなど、様々な爪の状態に対応できるプロ用の道具を携行しており、衛生管理のため、使用する器具は適切に消毒されたものを使用します。

ただし、利用者が使い慣れている保湿剤や、特定の薬(医師から処方された塗り薬など)がある場合は使用しますのでご用意ください。

また、足浴をする場合のたらいやタオルなどは、ご自宅のものを使用させていただくことが一般的です。

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以上

参考文献

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大垣中央病院・こばとも皮膚科

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