透析治療が必要だと診断されたとき、あるいは現在治療を受けている若い女性にとって、将来への不安は計り知れないものがあります。特に妊娠や出産といったライフイベント、また日常生活における悩みは尽きないことでしょう。
しかし、適切な管理と周囲のサポートがあれば、自分らしい生活を送り、夢を叶えることは十分に可能です。
この記事では、若い女性特有の悩みや身体の変化、妊娠の可能性、そして日々の生活の工夫について、詳しく解説します。
透析治療が若い女性の身体とホルモンバランスに与える影響
透析治療を開始すると、体内の毒素や水分の調整が行われますが、同時に内分泌系、特に女性ホルモンのバランスに変化が生じることがあります。月経周期の乱れや無月経は、多くの女性患者さんが直面する課題の一つです。
腎不全が引き起こす月経不順と無月経の原因
腎臓の機能が低下すると、体内には尿毒素と呼ばれる老廃物が蓄積し、脳の視床下部や下垂体に作用し、ホルモンの分泌指令を乱すことがあります。
通常、脳からの指令を受けて卵巣からエストロゲンやプロゲステロンといったホルモンが分泌されますが、尿毒素の干渉によって連携がうまくいかなくなるのです。
排卵に関わるホルモンの分泌リズムが崩れることで、月経不順や無月経が起こされやすくなり、また、プロラクチンというホルモンの値が高くなる高プロラクチン血症を合併することも少なくありません。
プロラクチンは本来、授乳期に分泌されるホルモンですが、この値が高くなると排卵が抑制され、月経が止まってしまう大きな要因です。
さらに、透析治療に伴う貧血や栄養状態の変化も、月経に影響を与えます。
慢性腎臓病におけるホルモン異常の推移
| 病期 | 主なホルモン変化 | 身体への影響 |
| 保存期 | プロラクチンの軽度上昇 | 月経周期が長くなる、経血量が減る |
| 末期腎不全 | エストロゲンの低下、LHサージの消失 | 無月経、排卵障害、性欲減退 |
| 透析導入後 | 尿毒素除去によるホルモン環境の改善 | 月経の再開、排卵の回復(個人差あり) |
貧血症状と婦人科系疾患の関連性
透析患者さんは、腎臓から分泌される造血ホルモンであるエリスロポエチンの不足により、腎性貧血になりやすい傾向があり、若い女性の場合は月経による出血が貧血を助長することがあります。
子宮筋腫や子宮内膜症などの婦人科系疾患を併発している場合、過多月経となり、貧血症状が重篤化するリスクがあります。
息切れや動悸、慢性的な疲労感は、透析不足だけでなく、こうした婦人科系の問題が隠れている可能性も考えなければなりません。
また、透析で使用する抗凝固薬の影響で、月経血が止まりにくくなることもあり、これが貧血に拍車をかけることもあります。
貧血が改善しない場合は、単に造血剤を増やすだけでなく、婦人科での検診を受けることが重要です。子宮や卵巣の状態を把握し、必要であればホルモン療法などで月経量をコントロールすることも選択肢に入ります。
将来の妊娠を見据えた身体のメンテナンス
将来的に妊娠を希望する場合、現在の月経状況に関わらず、生殖機能を守るためのケアが必要です。無月経であっても排卵が起きているケースもあるため、避妊の必要性を含め、パートナーと正しく理解し合うことが求められます。
妊娠を望む場合は、無計画に進めるのではなく、入念な準備が必要で、透析効率を上げ、毒素を十分に除去し、栄養状態を良好に保つことが、妊娠可能な身体作りへの近道となります。
痩せすぎも太りすぎもホルモンバランスには悪影響を与えるため、BMIを標準範囲に保つ努力も必要です。
基礎体温を記録し、自分のリズムを知ることから始めましょう。不規則な生活や過度なダイエットはホルモンバランスをさらに乱す要因となります。
バランスの取れた食事と十分な睡眠、そしてストレスを溜め込まない生活習慣が、将来の希望をつなぐ土台となります。
妊娠と出産の可能性
かつては透析患者の妊娠は困難と言われていましたが、透析技術の進歩と医療管理の向上により、出産に至る事例は年々増加しています。
透析患者さんが妊娠と出産を目指す上で知っておくべきリスクと、乗り越えるための医療体制について、現実的な側面から解説します。
透析患者の妊娠における母体と胎児へのリスク
透析患者さんの妊娠では、一般的な妊娠に比べて合併症のリスクが高まり、母体においては、循環血液量の増加に伴う心不全や、血圧の急激な上昇を伴う妊娠高血圧症候群が懸念されます。
また、羊水過多症になりやすく、これが子宮を圧迫して早産の引き金になることもあります。一方、胎児にとっては、母体内の尿毒素が高い状態が続くと発育不全を招いたり、早産による未熟性に伴う様々な障害のリスクが生じたりします。
胎盤の機能不全も起こりやすく、常位胎盤早期剥離といった緊急事態のリスクも考慮しなければなりません。
リスク最小限に抑えるためには、妊娠前から十分な透析を行い、血圧を安定させることが重要で、妊娠中は、胎児の成長に合わせて透析条件を頻繁に見直す必要があります。
妊娠中に想定される主な合併症と対策
| 合併症の種類 | 具体的な症状 | 主な対策と管理方法 |
| 妊娠高血圧症候群 | 高血圧、蛋白尿、むくみ | 降圧薬の調整、塩分制限の徹底、安静 |
| 羊水過多症 | 腹部の過剰な膨らみ、呼吸困難 | 透析による除水コントロール、頻回なエコー検査 |
| 切迫早産 | 頻繁なお腹の張り、出血 | 安静、子宮収縮抑制剤の使用、入院管理 |
妊娠中の透析スケジュールと厳密な管理体制
妊娠が判明した場合、通常よりも透析の回数と時間を大幅に増やす頻回透析が行われます。これは、胎児にとって有害な尿毒素を限りなく正常な腎機能レベルまで下げるためです。
また、厳しい食事制限や水分制限を緩和し、胎児の成長に必要な栄養を十分に摂取するためにも、透析量を増やすことは合理的です。一般的には、週に20時間から24時間以上の透析時間を確保することが推奨されています。
体重管理も非常に繊細になり、ドライウェイトの設定は胎児の成長分や羊水量を考慮して、週単位あるいは日単位で調整されます。
計画的な妊娠のために準備すべきこと
妊娠は奇跡的な出来事ですが、透析患者さんの場合は計画的であることが成功の鍵を握ります。妊娠前から使用している薬剤の中には、胎児に影響を与える可能性があるため、変更が必要なものがあります。
降圧薬の一部であるACE阻害薬やARBなどは催奇形性のリスクがあるため、妊娠を希望した時点での切り替えが重要です。
また、十分な透析効率が確保されているか、貧血や栄養状態が改善されているかなど、妊娠に耐えうる身体かどうかを医学的に評価してもらう必要があります。
妊娠希望時のチェックポイント
- 服用中の薬剤が妊娠に影響しないか確認し、必要であれば変更する
- 透析効率が十分な値に達しているか評価する
- 貧血のコントロール状況と鉄分の貯蔵量を確認する
- 血圧が安定しており、心機能に問題がないか検査する
- 家族やパートナーの協力体制が整っているか話し合う
血液透析と腹膜透析
透析治療には大きく分けて血液透析と腹膜透析の2種類があり、それぞれに特徴があります。若い女性の場合、通学や通勤、ファッション、旅行など、生活の優先順位によって適した治療法が異なる場合があります。
腹膜透析が選ばれる理由と生活へのメリット
腹膜透析は、自分のお腹の膜である腹膜を使って血液をきれいにする方法です。
自宅や職場で患者さん自身が透析液の交換を行うため、通院回数が月に1回から2回程度で済むのが最大の特徴で、社会復帰がしやすく、仕事や学校生活を継続しやすいという利点があります。
また、ゆっくりと時間をかけて透析を行うため、血圧の変動が少なく、身体への負担が比較的軽いこともメリットです。身体への優しさは、残っている腎機能の保持にもつながり、尿が出る期間を長く保てる可能性があります。
さらに、血液透析のように腕にシャントという血管の手術痕を作る必要がないため、半袖やノースリーブの服を気兼ねなく着ることができ、お腹にカテーテルというチューブが入りますが、服を着れば目立ちません。
治療法による生活スタイルの違い
| 項目 | 血液透析 | 腹膜透析 |
| 通院頻度 | 週3回(1回4〜5時間) | 月1〜2回 |
| 治療場所 | 医療機関(クリニック・病院) | 自宅、職場、外出先 |
| 食事制限 | 比較的厳しい(特にカリウム・リン) | 血液透析に比べるとやや緩やか |
血液透析の特徴と通院生活の工夫
血液透析は、腕の血管に針を刺し、血液を体外に取り出してダイアライザーという機械できれいにする方法です。
週に3回、決まった時間に通院する必要があるため、スケジュールの拘束はありますが、医療スタッフの管理下で治療を受けられる安心感があります。
また、腹膜透析のように毎日自分で処置をする必要がないため、治療のない日は透析のことを忘れて過ごすことができます。
通院時間を有効活用するために、透析中に読書や動画鑑賞、資格の勉強などをする患者さんもいます。夜間透析を行っている施設を選べば、日中は仕事や学業に専念することも可能です。
シャントの傷跡については、長袖やサポーター、ファンデーションテープなどでカバーする工夫が広まっています。
美容とスキンケア
透析による乾燥やかゆみ、色素沈着といった肌の黒ずみは、見た目の印象を左右するだけでなく、精神的なストレスにもつながりますが、スキンケアと生活習慣の改善で、トラブルを軽減し、健康的な肌を保つことは可能です。
乾燥とかゆみの原因と保湿ケアの重要性
透析治療を受けると、発汗機能の低下や皮脂分泌の減少により、皮膚が非常に乾燥しやすくなり、バリア機能が弱まり、外部からの刺激に敏感になるため、強いかゆみを起こします。
また、体内に蓄積した尿毒素そのものが神経を刺激し、かゆみを誘発することもあります。さらに、カルシウムやリンの代謝異常もかゆみの原因となり、これらが皮膚に沈着することで難治性のかゆみを生じさせることもあります。
かゆみで肌をかきむしると、さらにバリア機能が壊れ、症状が悪化する悪循環に陥ってしまいます。
悪循環を断ち切るためには、徹底した保湿ケアが必要で、入浴後は肌の水分が急速に蒸発するため、5分以内に全身に保湿剤を塗布することが大切です。
保湿剤は、単に塗るだけでなく、肌のキメに沿って優しく広げ、ティッシュが張り付くくらいの量をたっぷりと使いましょう。
効果的なスキンケア成分と選び方
| 成分名 | 特徴・期待できる効果 | おすすめの使用シーン |
| ヘパリン類似物質 | 高い保湿力と血行促進作用 | 入浴後の全身保湿、乾燥が強い部位 |
| 尿素 | 角質を柔らかくし、水分を保持 | かかとや肘、膝などの硬い部分 |
| ワセリン | 肌表面に膜を作り、水分蒸発を防ぐ | 特に乾燥がひどい時の重ね塗り |
色素沈着を防ぐための紫外線対策と生活習慣
透析患者さんの肌は、尿毒素の影響でメラニン色素が沈着しやすく、全体的に黒ずんで見えることがあります。これを尿毒症性顔貌と呼ぶこともありますが、適切な透析で毒素をしっかり抜くことが第一の対策です。
それに加えて重要なのが、紫外線対策です。
肌のターンオーバーが乱れがちな透析患者さんは、一度日焼けをするとメラニンが排出されにくく、シミや色素沈着として残りやすく、また、日焼けは肌の乾燥も加速させるため、二重の意味で避けるべきリスクとなります。
シャント痕のケアとファッションの楽しみ方
血液透析を選択した場合、腕のシャントである穿刺痕を気にする女性は少なくありません。半袖を着ることに抵抗を感じることもあるでしょう。
穿刺痕を目立たなくするためには、止血後のケアが重要で、かさぶたを無理に剥がさず、保湿をして皮膚の再生を促すことが重要です。また、ビタミンC誘導体配合のクリームなどでケアすることで、色素沈着を薄くする効果が期待できます。
穿刺箇所を毎回少しずつずらすことで、一つの場所に傷が集中するのを防ぐことも大切です。
ファッションにおいては、最近ではおしゃれなアームカバーや、レース素材のカーディガンなど、自然に腕をカバーできるアイテムが増えています。
また、ファンデーションテープという薄いシール状のアイテムを使えば、傷跡を自然に隠すことができ、温泉やプールなどのシーンでも役立ちます。
シャントを保護しつつおしゃれを楽しむアイテム
- シアー素材のトップスは透け感があり涼しげだが傷跡はぼかして見えにくくする
- リストバンドやアームカバーはスポーティーなものからレースまで多様なデザインがある
- ファンデーションテープは肌色に合わせて傷跡を隠せる耐水性のある極薄テープ
- ドルマンスリーブは袖にゆとりがあり締め付けがなくシャントへの負担が少ない
- 大判のストールは屋内での冷房対策を兼ねてさりげなく肩から羽織ることができる
食事と栄養管理
透析イコール厳しい食事制限というイメージが強く、食べる楽しみが失われてしまうと感じている方もいるかもしれません。正しい知識を持って、賢くコントロールする術を身につけましょう。
カリウム・リン・塩分のコントロール方法
透析患者さんの食事管理において、特に注意が必要なのがカリウム、リン、塩分の3つです。カリウムが高くなると不整脈のリスクが、リンが高くなると骨が脆くなったり血管の石灰化が進んだりします。
塩分の摂りすぎは、喉の渇きを招き、体重増加の原因となります。コントロールするには、食材選びと調理法が鍵で、すべての食材を避けるのではなく、調理の工夫で成分を減らすことができます。
カリウムは水に溶けやすいため、野菜は茹でこぼす、あるいは水にさらすことで減らすことができます。
リンは、加工食品や食品添加物に多く含まれる無機リンが吸収されやすいため、ハムやソーセージ、スナック菓子などは控えめにし、肉や魚などの有機リンを中心としたメニューを選ぶのがコツです。
塩分については、出汁や酸味、香辛料を上手く使うことで、薄味でも満足感を得ることができます。
賢く選ぶおやつ・間食のリスト
| 控えたほうがよい食品 | 理由 | 代わりにおすすめの食品 |
| ポテトチップス | 塩分・リン・カリウムが多い | 無塩のポップコーン、米菓子 |
| チョコレート | カリウム・リンが多い | マシュマロ、ゼリー、寒天菓子 |
| ドライフルーツ | カリウムが濃縮されている | 缶詰のフルーツ(シロップは捨てる) |
外食やカフェを楽しむためのメニュー選び
友人との外食は、メニュー選びさえ気をつければ決して怖くありません。基本は単品よりも定食、汁物は残す、ドレッシングは別添えの3点です。
丼ものや麺類は塩分や水分が多くなりがちなので、主菜、副菜、ご飯が分かれている定食スタイルが調整しやすくおすすめです。また、揚げ物は衣を少し残すことでカロリーとリンを減らすことができます。
カフェでは、コーヒーや紅茶にはカリウムが含まれていますが、1日1杯程度なら楽しめる場合が多いです。最近ではデカフェやハーブティーなど、選択肢も増えています。
ミルクティーやカフェラテは乳製品のリンが気になるため、ストレートティーやアメリカンコーヒーを選ぶ、あるいは豆乳に変更するなどの工夫をすると良いでしょう。
若い女性に必要な栄養素とバランス
制限ばかりに目を向けがちですが、必要な栄養素をしっかり摂ることも同じくらい重要です。若い女性は、筋肉量を維持し、健康的な肌や髪を作るために、良質なタンパク質が必要です。
透析によってアミノ酸が失われやすいため、肉、魚、卵、大豆製品をバランスよく毎食手のひらサイズ分程度は摂取しましょう。
エネルギー不足になると、体内のタンパク質が分解されて尿毒素が増える異化亢進という状態になり、かえって体調を崩してしまいます。
また、便秘はカリウム値を上昇させる原因にもなるため、水溶性食物繊維を適度に取り入れ、腸内環境を整えることも大切です。無理なダイエットは栄養失調を招き、免疫力を低下させるため禁物です。
仕事と社会生活
透析治療をしながら仕事を続けることは、経済的な自立だけでなく、社会とのつながりを保ち、自己実現を果たすためにも大きな意味があります。
職場での理解の求め方や、制度の活用、無理なく働き続けるためのポイントについて、事例を交えて解説します。
職場への伝え方と理解を得るための工夫
就職活動や現在の職場で、透析のことをどう伝えるかは悩ましい問題です。
必ずしも詳細をすべて話す必要はありませんが、通院のための時間確保や、体調急変時の対応など、業務に関わる配慮が必要な点については、具体的に伝えておくことが望ましいです。
透析をしていますという事実だけでなく、週に何回、何時以降の勤務が難しいですが、それ以外の時間は通常通り勤務できますといった条件を提示することで、企業側も採用後のイメージが湧きやすくなります。
上司や人事担当者との面談では、通院スケジュールを共有し、業務の進捗管理や引継ぎのルールを決めておくとスムーズです。
また、自分から積極的にコミュニケーションを取り、周囲への感謝を示すことで、協力が得やすい雰囲気を作ることができます。
制度を活用した働きやすい環境づくり
透析患者さんは、身体障害者手帳の交付を受けることができ、障害者雇用枠での就労が可能になるほか、企業によっては通院休暇や短時間勤務制度などが利用できる場合があります。
また、障害年金を受給できる可能性もあり、経済的な負担を軽減することで、無理のないペースで働くという選択肢も生まれます。
フレックスタイム制やテレワークなど、柔軟な働き方を導入している企業を選ぶのも一つの方法です。
透析クリニックの近くに職場を探す、あるいは職場の近くのクリニックに転院するなど、物理的な移動距離を減らす工夫も、長期的に働き続けるためには有効です。
仕事と治療を両立するための職種・環境例
- 事務職やデスクワークは体力的な負担が少なくシャントへの影響も少ない
- フレックスタイム制のある職場は透析の時間に合わせて始業や終業時間を調整できる
- 在宅勤務やリモートワークは通勤の負担がなく腹膜透析の交換もしやすい
- 短時間正社員は社会保険に入りつつ透析時間を確保できる勤務体系である
- 医療や福祉関連の職場は病気への理解があり急な体調不良にも柔軟に対応してくれることが多い
よくある質問(FAQ)
若い女性の患者さんから多く寄せられる質問についてまとめました。
- 透析をしていてもヘアカラーやネイルを楽しめますか?
-
透析治療自体がヘアカラーやネイルを制限することはありません。おしゃれをすることは心の元気にもつながります。
ただし、透析中は血圧低下などの体調変化を観察するために、顔色や爪の色を見ることがあるため、ネイルは透明や薄い色にするか、1本か2本は塗らずに残しておくなどの配慮が必要な場合があります。
また、長時間座って施術を受けることが身体の負担になる場合は、体調の良い日を選んで行うようにしましょう。事前に透析スタッフに確認しておくと安心です。
- 透析中の旅行は可能ですか?また、海外旅行も行けますか?
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国内旅行も海外旅行も可能です。これを旅行透析と呼び、事前に旅行先の透析施設に予約を入れ、現在の治療データを送ることで、旅先でもいつもと同じように透析を受けることができます。
海外旅行の場合は、言葉の問題や医療費の支払い方法などが異なるため、旅行透析をコーディネートしてくれる旅行会社や専門のエージェントを利用するのが安心です。
主治医の許可が必要ですので、計画段階で早めに相談し、余裕を持って準備を進めましょう。
- 将来、透析を止めることはできますか?
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慢性腎不全の場合、失われた腎機能が回復することは基本的になく、生涯にわたって透析療法か腎臓移植のいずれかが必要です。
透析そのものを完全に止めることはできませんが、腎臓移植を受ければ、透析から離脱することは可能で、移植には生体腎移植と献腎移植の2種類があります。
移植後は免疫抑制剤の服用が必要ですが、食事や水分の制限が大幅に緩和され、より自由度の高い生活を送ることができます。移植についても、早い段階から主治医に情報を求めておくことが大切です。
- 透析患者は生理痛の薬を飲んでも大丈夫ですか?
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市販の鎮痛剤の中には、腎機能に負担をかける成分が含まれているものがあり、注意が必要です。特にNSAIDsと呼ばれる非ステロイド性抗炎症薬は、残っている腎機能を低下させる恐れがあります。
自己判断での服用は避け、必ず主治医に処方してもらうようにしてください。アセトアミノフェンなど、比較的腎臓への負担が少ない薬を選ぶことが一般的です。
以上
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