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アイロンでやけどした時の応急処置|跡を残さない正しい治し方とヒリヒリを抑える方法

アイロンでやけどした時の応急処置|跡を残さない正しい治し方とヒリヒリを抑える方法

アイロンを使っている最中の不注意で、やけどをしてしまった経験はありませんか。高温のアイロンが肌に触れた瞬間の激しい痛みや、その後に続くヒリヒリとした感覚は非常につらいものです。

さらに、水ぶくれができたり、跡が残ったりしないかという不安も大きく、特に顔や手などの目立つ場所のやけどは、美容的な観点からも心配です。

この記事では、皮膚科の観点から、アイロンでやけどした直後に何をすべきか、ヒリヒリする痛みをどう抑えるか、そして最跡を残さないための正しい治し方について詳しく解説します。

この記事の執筆者

小林 智子(日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士)

小林 智子(こばやし ともこ)

日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長

2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。

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こばとも皮膚科関連医療機関

医療法人社団豊正会大垣中央病院

目次

アイロンによるやけどの特徴と危険性

アイロンによるやけどは、家庭内で起こりやすい事故の一つで、高温の金属面が直接皮膚に接触するため、短時間でも深いダメージを受けやすいです。

高温接触による皮膚組織へのダメージ

アイロンは通常、120℃から200℃程度の高温で使用され、このような高温の物体が皮膚に触れると、皮膚の表面にある表皮はもちろん、その下の真皮層まで瞬時に熱が伝わります。

皮膚はタンパク質でできているため、高温にさらされると卵が焼けるように変性し、組織が破壊されてしまいます。

接触時間がわずか1秒程度であっても、皮膚の深い部分まで損傷が及ぶ可能性があり、これがアイロンやけどの重症化しやすい要因です。

熱が深くまで達すると、皮膚の再生能力が損なわれ、治癒に時間がかかったり、跡が残りやすくなったりします。

なぜアイロンのやけどは跡に残りやすいのか

アイロンやけどが跡に残りやすい理由は、高温により皮膚の深部(真皮層)までダメージが及びやすいためです。

皮膚が再生するためには、真皮層にある毛穴や汗腺などの組織が残っている必要がありますが、深いII度熱傷やIII度熱傷になると、このような組織も破壊されてしまいます。

皮膚の再生がうまくいかず、治った後も皮膚が引きつれたり(瘢痕拘縮)、盛り上がったり(肥厚性瘢痕)、ケロイドになったりすることがあります。

また、治癒の過程で炎症が長く続くと、メラニン色素が過剰に作られ、茶色いシミ(炎症後色素沈着)として残ることも多いのです。

アイロンと他の熱源によるやけどの違い

熱源の種類主な特徴ダメージの傾向
アイロン(接触)100℃以上の高温金属が直接接触する接触した範囲に、深く均一なダメージが及びやすい
熱湯(液体)100℃以下の液体が広範囲にかかるかかった範囲に、比較的浅いが広範囲のダメージが及びやすい
油(液体)100℃以上の高温液体がかかる熱湯よりも温度が高く、粘性があるため皮膚に留まりやすく、深くなりやすい

自己判断による処置のリスク

やけどをした際、慌てて民間療法に頼ったり、誤った知識で処置したりすることは非常に危険です。アロエを塗る、味噌を塗る、軟膏をすぐに塗布するといった行為は、傷口を不潔にし、細菌感染のリスクを高めます。

また、冷やし方が不十分であったり、逆に氷などで冷やしすぎたりすると、凍傷を起こし、やけどのダメージをさらに悪化させる可能性があります。

水ぶくれを自分で無理に破る行為も、感染の入り口を作ることになり、治りを遅らせ、跡が残る原因です。

やけどを悪化させる行動

  • 消毒液(アルコールなど)で傷口を強くこする
  • アロエ、味噌、油などの民間療法を試す
  • 水ぶくれを意図的に破る
  • 冷却が不十分なまま放置する
  • 汚れた手や布で傷口に触れる

アイロンやけどで起こりやすい合併症(感染・瘢痕)

アイロンやけどの合併症として最も注意すべきは、細菌感染と瘢痕(はんこん)です。

やけどによって皮膚のバリア機能が失われると、そこから細菌が侵入しやすくなり、感染を起こすと、傷の治りが著しく遅れるだけでなく、全身に炎症が広がる可能性もあります。特に水ぶくれが破れた後は注意が必要です。

もう一つの重大な合併症は瘢痕です。やけどが真皮層まで達すると、治癒の過程でコラーゲン繊維が過剰に生成され、引きつれや盛り上がりといった瘢痕が残ることがあります。

顔や関節部などのやけどは、美容的な問題だけでなく、機能的な障害(口が開きにくい、指が曲げにくい)を起こす可能性もあるため、早期から専門的な治療が重要です。

やけど直後に絶対すべき応急処置

アイロンでやけどをしてしまったら、直後の数分間の行動が、その後の治りや跡が残るかどうかを大きく左右します。ここでは、やけど直後に絶対に行うべき基本的な処置について解説します。

すぐに流水で冷やす 冷やす時間の目安

やけどをしたと認識したら、何よりもまず、患部を冷やすことが最優先です。衣服などが邪魔をしない限り、すぐに水道の流水を患部に直接当てて冷やしてください。

冷やす目的は、皮膚の深部まで熱が伝わるのを防ぎ、やけどの進行を食い止めること、そして痛みを和らげることです。

アイロンのような高温の物体によるやけどは、表面が冷えたように見えても、皮膚の内部にはまだ熱が残っている(余熱)ことが多く、余熱が組織の破壊を続けるため、しっかりと冷やす必要があります。

冷やす時間の目安は、痛みが和らぎ、ヒリヒリ感が落ち着くまでですが、一般的には最低でも15分から30分程度です。

冷却時間の目安と方法

冷却方法推奨される状況注意点
流水(水道水)手、腕、足など、流水を当てやすい部位水圧を強くしすぎない。体温低下に注意(特に冬場や広範囲の場合)。
清潔な濡れタオル顔、体幹など、流水を当てにくい部位タオルが温まったら、すぐに冷たいものと交換する。
保冷剤推奨されない(特に直接当てること)冷えすぎて凍傷のリスクがある。使う場合はタオルで包む。

衣服の上からやけどした場合の対処

もし、服の上からアイロンが倒れるなどしてやけどをした場合は、無理に服を脱がそうとしないでください。特に化学繊維の衣服は、熱で溶けて皮膚に張り付いている可能性があります。

無理に剥がそうとすると、皮膚まで一緒に剥がしてしまい、症状を悪化させる危険があり、このような場合は、衣服の上からそのまま流水をかけて冷やします。

十分に冷却した後、服が皮膚に張り付いていないようであれば静かに脱がし、もし張り付いている場合は、その部分を避け、ハサミなどで衣服を切り、慎重に取り除きます。

それでも取れない場合は、無理をせず、冷やしながら医療機関を受診してください。

応急処置でやってはいけないこと

やけどの応急処置では、良かれと思ってやったことが逆効果になる場合があり、最もよくある間違いは、氷や保冷剤を直接患部に当てることです。

強すぎる冷却は、血管を過度に収縮させ、血流を悪化させるだけでなく、凍傷を起こす可能性があります。また、消毒液(アルコールやイソジンなど)を直接傷口に塗ることも避けてください。

消毒液は正常な細胞にもダメージを与え、傷の治りを妨げる可能性があります。冷却後は、清潔なガーゼやタオルで保護するにとどめ、市販の軟膏やクリームを自己判断で塗らないようにしましょう。

応急処置のNG行動

  • 氷や保冷剤を直接当てる
  • 消毒液を傷口にかける
  • 水ぶくれを針などで刺して破る
  • 冷却を短時間(数分)でやめてしまう
  • 民間療法(アロエ、味噌など)を試す

冷やした後の清潔な保護方法

患部を十分に冷やし、痛みが落ち着いたら、次は傷口を保護します。冷却に使った水気を清潔なタオルやガーゼで優しく押さえるように拭き取り、この時、皮膚をこすらないように注意が必要です。

その後、傷口を乾燥や外部の刺激から守るため、清潔なガーゼや、可能であれば非固着性(くっつかないタイプ)のドレッシング材で覆います。もし水ぶくれができていたら、それを破らないように特に優しく保護してください。

ガーゼを固定する際は、テープを直接傷口に貼らず、周囲の健康な皮膚に貼るようにしますが、この保護は、あくまで医療機関を受診するまでの一時的な措置です。できるだけ早く皮膚科を受診しましょう。

やけどの深さ別症状と見分け方

やけどは、皮膚のどの深さまで熱による損傷が及んだかによって、重症度が分類されます。

I度熱傷 皮膚が赤くなりヒリヒリする

I度熱傷は、やけどの中で最も軽症なもので、皮膚の最も外側にある表皮のみが損傷を受けた状態で、主な症状は、皮膚が赤くなる(発赤)、ヒリヒリとした痛み、そしてわずかな腫れです。日焼けで皮膚が赤くなった状態と似ています。

アイロンがごく短時間触れた場合や、触れる寸前でよけた場合などに見られ、I度熱傷では水ぶくれ(水疱)はできません。通常、適切な冷却を行えば、数日で痛みや赤みは自然に治まり、跡が残ることはほとんどありません。

ただし、顔などのデリケートな部位の場合は、一時的に色素沈着が残ることもあるため、油断は禁物です。

II度熱傷 水ぶくれができる強い痛み

II度熱傷は、表皮を越えて、その下の真皮層まで損傷が及んだ状態で、アイロンやけどでは非常に多く見られるタイプです。

II度熱傷の最大の特徴は、水ぶくれ(水疱)ができることで、これは、損傷した毛細血管から体液(滲出液)が漏れ出し、表皮と真皮の間に溜まることで形成され、非常に強い痛みとヒリヒリ感を伴います。

II度熱傷はさらに、真皮の浅い部分までの損傷(浅達性II度熱傷)と、深い部分までの損傷(深達性II度熱傷)に分けられます。

浅達性の場合は水ぶくれの底が赤く、比較的早く治癒し跡が残りにくいですが、深達性の場合は、水ぶくれの底が白っぽく見え、治癒に時間がかかり(3週間以上)、瘢痕が残りやすいです。

III度熱傷 皮膚が白くなる痛みを感じない

III度熱傷は、表皮、真皮のすべて、場合によっては皮下組織(脂肪や筋肉)まで損傷が及んだ、最も重症なやけどです。アイロンを長時間押し当ててしまった場合などに起こる可能性があります。

この状態になると、皮膚は白や黄褐色、あるいは黒く焦げたようになり、乾燥して硬くなります。III度熱傷の大きな特徴は、痛みを感じなくなることで、これは、皮膚の深い部分にある神経まで破壊されてしまうためです。

痛みがないからといって軽症と誤解してはいけません。III度熱傷は自然に治癒することはなく、皮膚の再生も起こらないため、多くの場合、皮膚移植などの外科的な手術が必要となり、跡も残ります。

やけどの深度別特徴

深度損傷範囲主な症状
I度熱傷表皮のみ赤み、ヒリヒリとした痛み。水ぶくれはできない。
II度熱傷 (浅達性)表皮~真皮浅層強い痛み、水ぶくれ(底は赤色)。
II度熱傷 (深達性)表皮~真皮深層痛みはやや鈍い、水ぶくれ(底は白っぽい)。跡が残りやすい。
III度熱傷皮膚全層(+皮下組織)痛みを感じない。皮膚が白、褐色、黒色になる。

ヒリヒリとした痛みを抑える方法

アイロンやけどの直後から数日間にわたって続く、あのジリジリ、ヒリヒリとした痛みは、非常につらく不快なものです。この不快な感覚を少しでも和らげるために、家庭でできる対処法と注意点を知っておきましょう。

冷却を継続する際の注意点

応急処置で行った冷却は、痛みを抑えるためにも非常に有効です。やけど当日は、痛みがぶり返してくるようであれば、断続的に冷却を続けても構いませんが、応急処置の時と同様に、氷や保冷剤を直接当てるのは避けてください。

冷たすぎると、かえって痛みを強く感じたり、凍傷を起こしたりする危険があり、冷却を再開する場合は、流水か、濡らした清潔なタオルをビニール袋に入れたものなどを使い、1回15分程度を目安に行います。

痛みが強い場合の鎮痛剤の使用

冷却しても痛みが治まらず、日常生活や睡眠に支障が出るほどつらい場合は、市販の鎮痛剤(解熱鎮痛薬)を使用することも一つの方法です。

鎮痛薬には、痛みを生み出す物質(プロスタグランジン)の生成を抑える作用があり、やけどによる炎症性の痛みを和らげる効果が期待できます。

ただし、鎮痛剤はあくまで一時的に痛みを抑えるものであり、やけどそのものを治す薬ではありません。

痛み止め(鎮痛剤)の種類

成分名(例)主な作用使用上の注意
ロキソプロフェン炎症と痛みを抑える作用が比較的強い胃腸障害が起こることがあるため、空腹時を避ける
イブプロフェン炎症と痛みを抑える作用があるロキソプロフェンと同様に胃腸障害に注意
アセトアミノフェン痛みを抑える作用が中心で、炎症を抑える作用は弱い胃腸障害のリスクは低いが、肝臓への負担に注意

保湿と保護による刺激の軽減

やけどの患部は、皮膚のバリア機能が失われているため、非常にデリケートな状態です。空気に触れるだけでも乾燥し、それが刺激となってヒリヒリとした痛みを起こすことがあります。

I度熱傷のように皮膚が赤くなっているだけの場合は、冷却後に低刺激性の保湿剤を塗ることで、乾燥を防ぎ、痛みを和らげることができます。

II度熱傷以上で水ぶくれができたり、皮がむけたりしている場合は、自己判断で保湿剤を塗るのではなく、医療機関で処方される軟膏や、傷口を覆うドレッシング材(被覆材)を使用して、傷口を湿潤な環境に保ちながら保護することが大切です。

痛み軽減のためのポイント

  • 患部を清潔に保つ
  • 乾燥させない(適切な湿潤環境)
  • 外部からの物理的な刺激(衣服の摩擦など)を避ける
  • 心臓より高い位置に保つ(腫れやズキズキする痛みの軽減)
  • 十分な休息と栄養を摂る

跡を残さないための正しい治し方

やけどの痛みが落ち着いてきた後に、誰もが最も心配するのは「やけどの跡が残らないか」ということでしょう。跡を残さずきれいに治すためには、傷口を最適な環境に保つことが重要です。

水ぶくれは破るべきか そのままか

II度熱傷でみられる水ぶくれは可能な限り破らずに、そのまま保持することが原則です。

水ぶくれの膜は、天然の絆創膏のような役割を果たし、外部の細菌から傷口を守ってくれ、また、水ぶくれの中の液体(滲出液)には、傷を治すためのさまざまな成長因子が含まれており、治癒を促進する働きもあります。

ただし、水ぶくれが非常に大きく張って痛みが強い場合や、明らかに感染が疑われる場合、また、顔や関節など日常生活で破れやすい部位にある場合は、医療機関で清潔な操作のもと、中の液体だけを抜く処置(穿刺・排液)を行うことがあります。

湿潤療法の考え方と家庭での実践

やけどの治し方として、近年主流となっているのが湿潤療法(モイストヒーリング)です。

これは、従来の「傷は消毒して乾かす」という考え方とは正反対で、「傷口を適度な湿り気(湿潤環境)に保つ」ことで、皮膚の自己再生能力を最大限に引き出す治療法です。

傷口から出る滲出液には、皮膚の再生に必要な成長因子が豊富に含まれているので、滲出液を傷口に留めておくことで、細胞の増殖が活発になり、痛みが少なく、早く、きれいに治ることがわかっています。

家庭で実践する場合は、まず傷口を水道水でよく洗い流し(消毒は不要)、ハイドロコロイド素材などの専用のドレッシング材(被覆材)で傷口をぴったりと覆います。

湿潤療法で使用する被覆材の種類

種類特徴適したやけどの状態
ハイドロコロイド滲出液を吸収してゲル化し、湿潤環境を保つ。防水性。I度、浅達性II度(滲出液が少ない~中程度)
ポリウレタンフォーム吸収力が高く、クッション性があるII度(滲出液が多い場合)
非固着性ガーゼ傷口に貼り付きにくい素材でコーティングされている軟膏と併用する場合の保護

傷跡(瘢痕)を防ぐためのケア

やけどの傷が上皮化し、一通り治った後もケアは終わりではなく、治った直後の皮膚は非常にデリケートで、バリア機能もまだ不完全です。この時期のケアが、将来的に跡(瘢痕)として残るかどうかを左右します。

特に注意すべきは、保湿と圧迫、そして紫外線対策です。治ったばかりの皮膚は乾燥しやすく、かゆみが出やすい状態なので、掻きむしると炎症が再発し、色素沈着や肥厚性瘢痕の原因になります。

低刺激性の保湿剤をこまめに塗り、皮膚を保護しましょう。また、やけどが深いときに傷跡が盛り上がる(肥厚性瘢痕)のを防ぐために、シリコンジェルシートやサポーターなどで患部を適度に圧迫するケア(圧迫療法)が有効な場合もあります。

やけどの跡(瘢痕・色素沈着)の種類

跡の種類見た目の特徴主な原因
炎症後色素沈着茶色いシミのような跡やけどの炎症や、治癒後の紫外線曝露によるメラニン沈着
肥厚性瘢痕赤く盛り上がったミミズ腫れのような跡治癒過程でのコラーゲン過剰産生(真皮深層の損傷)
瘢痕拘縮皮膚が引きつれた状態関節部など、動きの多い部位の深い熱傷

色素沈着を防ぐ紫外線対策の重要性

やけどの跡として最も残りやすいのが、茶色いシミのような炎症後色素沈着で、これは、やけどの炎症によってメラノサイト(色素細胞)が活性化し、メラニン色素が過剰に作られることが原因です。

傷が治ったばかりの赤みがある時期に紫外線を浴びると、色素沈着は非常に起こりやすくなります。アイロンやけどが顔や手、腕などの露出しやすい部位にできた場合は、徹底した紫外線対策が半年から1年程度は必要です。

紫外線対策

  • 日焼け止め(低刺激性、SPF30/PA++以上目安)の塗布
  • 帽子、日傘の使用
  • 長袖、アームカバーの着用
  • 遮光テープや包帯による物理的な遮光
  • 紫外線の強い時間帯(午前10時~午後2時)の外出を控える

顔や指先など特殊な部位のやけど対処法

やけどは体のどこにでも起こり得ますが、顔や指先、関節部などは、皮膚が薄かったり、機能的に重要だったりするため、より慎重な対処が求められます。

ヘアアイロンの使用中や、アイロンがけ中にアイロンが倒れてくるなど、顔や手にやけどを負うケースも少なくありません。

顔にアイロンが当たった場合の応急処置

顔にアイロンが当たってやけどをした場合、すぐに冷やすことが最優先です。顔は水道の流水を直接当て続けるのが難しいため、清潔なタオルやガーゼを冷水で濡らし、それを患部に優しく当てて冷やします。

タオルが温まったら、すぐに新しい冷たいものと交換し、これを最低15分から30分は続けます。顔の皮膚は非常に薄くデリケートなため、同じI度やII度のやけどでも、他の部位よりダメージが深くなりやすく、跡が残りやすい傾向があります。

また、美容的にも非常に目立つ場所であるため、応急処置の後は、やけどの程度にかかわらず、必ず皮膚科を受診してください。

目の周りや唇をやけどした時の危険性

顔のやけどの中でも、特に目やその周囲、あるいは唇のやけどは緊急性が高いです。目に近い場所をやけどすると、角膜や結膜に熱が及び、視力障害につながる危険性があり、まぶたが腫れて目が開けにくくなることもあります。

唇や口の周りのやけどは、腫れによって食事が摂りにくくなったり、治癒の過程で皮膚が引きつれ(瘢痕拘縮)、口が開きにくくなったりする可能性があります。

このような部位をやけどした場合は、冷却の応急処置をしながら、ただちに皮膚科、あるいは眼科や救急外来を受診することが大切です。

指先や手のやけどと機能障害のリスク

アイロンの熱い面にうっかり触れてしまいやすいのが、指先や手で、指先は神経が集中しているので非常に強い痛みを感じ、また、手や指、肘、膝などの関節部は、日常的によく動かす場所です。

深いII度熱傷やIII度熱傷を負うと、治癒の過程で皮膚が硬く引きつれ(瘢痕拘縮)、指が曲がりにくい、関節が伸びにくいといった機能障害を残すリスクがあります。

応急処置でしっかり冷やした後、水ぶくれができるようなやけどであれば、必ず医療機関を受診してください。

特殊な部位のやけど対処法

部位応急処置のポイント受診の目安・注意点
濡れタオルで優しく継続的に冷やすやけどの程度に関わらず、必ず皮膚科を受診する
目・唇の周囲慎重に冷却し、こすらないただちに皮膚科・眼科・救急外来を受診する(緊急)
手・指・関節部流水で十分に冷やす水ぶくれができたら必ず受診する(機能障害のリスク)

皮膚科を受診すべきタイミング

アイロンやけどは家庭でも起こりやすいため、軽症であれば応急処置だけで様子を見てしまう人も少なくありませんが、軽いやけどだと思っていても、皮膚の深いところまで損傷が及んでおり、専門的な治療が必要な場合があります。

すぐに病院へ行くべきやけどのサイン

やけどの重症度は、深さだけでなく、広さも関係します。やけどの範囲が手のひらの大きさ(指は含まず)を超える場合は、全身への影響も考慮し、すぐに医療機関を受診してください。

また、III度熱傷が疑われる場合、つまり皮膚が白くなったり黒く焦げたりして、痛みを感じない場合も、緊急性が高いため、すぐに受診が必要です。

さらに、やけどの原因がアイロンであっても、顔、手足、関節、陰部などの特殊な部位をやけどした場合、あるいは乳幼児や高齢者、持病(糖尿病など)がある方の場合は、軽症に見えても重症化しやすいため、早めの受診が推奨されます。

受診を急ぐべき症状

  • 水ぶくれ(水疱)ができている
  • やけどの範囲が手のひらよりも大きい
  • 顔、手、指、関節、陰部のやけど
  • 皮膚が白、褐色、黒色になっている(痛みがない)
  • 乳幼児、高齢者、持病のある方

水ぶくれができた場合の受診目安

やけどで水ぶくれ(水疱)ができた時点で、真皮層まで損傷が及んでいるII度熱傷であることを意味し、II度熱傷は、跡が残るかどうかの境界線であり、感染のリスクも高まります。

アイロンやけどは深達性II度熱傷になりやすく、専門的な治療(治し方)が必要となるケースが多いです。

水ぶくれが小さい(直径1cm未満)場合でも、自分で破らずに保護して受診することが望ましいですが、もし水ぶくれが大きい場合、あるいはすでに破れてしまった場合は、感染予防と処置のために、必ず皮膚科を受診してください。

皮膚科での専門的なやけど治療とは

皮膚科では、まずやけどの深さと範囲を正確に診断し、その上で、感染を予防し、できるだけ早く、きれいに治すための治療を行います。水ぶくれが大きい場合は、清潔な操作で中の液体を抜く処置をすることがあります。

感染を防ぐための抗生物質入りの軟膏や、皮膚の再生を促す軟膏、あるいは湿潤療法のためのドレッシング材(被覆材)を処方し、交換時期や自宅でのケア方法を指導します。

やけどの治癒経過を定期的に診察し、感染の兆候がないか、瘢痕化の傾向がないかをチェックし、もし跡が残りそうな場合は、早期から内服薬や外用薬、圧迫療法などを導入し、傷跡を最小限に抑えるための予防的な治療も行います。

皮膚科での主な治療法

治療法目的概要
外用薬治療感染予防、皮膚の保護、再生促進抗生物質軟膏、保湿剤、皮膚再生促進剤などを塗布する
湿潤療法創部の湿潤環境維持、治癒促進ハイドロコロイドなどのドレッシング材で創部を覆う
水疱穿刺・除去感染予防、ドレッシング材の貼付清潔な操作で水疱の内容液を抜いたり、破れた皮を除去したりする

治癒経過中に注意すべきこと

皮膚科での治療が始まった後も、自宅でのケアは重要です。医師の指示通りに軟膏を塗ったり、ドレッシング材を交換し、傷口は毎日水道水で優しく洗い流し、清潔を保つことが基本です。

洗う際に石鹸を使う必要はありませんが、もし使う場合は低刺激性のものをよく泡立てて、こすらずに洗い流します。

また、傷口に強いかゆみや痛み、異臭、膿のようなものが出てきた場合は、感染のサインかもしれないため、次の受診日を待たずに早めに医師に相談してください。

アイロンやけどに関するよくある質問

ここまでアイロンやけどの対処法について解説してきましたが、ほかにも多くの方が疑問に思う点について、Q&A形式でお答えします。

やけどにアロエや軟膏を塗っても良いですか?

アロエや味噌、油などを塗る民間療法は、傷口から細菌が入り込む原因となり、感染のリスクを非常に高めるので、絶対にやめましょう。

また、市販の抗生物質入り軟膏や、家庭にある保湿クリームなども、やけど直後の開いた傷口には適していない場合があります。

やけどの応急処置は冷やすことと、清潔なガーゼなどで保護することにとどめ、使用する薬剤については必ず医師の診断を受けてからにしてください。

水ぶくれが破れてしまったらどうすれば良いですか?

すぐに水道水で優しく洗い流してください。水ぶくれが破れた場合、皮膚のバリアがなくなり、非常に感染しやすい状態になっています。

破れた皮は、無理に剥がしたり、ハサミで切ったりしないで、洗い流した後は、清潔なガーゼやドレッシング材で患部を保護し、できるだけ早く皮膚科を受診することが大切です。

やけどの跡が茶色く残ってしまいました。消す方法はありますか?

茶色い跡は炎症後色素沈着で、やけどの炎症によってメラニン色素が過剰に作られたものです。通常は半年から1年ほどで自然に薄くなりますが、この期間に紫外線を浴びると濃くなるため、徹底した紫外線対策と保湿が重要です。

皮膚科では、色素の排出を促すビタミンCやハイドロキノンなどの外用薬(塗り薬)や、内服薬(ビタミンC、トラネキサム酸など)を処方し、改善を早める治療を行います。

子どもがアイロンでやけどした場合、大人と対処法は違いますか?

基本的な応急処置(すぐに流水で冷やす)は大人と同じですが、子ども、特に乳幼児は皮膚が薄く、大人よりもやけどが深くなりやすく、また、体に対するやけどの面積の割合が大きくなりやすいので、重症化しやすいです。

冷却の際も、広範囲を冷やしすぎると低体温症を起こす危険があるため、患部だけを冷やし、他の部分は毛布などで保温することも大切です。

以上

参考文献

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大垣中央病院・こばとも皮膚科

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