急性腎不全など、腎臓の機能が急激に低下した場合、一時的に透析治療が必要になることがあり、これは、生涯にわたって透析を続ける慢性腎不全の治療とは異なり、腎機能の回復が見込める場合の緊急的な対応です。
多くの方が透析と聞くと永続的な治療を想像し、大きな不安を感じるかもしれません。
この治療がどのようなものか、なぜ必要なのか、どのくらいの期間続くのかなど、一時的な透析に関する基本的な情報を分かりやすく解説します。
一時的な透析と持続的な透析の違い
一般的に知られている透析と、ここで取り上げる一時的な透析は、根本的に異なる状況で選択されます。まずは、この二つの違いについて理解を深めましょう。
一般的な透析(維持透析)とは
一般的に透析治療と聞いて多くの方が想像するのは、維持透析かもしれません。
糖尿病性腎症や慢性糸球体腎炎、腎硬化症などの慢性腎臓病が進行し、腎機能が回復不可能なレベルまで低下した状態(末期腎不全)になった際に行う治療です。
末期腎不全になると、現在の医療では腎臓の機能を元に戻すことは見込めないため、失われた腎臓の機能を永続的に代替することが治療の目的となります。
通常、週に2回から3回、1回あたり4時間程度の血液透析を医療機関で受けるか、または在宅で毎日行う腹膜透析を、生涯にわたって続けることが必要です。
一時的な透析(急性期透析)とは
一時的な透析は、急性腎不全(最近では急性腎障害とも呼びます)など、何らかの原因で急激に腎機能が悪化した場合に行う治療です。
この場合の腎臓は、重いダメージを受けて一時的に機能不全に陥っていますが、原因となった病態を取り除き、サポートを行えば機能が回復する可能性があります。
治療の目的は、腎機能が自力で回復するまでの間、生命を維持するために一時的に腎臓の機能を代替することで、腎臓が回復するまでの橋渡しになります。
腎臓が無事に回復すれば、透析治療から離脱できる点が、維持透析との決定的な違いです。
治療の目的と期間の根本的な違い
維持透析と一時的な透析は、目的が根本的に異なります。
維持透析は失われた腎機能を永続的に代替し続けることですが、一時的な透析は腎機能が回復するまでのサポートであり時間稼ぎで、腎臓が本来の機能を取り戻すチャンスを、体の状態を安全に保ちながら待つのです。
維持透析と一時的透析の比較
| 比較項目 | 維持透析 (慢性腎不全) | 一時的な透析 (急性腎不全など) |
|---|---|---|
| 目的 | 失われた腎機能の永続的な代替 | 腎機能回復までの時間稼ぎと生命維持 |
| 期間 | 原則として生涯 | 一時的(数日〜数週間、数ヶ月) |
| 対象 | 末期腎不全 | 急性腎不全、薬物中毒、重症感染症など |
なぜ一時的な透析が必要になるのか
腎臓の機能が数日、あるいは数時間といった短期間で急激に停止すると、体は非常に危険な状態に陥ります。
腎臓は尿を作るだけでなく体内の老廃物を排出し、水分や電解質(カリウムやナトリウムなど)のバランスを調節し、血液を弱アルカリ性に保つという重要な役割を担っています。
この機能が停止すると、老廃物や余分な水分が急速に体内に溜まり、尿毒症、高カリウム血症、重度の体液過剰(心不全や肺水腫による呼吸困難)など、生命に直接関わる深刻な事態を数日のうちにも起こします。
一時的な透析は、危険な状態を緊急的に回避し、腎臓が回復するための環境を整えるために必要な治療です。
一時的な透析が必要になる主な原因
腎臓の機能が短期間で急激に低下する状態を急性腎不全(または急性腎障害)と呼び、原因を正しく突き止めることが、回復への第一歩です。
急性腎不全とはどのような状態か
急性腎不全は、それまで健康だった腎臓、あるいは軽度の腎機能低下があった腎臓が、数時間から数日の単位で、急速に働き(老廃物の濾過や尿の生成)を失う状態を指します。
症状としては、尿量が極端に減る(乏尿・無尿)ことが多いですが、注意が必要なのは、尿量は保たれていても老廃物が排出できない非乏尿性の急性腎不全もあることで、尿が出ているから安心、とは限りません。
腎臓への血流低下が原因の場合 (腎前性)
腎臓自体には問題がなくても、腎臓に流れ込む血液の量が極端に減ることで、腎臓が機能不全に陥ることがあり、これを腎前性急性腎不全と呼びます。
腎臓は血液を濾過して尿を作るため、材料である血液が不足すれば、機能が停止してしまうのです。
激しい下痢や嘔吐、高熱や熱中症による重度の脱水症、事故による大量出血、手術中の出血、あるいは心不全やショック状態で血圧が著しく低下した場合などがこれにあたります。
腎臓そのものの障害が原因の場合 (腎性)
腎臓そのものにダメージが加わり、機能が低下するタイプで、腎性急性腎不全と呼ばれ、原因は多岐にわたります。
急速進行性糸球体腎炎のような腎臓の炎症、重症な感染症(敗血症)によって腎臓が障害される場合、あるいは特定の薬剤が腎臓に悪影響を及ぼす(薬剤性腎障害)こともあります。
薬剤性腎障害は、医師の処方する薬だけでなく、市販の鎮痛薬(NSAIDs)の長期連用や過剰摂取、脱水状態での使用によっても起こされることがあるので、注意が必要です。
また、事故や長時間の圧迫(例えば倒れたまま動けない状態)などで筋肉が広範囲に壊れると(横紋筋融解症)、筋肉から出る有害物質(ミオグロビン)が腎臓に詰まり、急性腎不全を起こすこともあります。
腎障害を引き起こす可能性のある薬剤(例)
| 薬剤の種類 | 主な例 | 注意点 |
|---|---|---|
| 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs) | イブプロフェン、ロキソプロフェンなど | 過剰摂取や長期連用、脱水時の使用は特に注意が必要です。 |
| 抗生物質 | アミノグリコシド系、バンコマイシンなど | 腎機能に応じた投与量や期間の管理が重要です。 |
| 造影剤 | CT検査やカテーテル検査で使用 | 検査前後の十分な水分補給が予防に役立ちます。 |
尿の通り道がふさがる場合 (腎後性)
腎臓で尿は作られているものの、尿の通り道(尿管、膀胱、尿道)が何らかの原因でふさがってしまうことで、尿が排出できなくなる状態です。
これを腎後性急性腎不全と呼び、尿が出口を失うと、尿は逆流して腎臓に溜まり(水腎症)、腎臓が内側からパンパンに腫れ上がるように圧迫されて機能が低下します。
主な原因としては、両側の尿管に結石が詰まる、前立腺肥大症による尿道の圧迫、あるいは膀胱や尿管の腫瘍、骨盤内の手術による損傷などが挙げられます。
詰まった原因(結石の除去や、カテーテルによる尿の排出など)を取り除き、尿の流れを確保することが治療の第一歩です。
その他の原因
急性腎不全以外にも、緊急的に体内の有害物質を除去したり、体液のバランスを調整したりするために、一時的な透析が行われることがあります。
重度の薬物中毒や毒物
特定の薬剤を誤って、あるいは意図的に大量に摂取してしまった場合や、メタノール(工業用アルコール)のような有害な物質を体内に取り込んでしまった場合に、一時的な透析が選択されることがあります。
このような物質が血液中に高濃度で存在すると、腎臓や他の臓器に深刻なダメージを与えたり、生命に危険が及んだりします。透析治療によって、血液中から有害物質を強制的に濾過して除去し、体への影響を最小限に食い止めます。
透析による除去が検討される物質の例
- メタノール
- エチレングリコール(不凍液の主成分)
- サリチル酸(アスピリンなど)
- リチウム
- バルビツール酸系(睡眠薬など)
重度の電解質異常
腎機能の低下や、他の疾患、薬剤の影響などによって、血液中の電解質(ミネラル)のバランスが著しく崩れ、生命に危険が及ぶことがあります。
特に、血液中のカリウム濃度が極端に高くなる高カリウム血症は、心臓に作用して致死的な不整脈を起こす可能性があり、非常に危険です。また、血液が極端に酸性に傾く、重度の代謝性アシドーシスも、全身の臓器機能に悪影響を与えます。
薬物治療でこれらの異常を補正する努力をしても改善しない場合や、緊急を要する場合には、透析によって迅速かつ確実に血液の状態を正常に近づけます。
重度の体液過剰(心不全・肺水腫)
心不全が急激に悪化した場合や、急性腎不全によって尿が全く出なくなった場合、体に水分が溜まりすぎてしまい、この状態が進行すると、水分が肺に溢れ出し、水浸しの状態になる肺水腫という危険な状態に陥ります。
肺水腫になると、横になって眠れず、座っていないと息ができない起座呼吸という特徴的な呼吸困難が現れます。
酸素投与や利尿剤の投与だけでは対応できないほど重症な場合、透析治療によって強制的に体から水分を除去する(限外濾過)必要があり、これも、腎機能や心機能が回復するまでの一時的な対応です。
一時的な透析はいつ開始されるか
一時的な透析は、生命の危険が差し迫っている、あるいはこのままでは危険な状態に陥ると判断された場合に緊急的に開始し、タイミングを逃さないことが極めて重要です。
腎機能を示す血液検査の数値だけでなく、患者さんの全身状態や症状を総合的に見て、必要性を判断します。
透析導入の一般的な目安
急性腎不全が進行し、薬物治療(利尿剤など)や厳格な水分・食事制限だけでは、体液のバランスや電解質異常、老廃物の蓄積を管理できなくなったときに、透析の開始を検討します。
血液検査の数値(血清クレアチニン値、尿素窒素、血清カリウム値など)の急激な悪化は一つの目安になりますが、数値がいくつになったら開始する、という明確な基準があるわけではありません。
患者さんごとの体力や持病も考慮し、臨床的な判断が優先されます。
緊急性が高い症状(尿毒症の兆候)
血液検査の数値以上に重視されるのが患者さんに出ている症状で、尿毒症(体内に老廃物や毒素が溜まった状態)による深刻な症状が現れた場合は、多くの場合、数値にかかわらず緊急で透析を開始することが重要です。
特に注意が必要な緊急的症状
| 症状 | 関連する状態 | 危険性 |
|---|---|---|
| 呼吸困難(息苦しさ) | 肺水腫、重度の代謝性アシドーシス | 呼吸不全に至り、生命維持が困難になる。 |
| 意識障害・けいれん | 尿毒症性脳症 | 脳への深刻なダメージにつながる。 |
| 重度の高カリウム血症 | 電解質異常 | 心停止につながる致死性不整脈を引き起こす。 |
このほかにも、吐き気や嘔吐が止まらない消化器症状や、出血傾向(血が止まりにくい)、心臓を包む膜に炎症が起きる心膜炎なども、透析開始を考慮するサインです。
医師による総合的な判断
最終的には、医師が血液検査のデータ、尿量の変化、患者さんの年齢や体力、背景にある疾患(持病)などを総合的に評価します。
そして、透析を開始することによる利益が、治療に伴う身体的負担やリスク(血圧低下、感染、出血、カテーテル挿入に伴う合併症など)を上回ると判断された場合に、ご本人やご家族への十分な説明と同意のもとで、透析治療を開始します。
一時的な透析の治療方法
一時的な透析は、多くの場合、入院中の集中治療室(ICU)や、それに準じた高度な監視が可能な病棟で行います。全身状態が不安定な患者さんに対応するため、慢性腎不全の維持透析とは異なる方法が選択されることもあります。
血液透析(HD)と持続的腎代替療法(CRRT)
急性期の透析には、大きく分けて二つの方法があります。一つは、一般的な血液透析(HD)で、維持透析と同様に、ダイアライザー(人工腎臓)を介して血液を浄化し、通常は1回3〜4時間、週に数回行います。
急性腎不全であっても、血圧などの全身状態が比較的安定している場合には、この方法が選ばれます。 もう一つは、持続的腎代替療法(CRRT)で、24時間体制で、非常にゆっくりとした速度で持続的に血液を浄化し続ける方法です。
なぜCRRTが選ばれるのか
急性腎不全の患者さん、特に集中治療室で治療を受けている方は、敗血症や心不全などを合併し、血圧が非常に不安定(ショック状態)なことが少なくありません。
短時間で大量の血液浄化と水分除去を行う通常の血液透析(HD)は、体から急激に水分が引かれるため、血圧がさらに低下し、状態を悪化させてしまう危険があります。
CRRTは、体に与える負担(循環動態への影響)が非常に少なく、体に負担をかけない優しい透析で、ゆっくりと持続的に治療を行うため、血圧が不安定な重症の患者さんでも安全に体液や老廃物の管理ができます。
このため、重症の急性腎不全患者さんには、CRRTが第一に選択されることが多いです。
HDとCRRTの主な違い
| 治療法 | 治療時間 | 体への負担(循環動態) |
|---|---|---|
| 血液透析 (HD) | 1回3〜4時間、週数回 | 比較的大きい |
| 持続的腎代替療法 (CRRT) | 24時間持続 | 比較的小さい |
透析のための血管アクセス(カテーテル)
血液透析を行うためには、血液を体外に取り出し、浄化して体内に戻すための出入り口(血管アクセス)が必要です。
維持透析の場合、長期間使用するために、通常は腕の動脈と静脈をつなぎ合わせて太い血管(内シャント)を作る手術を事前に行いますが、一時的な透析は緊急を要するため、シャントを作成する時間的余裕がありません。
首(内頸静脈)、胸(鎖骨下静脈)、または脚の付け根(大腿静脈)といった、体の中心にある太い静脈に、透析用カテーテルを一時的に挿入し、血液の取り出しと返血を行います。
腹膜透析(PD)が選ばれる場合
血液透析が何らかの理由で困難な小児や、特定の状況下では、お腹にカテーテルを挿入し、自分の腹膜を利用して透析液の出し入れを行う腹膜透析(PD)が一時的に選択されることもあります。
ただし、急性期の治療としては、老廃物や水分の除去効率を細かく、かつ迅速に調整できる血液透析(HDやCRRT)が一般的です。
一時的な透析の治療期間と回復の見込み
一時的な透析を受けている患者さんやご家族にとって、最も気になるのは「いつまでこの治療が続くのか」「本当に腎機能は回復するのか」という点でしょう。
治療期間の目安
治療期間は、原因の重症度や回復の速さによるため、一概には言えません。数日で回復に向かう場合もあれば、数週間、場合によっては数ヶ月にわたって透析サポートが必要になることもあります。
薬剤性が原因であれば、原因となった薬剤の中止と一時的な透析によるサポートで、比較的早期に腎機能が回復することが期待できます。
一方、敗血症などの重症な感染症や多臓器不全に伴う急性腎不全の場合は、全身状態の改善と共に腎機能も回復してくるため、治療が長期化する傾向があります。
腎機能回復のサイン
腎機能が回復に向かっているかどうかの最大のサインは、尿量が増加することです。
急性腎不全では尿量が極端に減少(乏尿)あるいは停止(無尿)していることが多いため、再び尿が出始めることは、腎臓が老廃物を排出し、水分を調節する機能を徐々に取り戻し始めたことを示す重要な兆候です。
尿量が増加してくると、血液検査のデータ(クレアチニン値や尿素窒素など)も改善傾向を示してくるので、透析治療の頻度や時間、設定を徐々に減らしながら、腎臓の自力の回復具合を慎重に見極めていきます。
透析からの離脱(中止)の判断
尿量が十分に確保され、血液検査の値も安定し、透析治療を行わなくても体液のバランスや電解質、老廃物の値が安全な範囲に維持できるようになった時点で、透析からの離脱を判断します。
多くの場合、まずは透析治療を一時中断し(例えば透析の間隔を1日おきから2日おき、3日おきへと延ばし)、数日間、腎機能が自力で安定しているかを確認します。
この中断期間中に状態が悪化しなければ、問題がないと判断され、透析用カテーテルを抜き取り、透析治療は終了です。
透析離脱に向けた流れ(一例)
| 段階 | 状態 | 治療・対応 |
|---|---|---|
| 急性期 | 尿が出ない、老廃物が高い、呼吸が苦しい | 透析(HDまたはCRRT)で生命を維持する。 |
| 回復期 | 尿が出始める。検査値が改善傾向。 | 透析の頻度を減らし、腎臓の回復を待つ。 |
| 離脱期 | 尿量が安定。検査値も安定。 | 透析を一時中断し、自力での維持を確認する。 |
| 離脱後 | 透析なしで状態が安定。 | カテーテルを抜き、外来などで経過観察を行う。 |
回復せず維持透析へ移行する可能性
多くの場合、急性腎不全は回復が見込める病態ですが、すべての患者さんが回復するわけではありません。
急性腎不全の原因となったダメージが非常に重度であった場合や、元々(ご本人が自覚していなくても)糖尿病や高血圧による慢性腎臓病が基礎にあり腎臓の予備能力が低かった場合など、腎機能が十分に回復しないこともあります。
数ヶ月間、一時的な透析を続けても腎機能の回復が見込めず、透析治療を中止できないと判断された場合には、永続的な維持透析への移行が必要になる可能性もあります。
一時的な透析中の生活と注意点
一時的な透析は、基本的に入院(多くは集中治療室や高度治療室)で行われ、治療中は腎臓の回復を妨げないよう、また透析治療を安全に行うために、日常生活においていくつかの制限や管理が必要です。
入院中の過ごし方
急性期は血圧が不安定であったり、重症な状態であったりするため、ベッド上での安静が中心です。特にCRRT(持続的腎代替療法)を行っている間は、24時間機械に接続されているため、移動が大きく制限されます。
状態が安定し、通常の血液透析(HD)に移行したり、全身状態が改善したりしてくれば、医師の許可のもと、ベッドから起き上がる、車椅子に移る、リハビリを行うといった活動が徐々に可能になります。
寝たきりの時間が長いと筋力が著しく低下する(廃用症候群)ため、早期からのリハビリテーションも回復のために重要です。
食事制限(水分・塩分・カリウムなど)
尿が出ていない間は、腎臓の最も重要な機能である水分と電解質の調節が失われているため、飲んだ水分や食事に含まれる塩分、カリウム、リンなどが体内に溜まりやすく、厳格な制限が必要になります。
主な食事制限の目的
| 制限項目 | 目的 |
|---|---|
| 水分 | 体液過剰による肺水腫や心不全を予防するため。 |
| 塩分 | 水分の蓄積や高血圧を予防するため。(塩分は水を呼び込むため) |
| カリウム | 高カリウム血症による致死性不整脈を予防するため。 |
制限は、患者さんの状態や透析の状況に合わせて、医師や管理栄養士が細かく調整します。
水分の制限は、飲みたいのに飲めないという点で、患者さんにとってつらいものですが、腎機能が回復し尿量が増えてくれば、制限は徐々に緩和されていきますので、一時的な辛抱として医療スタッフと共に乗り越えていくことが大切です。
カテーテル管理の重要性
一時的な透析で使用する透析用カテーテルは、体外と体内の太い血管を直接つないでいるため、カテーテルの挿入部から細菌が侵入し、感染(カテーテル関連血流感染症)を起こすリスクが常にあります。
感染は敗血症など、全身状態のさらなる悪化につながる重大な合併症です。
カテーテル管理で注意すること
- 挿入部の消毒と清潔保持(医療スタッフが厳重に行います)
- カテーテルが抜けたり、折れ曲がったりしないよう確実に固定
- 発熱や挿入部の痛み、腫れ、赤みなどの兆候に注意
患者さんご自身やご家族も、カテーテル周辺を不潔にしないことや、カテーテルに触れないように注意すること、また異常を感じた場合はどんな小さなことでもすぐに医療スタッフに伝えることが重要です。
一時的な透析に関するよくある質問
一時的な透析について、多くの方が抱く疑問や不安にお答えします。
- 一時的な透析は痛いですか?
-
透析治療そのものに痛みはありません。 治療を開始する際に、首や脚の付け根などに透析用のカテーテルを挿入する処置が必要です。
この処置は皮膚に局所麻酔の注射をしてから行いますので、痛みは最小限に抑えられ、治療が始まってからは、血液が体外を循環している感覚や、透析による痛みを感じることはほとんどありません。
- 透析中はずっと寝たきりですか?
-
状態によりますが、必ずしもそうではありません。 血圧が不安定な重症期や、CRRT(持続的腎代替療法)という24時間持続する透析を行っている間は、安全のためにベッド上での安静が必要です。
しかし、全身状態が安定し、通常の血液透析(1回3〜4時間)に移行すれば、透析中にベッドの頭を上げて本を読んだり、食事をとったり、短時間であればベッドサイドでリハビリを行ったりすることもできます。
- 腎機能が回復した後、再発の可能性はありますか?
-
急性腎不全の原因によりますが、注意は必要です。 薬剤性や脱水が原因であった場合、その原因薬剤を避けたり、脱水に注意したりすることで、再発のリスクは低くなります。
ただし、急性腎不全を一度経験した腎臓は、全くダメージがなかった腎臓に比べると、将来的に慢性腎臓病に移行しやすいことが知られています。
退院後も、腎臓の機能に負担をかけない生活(塩分控えめの食事、血圧管理など)を心がけ、定期的な検査(尿検査や血液検査)を受けることが大切です。
- 一時的な透析で回復しない場合はどうなりますか?
-
急性腎不全のダメージが非常に重度であった場合や、腎機能が回復する力が残っていなかった場合、数ヶ月が経過しても透析治療から離脱できないことがあります。
その場合は、腎機能の回復は見込めないと判断し、永続的な維持透析に移行することになります。
以上
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