透析患者さんの骨粗しょう症|骨代謝異常の原因と治療・カルシウム管理

透析患者さんの骨粗しょう症|骨代謝異常の原因と治療・カルシウム管理

透析治療を受けている方にとって、骨の健康を維持することは非常に重要な課題です。

腎臓の機能が低下すると、体内のカルシウムやリンのバランスが崩れやすくなり、骨代謝異常や骨粗しょう症を起こすことがあり、骨折のリスクを高めるだけでなく、血管の石灰化など全身にも影響を及ぼす可能性があります。

この記事では、透析と骨粗しょう症の関係、骨代謝異常の原因、治療法やカルシウム管理について、詳しく解説します。

目次

透析と骨粗しょう症 なぜ関係が深いのか

透析治療と骨の健康は、一見すると無関係のように思えるかもしれませんが、透析を必要とする状態、慢性腎臓病(CKD)が進行すると、骨は非常に大きな影響を受けます。

腎臓が担う多くの役割の中に、骨の健康を維持するための重要な働きが含まれているためです。

腎臓の役割と骨の健康

健康な腎臓は、単に尿を作るだけの臓器ではありません。体内のミネラルバランスを調整する重要な役割を担っていて、骨の健康に関しては、カルシウムとリンの濃度を血液中で一定に保つ働きが中心です。

腎臓は、ビタミンDを活性型ビタミンDに変える働きも持っていて、活性型ビタミンDは、腸からのカルシウム吸収を助け、骨を丈夫に保つために必要なホルモンです。

腎機能が低下すると、このような調整がうまく行かなくなり、骨代謝に異常が生じ始めます。

腎臓が担う骨関連の主な働き

働き内容腎機能低下時の影響
リンの排泄食事から摂取した余分なリンを尿中に捨てるリンが体内に蓄積し、高リン血症となる
カルシウムの再吸収尿中へのカルシウム排泄を調整する血液中のカルシウム濃度が低下しやすくなる
ビタミンDの活性化ビタミンDを活性型に変え、腸管からのカルシウム吸収を促す活性型ビタミンDが不足し、カルシウム吸収が低下する

透析が骨代謝に与える影響

透析治療が始まると、腎臓が果たしていたリンの排泄機能などを人工的に補うことになりますが、透析で除去できるリンの量には限界があり、食事管理を併用しても、血液中のリン濃度が高い状態(高リン血症)が続きやすいです。

高リン血症は、血液中のカルシウムと結合し、カルシウム濃度を低下させ、体が低カルシウム状態を感知すると、副甲状腺(上皮小体)という首にある小さな臓器から、副甲状腺ホルモン(PTH)が過剰に分泌されます。

PTHが骨からカルシウムを溶かし出して、血液中のカルシウム濃度を補おうとするため、骨がもろくなる一因となります。

CKD-MBD(慢性腎臓病に伴う骨ミネラル代謝異常)とは

慢性腎臓病(CKD)の進行に伴って生じる骨とミネラルの代謝異常を、総称してCKD-MBD(Chronic Kidney Disease-Mineral and Bone Disorder)と呼び、単なる骨粗しょう症とは異なり、非常に複雑な病態を示します。

CKD-MBDには、骨の代謝回転(骨が新しく作られ、古い骨が壊されるサイクル)が異常になる骨の病変だけでなく、血液中のミネラル(カルシウム、リン)の異常、血管や心臓弁などにカルシウムが沈着する異所性石灰化も含まれます。

透析患者さんの骨の管理は、CKD-MBDの管理そのものです。

CKD-MBDの主な構成要素

構成要素具体的な状態
ミネラル代謝異常高リン血症、低または高カルシウム血症、PTHの異常
骨代謝異常(腎性骨異栄養症)高回転骨、低回転骨、骨軟化症など
異所性石灰化血管、心臓弁、関節周囲などへのカルシウム沈着

透析患者さんに見られる骨代謝異常の種類

CKD-MBDにおける骨の病変は、腎性骨異栄養症と呼ばれ、いくつかのタイプに分類します。

骨の代謝回転(骨形成と骨吸収のバランス)がどうなっているかによって分けられ、それぞれ治療方針が異なり、一般的に、骨代謝回転が速すぎる状態と、遅すぎる状態に大別されます。

高回転骨(線維性骨炎)

高回転骨は、骨の代謝回転が過剰に亢進している状態で、主に、副甲状腺ホルモン(PTH)の過剰な分泌(二次性副甲状腺機能亢進症)が原因です。

腎機能低下による高リン血症や低カルシウム血症、活性型ビタミンDの不足が続くと、副甲状腺が刺激され続け、PTHを大量に放出し始めます。

副甲状腺ホルモン(PTH)の過剰分泌

PTHは骨を壊す細胞(破骨細胞)を活性化させ、骨吸収を強力に促進し、骨からカルシウムとリンが血液中に放出されます。

骨形成も促進されますが、骨吸収のスピードが上回るため、骨はもろくなり、線維組織に置き換わっていき、この状態が線維性骨炎です。骨の痛みや骨折のリスクが非常に高くなります。

低回転骨(無形成骨)

低回転骨は、高回転骨とは対照的に、骨の代謝回転が極端に低下し、骨が新しく作られることも、壊されることも少なくなり、骨が新陳代謝しなくなった状態です。

PTHの分泌低下とアルミニウム蓄積

原因としては、PTHの分泌が過度に抑制されている場合が挙げられまます。カルシウム製剤やビタミンD製剤の投与が過剰になると、血液中のカルシウム濃度が上昇し、PTHの分泌が抑えられすぎることがあります。

また、現在は少なくなりましたが、過去に使用されていたアルミニウムを含むリン吸着薬や透析液中のアルミニウムが骨に蓄積し、骨の代謝を停止させてしまうことも原因でした。低回転骨も、骨の強度が低下し骨折しやすくなります。

骨代謝異常の主な分類

分類骨代謝回転主な原因
高回転骨(線維性骨炎)亢進二次性副甲状腺機能亢進症(高PTH)
低回転骨(無形成骨)低下PTHの過度な抑制、アルミニウム蓄積
骨軟化症低下(石灰化障害)重度のビタミンD欠乏、アルミニウム蓄積

混合性骨異栄養症

混合性骨異栄養症は、高回転骨と低回転骨の特徴が混在している状態や、骨の石灰化が正常に行われない骨軟化症の要素が加わった状態などで、診断や治療がより複雑になることがあります。

骨軟化症

骨軟化症は、骨の土台(骨基質)は作られるものの、カルシウムやリンが沈着する石灰化の過程が障害される病気です。

新しくできた骨は柔らかく変形しやすくなり、透析患者さんでは、重度の活性型ビタミンD不足や、アルミニウム蓄積が原因となることがあります。また、強い骨の痛みや、筋力の低下を伴うこともあります。

骨粗しょう症・骨代謝異常が起こす症状

透析患者さんの骨代謝異常や骨粗しょう症は、初期段階では自覚症状がないことがほとんどですが、進行すると日常生活に支障をきたす様々な症状が現れます。

また、骨だけの問題にとどまらず、全身の健康状態にも深刻な影響を及ぼす可能性があり、特に注意が必要なのは、骨折と血管の石灰化です。

骨の痛み(腰痛・関節痛)

骨代謝異常が進行すると、骨がもろくなるだけでなく、骨そのものに痛みを感じることがあり、高回転骨(線維性骨炎)では、骨吸収が亢進することで痛みが出やすいと言われます。

また、骨軟化症でも強い骨痛を伴うことがあり、腰や背中、股関節、膝などの関節周囲に鈍い痛みが続く場合は注意が必要です。

骨折しやすくなる(脆弱性骨折)

透析患者さんは、一般の人に比べて骨折のリスクが数倍高いことが知られています。骨代謝異常によって骨の強度が低下しているため、軽く転んだだけ、あるいは日常生活の動作の中でも骨折してしまうこと(脆弱性骨折)があります。

骨折しやすい部位は、背骨(椎体)、太ももの付け根(大腿骨近位部)、手首(橈骨遠位端)などで、大腿骨の骨折は、寝たきりにつながるリスクが非常に高いため、予防が極めて重要です。

骨折のリスクが高い主な部位

  • 椎体(背骨)
  • 大腿骨近位部(太ももの付け根)
  • 橈骨遠位端(手首)
  • 肋骨

異所性石灰化(血管や軟部組織の石灰化)

CKD-MBDで最も警戒すべき合併症の一つが異所性石灰化で、骨以外にあってはならない場所である、血管の壁や心臓の弁、関節の周囲、皮膚などの軟部組織にカルシウムとリンが結合した結晶が沈着する現象です。

高リン血症や高カルシウム血症が続くと、血液中でリンとカルシウムが飽和状態になり、石灰化が起こりやすくなります。

血管が石灰化すると、動脈硬化が急速に進行し、血管が硬く、もろくなり、心筋梗塞や脳梗塞、閉塞性動脈硬化症(足の血流障害)など、命に関わる心血管疾患のリスクが著しく高まります。

異所性石灰化がもたらすリスク

石灰化の場所引き起こされる主な疾患
冠動脈(心臓の血管)心筋梗塞、狭心症
脳動脈脳梗塞
大動脈・末梢動脈大動脈瘤、閉塞性動脈硬化症
心臓弁弁膜症

かゆみ(高リン血症との関連)

透析患者さんを悩ませる症状の一つに、全身の強いかゆみがあり、原因は一つではありませんが、高リン血症が関与していると考えられています。

血液中のリン濃度が高いと、皮膚にリンやカルシウムが沈着し、かゆみを起こす一因です。骨代謝異常そのものの症状ではありませんが、背景に共通したミネラル代謝の異常があります。

診断のために行われる検査

透析患者さんの骨代謝異常や骨粗しょう症は、症状が出にくい一方で、進行すると深刻な合併症につながるため、症状の有無にかかわらず、定期的な検査によって骨の状態を評価し、異常を早期に発見することが大切です。

検査には、血液検査、画像検査などがあり、これらを組み合わせて総合的に診断します。

血液検査(リン・カルシウム・PTH)

血液検査は、骨ミネラル代謝の状態を把握するための基本となる検査で、特に重要なのは、リン(P)、カルシウム(Ca)、そして副甲状腺ホルモン(intact-PTH)の3つです。

リンとカルシウムの濃度が高すぎないか、低すぎないか、そしてPTHの値が骨代謝の状態(高回転か低回転か)を示唆します。

骨代謝に関連する主な血液検査項目

  • リン (P)
  • カルシウム (Ca) (補正カルシウム値)
  • Intact-PTH (副甲状腺ホルモン)
  • ALP (アルカリホスファターゼ)
  • BAP (骨型アルカリホスファターゼ)

ALPやBAPは、骨形成(骨が作られる活動)を反映する指標(骨形成マーカー)であり、骨代謝回転の状態を推測するのに役立ちます。

画像検査(レントゲン・骨密度測定)

画像検査は、骨の形態的な変化や骨の密度を直接評価するために行います。

単純レントゲン(X線)検査では、骨折の有無だけでなく、骨の変形や、高回転骨に特徴的な骨吸収の所見(手の指の骨の辺縁がギザギザに見えるなど)、あるいは血管の石灰化の有無を確認できます。

骨密度(BMD)測定は、骨粗しょう症の診断に用いられる検査です。透析患者さんの場合、一般的な骨粗しょう症とは異なり、骨密度が保たれていても骨折しやすい(骨質が悪い)場合があるため、解釈には注意が必要です。

骨密度の低下は骨折リスクの一つの指標であり、定期的な測定が推奨され、DXA(デキサ)法が標準になります。

骨密度測定(DXA法)の特徴

項目説明
測定部位主に腰椎(背骨)と大腿骨近位部(股関節)
特徴2種類の異なるエネルギーのX線を用いて骨量を測定する。精度が高い。
注意点血管の石灰化や骨の変形があると、値が高く出ることがある。

骨生検の必要性

血液検査や画像検査だけでは、骨代謝回転の状態(高回転か低回転か)や石灰化の程度を正確に診断できない場合があります。治療方針に迷う場合や、難治性の場合、アルミニウム骨症が疑われる場合などには、骨生検が考慮されます。

骨生検は、局所麻酔下に腸骨(腰の骨)から小さな骨の組織を採取し、顕微鏡で詳細に調べる検査です。骨の構造、代謝回転、石灰化の状態、アルミニウムの沈着などを直接評価できる唯一の検査であり、確定診断に役立ちます。

透析患者さんの骨代謝異常 治療法

透析患者さんの骨代謝異常(CKD-MBD)の治療は、単に骨粗しょう症の薬を使うだけでは不十分で、背景にあるリンやカルシウムの代謝異常、PTHの異常を是正することが治療の基本です。

治療の柱は、食事療法と薬物療法ですが、それでもPTHのコントロールが困難な場合には、外科的治療も選択肢となります。

食事療法(リンとカルシウムの管理)

治療の基本であり最も重要なのが食事療法で、リンの管理が中心です。透析では除去しきれないリンを、まず食事から摂りすぎないようにコントロールします。

リンはタンパク質に多く含まれるため、必要なタンパク質を確保しつつ、リンの摂取を抑える工夫が求められます。

また、加工食品やインスタント食品には、吸収されやすい無機リンが添加物として多く含まれているため、なるべく避けることが重要です。

リンを多く含む主な食品群

  • 乳製品(チーズ、ヨーグルト)
  • 加工食品(ハム、ソーセージ、練り物)
  • インスタント食品
  • 魚卵、レバー
  • 種実類(ナッツ、豆類)

カルシウムは、摂りすぎに注意します。リン吸着薬としてカルシウム製剤を使用している場合は、食事からのカルシウム摂取を控えるよう指導されることもあります。

薬物療法

食事療法だけではリンやPTHのコントロールが不十分な場合、薬物療法を行い、CKD-MBDの病態に合わせて、複数の薬剤を組み合わせて使用します。

リン吸着薬の種類

食事に含まれるリンが腸管から吸収されるのを防ぐために、食直前にリン吸着薬を服用します。リン吸着薬にはいくつかの種類があり、血液中のカルシウム濃度やPTHの値、合併症などに応じて使い分けます。

リン吸着薬の種類主成分特徴
カルシウム含有製剤炭酸カルシウムリンを吸着するが、カルシウムも吸収される。高カルシウム血症に注意。
非カルシウム含有製剤セベラマー塩酸塩カルシウムを含まない。脂溶性ビタミンなどの吸収を妨げる可能性。
非カルシウム含有製剤炭酸ランタンカルシウムを含まない。強力な吸着作用。
鉄含有製剤スクロオキシ水酸化鉄などカルシウムを含まない。鉄が吸収されるため貧血改善効果も期待できる。

活性型ビタミンD3製剤

腎機能低下で不足する活性型ビタミンDを補充し、PTHの過剰な分泌を抑えるために使用し、また、腸管からのカルシウム吸収を促進する作用もあります。

ただし、PTHを抑える効果を期待して投与量を増やすと、高カルシウム血症や高リン血症を引き起こすリスクがあるため、慎重な調整が必要です。注射薬と内服薬があります。

カルシウム受容体作動薬

カルシウム受容体作動薬は、副甲状腺にあるカルシウム受容体に作用し、血液中のカルシウム濃度が高いと副甲状腺に錯覚させることで、PTHの分泌を強力に抑制します。

活性型ビタミンD製剤と異なり、カルシウムやリンの値を上昇させにくいのが特徴で、二次性副甲状腺機能亢進症の治療に重要な役割を果たします。

副甲状腺(上皮小体)摘出術

食事療法や薬物療法を最大限行っても、PTHの値が極めて高く、コントロールできない重度の二次性副甲状腺機能亢進症の場合、外科的に副甲状腺(通常4つあります)の全部または一部を切除する手術が検討されます。

骨粗しょう症治療薬の使用

透析患者さんでは、CKD-MBDの管理が優先されますが、骨密度が著しく低下している場合や骨折のリスクが非常に高い場合には、骨粗しょう症治療薬の使用を検討します。

ただし、透析患者さんに安全に使用できる薬剤は限られていて、低回転骨のリスクなど、骨代謝の状態を評価した上で、慎重に投与が判断されます。

日常生活で大切なカルシウム管理

透析患者さんにとって、カルシウム管理は骨の健康だけでなく、血管の石灰化を防ぐ上でも極めて重要です。血液中のカルシウム濃度は、高すぎても低すぎても問題となります。

高カルシウム血症は血管石灰化の強い危険因子となるため、厳格なコントロールが必要です。

食事からのカルシウム摂取の注意点

健康な人ではカルシウムの摂取が推奨されますが、透析患者さんの場合は事情が異なります。

活性型ビタミンD製剤やカルシウム含有リン吸着薬を使用している場合、食事からのカルシウム摂取が加わると、容易に高カルシウム血症を起こす可能性があります。

乳製品はリンもカルシウムも多いため、摂取には注意が必要です。小魚や海藻などもカルシウムを多く含みます。日々の食事内容について、管理栄養士と相談し、適切なカルシウム摂取量を把握することが大切です。

リンの摂取制限の重要性

カルシウム管理を良好に保つためには、リンの管理が前提となります。高リン血症が続くと、PTHの分泌が刺激されるだけでなく、骨からカルシウムが溶け出しやすくなります。

また、血液中でカルシウムとリンが結合し(Ca×P積が上昇し)、血管石灰化のリスクが著しく高まるので、リン吸着薬を確実に服用するとともに、食事からのリン摂取をコントロールすることが、カルシウム管理にもつながるのです。

カルシウムとリンの管理ポイント

  • 高リン血症を是正する(食事とリン吸着薬)
  • 高カルシウム血症を避ける(薬剤調整と食事)
  • Ca×P積(カルシウムとリンの積)を管理目標値内に保つ

透析液のカルシウム濃度

透析治療では、透析液という液体と血液との間で物質のやり取りを行いますが、透析液に含まれるカルシウム濃度も、体内のカルシウムバランスに影響を与えます。

血液中のカルシウム濃度が低い方には高めの濃度を、高い方には低めの濃度の透析液を使用するなど、個々の患者さんの状態に合わせて調整が行われます。

サプリメント使用のリスク

骨を丈夫にする目的で、市販のカルシウムサプリメントやビタミンDサプリメントを自己判断で使用することは、透析患者さんにとっては危険を伴います。

サプリメントは、高カルシウム血症や高リン血症を悪化させる原因となり得るので、健康食品やサプリメントを使用したい場合は、必ず主治医や薬剤師、管理栄養士に相談してください。

カルシウム管理における薬剤の役割

薬剤カルシウム値への主な影響
カルシウム含有リン吸着薬上昇させる
活性型ビタミンD3製剤上昇させる
カルシウム受容体作動薬低下させる

骨の健康を保つための生活習慣

透析患者さんの骨の健康を守るためには、食事療法や薬物療法に加え、日々の生活習慣も大切です。治療は医療者に任せるだけでなく、ご自身でできることに積極的に取り組む姿勢が、骨折や心血管疾患の予防につながります。

適度な運動のすすめ

骨は、体重や運動による負荷がかかることで強さを維持する性質があります。透析患者さんであっても、体調や合併症に合わせて適度な運動を行うことは、骨密度の維持や筋力の向上、転倒予防に役立ちます。

ただし、無理な運動は骨折や体調不良の原因にもなるので、主治医に相談の上、許可された範囲で行うことが絶対条件です。

ウォーキングや、椅子に座ったままでできる軽い筋力トレーニングなど、日常生活に取り入れやすいものから始めることをお勧めします。

日常生活で推奨される運動例(医師の許可のもと)

運動の種類内容例
有酸素運動ウォーキング(体調の良い日に30分程度)
筋力トレーニング椅子に座った状態での膝の曲げ伸ばし、かかとの上げ下げ
ストレッチ透析前後や自宅での軽いストレッチ

禁煙と節酒

喫煙は、骨粗しょう症の危険因子の一つで、骨密度を低下させ、骨折のリスクを高めることが知られています。また、血管を収縮させ、動脈硬化を促進するため、CKD-MBDによる血管石灰化のリスクをさらに高めることになります。

骨と血管の健康のために、禁煙は強く推奨されます。

過度のアルコール摂取も、骨粗しょう症のリスクを高め、栄養状態の悪化や転倒の原因となり、飲酒習慣がある場合は、適量にとどめるか、主治医の指示に従ってください。

生活習慣の見直しポイント

  • 禁煙を実行する
  • アルコール摂取を控える
  • バランスの取れた食事を心がける(リン・カルシウム制限を守る)
  • 転倒しない環境を整える(室内の段差解消、滑り止めマットの使用)

定期的な検査と相談

透析患者さんの骨の状態は、時間とともに変化するので、自覚症状がなくても、定期的に血液検査や画像検査を受け、ご自身の骨の状態を把握しておくことが重要です。

検査結果について主治医や医療スタッフから説明を受け、現在の治療方針を理解しましょう。

骨の痛みや関節の違和感、日常生活での不安など、小さなことでも早めに相談することが、重篤な合併症の早期発見・早期治療につながります。

透析と骨の健康に関するよくある質問

透析をしていると必ず骨粗しょう症になりますか?

必ずなるわけではありませんが、透析患者さんはCKD-MBD(慢性腎臓病に伴う骨ミネラル代謝異常)により、骨粗しょう症や骨代謝異常を発症するリスクが非常に高い状態にあります。

腎機能の低下がリン、カルシウム、ビタミンD、副甲状腺ホルモンのバランスを崩すためです。ただし、食事管理、薬物療法、運動を継続することで、骨の健康を維持し、骨折を予防することはできます。

食事で気をつけることは何ですか?

最も重要なのはリンの摂取制限で、高リン血症は骨代謝異常や血管石灰化の大きな原因となります。加工食品や乳製品、インスタント食品など、リンを多く含む食品の摂取を控える必要があります。

また、カルシウムの摂りすぎにも注意が必要です。薬剤でカルシウムを補っている場合が多いため、食事からの過剰な摂取は高カルシウム血症を招きます。

骨の痛みは改善しますか?

治療により改善する可能性があります。骨の痛みの原因が、副甲状腺ホルモン(PTH)が高すぎる高回転骨や、骨軟化症などであれば、治療することで痛みが和らぐことが期待できます。

リンやカルシウムの管理、活性型ビタミンD製剤やカルシウム受容体作動薬などの薬物療法が中心です。痛みが続く場合は、我慢せずに主治医に相談してください。

運動はしても良いのでしょうか?

医師の許可があれば適度な運動は推奨され、運動は骨に負荷をかけることで骨密度を維持し、筋力を高めて転倒を予防する効果が期待できます。ただし、心臓や血管の合併症、骨の状態によっては運動が制限される場合もあります。

必ず主治医に相談し、ご自身の体調に合った安全な運動(ウォーキングや軽いストレッチなど)から始めてください。

以上

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