血液透析治療を始めると、多くの方が食事や水分の管理という新しい課題に直面します。なぜこれまでの食生活を変える必要があるのか、何をどのくらい制限すれば良いのか、不安や戸惑いを感じる方も少なくないでしょう。
この記事では、血液透析と食事・水分管理の基本的な関係から、守るべきポイント、毎日の生活に無理なく取り入れられる工夫まで、分かりやすく解説します。
なぜ血液透析で食事と水分の管理が重要なのか
血液透析治療が始まると、食事や水分の管理がとても大事になります。これまで腎臓が担っていた体のバランスを整える働きを、透析と自己管理で補っていく必要があるからです。
腎臓の働きと透析の役割
健康な腎臓は、血液をろ過して体内の老廃物や余分な水分、塩分を尿として体の外へ排出する働きをしています。
それだけでなく、血圧の調整、血液を作るホルモンの分泌、骨を丈夫に保つビタミンの活性化など、生命維持に欠かせない多くの役割を担っていますが、腎不全になると、これらの機能が十分に働かなくなります。
血液透析は、このうちの老廃物や余分な水分を取り除く働きを代行する治療法です。週に2回から3回、数時間かけて血液をきれいにするものの、健康な腎臓のように24時間365日働き続けるわけではありません。
そのため、透析と透析の間に体内に溜まる老廃物や水分をコントロールすることが、ご自身の体への負担を減らす上でとても重要になります。
食事制限が体へ与える影響
食事から摂る栄養素は私たちの体を作る上で欠かせませんが、腎機能が低下すると、特定の栄養素が体内に溜まりやすくなり、さまざまな不調を起こす原因となります。
たんぱく質は体を作る大切な栄養素ですが、分解されると老廃物(尿素窒素など)になり、溜まりすぎると、吐き気や食欲不振、倦怠感といった尿毒症の症状が現れることがあるので注意が必要です。
また、野菜や果物に多く含まれるカリウムは、通常は腎臓から排出されますが、体内に溜まりすぎると、不整脈や心停止といった命に関わる状態を起こす危険性があります。リンも同様で、骨の健康に影響を与えます。
水分制限が心臓や血管に与える影響
水分制限は、透析治療を受ける上で最も厳しい管理の一つです。腎臓の機能が低下すると、尿として水分を排出する能力が著しく落ちるため、飲んだ水分はほとんど体内に溜まってしまいます。
次の透析までの間に水分が増えすぎると、血液の量が増加し、血圧が上昇します。
この状態が続くと、心臓は常に多くの血液を送り出さなければならなくなり、大きな負担がかかり、心不全や心肥大といった深刻な心臓の病気につながる可能性があります。
また、余分な水分は血管の外にも染み出し、むくみ(浮腫)の原因となります。特に肺に水が溜まる肺水腫は、呼吸困難を引き起こす危険な状態で、水分管理は、心臓や血管を守り、透析を安全に行うためにとても大切です。
血液透析における基本的な食事制限
食事制限と聞くと、食べる楽しみがなくなってしまうように感じるかもしれませんが、ポイントを押さえれば、食事を楽しみながら健康を維持することは十分に可能です。
エネルギー(カロリー)は十分に確保する
食事制限の中でも、エネルギー(カロリー)はむしろ十分に摂ることが求められます。たんぱく質などを制限すると、食事全体の量が減り、エネルギー不足に陥りがちです。
エネルギーが不足すると、体は筋肉などのたんぱく質を分解してエネルギー源として使おうとし、体力が低下するだけでなく、筋肉が分解されることで老廃物が増え、かえって体に負担をかけてしまいます。
エネルギーを確保するためには、ごはんやパン、麺類などの炭水化物を主食としてしっかり食べることが基本で、また、エネルギー補給のために、砂糖や油を上手に使うこともポイントです。
エネルギー補給の工夫
- 炒め物や揚げ物など、油を使った調理法を取り入れる
- 砂糖やジャム、はちみつなどを活用する
- 春雨や片栗粉など、たんぱく質が少なくエネルギーが高い食品を利用する
たんぱく質の摂取量を調整する
たんぱく質は、筋肉や血液など体を作るために必要な栄養素ですが、摂りすぎると老廃物が体内に溜まり、尿毒症の原因になるため、医師の指示に基づいた量に調整することが重要です。
一般的に、透析患者さんのたんぱく質摂取量の目安は、標準体重1kgあたり1.0gから1.2g程度とされていますが、これはあくまで目安であり、個々の体の状態によって適切な量は異なります。
肉、魚、卵、大豆製品などの良質なたんぱく質を、毎食バランス良く摂ることが大切です。
主な食品のたんぱく質量(目安)
食品名 | 1食あたりの目安量 | たんぱく質量 |
---|---|---|
鶏むね肉 | 80g (約1/3枚) | 約18g |
鮭(切り身) | 80g (1切れ) | 約18g |
卵 | 50g (Mサイズ1個) | 約6g |
木綿豆腐 | 100g (約1/3丁) | 約7g |
塩分を控える重要性
塩分(ナトリウム)の摂りすぎは、喉の渇きを招き、水分の過剰摂取につながり、水分が増えれば体重が増加し、血圧の上昇や心臓への負担、むくみの原因となります。
塩分を控えることは、水分管理を楽にするための最も効果的な方法の一つです。1日の塩分摂取量の目標は6g未満とされています。普段の食事では、知らず知らずのうちに多くの塩分を摂っていることがあります。
特に、加工食品や外食には塩分が多く含まれているため注意が必要です。調味料の使い方を工夫したり、食品の選び方を見直したりすることで、減塩を心がけましょう。
カリウム制限のポイント
カリウムは、体内の水分バランスや筋肉の働きを調整する重要なミネラルですが、腎機能が低下すると体外に排出されにくくなり、血中のカリウム濃度が高くなる高カリウム血症を起こすことがあります。
高カリウム血症は、手足のしびれや脱力感、不整脈などを起こし、重篤な場合は心臓が止まってしまうこともある危険な状態です。
カリウムは、生の野菜や果物、いも類、豆類、海藻類などに多く含まれていて、摂取量に注意するとともに、調理法を工夫してカリウムを減らすことが大切です。
カリウムを上手にコントロールする調理の工夫
カリウムは水に溶けやすい性質を持っているので、調理の工夫次第で食品に含まれるカリウムの量を減らすことが可能です。
食材選びから下ごしらえ、調理方法まで、日々の食事作りに取り入れられる具体的なテクニックを知って、上手にカリウムをコントロールしましょう。
食材選びの注意点
カリウム制限の第一歩は、カリウムを多く含む食品を知り、摂取量に気をつけることです。
特に、生で食べることの多い果物や野菜は注意が必要になり、バナナやメロン、アボカドはカリウムが非常に多い果物で、野菜では、ほうれん草やかぼちゃ、いも類に多く含まれます。
一方で、りんごやぶどう、きゃべつや玉ねぎなどは比較的カリウムが少ない食品です。食品交換表などを参考に、カリウムの少ない食品を選ぶように心がけましょう。
ドライフルーツや野菜ジュース、青汁などは、成分が凝縮されているため、カリウムが非常に高くなるので避けてください。
カリウムの多い食品・少ない食品(100gあたり)
分類 | カリウムが多い食品 | カリウムが少ない食品 |
---|---|---|
野菜 | ほうれん草、かぼちゃ、枝豆 | きゅうり、玉ねぎ、もやし |
果物 | バナナ、メロン、キウイ | りんご、ぶどう、缶詰の桃 |
いも類 | さつまいも、じゃがいも、里芋 | (茹でこぼしで対応) |
下ごしらえでカリウムを減らす
カリウムは水に溶けやすい性質があるため、調理前の下ごしらえが非常に重要です。野菜やいも類は、細かく切ったり、皮を厚めにむいたりすることで、水に触れる表面積が広がり、カリウムが溶け出しやすくなります。
切った後の食材は、たっぷりの水にさらすか、茹でこぼすことで、含有量を30%から50%程度減らすことができます。
カリウムを減らす下ごしらえ
- 食材を細かく切る
- 水に30分以上さらす(途中で水を替えるとより効果的)
- たっぷりの湯で茹でこぼす
ひと手間を加えるだけで、食べられる野菜の種類や量を増やすことができます。ただし、茹で汁や水にさらした水にはカリウムが溶け出しているので、調理には使わないようにしましょう。
調理方法によるカリウム量の変化
調理方法によっても、食品中のカリウム量は変わります。「茹でる」「煮る」といった調理法は、カリウムが煮汁に溶け出すため、摂取量を減らすのに効果的です。
一方、「焼く」「炒める」「揚げる」といった調理法では、カリウムはあまり減らず、また、電子レンジでの加熱も、水分を使わないためカリウムを減らす効果は期待できません。
カリウムを多く含む食材を調理する際は、まず茹でこぼしてから、炒めたり焼いたりすると良いでしょう。
調理法別カリウム減少率の目安
調理法 | カリウム減少率 | ポイント |
---|---|---|
茹でる | 約30%〜50% | 茹で汁は捨てる。 |
炒める | 約10% | 油でエネルギー補給ができる。 |
揚げる | 約10%〜20% | 衣が水分や油を吸うので注意。 |
外食や加工食品との付き合い方
外食や市販の惣菜、加工食品は、味が濃く、塩分やリン、カリウムが多く含まれている傾向があります。可能な限り手作りを基本とすることが望ましいですが、外食をする際は定食よりも一品料理を選び、汁物や漬物は残すように心がけましょう。
メニューを選ぶ際は、野菜の多いものよりも、たんぱく質源がはっきりしているもの(焼き魚定食など)を選び、生野菜のサラダなどは避けるのが無難です。加工食品を購入する際は、栄養成分表示を確認する習慣をつけてください。
リンの管理と骨の健康を守るために
カリウムや塩分と並んで、透析患者さんが管理すべき重要なミネラルにリンがあります。リンは骨や歯を作るために必要な栄養素ですが、増えすぎると体にさまざまな悪影響を及ぼします。
リンが高くなることのリスク
腎機能が低下すると、リンが体外に排出されにくくなり、血液中のリン濃度が高くなり、この状態を高リン血症です。
血液中のリンが増えると、体はバランスを取ろうとして骨からカルシウムを溶かし出し、骨がもろくなる腎性骨症を引き起こし、骨折しやすくなります。また、血液中でリンとカルシウムが結びついて石灰化という現象が起こります。
石灰が血管の壁に付着すると、血管が硬くなる動脈硬化を進行させ、心筋梗塞や脳梗塞といった命に関わる病気のリスクを高め、皮膚に沈着すると、激しいかゆみの原因にもなります。
リンを多く含む食品を知る
リンは、たんぱく質を多く含む食品に比例して多く含まれていて、肉、魚、卵、牛乳・乳製品、大豆製品などがその代表です。たんぱく質は体に必要な栄養素なので、完全に避けることはできません。
同じたんぱく質源でも、リンの含有量が比較的少ないものを選んだり、リンの吸収率を考えたりすることがポイントになります。特に、レバーや魚卵、しらす干しなどの内臓や小魚にはリンが非常に多く含まれるため、食べる量には注意が必要です。
食品に含まれるリンの種類と吸収率
リンの種類 | 主な食品 | 体内への吸収率 |
---|---|---|
有機リン | 肉、魚、卵、豆類など | 約40%〜60% |
無機リン | 加工食品、乳製品、清涼飲料水 | 約90%〜100% |
リン吸着薬の役割と服用のタイミング
食事制限だけでは、血液中のリンの値を適切にコントロールするのが難しいため、多くの患者さんがリン吸着薬という薬を服用します。リン吸着薬は、食事に含まれるリンが腸から吸収されるのを防ぎ、便と一緒に体の外へ排出させる働きをします。
重要なのは、この薬を飲むタイミングです。リン吸着薬は、食事と一緒に摂ることで初めて効果を発揮し、食前や食後ではなく、食事の直前や食事中に服用することが大切です。
飲み忘れて食後に服用しても、すでにリンが吸収された後なので効果は期待できません。医師の指示通り、正しく服用する習慣をつけましょう。
加工食品に含まれる無機リンに注意
リンには、肉や魚などに含まれる有機リンと、食品添加物として加工食品に使われる無機リンの2種類があります。有機リンの吸収率が40%から60%程度であるのに対し、無機リンはほぼ100%体に吸収されてしまいます。
無機リンは、ハムやソーセージ、練り物、インスタント食品、スナック菓子、コーラなどの清涼飲料水に、品質改良や保存性を高める目的で広く使われています。
加工食品を頻繁に食べると、知らず知らずのうちに大量のリンを摂取してしまうことになります。食品を購入する際は、原材料表示を確認し、リン酸塩などの表示があるものは避けるように心がけることが、リンの管理において非常に重要です。
無機リンを含む可能性のある食品添加物
- リン酸塩(Na, K)
- pH調整剤
- 乳化剤
- イーストフード
水分制限の基本と上手な水分管理のコツ
血液透析を受ける方にとって、水分制限は食事制限と並ぶ大きな課題です。しかし、なぜ水分制限が必要なのかを正しく理解し、日々の生活で実践できる小さな工夫を取り入れることで、負担を軽減することができます。
なぜ水分を制限する必要があるのか
腎臓の機能が失われると、体に入った水分を尿として排出することができなくなるため、飲んだり食べたりした水分は、次の透析まで体内に溜まり続けます。この溜まった水分が、体重増加(ドライウェイトからの増加分)として現れます。
透析と透析の間の体重増加が多いと、1回の透析で多くの水分を体から引かなければなりません(除水)。急激な除水は、血圧の低下や足のつり、頭痛、吐き気といった透析中の不快な症状の原因となります。
さらに、長期的に体に水分が溜まりすぎた状態が続くと、心臓に大きな負担がかかり、心不全などの重大な合併症を引き起こすリスクが高まります。
水分摂取量の目安の決め方
1日に摂って良い水分量は、個人の尿量によって異なり、尿が全く出ない方と、ある程度出ている方とでは、摂取できる水分量が変わってきます。一般的に、1日の水分摂取量の目安は「前日の尿量 + 500ml〜700ml」程度とされています。
水分量には飲み水やお茶だけでなく、味噌汁やスープなどの汁物、食事に含まれる水分もすべて含まれます。ご自身の正確な尿量や適切な水分摂取量については、必ず医師や医療スタッフに確認しましょう。
水分摂取量の計算例
前日の尿量 | 目安となる水分摂取量 | 具体的なイメージ |
---|---|---|
ほぼ0ml | 500ml | 500mlペットボトル1本分 |
300ml | 800ml | 湯のみ茶碗 約4杯分 |
500ml | 1000ml | 1Lの牛乳パック1本分 |
※上記はあくまで一般的な例です。必ず主治医の指示に従ってください。
体重管理で水分量を把握する
日々の水分管理がうまくいっているかどうかの指標となるのが、体重です。透析後の目標体重(ドライウェイト)から、次の透析までの体重増加を一定の範囲内に抑えることが目標となります。
一般的に、中1日(月→水など)の体重増加はドライウェイトの3%以内、中2日(金→月など)では5%以内が望ましいとされています。ドライウェイトが60kgの方であれば、中1日で1.8kg、中2日で3.0kgの増加が上限の目安です。
毎朝、同じ条件(起床後、排泄後、着衣前など)で体重を測定し、記録する習慣をつけましょう。体重の変化を把握することで、水分摂取量を自分で調整できるようになります。
喉の渇きを和らげる工夫
水分制限で最もつらいのが喉の渇きで、和らげるためには、いくつかの工夫があります。まず、塩分の多い食事は喉が渇く最大の原因なので、減塩を徹底することが基本です。その上で、次のような方法を試してみると良いでしょう。
- 冷たい水でうがいをする
- 氷を口に含んでゆっくり溶かす
- レモンやライムを水に加える、または絞って香りで潤いを感じる
- ガムや飴をなめる(シュガーレスのものを選ぶ)
また、一度にたくさんの水分を飲むのではなく、計量カップなどで1日の水分量を決めておき、少量ずつ時間をかけて飲むことも有効です。小さなコップを使うと、見た目の満足感も得やすくなります。
日常生活でできる食事と水分の工夫
厳しい食事制限や水分制限も、日常生活の中のちょっとした工夫で、負担を減らし、前向きに取り組むことができます。ここでは、食事をより楽しむためのアイデアや、水分管理を楽にするコツ、そして周囲の協力の大切さについて触れていきます。
食事を楽しくする工夫
減塩食は味が薄くて物足りないと感じることが多いかもしれません。そんな時は、塩分以外の味付けを上手に活用しましょう。酸味、辛味、香味をプラスすることで、味にメリハリがつき、満足感を得やすくなります。
酢やレモン汁などの酸味は、塩味を引き立てる効果があり、カレー粉や唐辛子、こしょうなどの香辛料は、風味を豊かにしてくれます。
また、しそ、みょうが、ねぎ、しょうがといった香味野菜や、ごま油やオリーブオイルなどの香りの良い油を使うのもおすすめです。
減塩に役立つ調味料・食材
分類 | 具体的な例 | 使い方 |
---|---|---|
酸味 | 酢、レモン汁、すだち | 和え物や焼き魚に加える。 |
香辛料 | カレー粉、こしょう、唐辛子 | 炒め物や煮物の風味付けに。 |
香味野菜 | しそ、みょうが、しょうが | 薬味として添える。 |
水分を多く含む食品に注意する
水分管理では、飲み水だけでなく、食事に含まれる見えない水分にも注意が必要です。ごはんやパン、麺類などの主食は意外と多くの水分を含んでいます。また、果物や野菜も水分の多い食品です。
味噌汁やスープ、煮物などの汁物は、飲む量を減らすか、具沢山にして汁を少なくする工夫をしましょう。おかゆや雑炊、あんかけ料理なども水分が多いので、食べる頻度や量に気をつけてください。
水分として計算する食品の例
食品分類 | 食品名 | 注意点 |
---|---|---|
主食 | ごはん、おかゆ、パン | 特に柔らかく炊いたごはんは水分が多い。 |
汁物 | 味噌汁、スープ、ラーメン | 汁は飲まずに残す習慣をつける。 |
その他 | カレー、シチュー、豆腐、ゼリー | 固形に見えても水分を多く含む。 |
体重測定の習慣化
水分管理の成果を確認し、モチベーションを維持するために、毎日の体重測定は欠かせません。体重計は脱衣所など、毎日必ず目にする場所に置いておきましょう。
測定する時間は、朝起きてトイレに行った後など、毎日同じ条件にすることが大切です。測定した体重は、専用のノートやアプリに記録し、グラフ化すると変化が分かりやすくなります。
体重の増えすぎた日は前の日の食事や水分摂取を振り返り、原因を考えることで、次の日の行動を修正できます。
よくある質問
食事や水分管理について、日々さまざまな疑問や不安が出てくることと思います。ここでは、透析治療を受けている方から特によく寄せられる質問と回答をまとめました。
- どうしてもお腹が空いた時はどうすれば良いですか?
-
どうしても間食がしたくなる時は、たんぱく質や塩分、カリウム、リンが少なく、エネルギーを補給できるものを選びましょう。
透析患者さん向けに作られた治療用の特殊食品(クッキーやせんべいなど)は、栄養成分が調整されているので安心です。また、春雨スープ(汁は飲まない)や、くずもち、水あめを使った飴なども良いでしょう。
間食をする際は、その分のエネルギーや塩分、水分を1日のトータル量から調整することを忘れないでください。
- 旅行や外食の時はどうすれば良いですか?
-
外食の際は、メニューをよく見て、塩分やカリウムが少なそうなものを選び、丼ものや麺類よりは、主菜と副菜が分かれている定食スタイルの方が調整しやすいです。
焼き魚やステーキなど、素材がシンプルな料理を選び、ソースや醤油はかけずに少量つける程度にしましょう。汁物や漬物は残すのが基本です。
旅行に行く際は、事前にリン吸着薬を多めに処方してもらうなど、かかりつけの医師や管理栄養士に相談しておくと安心です。
- サプリメントを飲んでも良いですか?
-
自己判断でサプリメントや健康食品を摂取することは避けてください。透析患者さんは、食事制限によってビタミンなどの栄養素が不足しがちになる一方、特定のミネラルは過剰になりやすい状態です。
サプリメントの中には、カリウムやリンを多く含むものや、腎臓に負担をかける成分が含まれている場合があります。ビタミン剤などが必要な場合は、医師が体の状態に合わせて処方します。
- 体調が悪い時の食事はどうすれば良いですか?
-
発熱や下痢、食欲不振など、体調が優れない時は、無理に普段通りの食事を摂る必要はありませんが、エネルギー不足にならないように、食べられるものを中心に口にすることが大切です。
おかゆやうどんなど、消化が良く、エネルギーになりやすいものがおすすめで、食欲がない時は、アイスクリームやゼリー、プリンなど、口当たりが良くエネルギーの高いものでも構いません。
ただし、水分やカリウム、リンの摂取量には引き続き注意が必要です。特に、スポーツドリンクはカリウムや糖分が多いので、自己判断で飲むのは避けましょう。
以上
透析センター(人工透析) | 大垣中央病院(医療法人社団豊正会 )
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