「腎臓病」と「腎不全」。どちらも腎臓に関わる言葉ですが、その意味の違いを正確に理解している方は少ないかもしれません。
「最近、健康診断で腎臓の数値を指摘された」「家族が腎臓を悪くしていて心配」など、腎臓の健康に関心を持つ方々へ向けて、この記事では「腎臓病」と「腎不全」の根本的な違いを明らかにします。
それぞれの症状、病気の進行度、そして治療法にはどのような違いがあるのかを比較しながら、専門的な内容を分かりやすく解説します。
まずは基本から「腎臓病」と「腎不全」の定義
私たちの体にとって重要な役割を担う腎臓。その機能に異常が生じた状態を指す言葉として「腎臓病」と「腎不全」があります。これらは混同されがちですが、意味する状態は異なります。
まずは、それぞれの言葉がどのような状態を指すのか、基本的な定義から確認していきましょう。
腎臓病とは腎臓の機能が低下した状態の総称
「腎臓病」とは、何らかの原因によって腎臓に障害が起き、その働きが正常時の60%未満に低下した状態全般を指す広い言葉です。
蛋白尿(尿にタンパクが混じる)や血尿といった尿の異常や、画像診断・血液検査などで腎臓の異常が確認された場合も含まれます。つまり、腎臓に何かしらの問題が起きている状態を広く捉えたものが腎臓病です。
その原因は多岐にわたり、糖尿病や高血圧といった生活習慣病から、腎炎、遺伝性の病気まで様々です。初期段階では自覚症状がほとんどないことが多く、静かに進行することから「沈黙の臓器」とも呼ばれます。
腎臓の主な働き
- 老廃物の排泄
- 体内の水分・電解質バランスの調整
- 血圧のコントロール
- 血液をつくるホルモンの分泌
- 骨を丈夫にするビタミンの活性化
腎不全とは腎臓の働きが著しく低下した状態
一方、「腎不全」は、腎臓病が進行し、腎臓の機能が正常時の30%未満まで著しく低下した状態を指します。この段階になると、体内の老廃物や余分な水分を十分に排泄できなくなり、体に様々な不調が現れます。
倦怠感、むくみ、食欲不振、息切れといった自覚症状がはっきりと現れることが多く、放置すると生命維持が困難になることもあります。腎不全は、腎臓病という大きな枠組みの中の、特に進行した深刻な状態と理解するとよいでしょう。
腎臓病と腎不全の概要
項目 | 腎臓病 | 腎不全 |
---|---|---|
定義 | 腎機能が低下した状態の総称 | 腎機能が著しく低下した状態 |
腎機能の目安 | 正常時の60%未満 | 正常時の30%未満 |
自覚症状 | 初期はほとんどない | 倦怠感、むくみなど多様な症状が現れる |
急性腎不全と慢性腎不全
腎不全は、その発症の仕方によって「急性」と「慢性」の二つに分けます。急性腎不全は、数時間から数日の間に急激に腎機能が悪化する状態です。脱水や出血、薬剤の影響、急性の腎炎などが原因で起こります。
適切な治療によって腎機能が回復する可能性があります。対照的に、慢性腎不全は数か月から数年という長い年月をかけて、ゆっくりと腎機能が低下していく状態です。
慢性腎臓病が進行した結果であり、残念ながら失われた腎機能が回復することはほとんどありません。
急性腎不全と慢性腎不全の比較
項目 | 急性腎不全 | 慢性腎不全 |
---|---|---|
発症の速さ | 急速(数時間~数日) | 緩徐(数か月~数年) |
主な原因 | 脱水、薬剤、急性の病気など | 慢性腎臓病の進行 |
機能回復の可能性 | 回復の可能性がある | 回復は困難 |
どう違う?「腎臓病」と「腎不全」の根本的な関係
「腎臓病」と「腎不全」がそれぞれ異なる状態を指すことは分かりました。では、この二つの関係性はどのようなものなのでしょうか。
両者のつながりを正しく理解することは、病気の進行を防ぎ、適切な対策を講じる上で非常に重要です。
腎臓病という大きな枠組みの中の腎不全
最も大切なポイントは、「腎不全」は「腎臓病」という大きなカテゴリーに含まれる一つの段階であるということです。
イメージとしては、「病気」という大きな枠の中に「風邪」や「肺炎」があるように、「腎臓病」という広い枠の中に、進行した状態として「腎不全」が存在します。全ての腎臓病がすぐに腎不全になるわけではありません。
多くの腎臓病は、初期段階から始まり、時間をかけて徐々に進行し、最終的に腎不全という状態に至ります。したがって、腎不全と診断された方は、必ずその前に何らかの腎臓病を抱えていることになります。
すべての腎臓病が腎不全に至るわけではない
「腎臓病と診断されたら、いずれは腎不全になってしまうのか」と不安に思うかもしれません。しかし、必ずしもそうとは限りません。腎臓病と診断されても、その進行度合いは人それぞれです。
早期の段階で発見し、原因となる疾患の治療や生活習慣の改善に適切に取り組むことで、腎機能の低下を緩やかにし、腎不全への進行を大幅に遅らせたり、防いだりすることが可能です。
病気の種類や個人の体質にもよりますが、適切な管理を続けることで、生涯にわたって腎不全に至らないケースも少なくありません。
早期発見・早期治療の重要性
腎臓病と腎不全の関係性を考えると、いかに「早期発見」と「早期治療」が大切であるかが分かります。腎機能は一度失われると、現代の医療技術でも回復させることは非常に困難です。
だからこそ、腎臓病の初期段階、つまり自覚症状がほとんどないうちに発見し、介入を始めることが何よりも重要です。
健康診断などで尿の異常や腎機能の軽度な低下を指摘されたら、それを軽視せずに専門医の診察を受けることが、将来の腎不全を防ぐための鍵となります。
体からのサインを見逃さないで 症状の違いを徹底比較
腎臓は我慢強い臓器であり、機能がかなり低下するまでSOSのサインを出さないことがあります。しかし、進行度によって現れる症状には違いがあります。
腎臓病の初期段階と、腎不全まで進行した段階とでは、体にどのような変化が現れるのでしょうか。その違いを知り、些細なサインも見逃さないようにしましょう。
初期には気づきにくい腎臓病の症状
慢性腎臓病の初期段階では、自覚症状はほとんど現れません。そのため、多くの人が健康診断で初めて異常を指摘されます。
もし症状があるとしても、「なんとなく体がだるい」「疲れやすい」といった、他の原因でも起こりうる軽微なものであることがほとんどです。
夜間に何度もトイレに起きる「夜間頻尿」も一つのサインですが、年齢のせいだと見過ごされがちです。この段階で気づくためには、定期的な健康診断、特に尿検査と血液検査が欠かせません。
腎不全で現れる多様な症状
腎機能の低下が進行し、腎不全の状態になると、体に様々な症状はっきりと現れてきます。これは、体内に老廃物や毒素(尿毒素)、余分な水分が溜まることで引き起こされます。これを尿毒症と呼びます。
症状は全身に及び、生活の質を大きく損なう原因となります。
腎不全の主な全身症状
- むくみ(浮腫)
- 倦怠感・疲労感
- 食欲不振・吐き気
- 息切れ・呼吸困難
- 貧血によるめまい・動悸
- 皮膚のかゆみ
- 血圧の上昇
初期腎臓病と腎不全の症状比較
項目 | 初期の腎臓病 | 腎不全 |
---|---|---|
自覚症状の有無 | ほとんどない、または非常に軽い | はっきりと現れることが多い |
代表的な症状 | 夜間頻尿、軽いだるさなど | むくみ、息切れ、強い倦怠感、食欲不振など |
生活への影響 | ほとんどない | 日常生活に支障をきたす |
尿の変化に注意する
腎臓は尿をつくる臓器であるため、その機能が低下すると尿にも変化が現れます。尿は体からの重要な便りです。日々の排尿時に少し注意を払うだけで、病気のサインを早期に捉えることができるかもしれません。
特に、尿の色、泡立ち、量には注意が必要です。
注意したい尿の異常サイン
尿の変化 | 考えられる状態 | 解説 |
---|---|---|
色が濃い(茶褐色、赤褐色) | 血尿の可能性 | 腎臓や尿路からの出血が疑われます。 |
泡立ちが消えにくい | 蛋白尿の可能性 | 尿にタンパク質が漏れ出ているサインです。 |
量が極端に減る・増える | 腎機能低下の可能性 | 尿を濃縮したり希釈したりする能力の低下が考えられます。 |
病気の進行段階を知る ステージ(病期)による分類
慢性腎臓病(CKD)は、その重症度を客観的に評価するために、いくつかのステージ(病期)に分類します。この分類は、現在の腎臓がどのくらい働いているかを基準にしており、今後の治療方針を決める上で重要な指標となります。
自分がどのステージにいるのかを知ることは、病状を理解し、治療に主体的に取り組むために役立ちます。
腎機能の指標となるeGFR(推算糸球体濾過量)
腎機能の評価には、血液検査で測定する血清クレアチニン値という項目を用います。クレアチニンは筋肉でつくられる老廃物で、本来は腎臓から尿中へ排泄されます。
腎機能が低下すると、クレアチニンを十分に排泄できなくなり、血液中の濃度が上昇します。この血清クレアチニン値に、年齢と性別を加味して計算したものが「eGFR(推算糸球体濾過量)」です。
eGFRは、腎臓が1分間にどれくらいの血液をろ過して尿をつくれるかを示す値で、腎機能の程度を客観的に評価する指標として広く用いられています。健康な人のeGFRは90以上ですが、年齢とともに少しずつ低下します。
慢性腎臓病(CKD)のステージ分類
慢性腎臓病は、eGFRの値に基づいてステージG1からG5までの5段階に分類します。ステージが進むほど、腎機能が低下していることを意味します。
このステージ分類に加えて、蛋白尿の有無や程度も、病気の進行リスクを評価する上で重要な要素として考慮します。
慢性腎臓病(CKD)のステージ
ステージ | eGFR (mL/分/1.73㎡) | 腎機能の状態 |
---|---|---|
G1 | 90以上 | 正常または高値(ただし蛋白尿など腎障害あり) |
G2 | 60~89 | 軽度低下 |
G3a | 45~59 | 軽度~中等度低下 |
G3b | 30~44 | 中等度~高度低下 |
G4 | 15~29 | 高度低下 |
G5 | 15未満 | 末期腎不全 |
腎不全に該当するステージ
一般的に、eGFRが30未満となるステージG4とG5が「腎不全」と呼ばれる状態に該当します。特にステージG4では、腎不全の症状がはっきりと現れ始め、食事療法や薬物療法を厳格に行う必要があります。
さらに進行し、ステージG5になると「末期腎不全」と呼ばれます。この段階では、自身の腎臓だけでは生命を維持することが困難になるため、透析療法や腎移植といった「腎代替療法」の準備や導入を検討する必要があります。
なぜ起こるのか?主な原因とリスク要因
腎臓の機能が低下する背景には、様々な原因が存在します。なぜ腎臓病になり、腎不全へと進行してしまうのでしょうか。その原因を知ることは、予防や悪化防止につながります。
ここでは、腎臓病を引き起こす主な病気や、日常生活に潜むリスク要因について解説します。
腎臓病を引き起こす代表的な病気
現在、日本で慢性腎臓病を引き起こす原因として最も多いのは、生活習慣病である糖尿病と高血圧です。これらに、腎臓自体の病気である慢性糸球体腎炎が続きます。
これらの病気は、それぞれ異なる形で腎臓にダメージを与え、徐々にその機能を蝕んでいきます。
腎臓病の主な原因疾患
原因疾患 | 特徴 | 腎臓への影響 |
---|---|---|
糖尿病性腎症 | 糖尿病の三大合併症の一つ。 | 高血糖が続き、腎臓の毛細血管(糸球体)が傷つく。 |
腎硬化症 | 高血圧が長く続くことで発症。 | 高い圧力で腎臓の血管が硬化し、血流が悪くなる。 |
慢性糸球体腎炎 | 免疫の異常などが原因で腎炎が慢性化。 | 糸球体に炎症が起こり、ろ過機能が損なわれる。 |
生活習慣病との深い関わり
糖尿病や高血圧だけでなく、脂質異常症(高コレステロール)や肥満、高尿酸血症(痛風の原因)といった生活習慣病も、腎臓に大きな負担をかけ、腎機能低下のリスクを高めます。
これらの病気は互いに影響し合い、動脈硬化を促進します。腎臓は血管の塊のような臓器であるため、動脈硬化が進むと腎臓への血流が悪化し、機能が低下してしまうのです。
食生活の乱れ、運動不足、喫煙、過度の飲酒といった不適切な生活習慣は、これらの病気を引き起こし、ひいては腎臓病のリスクを増大させる要因となります。
腎機能低下につながる生活習慣病
- 糖尿病
- 高血圧
- 脂質異常症
- 肥満
- 高尿酸血症
その他の原因と注意すべき点
生活習慣病以外にも、腎臓病の原因は様々です。多発性のう胞腎のような遺伝性の病気、ループス腎炎などの自己免疫疾患、薬剤の副作用、加齢による自然な腎機能の低下などがあります。
特に、痛み止め(非ステロイド性抗炎症薬)の長期にわたる乱用は腎臓に負担をかけることがあるため注意が必要です。原因が何であれ、早期に発見し、腎機能の低下を防ぐための対策をとることが重要です。
どのように向き合うか?治療法の選択肢を比較
腎臓病や腎不全と診断された場合、どのような治療を行うのでしょうか。治療の目的は、病気のステージによって異なります。
初期の腎臓病では進行を遅らせることが目標となり、腎不全まで進行した場合は、失われた腎機能を補うための治療が必要になります。ここでは、それぞれの段階における治療法の選択肢を比較解説します。
腎臓病の進行を遅らせる治療
慢性腎臓病の治療の基本は、これ以上腎機能を悪化させないこと、つまり「進行抑制」です。一度失われた腎機能は元には戻らないため、残っている機能をいかに長く維持するかが鍵となります。
その中心となるのが「食事療法」と「薬物療法」です。食事療法では、腎臓への負担を減らすために、タンパク質や塩分、カリウム、リンなどの摂取量を調整します。
薬物療法では、原因となっている高血圧や糖尿病の治療を厳格に行うほか、腎臓を保護する作用のある薬や、貧血、電解質異常などを改善する薬を使用します。
進行抑制で用いる主な薬剤
- 降圧薬(ACE阻害薬、ARBなど)
- 利尿薬
- 血糖降下薬
- 高カリウム血症改善薬
- リン吸着薬
- 赤血球造血刺激因子製剤(ESA)
腎不全の治療法(腎代替療法)
腎機能が著しく低下し、末期腎不全(eGFR 15未満)に至った場合、自身の腎臓だけでは生命を維持できなくなります。そのため、失われた腎臓の働きを代替する「腎代替療法」が必要となります。
腎代替療法には、大きく分けて「血液透析」「腹膜透析」「腎移植」の3つの選択肢があります。どの治療法を選択するかは、医学的な状態はもちろん、患者さん自身のライフスタイルや価値観などを総合的に考慮して決定します。
治療法ごとの特徴と選択
血液透析、腹膜透析、腎移植は、それぞれに長所と短所があります。血液透析は、週に2~3回、医療機関に通院して血液を浄化する方法です。腹膜透析は、自宅や職場で毎日数回、自分自身でお腹に入れた透析液を交換する方法です。
腎移植は、他者から提供された腎臓を移植する手術で、成功すれば透析から離脱し、最も健康に近い状態を取り戻すことが期待できます。
それぞれの特徴をよく理解し、医師や家族と十分に話し合って、自分にとって最も良い治療法を選択することが大切です。
腎代替療法の主な特徴
治療法 | 治療を行う場所 | 特徴 |
---|---|---|
血液透析 | 病院・クリニック | 週2~3回の通院が必要。医療スタッフが治療を行う。 |
腹膜透析 | 自宅・職場 | 通院は月1~2回。自己管理が中心。時間的な制約が少ない。 |
腎移植 | (手術は病院) | ドナーが必要。免疫抑制薬の服用が必要だが、生活の自由度は高い。 |
腎臓を守るために 日常生活で心がけたいこと
腎臓病の進行を抑え、腎不全への移行を防ぐためには、治療と並行して日常生活を見直すことも非常に重要です。食事や運動、日々の健康管理など、少しの心がけが腎臓を守ることにつながります。
ここでは、腎臓の健康を維持するために日頃から実践したい生活習慣について解説します。
食事療法の基本
腎臓病の食事療法は、病気の進行度によって内容が変わりますが、基本となるのは「減塩」「タンパク質の制限」「エネルギーの確保」です。塩分の摂りすぎは高血圧やむくみの原因となり、腎臓に大きな負担をかけます。
タンパク質は体に必要な栄養素ですが、摂りすぎると老廃物が増え、腎臓の負担を増やします。
一方で、エネルギーが不足すると体力や免疫力が低下するため、ご飯やパンなどの炭水化物や、植物油などで適切にエネルギーを補給することが大切です。
食事療法における主な注意点
栄養素 | 制限・管理の目的 | 多く含む食品の例 |
---|---|---|
塩分(ナトリウム) | 血圧管理、むくみ防止 | 加工食品、漬物、麺類の汁 |
タンパク質 | 腎臓への負担軽減 | 肉、魚、卵、大豆製品 |
カリウム | 高カリウム血症の予防 | 生の果物、野菜、いも類 |
適度な運動と休息
かつては腎臓病の患者さんは安静第一と考えられていましたが、近年では適度な運動が推奨されています。ウォーキングなどの有酸素運動は、血圧や血糖値の改善、肥満の解消に役立ち、腎臓への負担を軽減する効果が期待できます。
ただし、過度な運動はかえって腎臓に負担をかけることもあるため、主治医と相談しながら自分に合った運動量を見つけることが重要です。
また、十分な睡眠と休息をとり、ストレスを溜めないことも、体の免疫力を保ち、腎臓を守る上で大切です。
血圧と血糖の管理
高血圧と糖尿病は、腎臓病の最大の危険因子です。腎臓を守るためには、これらの管理を徹底することが何よりも重要になります。家庭で定期的に血圧を測定し、記録する習慣をつけましょう。
降圧薬を服用している場合は、医師の指示通りにきちんと飲み続けることが大切です。糖尿病の方は、血糖値を良好な範囲にコントロールするために、食事療法や運動療法、薬物療法を継続する必要があります。
定期的な検査のすすめ
腎臓病は自覚症状が出にくい病気です。そのため、自分の腎臓の状態を把握するためには、定期的に医療機関で検査を受けることが不可欠です。
年に一度の健康診断はもちろん、腎臓病と診断されている方は、主治医の指示する間隔で必ず通院し、尿検査や血液検査を受けましょう。検査結果の推移を見ることで、治療の効果を評価し、必要に応じて方針を修正することができます。
「腎臓病」と「腎不全」に関するよくある質問
最後に、腎臓病や腎不全に関して、患者さんやご家族からよく寄せられる質問とその回答をまとめました。
- 腎臓は一度悪くなると元に戻らないのですか?
-
残念ながら、慢性腎臓病によって一度失われた腎機能が、完全に元通りに回復することは現在の医療では困難です。そのため、治療の目標は残っている腎機能をできるだけ長く維持し、病気の進行を遅らせることになります。
ただし、急性腎不全のように、原因を速やかに取り除くことで機能が回復するケースもあります。いずれにせよ、早期発見と早期治療が非常に重要です。
- 腎臓病の検査ではどのようなことを調べますか?
-
腎臓病の基本的な検査は「尿検査」と「血液検査」です。尿検査では、蛋白尿や血尿の有無を調べます。血液検査では、腎機能の指標である血清クレアチニン値を測定し、eGFRを算出します。
その他、必要に応じて、腎臓の形や大きさを調べる「超音波(エコー)検査」や、さらに詳しい原因を調べるために腎臓の組織を一部採取して調べる「腎生検」を行うこともあります。
- 透析を始めたら一生続けないといけないのですか?
-
慢性腎不全が原因で透析を始めた場合、基本的には生涯にわたって治療を続ける必要があります。これは、透析療法が失われた腎機能を代替する治療法であり、腎臓そのものを治す治療法ではないためです。
ただし、腎移植を受けることができれば、透析から離脱することが可能です。急性腎不全で一時的に透析が必要になった場合は、腎機能が回復すれば透析を中止できることもあります。
- 腎移植について教えてください。
-
腎移植は、健康な腎臓を移植することで腎機能を回復させる治療法です。ご家族などから提供を受ける「生体腎移植」と、亡くなった方から提供を受ける「献腎移植」があります。
移植が成功すれば、透析療法と比べて食事や水分の制限が大幅に緩和され、社会復帰や旅行なども含め、より自由な生活を送ることが期待できます。ただし、手術後はずっと免疫抑制薬を飲み続ける必要があります。
以上
透析センター(人工透析) | 大垣中央病院(医療法人社団豊正会 )
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