【訪問看護 利用の流れ】申し込みからサービス開始までを5ステップで解説

【訪問看護 利用の流れ】申し込みからサービス開始までを5ステップで解説

住み慣れたご自宅で安心して療養生活を送りたい。そう考えたときに力強い味方となるのが訪問看護です。

しかし、いざ利用しようと思っても、何から始めればよいのかどのような手続きが必要なのか、不安に感じる方は少なくありません。

この記事では、訪問看護の利用を検討し始めてから、実際にサービスが開始されるまでの具体的な流れを、5つの分かりやすい段階に分けて詳しく解説します。

目次

訪問看護の基本と対象者

具体的な流れを解説する前に、まずは訪問看護とはどのようなサービスなのか、どのような方が利用できるのかという基本について確認しておきましょう。

訪問看護とは何か

訪問看護は、病気や障害を抱える方がご自宅などの生活の場で、その人らしい療養生活を送れるように、看護師や理学療法士などの専門家が訪問してケアを提供するサービスです。

かかりつけの医師(主治医)の指示に基づいて、病状の観察、医療的な処置、身体の清潔保持、リハビリテーション、ご家族への支援など、多岐にわたるサポートを行います。

サービスを利用できる方

訪問看護は、赤ちゃんから高齢者まで年齢かかわらず利用できます。病気や障害があり、主治医が訪問看護の必要性を認めた方であれば、どなたでも対象です。

利用にあたってはお持ちの保険証の種類によって、医療保険を使うか、介護保険を使うかが決まります。

利用する保険の種類

保険の種類主な対象者特徴
介護保険要支援・要介護認定を受けている65歳以上の方などケアプランに基づき、計画的に利用する
医療保険要支援・要介護認定を受けていない方、特定の疾患の方年齢制限なく、医師の指示に基づき利用する

訪問看護で受けられるサービス内容

提供されるサービスは、一人ひとりの心身の状態や、ご本人・ご家族の希望に応じて計画し、単に医療的なケアを行うだけでなく、療養生活全般を支える視点が大事です。

【段階1】相談先を見つけてアプローチする

訪問看護の利用は、まず誰かに相談することから始まり、どこに、誰に相談すればよいのかを知っておくことが、最初の重要な一歩です。ご自身の状況に応じて、最も適した相談先を選びましょう。

主な相談窓口

訪問看護の利用に関する相談は様々な場所で受け付けていて、現在入院中か、在宅で療養中か、また介護保険の認定を受けているかなど、状況によって最初の相談相手は異なります。

信頼できる専門家に話を聞いてもらうことで、今後の見通しが立ちやすくなります。

状況別の主な相談先

現在の状況主な相談先役割
入院中病院の地域連携室・退院支援室の相談員退院後の在宅療養に向けた調整や事業者紹介
在宅療養中かかりつけの医師(主治医)医学的判断に基づき、訪問看護の必要性を判断
介護保険を利用中担当のケアマネジャーケアプランへの位置づけや事業者との連絡調整

かかりつけ医(主治医)への相談

在宅で療養している方にとって、最も身近な相談相手はかかりつけの主治医です。ご自身の病状や体の状態を一番よく理解している主治医に、在宅での生活に対する不安や訪問看護で受けたいサポートについて具体的に伝えましょう。

医師の視点から、訪問看護の必要性や適切な開始時期について助言をもらえます。

ケアマネジャーへの相談

すでに要介護認定を受け担当のケアマネジャーがいる場合は、まずケアマネジャーに相談するのがスムーズです。

ケアマネジャーは、ご本人の心身の状態や生活環境、希望を踏まえ、訪問看護を含む様々な介護サービスを組み合わせたケアプランを作成する専門家で、地域の訪問看護ステーションの情報にも精通しています。

地域包括支援センターや訪問看護ステーションへの直接相談

どこに相談すればよいか分からない場合は、お住まいの地域にある地域包括支援センターが総合的な相談窓口となります。また、利用したい訪問看護ステーションが決まっている場合は、直接連絡して相談することも可能です。

その場合でも、最終的には主治医の指示書が必要になるため、ステーションから主治医へ連絡を取ってもらう流れになります。

【段階2】主治医による訪問看護指示書の発行

相談を経て訪問看護の利用が決まったら、次は主治医に訪問看護指示書を作成してもらう必要があります。指示書がなければ、訪問看護サービスは開始できません。

訪問看護指示書とは

訪問看護指示書は、主治医が訪問看護ステーションの看護師などに対して、利用者の療養に必要な具体的な指示を記載した公的な文書です。

指示書があることで、看護師は医療行為を含む専門的なケアを、利用者の自宅で安全に提供できます。

指示書に記載される主な内容

  • 利用者の氏名、生年月日、住所
  • 主な傷病名、症状
  • 現在の治療内容、処方されている薬
  • 訪問看護の目的、必要な観察項目
  • 点滴や褥瘡処置などの具体的な指示
  • 緊急時の対応方法

指示書の発行依頼

通常、相談の段階で利用が決まった訪問看護ステーションや、ケアマネジャーが主治医に連絡を取り、指示書の発行を依頼しますが、利用者が直接医師に依頼もできます。入院中であれば、退院支援の担当者が主治医と連携して準備を進めます。

指示書の有効期間

訪問看護指示書の有効期間は最長で6ヶ月間で、6ヶ月を超えて継続して訪問看護を利用する場合は、再度主治医の診察を受け、指示書を更新してもらうことが必要です。

定期的な見直しにより、その時々の利用者の状態に合わせた適切なケアの継続が可能になります。

指示書の種類と有効期間

指示書の種類有効期間対象となる主なケース
訪問看護指示書1~6ヶ月通常の訪問看護
特別訪問看護指示書最長14日間病状の急性増悪時、退院直後など

【段階3】事業者との面談と契約手続き

主治医からの指示書が出る見込みが立ったら、実際にサービスを提供する訪問看護ステーションの担当者と会い、打ち合わせと契約を行います。

初回訪問面談(アセスメント)

契約に先立ち、訪問看護ステーションの管理者や担当看護師がご自宅などを訪問し面談を行い、面談をアセスメントと呼びます。ご本人の心身の状態や、ご家族の状況、療養環境、どのような生活を送りたいかといった希望を詳しく聞き取ります。

また、訪問看護で何ができるのか、サービス内容や料金について詳しい説明があります。

面談時に確認すべき重要事項

後々の誤解やトラブルを防ぐためにも、面談の段階で疑問点はすべて解消しておくことが大切です。緊急時の連絡方法や対応体制、利用料金の内訳などは、しっかりと確認しましょう。

安心してサービスを受けるために、納得できるまで質問することが重要です。

面談での主な確認事項

確認項目具体的な質問例なぜ重要か
緊急時の対応夜間や休日に連絡はつきますか。緊急訪問は可能ですか。万が一の際の安心感を確保するため
料金体系保険適用外で自己負担となる費用はありますか。交通費はかかりますか。費用の全体像を正確に把握するため
担当者担当は固定ですか。複数の看護師が来ますか。どのような人が来るのか事前に知るため

契約書の取り交わし

サービス内容や料金など全ての内容に納得ができたら、契約書を取り交わします。契約書には、提供するサービスの詳細、利用料金、事業所の運営規程、個人情報の取り扱い、苦情相談の窓口などが記載されています。

内容をよく読み、署名・捺印する前に不明な点がないか最終確認を行い、契約書は利用者と事業所の双方で保管します。

個人情報保護に関する同意

質の高いケアを提供するためには、主治医やケアマネジャー、他のサービス事業者など、関係者間で利用者の情報を共有する必要があるため、契約時に個人情報の利用目的について説明を受け、同意書に署名することが一般的です。

どの範囲で誰に情報が提供されるのかを、きちんと理解しておきましょう。

【段階4】ケアプランの作成と関係者間での共有

契約が完了すると、具体的な訪問看護の計画作りに入ります。介護保険を利用する場合はケアプラン、医療保険を利用する場合は訪問看護計画書を作成し、関係者全員で共有します。

ケアプラン(居宅サービス計画)の作成

介護保険で訪問看護を利用する場合、ケアマネジャーが中心となってケアプランを作成します。これは、訪問看護を含む様々なサービスを、いつ、どのくらい利用するのかを定めた在宅生活全体の計画書です。

ご本人やご家族の希望、主治医の指示、そして訪問看護ステーションとの面談内容などを踏まえて原案を作成し、内容を利用者本人が同意した上で完成します。

訪問看護計画書の作成

ケアプランや主治医の指示書に基づき、今度は訪問看護ステーションがより具体的な訪問看護計画書を作成します。

計画書には、利用者が抱える健康上の課題、目標、その目標を達成するための具体的な看護内容、評価の時期などが詳細に記載されています。

訪問看護計画書の主な構成要素

項目内容
看護・リハビリの目標短期的な目標と長期的な目標を設定する
問題点・解決策利用者が抱える課題と、それに対する具体的なケア内容を記述する
評価目標の達成度を定期的に評価し、計画を見直す時期を明記する

サービス担当者会議の開催

ケアプランが完成し各サービスの利用が始まる前には、サービス担当者会議を開くことが多くあります。

会議には、利用者本人や家族に加え、主治医、ケアマネジャー、訪問看護師、その他のサービス担当者など、支援に関わる全てのメンバーが集まります。

作成したプランを全員で共有し、同じ目標に向かって連携していくことを確認する重要な場です。

【段階5】訪問看護サービスの開始と継続

全ての準備が整ったら訪問看護師がご自宅に訪問し、サービスが開始されます。ただし、開始がゴールではなく、利用者の状態に合わせて計画を柔軟に見直し、より良い療養生活を目指して支援を継続していきます。

初回訪問の実施

計画した日時に、訪問看護師が初めてご自宅に訪問します。初回は改めて自己紹介や体調の確認を行うとともに、今後の訪問スケジュールや準備しておくもの(保険証やタオルなど)について最終的な打ち合わせをします。

定期的な訪問とケアの提供

その後は、訪問看護計画書に沿って定期的な訪問が始まり、一回の訪問時間は、介護保険で20分から90分、医療保険で30分から90分が一般的です。

訪問時には毎回バイタルサインの測定や健康状態のチェックを行い、計画に定められたケアを実施し、その日の様子や実施したケアの内容は、訪問看護記録書に詳しく記載します。

訪問時に看護師が行うこと

  • 健康状態の観察(バイタルチェックなど)
  • 計画に基づく医療処置やケアの実践
  • 療養生活上の相談やアドバイス
  • ご家族への支援
  • 訪問看護記録書への記入

状態変化への対応と計画の見直し

利用者の心身の状態は、常に一定ではありません。

訪問看護師は日々の小さな変化に気を配り、何かあれば速やかに主治医やケアマネジャーに報告・相談し、状態の変化に応じてケアの内容や訪問回数を調整するなど、計画を柔軟に見直します。

関係機関との連携

在宅療養は、訪問看護師だけで支えるものではありません。主治医、ケアマネジャー、薬剤師、リハビリ専門職、ヘルパーなど、多くの専門家がチームとして関わります。

訪問看護師はチームの中心的な役割を担い、各機関と密に連絡を取りながら、利用者が安心して生活できるよう全体を調整する役割も果たします。

よくある質問

訪問看護の利用の流れに関して、多くの方が疑問に思う点についてお答えします。事前に不安を解消し、スムーズな利用開始につなげましょう。

申し込みからサービス開始まで、どのくらいかかりますか

状況によって大きく異なりますが、一般的には1週間から2週間程度を見ておくとよいでしょう。

特に介護保険の認定をこれから申請する場合は、認定結果が出るまでに1ヶ月以上かかることもあります。退院に合わせて利用を開始したい場合は、入院中から早めに病院の相談員に相談し準備を進めることが大切です。

家族が同居していなくても利用できますか

お一人暮らしの方でも問題なく利用できます。むしろ、お一人暮らしの方こそ定期的に看護師が訪問することで、健康状態の確認や安否確認にもなり、安心して在宅生活を送りやすくなります。

緊急時の連絡方法などを事前にしっかりと決めておくことで、万が一の際にも備えられます。

訪問日時の指定はできますか

ある程度の希望を伝えることは可能です。契約前の面談時に通院やデイサービスの予定などを伝え、訪問に来てほしい曜日や時間帯を相談しましょう。

ただし、他の利用者との兼ね合いや、訪問看護師の移動時間などもあるため、必ずしも第一希望に添えるとは限りません。複数の候補を考えておき、事業所と調整することが大切です。

準備しておくものはありますか

特別な準備はほとんど必要ありません。初回訪問の際に、保険証(医療保険・介護保険)や各種医療受給者証、お薬手帳などを確認します。

ただし、ケアの内容によっては体温計や血圧計、処置に使う衛生材料、体を拭くためのタオルなど、ご家庭にあるものを使わせてもらうことがあり、必要物品は契約時に事業所から説明があります。

以上

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大垣中央病院・こばとも皮膚科

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