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ヒドロキシクロロキン硫酸塩(プラケニル)

ヒドロキシクロロキン硫酸塩(プラケニル)

ヒドロキシクロロキン硫酸塩(プラケニル)とは、全身性エリテマトーデス(SLE)や皮膚エリテマトーデス、関節リウマチなどの自己免疫疾患の治療に使用する医薬品です。

抗マラリア薬として開発された歴史を持ちながら、現在では免疫調節作用を活かした膠原病治療薬として重要な役割を担っています。

皮膚科領域では特に皮膚症状を伴う膠原病の治療において有効性が認められており、適切な使用により患者さんの症状改善と生活の質の向上を期待できます。

目次

有効成分と効果、作用機序

ヒドロキシクロロキン硫酸塩は、クロロキンの誘導体として開発された薬剤で、優れた免疫調節作用を持ちます。薬剤の作用機序は複雑で多面的であり、自己免疫疾患の病態に対して複数の経路で治療効果を発揮します。

免疫調節作用のメカニズム

ヒドロキシクロロキン硫酸塩の主要な作用機序は、細胞内のライソゾームのpHを上昇させることにあります。

ライソゾームは細胞内の消化器官として機能し、通常は酸性環境を維持していますが、ヒドロキシクロロキン硫酸塩がこの環境を中和することで、様々な細胞機能に影響を与え、異常な免疫反応が制御されます

抗炎症効果とサイトカイン調節

ヒドロキシクロロキン硫酸塩は、炎症性サイトカインの産生を抑制する作用も持ちます。特に、腫瘍壊死因子α(TNF-α)、インターロイキン-1β(IL-1β)、インターロイキン-6(IL-6)などの産生を減少させることで、炎症反応を和らげます。

サイトカイン抑制効果臨床的意義
TNF-α強い抑制関節炎症状の改善
IL-1β中等度抑制発熱・関節痛の軽減
IL-6強い抑制炎症マーカーの正常化
INF-α強い抑制皮膚症状の改善

皮膚科領域での治療効果

皮膚科領域において、ヒドロキシクロロキン硫酸塩は特に光線過敏症状の改善に優れた効果を示し、紫外線による皮膚の炎症反応を抑制し、エリテマトーデスに特徴的な蝶形紅斑や円板状皮疹の改善に寄与します。

また、口腔潰瘍や脱毛などの症状に対しても有効です。

薬剤の皮膚への蓄積により、長期間にわたって光保護効果を維持できる点も特徴的で、患者さんは日常生活における紫外線への感受性が軽減されます。

ヒドロキシクロロキン硫酸塩(プラケニル)の使用方法と注意点

ヒドロキシクロロキン硫酸塩の適切な使用には、患者さんの病態、体重、腎機能などを総合的に考慮した用量設定が重要です。長期間の服用になることが多いため、定期的な検査と慎重な経過観察が必要になります。

標準的な投与方法

成人における標準的な投与量は、1日400mg(2錠)を朝夕の2回に分けて経口投与します。体重1kgあたり6.5mg以下の範囲で設定されており、患者さんの体重に応じて調整が必要な場合があります。

例えば、体重50kgの患者さんでは最大325mgまでとなり、通常は1日200mg(1錠)から開始することもあります。

維持量は症状の改善に応じて調整し、多くの場合1日200〜400mgで継続し、症状が安定した患者さんでは、1日200mgまで減量することも可能です。

服用のタイミングと注意事項

ヒドロキシクロロキン硫酸塩は食後に服用することを推奨します。これは胃腸障害を軽減するためであり、特に治療開始初期には重要です。錠剤は水またはぬるま湯と一緒に服用し、噛み砕いたり粉砕しないでください。

注意する点

  • 毎日決まった時間に服用する
  • 食後30分以内に服用する
  • 飲み忘れた場合は気づいた時点で服用するが、次回服用時間が近い場合は1回分を飛ばす
  • 2回分をまとめて服用しない
  • 自己判断で服用を中止しない

定期検査の重要性

ヒドロキシクロロキン硫酸塩による治療では、定期的な検査が必要です。特に重要なのは眼科検査で、網膜症の早期発見と予防のため、治療開始前と治療中は定期的な眼底検査、視野検査、光干渉断層撮影(OCT)を実施します。

検査項目頻度目的
眼科検査6ヶ月毎網膜症の監視
血液検査3ヶ月毎血球数、肝機能確認
心電図6ヶ月毎心伝導系への影響確認
筋力検査6ヶ月毎筋病変の確認

服薬コンプライアンスの向上

長期間の治療においては、服薬の継続が治療効果に直結します。患者さんには薬剤の効果が現れるまでに2〜3ヶ月を要することを説明し、継続服用の重要性を理解していただきます。

また、お薬手帳への記録や服薬カレンダーの活用により、飲み忘れを防ぐことも大切です。

副作用が気になる場合や体調に変化を感じた場合は、自己判断で服用を中止せず、必ず主治医に相談してください。症状の悪化や離脱症候群を防ぐため、段階的な減量が必要な場合があります。

適応対象となる患者さん

ヒドロキシクロロキン硫酸塩は、特定の自己免疫疾患を患う患者さんに対して処方される専門的な治療薬です。

全身性エリテマトーデス(SLE)

全身性エリテマトーデスは、多臓器に炎症を起こす代表的な膠原病です。ヒドロキシクロロキン硫酸塩は、SLEの皮膚症状、関節症状、軽度の全身症状に対して有効性を示します。

蝶形紅斑や円板状皮疹などの皮膚症状が主体の患者さんでは、第一選択薬です。また、関節痛や筋肉痛を伴う軽症から中等症のSLE患者さんにおいても、ステロイド薬の減量や維持療法として重要な役割を果たします。

妊娠を希望する女性患者さんにとっても、比較的安全性の高い治療薬です。

皮膚エリテマトーデス

皮膚限局型のエリテマトーデスに対しても、ヒドロキシクロロキン硫酸塩は有効な治療薬です。円板状エリテマトーデス(DLE)、亜急性皮膚エリテマトーデス(SCLE)、腫瘍様皮膚エリテマトーデスなどの病型に対して処方されます。

適応対象となる皮膚症状

  • 顔面、頭皮、耳介の円板状皮疹
  • 光線過敏による皮疹の悪化
  • 口腔粘膜潰瘍
  • 非瘢痕性脱毛
  • レイノー現象

関節リウマチ

関節リウマチにおいては、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)の一つとして使用されます。軽症から中等症の患者さんで、メトトレキサートなどの第一選択薬が使用できない場合や、併用療法として選択されることがあります。

高齢者や腎機能障害を有する患者さんでは、他のDMARDsと比較して比較的安全に使用できることが利点です。また、抗CCP抗体陰性の血清反応陰性関節炎においても有効性が期待されます。

適応疾患主な症状治療目標
SLE皮膚症状、関節症状症状コントロール、フレア予防
皮膚LE皮疹、光線過敏皮膚症状の改善
関節リウマチ関節炎、朝のこわばり関節破壊の進行抑制

妊娠・授乳期の患者さん

ヒドロキシクロロキン硫酸塩は、妊娠中でも比較的安全に使用できる膠原病治療薬として重要です。特にSLEを患う妊娠可能年齢の女性では、妊娠中の病気の悪化を防ぐため、妊娠前から継続使用することが推奨される場合があります。

妊娠中の使用については胎児への移行は認められるものの、催奇形性のリスクは低いとされていて、授乳中についても母乳への移行量は少なく、乳児への影響は限定的です。

ただし、使用については必ず専門医との十分に相談してください。

禁忌となる患者さん

以下の条件を有する患者さんには、ヒドロキシクロロキン硫酸塩の使用は適さない場合があります。

  • 4-アミノキノリン系化合物に対する過敏症の既往
  • 重篤な網膜疾患
  • 重篤な心疾患(QT延長症候群など)
  • 重度の肝機能障害
  • 重度の腎機能障害
  • G6PD欠損症

条件に該当する患者さんでは、代替治療薬の検討や専門的な管理が必要です。

ヒドロキシクロロキン硫酸塩(プラケニル)の治療期間

ヒドロキシクロロキン硫酸塩による治療は、多くの場合長期間にわたる継続的な投与が必要となります。治療期間の設定には、疾患の性質、症状の改善度、副作用の有無などを総合的に判断することが重要です。

治療効果発現までの期間

ヒドロキシクロロキン硫酸塩の治療効果は即効性ではなく、効果を実感するまでに一定の期間が必要になります。一般的に、皮膚症状の改善には2〜3ヶ月、関節症状の改善には3〜6ヶ月程度かかることが多いです。

治療開始から効果判定までのタイムライン

  • 開始〜2週間:副作用の確認、耐容性の評価
  • 2週間〜1ヶ月:初期の副作用症状の安定化
  • 1〜3ヶ月:皮膚症状の改善開始
  • 3〜6ヶ月:関節症状、全身症状の改善
  • 6ヶ月以降:治療効果の維持、長期合併症の監視

維持療法としての長期使用

症状が安定した患者さんでは、維持療法として長期間の継続投与を行い、SLEや皮膚エリテマトーデスでは、数年から十数年にわたる継続使用が必要な場合があります。この期間中は、病気の再燃防止と生活の質の維持が主な治療目標です。

長期使用における利点

  • 疾患フレアの頻度減少
  • ステロイド薬の減量効果
  • 臓器障害の進行抑制
  • 血栓症リスクの軽減
  • 妊娠中の病気悪化の予防

治療期間別の管理ポイント

治療期間に応じて、異なる管理ポイントがあります。短期使用では副作用の早期発見と対応が重要であり、長期使用では蓄積性副作用の監視が中心です。

期間主な管理ポイント検査頻度
開始〜3ヶ月消化器症状、皮疹の監視月1回
3ヶ月〜1年効果判定、用量調整3ヶ月毎
1年以上網膜症、心毒性の監視6ヶ月毎

中止のタイミングと方法

ヒドロキシクロロキン硫酸塩の中止を検討する場合には、慎重な判断が必要です。中止の理由として、副作用の出現、効果不十分、患者さんの希望、妊娠計画などがあります。

中止時に注意する点

  • 段階的な減量(通常は数週間から数ヶ月かけて)
  • 病気の再燃監視
  • 代替治療の準備
  • 中止後の経過観察

急激な中止は病気の再燃リスクを高めるため、医師の指導のもとで計画的に行うことが重要です。

治療継続の判断基準

治療継続の判断には、効果と副作用のバランスが重要です。明らかな治療効果が認められ、重篤な副作用がない場合は継続を推奨します。一方、6ヶ月以上使用しても効果が認められない場合や、重篤な副作用が出現した場合は中止を検討します。

患者さんの生活状況、社会復帰の状況、将来の妊娠希望なども治療継続の判断材料となり、個々の患者さんに応じたオーダーメイドの治療期間設定が重要です。

副作用やデメリット

ヒドロキシクロロキン硫酸塩は比較的安全性の高い薬剤とされていますが、長期使用により様々な副作用が生じる可能性があります。

消化器系副作用

治療開始初期に最も多く見られるのが消化器系の副作用です。症状は一般的に軽度から中等度であり、多くの場合は時間の経過とともに改善します。

主な消化器症状

  • 悪心・嘔吐(発現頻度:10〜20%)
  • 腹痛・腹部不快感(発現頻度:5〜15%)
  • 下痢(発現頻度:5〜10%)
  • 食欲不振(発現頻度:3〜8%)
  • 口内炎(発現頻度:2〜5%)

症状への対策として、食後服用の徹底、分割投与、一時的な減量などが有効です。症状が持続する場合は、胃薬の併用や投与方法の調整を行います。

眼科系副作用(網膜症)

最も注意すべき副作用が網膜症で、これは薬剤が網膜に蓄積することで生じる可逆性および非可逆性の変化です。初期には自覚症状がないため、定期的な眼科検査による早期発見が重要になります。

網膜症の症状と進行段階

段階症状可逆性対応
早期無症状可逆性経過観察
中期視野欠損、色覚異常部分的可逆性減量・中止検討
進行期視力低下、夜盲非可逆性即時中止

リスク因子として、累積投与量(1000g以上)、長期使用(5年以上)、高齢、腎機能障害、網膜疾患の既往などがあります。リスク因子を有する患者さんでは、より頻回な眼科検査が必要です。

皮膚・毛髪への影響

皮膚科領域で使用される薬剤でありながら、皮膚や毛髪に対する副作用も報告されていますが、多くは可逆性であり、薬剤中止により改善します。

皮膚・毛髪系副作用

  • 色素沈着(特に顔面、下腿)
  • 白髪の増加
  • 脱毛
  • 皮膚発疹
  • 光線過敏症の悪化(逆説的反応)

色素沈着は長期使用例で見られ、薬剤中止後も完全には改善しない場合があります。患者さんには事前の説明と定期的な皮膚観察が大切です。

心血管系副作用

心血管系への影響として、心伝導系への作用が最も重要です。ヒドロキシクロロキン硫酸塩はナトリウムチャネルやカリウムチャネルに作用し、心電図異常を起こす可能性があります。

主な心血管系副作用

  • QT延長
  • 房室ブロック
  • 心室性不整脈
  • 心筋症(極めて稀)

特に高用量使用例や心疾患の既往を有する患者さんでは注意が必要です。定期的な心電図検査により、異常の早期発見に努めます。

神経・筋系副作用

神経系や筋系への影響は比較的稀ですが、長期使用例では注意が必要です。副作用は用量依存性があり、減量により改善することが多いとされています。

注意する症状

  • 筋力低下
  • 筋肉痛
  • 腱反射低下
  • 末梢神経障害
  • めまい、頭痛

血液系副作用

血液系への影響として、血球減少が報告されています。これは自己免疫疾患自体の影響との鑑別が必要であり、定期的な血液検査による監視が重要です。

  • 白血球減少
  • 血小板減少
  • 貧血の悪化
  • 溶血(G6PD欠損症患者)

G6PD欠損症の患者さんでは重篤な溶血性貧血を起こす可能性があるため、使用前のスクリーニングが大事です。

ヒドロキシクロロキン硫酸塩(プラケニル)で効果がなかった場合

ヒドロキシクロロキン硫酸塩による治療で十分な効果が得られない場合には、様々な治療選択肢を検討する必要があります。効果不十分の原因を分析し、患者さんの病態に応じた最適な治療戦略を立案することが重要です。

効果不十分の原因分析

治療効果が期待通りに得られない場合、まず原因の分析を行います。薬物療法の効果には個人差があり、また疾患の重症度や病型によっても反応性が異なります。

効果不十分の主な原因

  • 投与量不足(体重当たりの用量不足)
  • 服薬コンプライアンス不良
  • 併用薬による相互作用
  • 疾患活動性の高さ
  • 病型の不適合
  • 薬剤耐性の獲得

要因を評価するため、服薬状況の確認、血中濃度の測定(可能な場合)、疾患活動性の再評価を行います。特に服薬コンプライアンスについては、患者さんとの十分な対話により実態を把握することが大切です。

用量調整と最適化

効果不十分の場合、まず用量の見直しを行い、体重1kgあたり6.5mg以下の範囲内で段階的な増量を検討します。ただし、副作用のリスクも考慮し、慎重な増量が必要です。

用量調整の手順

  • 現在の用量と体重当たりの用量を確認
  • 副作用の有無と程度を評価
  • 疾患活動性と生活への影響を評価
  • 段階的増量(200mg/日ずつ、4週間間隔)
  • 効果と副作用の再評価

増量後は、副作用の出現や悪化に注意深く観察し、定期検査の頻度も調整します。

併用療法の検討

単剤での効果が不十分な場合、他の免疫抑制薬や抗炎症薬との併用療法を検討します。併用により相乗効果を期待でき、また各薬剤の使用量を抑えることで副作用のリスクを軽減できる場合があります。

併用薬剤適応疾患期待効果注意点
メトトレキサートSLE、関節リウマチ関節症状改善肝毒性、骨髄抑制
ミコフェノール酸SLE腎症腎症状改善消化器症状、感染症
生物学的製剤重症例強力な免疫抑制感染症、悪性腫瘍
ステロイド薬急性増悪急速な症状改善長期副作用

代替治療薬への変更

ヒドロキシクロロキン硫酸塩で効果が得られない場合、他の疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)への変更を検討します。

主な代替薬剤

  • メトトレキサート:関節リウマチの第一選択薬
  • スルファサラジン:関節症状に有効
  • レフルノミド:メトトレキサート不耐例に選択
  • 生物学的製剤:重症例や従来薬無効例
  • JAK阻害薬:新しい作用機序の経口薬

非薬物療法の併用

薬物療法の効果が限定的なときは、非薬物療法との組み合わせにより総合的な治療効果の向上を図ります。

有効な非薬物療法

  • 紫外線対策の徹底(日焼け止め、防護服)
  • 適度な運動療法(関節可動域維持)
  • ストレス管理(瞑想、リラクゼーション)
  • 栄養指導(抗炎症食品の摂取)
  • 理学療法(筋力維持、疼痛軽減)

他の治療薬との併用禁忌

ヒドロキシクロロキン硫酸塩は他の薬剤との相互作用により、効果の減弱や副作用の増強を起こす可能性があります。

QT延長を引き起こす薬剤との併用

最も注意すべき相互作用は、QT延長作用を有する薬剤との併用です。ヒドロキシクロロキン硫酸塩自体にQT延長作用があるため、併用により致命的な不整脈を引き起こすリスクがあります。

QT延長薬剤の主なカテゴリー

  • 抗不整脈薬(アミオダロン、ソタロールなど)
  • 向精神薬(ハロペリドール、クロルプロマジンなど)
  • 抗菌薬(エリスロマイシン、レボフロキサシンなど)
  • 抗真菌薬(フルコナゾール、イトラコナゾールなど)
  • 抗がん薬(ドキソルビシン、タモキシフェンなど)

このような薬剤との併用時には、心電図監視、電解質補正、必要に応じた用量調整が必要です。

消化管吸収に影響する薬剤

ヒドロキシクロロキン硫酸塩の吸収は、胃内pHや消化管運動の影響を受けます。制酸薬やH2受容体拮抗薬、プロトンポンプ阻害薬との併用では、吸収率の低下により効果が減弱する可能性があります。

吸収に影響する薬剤と対策

薬剤分類影響機序対策
制酸薬pH上昇による吸収低下4時間以上間隔をあける
PPI胃酸抑制による吸収低下必要最小限の使用
鉄剤キレート形成2時間以上間隔をあける
カルシウム製剤吸収競合服用時間をずらす

肝代謝酵素への影響

ヒドロキシクロロキン硫酸塩は主にCYP2D6とCYP3A4により代謝されます。これらの酵素を阻害または誘導する薬剤との併用では、血中濃度の変動により効果や副作用に影響を与えることがあります。

CYP阻害薬との併用では血中濃度上昇により副作用リスクが増加し、CYP誘導薬との併用では血中濃度低下により効果が減弱する可能性があります。

主な相互作用薬剤は、シメチジン、フルコナゾール、リファンピシン、フェニトインなどです。

免疫抑制薬との併用

他の免疫抑制薬との併用では、相加的な免疫抑制作用により感染症リスクが増加します。特に生物学的製剤やステロイド薬との併用では、日和見感染症や重篤な感染症の発症に注意が必要です。

併用時の監視項目

  • 感染症の徴候(発熱、咽頭痛、咳嗽など)
  • 血液検査(白血球数、CRP、プロカルシトニン)
  • 胸部X線検査
  • 結核スクリーニング検査

ワクチン接種時の注意

免疫抑制状態にある患者さんでは、生ワクチンの接種は原則禁忌です。不活化ワクチンについても、免疫応答の低下により効果が減弱する可能性があります。

ワクチン接種の指針

  • 生ワクチン:接種禁忌
  • 不活化ワクチン:接種可能だが効果低下の可能性
  • 新型コロナワクチン:接種推奨
  • インフルエンザワクチン:毎年接種推奨

妊娠・授乳期の併用注意

妊娠・授乳期には、胎児や乳児への影響を考慮した薬剤選択が必要です。ヒドロキシクロロキン硫酸塩は比較的安全とされていますが、他の薬剤との併用では相互作用により胎児への影響が変化する可能性があります。

特に注意すべき併用薬剤

  • 葉酸拮抗薬(メトトレキサートなど)
  • ACE阻害薬・ARB
  • ワルファリン
  • 抗てんかん薬

ヒドロキシクロロキン硫酸塩(プラケニル)の保険適用と薬価について

お読みください

以下に記載している治療費(医療費)は目安であり、実際の費用は症状や治療内容、保険適用否により大幅に上回ることがございます。当院では料金に関する以下説明の不備や相違について、一切の責任を負いかねますので、予めご了承ください。

保険適用の条件と範囲

ヒドロキシクロロキン硫酸塩(プラケニル錠200mg)は、保険診療で使用可能な薬剤です。保険適用となる疾患は明確に規定されており、適応外使用では保険適用されません。

保険適用疾患

  • 全身性エリテマトーデス(SLE)
  • 皮膚エリテマトーデス
  • 関節リウマチ(他の抗リウマチ薬で効果不十分な場合)

薬価と患者負担額

負担割合1錠あたり負担額1日2錠服用時の月額負担額
1割負担8.6円約516円
2割負担17.3円約1,038円
3割負担25.9円約1,554円

金額は薬剤費のみであり、実際には診察料、検査料、調剤料などが加算されます。

高額療法費制度の適用

単独使用では高額療養費制度の対象となることは稀ですが、他の高額な治療薬との併用や、頻回な検査が必要な場合には制度の適用を検討できます。特に生物学的製剤との併用療法では、月額の医療費が高額となる場合があります。

高額療養費制度の自己負担限度額(70歳未満、月額)

  • 年収約370万円以下:57,600円
  • 年収約370〜770万円:80,100円+(医療費-267,000円)×1%
  • 年収約770〜1,160万円:167,400円+(医療費-558,000円)×1%

薬剤費以外の関連費用

ヒドロキシクロロキン硫酸塩による治療では、薬剤費以外にも定期検査費用が発生します。

定期検査の概算費用(3割負担の場合)

  • 眼科検査(視野検査、OCT含む):約3,000〜5,000円
  • 血液検査:約2,000〜3,000円
  • 心電図検査:約500〜800円
  • 胸部X線検査:約1,500円

検査を6ヶ月毎に実施した場合、年間約15,000〜20,000円程度の検査費用が発生します。

以上

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大垣中央病院・こばとも皮膚科

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