鏡を見るたびに気になる、痛くて赤く腫れ上がったニキビ。それは単なる肌荒れではなく、あなたの肌が発している重要なサインかもしれません。
この記事では、なぜニキビが痛みを伴い腫れるのか、その原因と種類を解説し、すぐに試せる応急処置から、根本的な改善を目指す生活習慣の見直し、そして皮膚科を受診する適切なタイミングまで、詳しくお伝えします。
この記事の執筆者

小林 智子(こばやし ともこ)
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長
2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。
こばとも皮膚科関連医療機関
痛い・腫れるニキビの正体と原因
多くの女性を悩ませるニキビの中でも、特に「痛いニキビ」や「腫れるニキビ」は、見た目の問題だけでなく、不快な症状を伴うため深刻です。これらのニキビは、単に毛穴が詰まっているだけでなく、炎症が起きている証拠です。
なぜニキビは痛みを伴い、大きく腫れ上がってしまうのでしょうか。その背景には、アクネ菌の増殖や、体の防御反応としての炎症が深く関わっています。
なぜニキビは痛く、腫れるのか
ニキビが痛みを伴い腫れる主な理由は、毛穴の内部で炎症が起きているためです。皮脂の過剰な分泌や毛穴の詰まり(角栓)によって、毛穴の中に皮脂が溜まります。この溜まった皮脂を栄養源として、皮膚の常在菌であるアクネ菌が増殖します。
アクネ菌が増殖する過程で、炎症を引き起こす物質が産生され、これに対して体の免疫システムが反応し、白血球などが集まってきます。この免疫反応の結果として、赤み、腫れ、熱感、そして痛みといった炎症特有の症状が現れるのです。
特に、炎症が皮膚の深い部分(真皮層)にまで及ぶと、痛みや腫れはより強くなる傾向があります。
炎症性ニキビの種類と特徴
痛い・腫れるニキビは、炎症の程度や深さによっていくつかの種類に分けられます。それぞれの特徴を理解することは、適切な対処法を選ぶ上で重要です。
炎症性ニキビの主なタイプ
ニキビの種類 | 主な特徴 | 痛み・腫れの程度 |
---|---|---|
赤ニキビ(丘疹:きゅうしん) | 毛穴が赤く盛り上がり、触ると軽い痛みを感じることがある。炎症の初期段階。 | 軽度~中等度 |
黄ニキビ(膿疱:のうほう) | 赤ニキビが進行し、毛穴の先端に黄色い膿が見える状態。痛みや腫れが強いことが多い。 | 中等度~重度 |
しこりニキビ(結節:けっせつ) | 炎症が皮膚の深い部分まで及び、硬いしこりとなっている状態。赤紫色に腫れ、強い痛みを伴う。 | 重度 |
嚢腫(のうしゅ) | 結節よりもさらに炎症が悪化し、内部に膿や血液が溜まって袋状になったもの。最も重症なタイプで、強い痛みと腫れを伴い、治癒後に跡が残りやすい。 | 最重度 |
これらの炎症性ニキビは、放置したり誤ったケアをしたりすると、ニキビ跡(色素沈着やクレーター)の原因となる可能性があるため、注意が必要です。
「危険信号」としての痛い・腫れるニキビ
痛みを伴うニキビや大きく腫れるニキビは、肌が発している「危険信号」と捉えるべきです。これは、炎症が単に表面的なものではなく、皮膚の内部で進行していることを示唆しています。
特に、しこりニキビや嚢腫のように炎症が真皮層にまで達すると、皮膚組織へのダメージが大きくなり、治癒後もクレーター状の凹凸や赤みが長期間残る「ニキビ跡」になるリスクが高まります。
また、強い炎症は周囲の皮膚にも影響を与え、バリア機能の低下を招き、さらなる肌トラブルを引き起こす可能性も否定できません。したがって、痛い・腫れるニキビが現れた場合は、軽視せずに適切な対応をとることが大切です。
痛い・腫れるニキビを悪化させる要因
既に発生している痛いニキビや腫れるニキビをさらに悪化させてしまう行動や生活習慣があります。これらを避けることが、症状の改善と早期治癒への第一歩です。
ニキビ悪化の主な要因
- 不必要に触る・潰す
- 刺激の強いスキンケア製品の使用
- 睡眠不足や不規則な生活
- 精神的なストレス
- 偏った食生活
特に、気になってニキビを触ったり、無理に潰そうとしたりする行為は、雑菌が侵入して炎症をさらに悪化させたり、周囲の皮膚組織を傷つけてニキビ跡をより深刻なものにしたりする原因となります。
今すぐできる!痛い・腫れるニキビの応急処置
痛くて腫れているニキビを発見したら、まずは慌てずに適切な応急処置を行いましょう。炎症を鎮め、さらなる悪化を防ぐことが目的です。
ただし、これらの処置はあくまで一時的なものであり、症状が改善しない場合や悪化する場合は、速やかに皮膚科医の診察を受けるようにしてください。
基本の応急処置:優しく洗って清潔に
ニキビケアの基本は、肌を清潔に保つことです。しかし、ゴシゴシと強く洗うのは逆効果。肌のバリア機能を損ない、炎症を悪化させる可能性があります。洗顔料をよく泡立て、泡で顔を包み込むように優しく洗いましょう。
すすぎは、ぬるま湯で洗顔料が残らないように丁寧に行います。洗顔後は、清潔なタオルで優しく水分を拭き取ります。この際も、擦らずに押さえるようにするのがポイントです。
やってはいけないNG行動
痛い・腫れるニキビがあるときに、ついやってしまいがちな行動が、実は症状を悪化させる原因になっていることがあります。
ニキビ悪化を招くNG行動
無理に潰す・押し出す:雑菌が入り込み、炎症が拡大したり、ニキビ跡が残ったりするリスクが高まります。
頻繁に触る:手の雑菌がニキビに付着し、炎症を悪化させます。
刺激の強い化粧品の使用:アルコール成分が多いものや、スクラブ入りの洗顔料などは避けましょう。
コンシーラーなどで厚塗りする:毛穴を塞ぎ、ニキビの悪化を招くことがあります。メイクは必要最低限にし、帰宅後はすぐに落としましょう。
これらの行動を避け、ニキビに余計な刺激を与えないことが、早期改善への近道です。
冷やす?温める?ニキビのタイプ別対処法
ニキビの状態によって、冷やすべきか温めるべきか、適切な対処法が異なります。自己判断が難しい場合もありますが、一般的な目安として参考にしてください。
ニキビの状態と対処法の目安
ニキビの状態 | 推奨される対処法 | 目的・理由 |
---|---|---|
赤く腫れて熱を持っている(炎症初期) | 冷やす | 炎症を鎮め、腫れや赤みを和らげる。清潔なガーゼやタオルで包んだ保冷剤を短時間当てる。 |
膿が溜まっているが、まだ硬い(黄ニキビ初期) | 基本的には冷やす。温めるのは慎重に。 | 炎症を抑えることを優先。無理に温めて膿を出そうとすると悪化の可能性。 |
膿が排出しやすそうな状態(黄ニキビ後期) | 皮膚科医の指示があれば、蒸しタオルなどで短時間温めることも。 | 毛穴を開き、膿の排出を促す。ただし、自己判断での実施は推奨しません。 |
特に温める場合は、炎症を悪化させるリスクもあるため、基本的には炎症が強く赤みや熱感がある場合は冷やすことを優先し、判断に迷う場合は専門医に相談しましょう。
市販薬の選び方と注意点
ドラッグストアなどでは、様々な種類のニキビ治療薬が販売されています。痛い・腫れるニキビに対して市販薬を使用する場合は、成分や効果をよく理解し、自分の症状に合ったものを選ぶことが大切です。
市販のニキビ治療薬の主な有効成分
- イブプロフェンピコノール:炎症を鎮める
- イソプロピルメチルフェノール:アクネ菌を殺菌する
- サリチル酸:角質を軟化させ、毛穴の詰まりを改善する
- レゾルシン:殺菌作用、角質溶解作用
これらの成分が含まれた塗り薬が一般的です。使用する際は、必ず説明書をよく読み、用法・用量を守ってください。
数日間使用しても改善が見られない場合や、かゆみ、発疹などの副作用が現れた場合は、使用を中止し、皮膚科医に相談しましょう。
また、市販薬はあくまで症状を緩和するためのものであり、根本的な治療にはならない場合があることも理解しておく必要があります。
ニキビを繰り返さないための生活習慣の見直し
痛い・腫れるニキビの治療と並行して、ニキビができにくい肌質へと導くためには、日々の生活習慣を見直すことが重要です。食事、睡眠、ストレス管理など、体の内側からのケアが、健やかな肌を作る土台となります。
食生活とニキビの関係性
「食べたものが肌を作る」と言われるように、食生活は肌の状態に大きな影響を与えます。
特定の食品が直接ニキビの原因となるわけではありませんが、バランスの悪い食事は皮脂の分泌を過剰にしたり、肌のターンオーバーを乱したりする可能性があります。
ニキビと関連が指摘される食事のポイント
注意したい食事・食品群 | 考えられる影響 | 心がけたいこと |
---|---|---|
高GI食品(白米、パン、甘いお菓子など) | 血糖値を急上昇させ、皮脂分泌を促す可能性。 | 玄米や全粒粉パン、野菜など低GI食品を選ぶ。 |
脂質の多い食事(揚げ物、スナック菓子など) | 皮脂の材料となり、過剰摂取は皮脂分泌増につながる可能性。 | 良質な油(オメガ3系脂肪酸など)を適度に摂取。 |
乳製品(牛乳、チーズなど) | 一部の人でニキビを悪化させる可能性が指摘されている。 | 過剰摂取を避け、自分の体質との関連を見る。 |
ビタミンB群(皮脂コントロール)、ビタミンC(抗酸化作用、コラーゲン生成)、ビタミンE(血行促進)、亜鉛(皮膚の新陳代謝)などをバランス良く摂取することも、健康な肌のためには大切です。
特定の食品を極端に避けるのではなく、多様な食材をバランス良く取り入れ、腸内環境を整えることも意識しましょう。
ストレスはニキビの大敵!上手な解消法
現代社会において、ストレスを完全に避けることは難しいかもしれません。しかし、過度なストレスはホルモンバランスの乱れを引き起こし、皮脂の分泌を増加させたり、免疫力を低下させたりして、ニキビを悪化させる一因となります。
自分に合ったストレス解消法を見つけ、心身ともにリラックスできる時間を作ることが重要です。
例えば、軽い運動(ウォーキング、ヨガ)、趣味に没頭する時間、好きな音楽を聴く、アロマテラピー、友人や家族との会話などが挙げられます。深呼吸や瞑想も、手軽にできるリラックス方法として有効です。
大切なのは、自分自身が心地よいと感じる方法で、定期的にストレスを発散することです。
睡眠の質が肌を左右する
質の高い睡眠は、肌のターンオーバー(新陳代謝)を正常に保つために不可欠です。睡眠中には成長ホルモンが分泌され、日中に受けた肌ダメージの修復や再生が行われます。
睡眠不足が続くと、このサイクルが乱れ、肌のバリア機能が低下し、ニキビができやすくなったり、治りにくくなったりします。
毎日同じ時間に寝起きする、寝る前にスマートフォンやパソコンの使用を控える、カフェインの摂取を夕方以降は避けるなど、睡眠の質を高める工夫をしましょう。
寝室の環境(温度、湿度、明るさ)を整えることも、快適な睡眠につながります。
メイクやヘアケア製品の選び方
毎日使うメイク用品やヘアケア製品が、知らず知らずのうちにニキビの原因や悪化要因になっていることがあります。特に、油分の多いファンデーションや、毛穴を塞ぎやすい成分が含まれている製品は注意が必要です。
スキンケア・メイク製品選びのポイント
- 「ノンコメドジェニックテスト済み」表示のある製品を選ぶ
- オイルフリーや油分の少ない製品を選ぶ
- 刺激の少ない、肌に優しい成分のものを選ぶ
ヘアワックスやスプレーなどの整髪料が顔に付着し、ニキビを引き起こすこともあります。髪が顔にかからないようにまとめたり、整髪料を使った日は特に丁寧に洗顔したりするよう心がけましょう。
また、パフやブラシなどのメイク道具はこまめに洗い、清潔に保つことも大切です。
皮膚科受診のタイミングと心構え
痛い・腫れるニキビは、セルフケアだけでは改善が難しい場合も少なくありません。適切なタイミングで皮膚科を受診し、専門医のアドバイスや治療を受けることが、早期改善とニキビ跡の予防につながります。
セルフケアの限界と受診の目安
以下のような場合は、セルフケアの限界と考え、皮膚科の受診を検討しましょう。
皮膚科受診を検討するサイン
- 市販薬を1~2週間使用しても改善しない、または悪化する。
- 痛みが強い、または腫れが広範囲に及んでいる。
- しこりのあるニキビ(結節)や、膿が袋状に溜まったニキビ(嚢腫)が複数できている。
- ニキビが繰り返しでき、ニキビ跡が心配。
- 自分でどう対処して良いか分からず、精神的にも辛い。
これらのサインが見られたら、自己判断で悪化させる前に、専門医の力を借りることをお勧めします。
皮膚科ではどんなことをするの?
皮膚科を受診すると、まずは問診と視診が行われます。問診では、ニキビの症状(いつから、どんな状態か、痛みはあるかなど)、これまでの治療歴、生活習慣、使用しているスキンケア製品などについて詳しく聞かれます。
視診では、ニキビの種類、数、炎症の程度、ニキビ跡の有無などを丁寧に観察します。
これらの情報をもとに、医師が現在のニキビの状態を診断し、それぞれの患者さんに合った治療方針を立てます。
治療法には、外用薬(塗り薬)、内服薬(飲み薬)、面皰圧出(めんぽうあっしゅつ:毛穴に詰まった皮脂や膿を専用の器具で押し出す処置)、ケミカルピーリング、レーザー治療など、様々な選択肢があります。
医師は、症状の重症度や患者さんの希望などを考慮しながら、最適な治療法を提案します。
受診前に準備しておくと良いこと
皮膚科を受診する際には、事前にいくつかの情報をまとめておくと、診察がスムーズに進み、より的確なアドバイスを受けやすくなります。
受診前に準備する情報リスト
- いつからニキビが気になり始めたか
- どのような症状があるか(痛み、腫れ、かゆみなど)
- これまで試した治療法や市販薬(あれば製品名も)
- 現在使用しているスキンケア製品や化粧品
- アレルギー歴や既往歴
- 生活習慣(食事、睡眠、ストレスなど)で気になること
- 医師に特に聞きたいこと、相談したいことのメモ
可能であれば、普段のメイクはせずに受診するか、診察前にメイクを落とせるように準備しておくと、肌の状態を正確に見てもらいやすくなります。
早期受診がもたらすメリット
痛い・腫れるニキビに対して早期に皮膚科を受診することには、多くのメリットがあります。
早期受診の主なメリット
メリット | 詳細 |
---|---|
ニキビ跡のリスク軽減 | 炎症が深刻化する前に適切な治療を開始することで、クレーターや色素沈着といったニキビ跡が残る可能性を低くします。 |
症状の早期改善 | 専門医による的確な診断と治療により、自己流のケアよりも早く症状を改善させることが期待できます。 |
正しいスキンケア指導 | 自分の肌質やニキビの状態に合ったスキンケア方法や生活習慣のアドバイスを受けられます。 |
精神的な負担の軽減 | ニキビの悩みを専門医に相談することで、精神的な安心感が得られ、治療へのモチベーションも高まります。 |
「このくらいで病院に行くのは大げさかも」とためらわずに、気になる症状があれば早めに相談することが、結果的に時間的にも費用的にも、そして何より肌のためにも良い選択となることが多いのです。
皮膚科で行われる主なニキビ治療法
皮膚科では、ニキビの種類、重症度、患者さんの肌質やライフスタイルなどを総合的に判断し、様々な治療法を組み合わせて行います。ここでは、代表的な治療法について解説します。
外用薬(塗り薬)による治療
外用薬は、ニキビ治療の基本となるものです。毛穴の詰まりを改善する薬、アクネ菌の増殖を抑える薬、炎症を鎮める薬などがあり、症状に応じて使い分けられます。
代表的なニキビ外用薬
薬剤の種類(一般名) | 主な作用 | 使用上の注意点(例) |
---|---|---|
アダパレン | 毛穴の詰まりを改善(角化異常の正常化) | 使用初期に乾燥、ヒリヒリ感、赤みが出ることがある。保湿をしっかり行う。 |
過酸化ベンゾイル | アクネ菌に対する抗菌作用、角質剥離作用 | 刺激感、乾燥、漂白作用(衣類などに注意)が出ることがある。 |
クリンダマイシン、ナジフロキサシンなど(抗菌薬) | アクネ菌の増殖を抑える | 長期間の使用で耐性菌が出現する可能性があるため、医師の指示通りに使用する。 |
これらの外用薬は、医師の指示に従って正しく使用することが重要です。効果が現れるまでには時間がかかる場合もあるため、根気強く治療を続ける必要があります。
内服薬(飲み薬)による治療
炎症が強いニキビや、外用薬だけでは改善が難しい場合には、内服薬が処方されることがあります。
代表的なニキビ内服薬
- 抗菌薬(ミノサイクリン、ドキシサイクリン、ロキシスロマイシンなど):アクネ菌の増殖を抑え、炎症を鎮めます。
- ビタミン剤(ビタミンB群、ビタミンCなど):皮脂分泌のコントロールや皮膚の健康維持を助けます。
- 漢方薬:体質改善を通じてニキビの改善を目指します。
- イソトレチノイン(重症例):皮脂腺を縮小させ、皮脂分泌を強力に抑制します。催奇形性などの副作用があるため、使用には厳重な注意が必要です。
内服薬も、医師の指示通りに服用期間や量を守ることが大切です。特に抗菌薬は、自己判断で中断すると耐性菌の問題が生じる可能性があるため注意が必要です。
面皰圧出やケナコルト注射などの処置
皮膚科では、薬物療法と並行して、以下のような処置が行われることもあります。
面皰圧出(めんぽうあっしゅつ)
専用の器具を用いて、毛穴に詰まったコメド(面皰)や膿を押し出す処置です。適切に行うことで、ニキビの早期改善や炎症の悪化を防ぐ効果が期待できます。
自分で行うと皮膚を傷つけたり、細菌感染を引き起こしたりするリスクがあるため、必ず医療機関で受けるようにしましょう。
ケナコルト注射(ステロイド局所注射)
炎症が非常に強く、大きく腫れ上がったニキビ(特にしこりニキビや嚢腫)に対して、ステロイド薬を直接ニキビに注射する治療法です。炎症を強力に抑え、痛みや腫れを速やかに軽減させる効果があります。
ただし、副作用のリスク(皮膚の萎縮など)もあるため、医師が慎重に判断して行います。
光線療法やレーザー治療
難治性のニキビや、ニキビ跡の改善を目的として、光線療法やレーザー治療が行われることもあります。
ニキビ治療における光線・レーザー治療の例
治療法 | 期待される効果 | 備考 |
---|---|---|
クリアタッチSなどの光線療法 | アクネ菌の殺菌、皮脂腺の活動抑制、炎症の軽減 | 比較的マイルドな治療。複数回の治療が必要。 |
フラクショナルレーザー | 主にニキビ跡(凹凸)の改善。皮膚の再生を促す。 | ダウンタイム(赤み、腫れなど)がある。 |
Vビームなどの色素レーザー | ニキビの赤み、炎症性の赤いニキビ跡の改善。 | 赤みに特化した治療。 |
これらの治療は、保険適用外となる場合が多く、費用や効果、ダウンタイムなどを医師とよく相談した上で検討することが大切です。
痛い・腫れるニキビの再発を防ぐために
皮膚科での治療によって痛い・腫れるニキビが改善した後も、再発を防ぐための継続的なケアが重要です。ニキビができにくい肌環境を維持するためには、日々のスキンケアや生活習慣の見直しを根気強く続ける必要があります。
自分に合ったスキンケア習慣の確立
ニキビの再発予防には、自分の肌質に合ったスキンケアを毎日続けることが基本です。皮膚科医から指導されたスキンケア方法があれば、それを守りましょう。
基本的なスキンケアのポイント
- 朝晩2回の優しい洗顔
- 十分な保湿(ノンコメドジェニック製品を選ぶ)
- 紫外線対策(日焼け止めを季節問わず使用)
肌の状態は季節や体調によっても変化するため、その時々の肌のコンディションに合わせて、使用するアイテムやケア方法を微調整することも大切です。
ニキビの引き金となる要因を特定し避ける
人によって、ニキビができやすくなる特定の「引き金」が存在することがあります。それは特定の食品かもしれませんし、睡眠不足や特定の化粧品かもしれません。
自分のニキビが悪化するパターンを注意深く観察し、可能な範囲でそれらの要因を避けるように努めましょう。
考えられるニキビの引き金
カテゴリ | 具体例 | 対策のヒント |
---|---|---|
食事 | 特定の高GI食品、脂質の多い食事、乳製品など | 食事日記をつけ、関連性を探る。バランスの良い食事を心がける。 |
生活習慣 | 睡眠不足、ストレス、不規則な生活リズム | 質の高い睡眠、ストレスマネジメント、規則正しい生活。 |
スキンケア・メイク | 合わない化粧品、毛穴を塞ぐファンデーション、不潔なメイク道具 | ノンコメドジェニック製品の使用、薄化粧、道具の洗浄。 |
物理的刺激 | 髪の毛の接触、頬杖、マスクによる摩擦 | 髪型を工夫、無意識の癖を直す、肌に優しいマスクを選ぶ。 |
全ての引き金を完全に排除することは難しいかもしれませんが、意識して避けるだけでもニキビの再発リスクを減らすことにつながります。
長期的な視点でのニキビ対策
ニキビ治療や再発予防は、一朝一夕に結果が出るものではありません。特に体質改善や生活習慣の見直しは、効果を実感するまでに時間がかかることがあります。焦らず、長期的な視点で取り組むことが大切です。
皮膚科での治療が終了した後も、定期的に肌の状態をチェックしてもらったり、適切なホームケアについてアドバイスを受けたりすることも、良い状態を維持するために役立ちます。
焦らず根気強く向き合うことの大切さ
痛い・腫れるニキビは、見た目の問題だけでなく、精神的なストレスも大きいものです。治療効果がすぐに出ないと焦ったり、落ち込んだりすることもあるかもしれません。
しかし、ニキビは適切なケアと治療を続ければ、必ず改善に向かいます。
大切なのは、諦めずに根気強く向き合うことです。一人で悩まず、皮膚科医などの専門家を頼り、正しい情報に基づいてケアを続けましょう。
少しずつでも肌が良い方向に変化していくことを信じて、前向きに取り組むことが、最終的な改善への一番の近道です。
よくある質問
痛い・腫れるニキビに関して、患者様からよく寄せられるご質問とその回答をまとめました。
- 痛いニキビは潰しても良いですか?
-
いいえ、自己判断でニキビを潰すことは推奨しません。無理に潰すと、雑菌が侵入して炎症が悪化したり、皮膚の深い部分を傷つけてニキビ跡(クレーターや色素沈着)が残るリスクが高まります。
特に痛みを伴う炎症性のニキビは、慎重な対応が必要です。気になる場合は、皮膚科で適切な処置(面皰圧出など)を受けることを検討してください。
- ニキビ跡を残さないためにはどうすれば良いですか?
-
ニキビ跡を残さないためには、まずニキビの炎症を早期に抑えることが最も重要です。そのため、痛い・腫れるニキビができたら早めに皮膚科を受診し、適切な治療を開始することをお勧めします。
また、ニキビを自分で潰したり、頻繁に触ったりする行為は避けましょう。紫外線もニキビ跡の色素沈着を悪化させる原因となるため、日焼け止めなどでしっかりと対策を行うことも大切です。
- 食事制限はニキビ改善に効果がありますか?
-
特定の食品が全ての人にとってニキビの原因となるわけではありませんが、一部の食品(高GI食品、脂質の多いもの、乳製品など)がニキビを悪化させる可能性は指摘されています。
極端な食事制限は栄養バランスを崩し、かえって肌に悪影響を与えることもあります。
まずは、バランスの取れた食事を心がけ、特定の食品を摂取した後にニキビが悪化するようであれば、それを控えてみるなど、ご自身の体質との関連性を見ながら調整するのが良いでしょう。
詳しくは医師や管理栄養士にご相談ください。
- 痛みが強い場合、市販の痛み止めを飲んでも良いですか?
-
ニキビによる痛みが非常に強い場合、市販の消炎鎮痛剤(例:イブプロフェンやロキソプロフェンなど)を服用することで、一時的に痛みを和らげることができる場合があります。
ただし、これは対症療法であり、ニキビそのものを治療するものではありません。痛みが強いということは、炎症がそれだけ進行しているサインでもありますので、根本的な治療のためには皮膚科を受診することをお勧めします。
市販薬を使用する際は、用法・用量を守り、長期間の服用は避けてください。
以上
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