エンコラフェニブ(ビラフトビ)とは、BRAF遺伝子変異を有する悪性黒色腫(メラノーマ)に使用する経口分子標的薬です。悪性黒色腫は進行が速く、転移する可能性が高いことが知られています。
エンコラフェニブ(ビラフトビ)は、がん細胞の増殖シグナルを担う特定のタンパク質を狙い撃ちし、腫瘍の拡大を抑えることを目的として、進行性のメラノーマ治療では早い段階からの対応が重要です。
この記事の執筆者

小林 智子(こばやし ともこ)
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長
2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。
こばとも皮膚科関連医療機関
エンコラフェニブ(ビラフトビ)の有効成分と効果、作用機序
エンコラフェニブ(ビラフトビ)は、BRAF変異陽性のメラノーマ細胞に対して強力に働きかけ、がんの増殖を抑制します。メラノーマは皮膚の色素細胞(メラノサイト)から発生するがんであり、転移の可能性が高いことで知られます。
BRAF変異とエンコラフェニブの関係
メラノーマの中には、BRAF遺伝子に特定の変異(主にV600E変異など)を有するケースがあり、変異したBRAFタンパク質は細胞増殖シグナルを過剰に活性化し、がんの進行を加速させます。
エンコラフェニブは、異常を起こしたBRAFタンパク質を直接阻害し、がん細胞の暴走的な増殖を抑えます。
BRAF変異陽性メラノーマにおけるエンコラフェニブ使用の背景
- BRAF変異があるメラノーマでは通常の細胞増殖シグナルが過剰亢進する
- エンコラフェニブは変異型BRAFキナーゼをブロックする
- 通常細胞への影響を軽減しながら、腫瘍細胞の増殖を抑制する
BRAF変異の有無と治療効果
項目 | 内容 |
---|---|
BRAF変異の代表例 | V600E(ほかV600Kなども含む場合あり) |
変異がある場合 | がん細胞の増殖シグナルが絶えず活性化 |
エンコラフェニブの標的 | 変異型BRAFキナーゼ(V600Eなど) |
期待する治療効果 | 腫瘍増殖の抑制、病変の縮小や進行遅延 |
単剤治療と併用療法の考え方
エンコラフェニブ(ビラフトビ)は単剤でも効果を期待できますが、他の分子標的薬(特にMEK阻害薬)と併用して使う場合もあり、併用により耐性化を遅らせたり、効果を強めたりする可能性があります。
ただし、副作用も増えるため、患者さんの状態や治療歴を踏まえて慎重に判断します。
- BRAF阻害薬 × MEK阻害薬:シグナル経路を二重に遮断
- 耐性化のリスクを下げ、治療効果の持続を狙う
- 副作用は増える可能性があるためモニタリングが必要
効果の出方と個人差
エンコラフェニブを服用すると、ある程度の期間を経て腫瘍サイズが縮小する、または進行が抑えられるケースがありますが、効果の度合いには個人差があり、がんの状態や患者さんの全身状態によって結果は異なります。
長期間の効果を得られることもあれば、耐性が現れて早期に効果が低下する場合もあります。
臨床的な意義
進行メラノーマに対する治療薬の選択肢が増えることは、患者さんの予後改善につながる大切な要素で、エンコラフェニブはBRAF変異を有する患者さんに焦点を絞る治療薬であるため、自分の腫瘍が変異陽性かどうかを確認することが重要です。
医師の判断のもと、遺伝子検査を行い、適切な治療計画を立てる流れになります。
エンコラフェニブ(ビラフトビ)の特徴
特徴 | 内容 |
---|---|
投与形態 | 経口(カプセル) |
標的 | 変異型BRAF(V600Eなど) |
併用療法 | MEK阻害薬との併用が考慮されることが多い |
主な適応疾患 | BRAF変異陽性の切除不能または転移性メラノーマ |
治療効果の個人差 | 腫瘍の性質、患者さんの体力、耐性の出現などに左右される |
使用方法と注意点
エンコラフェニブ(ビラフトビ)を安全かつ効果的に使うためには、用量や投与時間を守り、副作用リスクを管理する必要があります。ここでは、基本的な服用方法や注意点を解説します。
投与方法の概要
エンコラフェニブ(ビラフトビ)は経口剤で、通常は1日1回または1日2回といったスケジュールで飲むことが多いです。服用量や回数は患者さんの状態や併用薬の有無、検査結果などによって異なるため、医師や薬剤師の指示に従ってください。
服用タイミング
時間帯 | 投与回数の例 | 注意点 |
---|---|---|
朝食前 | 1回目(または1日1回) | 食事の影響を受けにくいタイミング |
就寝前 | 2回目(1日2回の場合) | 飲み忘れ防止のため、時間を固定化する |
医師の判断によって、投与回数や時間帯は異なることがあるため、自分の指示内容を正確に把握することが大切です。
食事や他の薬との関係
エンコラフェニブは、食事や一部のサプリメント・市販薬との相互作用に注意が必要で、薬の吸収や代謝に影響を及ぼす可能性があるため、飲み合わせの悪いものを避ける工夫が重要です。特に以下の点に気をつけてください。
- グレープフルーツやセントジョーンズワートを含む製品
- 極端に高脂肪の食事直後の服用
- 肝代謝酵素(CYP3A4など)を強く阻害または誘導する薬剤
飲み合わせをチェックする際に注意すべき項目
チェック項目 | 理由 |
---|---|
グレープフルーツジュース | 代謝酵素CYP3A4を阻害し、血中濃度に影響 |
セントジョーンズワート | 代謝酵素を誘導し、薬効を減弱させる可能性 |
一部の抗真菌薬・抗生物質 | 代謝経路の競合により副作用が増減する恐れ |
サプリメント | 成分不明や酵素誘導・阻害作用がある場合がある |
副作用の自己管理
エンコラフェニブ使用中は、定期的に血液検査や画像検査を受ける必要があり、副作用の早期発見や対策が治療継続の鍵となるため、次のような症状が出た場合にはすぐに主治医に相談してください。
- 体温上昇(38℃以上の発熱)
- 皮膚の発疹、かゆみ、乾燥の悪化
- 倦怠感や食欲不振が長引く
- 腹痛、下痢、吐き気などの消化器症状
小さな変化でも、早期に対応することで重症化を防ぎやすくなります。
投与忘れを避ける工夫
毎日同じ時間帯に服用することで、薬の血中濃度を一定に保ちやすくなります。飲み忘れが続くと治療効果が下がり、耐性が生じるリスクが高まるので注意が必要です。
- スマホのアラーム機能を活用
- カレンダーや手帳で管理
- 家族に声をかけてもらう
- ピルケースなどを利用する
エンコラフェニブ(ビラフトビ)の適応対象となる患者さん
エンコラフェニブ(ビラフトビ)は、すべての悪性黒色腫に効果があるわけではありません。特定の遺伝子変異を持つ患者さんに絞って投与されることが多く、他の治療オプションとの比較や併用も考慮されます。
BRAF遺伝子変異陽性
エンコラフェニブ(ビラフトビ)は、BRAF変異(V600Eなど)を有するメラノーマを主な対象とし、投与前には遺伝子検査で変異の有無を確認し、陽性の場合に治療選択肢として検討されます。
陰性の場合は、効果を見込めない可能性が高いため、この薬を使用しないケースが多いです。
- 適切な遺伝子検査を行う
- BRAF変異陽性であることを確認する
- V600E変異以外(V600Kなど)でも効果が期待される場合あり
BRAF変異陽性率
メラノーマ分類 | BRAF変異陽性率(目安) |
---|---|
皮膚原発メラノーマ | 約40〜50% |
その他 | 病型により変動 |
手術不能または転移性
メラノーマが局所に限局していない、または手術での切除が難しい場合など、進行性の状況でエンコラフェニブを検討し、転移性メラノーマや再発リスクが高いステージで薬物療法が選ばれるケースが多く見られます。
次のような状況で投与を検討します。
- 転移性メラノーマ(肺や肝臓などへの転移を含む)
- 手術適応外または切除しても再発を繰り返している
- 全身状態に応じて薬物療法が優先される
免疫療法との関係
メラノーマ治療では、免疫チェックポイント阻害薬(ニボルマブ、ペムブロリズマブなど)を先行して使い、その後にBRAF阻害薬を検討するケースや、逆のパターンもあります。
治療歴や副作用の状況を踏まえながら、主治医が最適な順番を決めることが一般的です。
免疫療法を考慮する場合のポイント
- 免疫チェックポイント阻害薬との治療効果比較
- 副作用の種類と重症度
- 先行療法で耐性や症状が進行した場合のバックアップとしてBRAF阻害薬を使用
- 患者さんの全身状態とQOL(生活の質)を総合的に勘案
併存疾患のある患者さん
心臓や肝臓、腎臓に既往症がある場合は、投与量の調整や慎重な副作用モニタリングが必要になることがあるので、主治医は検査結果や他の内服薬との相互作用をチェックし、エンコラフェニブ使用の可否や開始タイミングを判断します。
- 心血管系疾患(高血圧、心不全など)
- 肝機能障害(肝炎など)
- 腎機能障害(透析が必要な場合など)
考慮される併存疾患とエンコラフェニブ使用可否
併存疾患 | エンコラフェニブ使用時の考慮点 |
---|---|
心不全、高血圧など | 投与量の調整や血圧管理を定期的に実施 |
肝機能障害 | AST、ALT、ビリルビン値をモニタリングしながら使用の可否を判断 |
腎機能障害 | クレアチニン値やGFRの推移によって減量や休薬を検討する場合あり |
エンコラフェニブ(ビラフトビ)の治療期間
エンコラフェニブ(ビラフトビ)の治療期間は、腫瘍の反応や副作用の状況に左右され、効果が持続して副作用がコントロールできれば、長期的に投与を継続することもあります。
治療継続の判断材料
定期的に画像検査(CTやMRIなど)や血液検査を行い、腫瘍サイズの変化や臓器機能を評価します。腫瘍が縮小または安定している場合は治療を続け、副作用が耐え難いレベルに達したり、腫瘍が再び増大した場合は方針転換を検討します。
継続・中断を判断する指標
- 画像検査での腫瘍径の変化(縮小、安定、増大)
- 血液検査結果(肝機能、腎機能、腫瘍マーカーなど)
- 患者さんの自覚症状やQOL
- 新たな転移巣の出現の有無
治療効果判定に用いられる主な指標
判定指標 | 具体例 |
---|---|
画像検査 | 腫瘍サイズの増減、転移部位の変化など |
血液検査 | AST/ALT、ALP、LDH、腫瘍マーカーなどの推移 |
臨床症状 | 倦怠感、食欲不振、痛みなどの程度 |
副作用の程度 | 皮膚症状や発熱などで治療継続が困難かどうか |
中断や変更のタイミング
一定期間投与しても腫瘍が縮小しない、あるいは急激に増大する場合には、治療の切り替えを検討します。また、強い副作用で日常生活に大きな支障が出る場合にも、減量や休薬を行いながら次の手段を探ります。
- 耐性化が疑われるとき
- 重度の副作用(Grade3以上など)が繰り返し起こるとき
- 血液検査や画像検査で明らかな進行が認められるとき
治療計画を変える際に考慮するステップ
- 副作用に対する対症療法や減量で改善が見込めるかをチェック
- 他の分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬への変更を検討
- 放射線療法や手術など、局所治療の追加を検討
- 症状緩和を最優先する選択肢も視野に入れる
日常生活の工夫
長期間服用を続ける場合、体調管理や生活リズムの整備が大切です。十分な休息と栄養バランスを維持し、免疫力を保つ工夫を行うことで副作用のリスクを和らげ、治療の継続を支えやすくなります。
- 規則正しい睡眠時間の確保
- 軽いストレッチやウォーキングなど無理のない運動
- ストレスを溜め込みすぎないための趣味やリラックス法
- 家族や友人、専門職への相談体制づくり
副作用やデメリット
エンコラフェニブ(ビラフトビ)は特定のがん細胞を狙う分子標的薬ですが、従来の化学療法と同様に副作用が発生する可能性があります。
代表的な副作用
BRAF阻害薬に共通する副作用として、皮膚症状や発熱などが比較的多く報告されていて、エンコラフェニブ特有のものもあるため、医療スタッフの指示に従い、早期対処が重要です。
- 皮膚障害(発疹、乾燥、色素沈着など)
- 発熱(38℃以上になる場合がある)
- 倦怠感、疲労感
- 消化器症状(下痢、悪心、嘔吐など)
- 筋肉痛、関節痛
使用中によく見られる症状と対処
症状 | 対処のポイント |
---|---|
皮膚発疹 | 皮膚科を併診し、保湿・ステロイド外用を検討 |
発熱 | 解熱剤や水分補給を行い、原因を医師に報告 |
倦怠感・疲労感 | 日常生活のペースを落とし、十分な休養をとる |
下痢・腹痛 | 食事内容を見直し、水分補給。必要に応じ整腸剤 |
皮膚症状への対策
皮膚障害はBRAF阻害薬によくある副作用の1つで、軽度な発疹やかゆみなら保湿やステロイド外用薬で改善することも多いですが、重度になると治療継続が難しくなるケースがあります。
早めに症状を医療者に伝え、必要に応じて皮膚科を受診することが大切です。
- 保湿クリームなどでのケアをこまめに行う
- 紫外線防止のため日傘、帽子、日焼け止めを活用
- 痛みや腫れ、ひどいかゆみがある場合は迷わず報告
発熱と疲労感
高熱や強い倦怠感を訴える患者さんもいて、発熱は感染症の合併や薬剤性のものなど多様な原因が考えられるため、自己判断で市販薬を飲む前に必ず主治医と相談してください。
脱水になりやすいので水分摂取や休養を十分にとることが推奨されます。
発熱や倦怠感に対するセルフケア
- こまめな水分補給(スポーツドリンクなども活用)
- 体温計で定期的に熱を測り、38℃以上で医療機関に連絡
- 日常生活の活動量を減らし、休息を優先
- 指定された解熱鎮痛薬(医師処方)を正しく使用
デメリットとなりうる要素
エンコラフェニブは効果が期待される一方、さまざまなデメリットがあります。
- 定期的な通院や検査が必要となるため、時間と費用の負担が増す
- 副作用の出方によっては治療計画の変更や薬の減量が必要
- 耐性が発現した場合、効果が急速に落ちる可能性がある
- 経済的な負担(高額な薬価)と副作用管理のための追加費用
エンコラフェニブ(ビラフトビ)で効果がなかった場合
エンコラフェニブ(ビラフトビ)による治療が期待通りに進まなかったり、途中で耐性化して腫瘍が再び増大した場合には、代替治療を検討しなければなりません。メラノーマ治療では、他にも複数の選択肢があります。
効果判定のタイミング
通常、エンコラフェニブ使用中は数週間から数か月ごとに画像検査を行い、腫瘍の大きさや転移巣の数をチェックします。腫瘍が大きくなっている、あるいは新たな転移が増えている場合は効果が不十分とみなされることがあります。
治療効果判定の目安
判定方法 | 内容 |
---|---|
画像検査 | CT、MRI、PETなどで腫瘍の縮小・増大を評価 |
血液検査 | 腫瘍マーカーや肝機能数値の変動 |
患者さんの自覚症状 | 痛みの増加、体力の低下、食欲不振など |
医師の総合判断 | 検査結果と臨床所見を統合して効果の有無を判断 |
他の治療法への切り替え
エンコラフェニブの効果が限定的だった場合や、副作用が重くて継続が困難な場合には、他の分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬などに切り替えるケースがあります。また、放射線療法や局所的な手術を併用することも選択肢です。
- 免疫チェックポイント阻害薬(ニボルマブ、ペムブロリズマブなど)
- 他のBRAF阻害薬・MEK阻害薬への変更または追加
- 臨床試験に参加し、新規薬剤を試す
耐性のメカニズム
BRAF阻害薬による治療を一定期間続けるうちに、がん細胞が別のシグナル経路を活性化させて耐性を獲得することがあり、その場合、単独のBRAF阻害薬だけでは腫瘍の制御が難しくなるので、併用療法や異なる作用機序の薬剤が使用されます。
耐性獲得に関わる可能性がある要因
- RAFやMEK以外のシグナル経路が活性化
- がん細胞の遺伝子変異がさらに増え、多様化
- 長期使用による選択圧で耐性細胞が増殖
他の治療薬との併用禁忌
エンコラフェニブ(ビラフトビ)はCYP3A4などの肝代謝酵素を介して代謝されるため、同じ経路で代謝される薬や、酵素を強力に阻害・誘導する薬と併用すると、血中濃度が大きく変動して副作用が強まったり、効果が減弱する恐れがあります。
併用禁忌の具体例
強力なCYP3A4阻害薬との併用では、エンコラフェニブの血中濃度が高くなり、副作用リスクが高まる可能性があります。逆に、CYP3A4を誘導する薬では血中濃度が低下し、効果が減ることもあります。
注意が必要な薬剤やサプリメント
- 抗真菌薬(イトラコナゾール、ボリコナゾールなど)
- マクロライド系抗生物質(クラリスロマイシンなど)
- リファンピシンなどの抗結核薬
- セントジョーンズワートを含むサプリメント
相互作用が懸念される代表的な薬
種類 | 具体例 | 影響 |
---|---|---|
強力なCYP3A4阻害薬 | イトラコナゾール、ケトコナゾールなど | エンコラフェニブ濃度が上昇し副作用増大 |
強力なCYP3A4誘導薬 | リファンピシン、フェニトインなど | 血中濃度低下により効果が減弱 |
ハーブ製品・サプリ | セントジョーンズワート | CYP酵素を誘導し効果が落ちる可能性 |
併用注意薬
一部の降圧薬や睡眠薬、精神神経用薬などは肝代謝酵素を介して分解されることが多いため、エンコラフェニブとの相互作用が疑われる場合があります。
医師や薬剤師にすべての服用中・使用中の薬を伝えておくことが大切です。
チェックが必要な情報
- 処方薬だけでなく、市販薬や健康食品も含めて伝える
- 飲み始めた薬やサプリがある場合は早めに報告
- アルコール摂取量や喫煙習慣なども考慮が必要な場合がある
MEK阻害薬との併用
エンコラフェニブは、しばしばMEK阻害薬(ビニメチニブなど)との併用が検討され、BRAFとMEKを同時にブロックすることで、より強力にシグナル経路を遮断を狙います。ただし、副作用も増加する可能性があり、体調管理が重要です。
BRAF阻害薬 | 代表例 |
---|---|
エンコラフェニブ | ビラフトビ |
ダブラフェニブ | タフィンラー |
MEK阻害薬 | 代表例 |
---|---|
ビニメチニブ | メクトビ |
トラメチニブ | メキニスト |
事前の薬歴確認
併用禁忌を回避するため、医師は治療開始前に患者さんの薬歴を詳しく確認し、相互作用が疑われる組み合わせがあれば調整を行います。患者さん自身も、過去や現在使用している薬やサプリを正確に申告することが重要です。
エンコラフェニブ(ビラフトビ)の保険適用と薬価について
以下に記載している治療費(医療費)は目安であり、実際の費用は症状や治療内容、保険適用否により大幅に上回ることがございます。当院では料金に関する以下説明の不備や相違について、一切の責任を負いかねますので、予めご了承ください。
保険適用の範囲
厚生労働省の承認に基づき、BRAF変異を有する進行メラノーマへの使用が保険適用となっています。適応外の部位や疾患に使用する場合は、原則として保険適用にはならないため注意してください。
実際の薬価
エンコラフェニブ(ビラフトビ)は、用量やカプセル含有量によって薬価が異なります。
製剤名 | 1カプセルあたりの薬価(円) |
---|---|
ビラフトビカプセル50mg | 3,067.10 |
ビラフトビカプセル75mg | 4,600.70 |
医師が処方する総用量や投与スケジュールによって1か月の薬剤費は変動し、1日2回服用や併用療法を行う場合はさらに費用がかさみます。
高額療養費制度の活用
日本では高額な医療費を支援する制度が整備されており、エンコラフェニブのような高額医薬品にも適用できます。
高額療養費制度を利用すれば、一定の自己負担限度額を超えた医療費が払い戻され、実質的な自己負担を軽減できるケースがあります。
- 限度額適用認定証を発行しておく
- 所得区分に応じて自己負担限度額が変わる
- 月をまたいで受診する場合も合算して計算できる
制度名 | ポイント |
---|---|
高額療養費制度 | 所得区分ごとに自己負担限度額を設定 |
限度額適用認定証 | 病院や薬局での支払時に限度額を適用して負担を抑える |
公的扶助・助成の確認 | 難病指定などの公費負担制度を併用できる場合がある |
以上
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