皮膚のトラブルの中でよく見られる脂漏性皮膚炎(しろうせいひふえん seborrheic dermatitis)とは、赤みやかゆみ、フケなどの症状を特徴とする炎症疾患です。
過剰に分泌された皮脂とマラセチアというカビの増殖によって引き起こされ、一般的に頭皮や顔、胸といった部位に多くみられます。
患者さんの生活の質を低下させることも多く、早期の理解と適切なケアが大切です。
この記事では、脂漏性皮膚炎について詳しく解説していきます。
この記事の執筆者
小林 智子(こばやし ともこ)
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長
2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。
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脂漏性皮膚炎の病型と症状・鑑別疾患
脂漏性皮膚炎は頭皮や顔といった皮脂が活発に分泌される部位に現れる皮膚炎です。好発年齢は、乳児期と思春期以降に大きく分かれ、それぞれ乳児型、成人型と呼び、症状の経過も少し異なります。
・乳児型
生後数週間から3ヶ月頃に発症することが多く、最大で4割程度の乳児で症状を認めると報告されています1)。頭皮が主な発症部位で黄色く油っぽいフケ(鱗屑 りんせつ)が現れるのが特徴です。
頭皮以外に耳の裏や眉毛周囲などの顔面や、首やわきなどに認めることもあります。多くの場合、軽度のかゆみを伴うこともありますが、不快感を感じるようなことは少なく、1歳までには自然と改善されることが多いです2)。
・成人型
一方、成人型は慢性かつ再発性の特徴を持ち、人口の約1~3%程度で認められ、特に男性に多いと報告されています3)。
顔面、特に皮脂の多い鼻まわりや眉間などに鱗屑を伴った赤み(紅斑)を認めたり、頭皮にしばしば痒みを伴うフケや赤みを認めたりも2)。他にも胸部やわきなどの部位にも症状を認めることがあります。
また、海外の文献では頭皮に限局して認めるフケ症状を「dandruff(フケ症)」と呼び、脂漏性皮膚炎と同じスペクトルですが分けて捉えることが多いです。
以下は、脂漏性皮膚炎の主な症状についてまとめた表となります。
病型 | 特徴 |
---|---|
乳児型 | ・頭皮に厚く脂っぽい鱗屑で覆われた赤黄色い斑 ・おでこや眉間、ほうれい線、耳の裏などに鱗屑を伴う赤み |
成人型 | ・頭皮にやや黄色調のかさぶた(痂皮)を認め、痒みを伴うことも・眉間やほうれい線、耳の裏などに 鱗屑を伴う赤み |
フケ症 | ・白〜黄色のフケを頭皮や生え際に認める・かゆみはあっても軽度なことが多い |
症状別の鑑別疾患
赤みやフケといった脂漏性皮膚炎の症状は、時に他の疾患と鑑別が必要な場合もあります。主な鑑別疾患について症状別に解説しましょう。
- 顔の赤み(紅斑): 脂漏性皮膚炎のもっとも一般的な症状です。顔面では特に眉間や鼻まわり、耳の裏といった皮脂の分泌が多い部位に好発する特徴があります。
他に顔の赤みを認める疾患として、アトピー性皮膚炎、酒さ、エリテマトーデスなどの疾患が挙げられ、赤みの分布やかさぶた(痂皮)の有無などによって鑑別。 - 頭のフケ、かゆみ: 脂漏性皮膚炎では、白〜黄色の細かいフケ(鱗屑)がみられ、赤みがなく頭皮のフケだけ認める場合は海外では「dandruff(フケ症)」と呼びます。
頭皮のフケを認める疾患では、乾癬がまず挙げられ、乾癬では厚い銀白色の鱗屑を認める他、頭皮以外の身体や爪などの症状と併せて鑑別。
乾癬以外の場合、アトピー性や皮脂欠乏性、接触皮膚炎などの炎症疾患で頭皮の鱗屑を認めることがあります2)。 - かゆみ: 脂漏性皮膚炎の患部はかゆみを伴うことが多く、炎症によるものとみなされています。 頭部にも炎症を認める疾患としてアトピー性や皮脂欠乏性、接触皮膚炎といった湿疹病変によるものはしばしば鑑別が必要です3)。
参考文献
1) Schwartz RA, et al.Seborrheic dermatitis: an overview Am Fam Physician. 2006; 74(1):125-30.
2) Borda, LJ, Wikramanayake TC. Seborrheic Dermatitis and Dandruff: A Comprehensive Review. J Clin Investig Dermatol. 2015; 3(2):10.13188/2373-1044.
3) Sampaio ALSB, et al. Seborrheic dermatitis. An Bras Dermatol. 2011;86(6):1061-71.
脂漏性皮膚炎の原因
脂漏性皮膚炎の原因は、多岐にわたると考えられています。以下では、その主要な原因について詳しく解説いたします。
脂漏性皮膚炎では上の図のように主に3つの要因が考えられています。
- 皮脂の過剰分泌: 皮脂の過度な分泌が発症に大きく寄与していると考えられています。皮脂腺は手のひら、足の裏を除き皮膚全体に広く存在し、分泌量の多い頭皮や顔、胸などが皮膚炎の好発部位です。
また、皮脂の分泌はホルモンによって制御されており、出生児や思春期で特に活発になります4)。男性は30~60歳くらいまで分泌が活発な時期が続く傾向がありますが、女性は閉経後に急激に減少5)。
そのため脂漏性皮膚炎の発症率は男性の方が高いですが、患者さんの中には皮脂分泌が正常であるケースもあります。 - マラセチアの関与: 脂漏性皮膚炎においては、マラセチアの過剰増殖が主要な原因の一つです。マラセチアは皮膚に常在するカビの一種で、皮脂をエサとするため皮脂分泌が多い部位を好みます。
通常、皮膚に対し問題を引き起こすことはありません。しかし、皮脂に含まれるトリグリセリドを加水分解してオレイン酸など遊離脂肪酸へと変化。
この分解産物が炎症を引き起こすことで皮膚の赤みやフケが形成されます。マラセチアの数が多いほど脂漏性皮膚炎を認めやすく、また重症化する傾向があることも報告6)。 - 体質的要因: 皮脂の分泌やマラセチアだけでなく、遺伝や個々のバリア機能、免疫反応、ストレスといった個人差に関連する要因も関与していると考えられています。
免疫力が低下しているHIV/AIDS患者や一部免疫抑制薬を服用している場合、特にマラセチアによる皮膚の炎症が引き起こされやすいことが報告7)。
また、心理的ストレスが皮脂分泌を増加させ、マラセチア菌の増殖を促進する可能性があります。近年注目されているのが、皮膚のバリア機能との関係性です。
機能の破綻が症状発症に関与している可能性ついていくつかの論文で示唆されています8)9)。
このように、複数の要因が相互に影響し合い、皮膚の炎症やフケなどの症状を起こすとされています。
参考文献
執筆の根拠にした論文等
4) Zouboulis CC, et al. Androgens affect the activity of human sebocytes in culture in a manner dependent on the localization of the sebaceous glands and their effect is antagonized by spironolactone. Skin Pharmacol. 1994;7(1-2): 33-40.
5) Ro BI, Dawson TL. The role of sebaceous gland activity and scalp microfloral metabolism in the etiology of seborrheic dermatitis and dandruff. J Investig Dermatol Symp Proc. 2005;10(3): 194-197.
6) Heng MC, et al. Correlation of Pityosporum ovale density with clinical severity of seborrheic dermatitis as assessed by a simplified technique. J Am Acad Dermatol. 1990;23(1): 82-86.
7) Vidal C, et al. Seborrheic dermatitis and HIV infection. Qualitative analysis of skin surface lipids in men seropositive and seronegative for HIV. J Am Acad Dermatol. 1009;23(6 Pt 1):1106-10.
8) Rukwied R, et al. Sensitivity of human scalp skin to pruritic stimuli investigated by intradermal microdialysis in vivo. J Am Acad Dermatol. 2002; 47(2):245-250.
9) Harding CR, et al. Dandruff: a condition characterized by decreased levels of intercellular
脂漏性皮膚炎の検査・チェック方法
脂漏性皮膚炎は特有の症状を認めるため比較的診断は容易なことが多いですが、正確な診断や他疾患と鑑別のためにいくつか検査を行うことがあります。
- 視診: 最も基本的な診断方法として視診が挙げられます。皮膚科専門医は、症状に加えて皮疹の分布など総合的に見て脂漏性皮膚炎と診断。
特に、鼻周りや眉間、頭皮、耳の後ろなどに症状が認められる場合、その可能性が高まります。 - ダーモスコピー: ダーモスコピーとはライトがついた特殊な拡大鏡で、本来は皮膚腫瘍や色素病変の状態を調べる目的で使いますが、近年では炎症疾患の鑑別においても有効だという報告がいくつかあります10)。
例えば顔の赤みで鑑別となる酒さと脂漏性皮膚炎では、酒さでは毛孔周囲の紅斑や毛細血管拡張を認めるのに対し、脂漏性皮膚炎では淡い紅斑上に点状の血管や黄色の痂皮を認める点で鑑別が容易です11)。 - Wood’s灯: Wood灯は365nmの紫外線波長の光を照射する機器で、マラセチアに照射すると蛍光の黄橙色に発光し、判断材料の一つとします12)。
- 皮膚生検: 他の皮膚疾患との鑑別が必要な場合や、診断が困難な場合に行われることが。患部から小さな皮膚組織を採取し、細胞レベルでの変化や炎症の度合いを詳しく確認することができます。
脂漏性皮膚炎の主要な検査方法
検査方法 | 詳細説明 |
---|---|
視診 | 皮膚の状態や色、症状の位置をチェックする最も基本的な方法 |
ダーモスコピー | 炎症所見や血管の状態によって他疾患と鑑別 |
Wood’s灯 | 特定の波長を照射し、マラセチアの特有の色や変化をチェック |
皮膚生検 | 組織の一部を採取し、細胞レベルの変化を確認 |
検査の多くは補助的に行われることが多く、視診のみで診断されることがほとんどです。
チェック項目
以下は診断に有益な情報となりますので、医療機関を受診する際に一度ご自分でもチェックしてみましょう。
- 症状が慢性的である(突然発症した場合は接触皮膚炎などの可能性が高い)。
- 顔のTゾーン(おでこ、眉間、鼻周り)に赤みを認める 。
- 赤みと一緒に細かいかさぶたが現れている 。
- 皮脂の分泌が多く、皮膚がテカりやすい 。
- 症状が顔や上半身に集中している 。
これらの項目が多く該当する場合、脂漏性皮膚炎の可能性があります。治療によって症状の改善が期待できるため、一度医療機関を受診してみましょう。
参考文献
10) Lallas A, et al. Dermoscopic patterns of common facial inflammatory skin diseases. J Eur Acad Dermatol Venereol. 2014; 28(5):609-614.
11) Kang IH, et al. Useful Dermoscopic Findings for Differentiating Rosacea from Seborrheic Dermatitis. Indian J Dematol. 2020; 65(4):316-318.
12) Santucci KA, et al. Wood’s lamp utility in the identification of semen. Pediatrics. 1999; 104(6):1342-4.
脂漏性皮膚炎の治療方法と治療薬
脂漏性皮膚炎の治療においては、下記の要因へのアプローチが非常に重要です13)。
- 皮脂の過剰な分泌
- マラセチアの増殖
- 皮膚の炎症
患者さんの症状に応じて使用する薬が選択されます。
治療薬
以下は基本の外用薬で、主にかゆみ(炎症)があるかどうかによって選択が変わります 14)。
・抗真菌外用薬: 主な原因となるマラセチアの増殖を抑制する目的で 2%ケトコナゾール(ニゾラール)が処方され、海外ではこのケトコナゾール配合のシャンプーが販売されています。
・ステロイド外用薬: 炎症や赤み、かゆみの症状を伴うケースに処方されますが、脂漏性皮膚炎は慢性な経過をたどります。
ステロイドの副作用をできるだけ避けるためにも、炎症所見やかゆみの改善を認めたあとは抗真菌外用薬に切り替えるなど、適宜使い分けることが多いです。
・ステロイド配合シャンプー(コムクロシャンプー): 広範囲にわたる頭皮の症状やベタつきによって治療継続の難しい場合は、ステロイドの配合されたクロベタゾールプロピオン酸エステルというシャンプーを使用。
髪を洗う前に患部に塗布し、15分経ったら洗い流します。
・免疫抑制外用薬: 抗真菌薬やステロイド外用薬で再発しやすく、長期にわたり使う場合は、タクロリムス外用(プロトピック)が処方されることもあります。 日本では保険適用外です。
・メトロニダゾール: 日本では保険適用外の薬ですが、活性酵素による効果や炎症を抑え、ケトコナゾールと同等の改善効力を持つと報告15) 。海外で 0.75%メトロニダゾール(ロゼックスゲル)が処方されることがあります。
その他の治療方法
- 光線治療: 特定の波長の光を皮膚へ照射し炎症や赤みを軽減します。
- イソトレチノイン: ビタミンAを含む内服薬には、皮脂分泌を抑制する強力な効果があり、10〜20mg/日を継続すると半年程度で皮脂の分泌抑制効果が発揮されて改善したという報告がいくつかあります16)17)。
- ビタミンB2、B6の内服薬: それぞれ皮脂の分泌調整をする働きがあり、飲酒や偏った食生活によって消費されるため、不足傾向である方に処方されることもあります。
脂漏性皮膚炎に有効な成分と配合された製品
市販の製品でも脂漏性皮膚炎に有効と言われる成分が配合されているものがいくつかあります。以下は有効な成分の一覧とそれが配合された製品をまとめたものです。
成分 | 効果・働き | 配合製品 |
---|---|---|
ミコナゾール硝酸塩 | マラセチアの増殖抑制 | コラージュフルフルシャンプー |
ジンクピリチオン | マラセチアの増殖抑制 | h&s リフレッシュシャンプー |
硫化セレン | マラセチアの増殖抑制、角質溶解 | Selsun Blue Dandrufシャンプー |
サリチル酸 | 角質溶解 | ・スカルプD 薬用スカルプシャンプー ・NOV ACアクティブウォッシングフォーム |
尿素 | 角質溶解 | NumisMed尿素5%シャンプー |
どの治療薬を選択するかは患者さんの症状の部位や程度などによって異なるので、主治医の診断とアドバイスを受けながら治療を進めていくことをおすすめします。
参考文献
執筆の根拠にした論文等
13) Naldi L, Rebora A. Clinical practice. Seborrheic dermatitis. N Engl J Med. 2009;360(4):387-396.
14) Rosso JQ. Adult seborrheic dermatitis: a status report on practical topical management. J Clin Aesthet Dermatol. 2011;4(5):32-38.
15) Seckin D, et al. Metronidazole 0.75% gel vs. ketoconazole 2% cream in the treatment of facial seborrheic dermatitis: a randomized, double-blind study. J Eur Acad Dermatol Venereol. 2007;21(3):345-350.
16) Kamamoto CSL, et al. Low-dose oral isotretinoin for moderate to severe seborrhea and seborrheic dermatitis: a randomized comparative trial. Int J Dermatol. 2017;56(1):80-85.
17) Yanfei Z, et al. Efficacy and safety of oral isotretinoin in the treatment of moderate to severe seborrheic dermatitis: a retrospective study. Int J Dermatol. 2023;62(6):759-763.
脂漏性皮膚炎の治療期間
脂漏性皮膚炎の治療期間は、患者さんの症状の重さや発症部位、使用する治療薬に加えて、ホームケアによっても変わってきます。治療期間に影響を与える要因について詳しくみてみましょう。
治療における注意点
- 脂漏性皮膚炎は慢性的な経過をたどることが多く、特に体質や免疫応答が大きな影響を与える場合には適切な治療を行っても症状が続くことが。
- 治療のゴールは「完治」でなく、かゆみやその他の症状を改善し薬を使用せず日常生活に支障のない状態である「寛解を維持する」と設定。
治療薬の選択
かゆみや炎症所見が見られる場合、通常ステロイドの外用薬を用いて治療が開始されます。
ステロイドは炎症を迅速に抑える効果があるため、症状改善が比較的早く見られることが多く、通常ステロイド外用薬の塗布を開始し、数日から数週間で改善することが一般的です。
ただし、副作用があることから、長期的に使用せず炎症の所見が改善されたら抗真菌や免疫抑制の外用薬に切り替えます18)。
抗真菌薬は、日本では 2%のケトコナゾール(ニゾラール)が一般的に処方され、1日1回2〜4週間の塗布で症状の改善を認めることが多いです19)20)。
広範囲にわたって症状を認める場合は、脂漏性皮膚炎に効果のあるシャンプーも非常に有用です。シャンプーは塗布した後洗い流すため、刺激も感じにくいというメリットもあります。
脂漏性皮膚炎はストレスや食生活などの生活習慣の乱れ、季節の変化により症状が悪化することがあるため、治療期間中でもこれらの要因に注意が必要です。
また、治療を継続する間、症状の再発を防ぐためにスキンケアや生活習慣の見直しも行いましょう。
治療期間に影響を与える要因
- 患者さんの年齢や健康状態
- 症状の重さや広がり具合
- 既往症やアレルギーの有無
- 使用する治療薬の種類や量
- 治療を始めるまでの経過時間
- 合併症や他の皮膚疾患の有無
脂漏性皮膚炎の治療期間は、多くの要因によって影響を受けるため、一概に「これくらいの期間で治る」とは言い切れません。
しかし、適切な治療を行い、定期的に専門医の診察を受けることで、症状の改善や再発のリスクの低減が期待できるでしょう。
参考文献
18) Kim HO, et al. Maintenance Therapy of Facial Seborrheic Dermatitis with 0.1% Tacrolimus Ointment. Amm Dermatol. 2015;27(5):523-530.
19) Seckin D, et al. Metronidazole 0.75% gel vs. ketoconazole 2% cream in the treatment of facial seborrheic dermatitis: a randomized, double-blind study. J Eur Acad Dermatol Venereol. 2007;21(3):345-350.
20) Elewski B, et al. Efficacy and safety of a new once-daily topical ketoconazole 2% gel in the treatment of seborrheic dermatitis: a phase III trial. J Drugs Dermatol. 2006;5(7):646-650.
薬の副作用や治療のデメリット
脂漏性皮膚炎の治療薬はそれぞれ効果的である一方、副作用や使用に際しての注意点もあります。以下は、主な治療薬の副作用をまとめたものです。
主な治療薬の副作用
- 抗真菌薬: まれに皮膚への刺激や赤み、かゆみなどの副作用が起こる21)。
- ステロイド外用薬: 長期間の使用や過度な使用はニキビ(ステロイドざ瘡)や多毛、皮膚の菲薄化、毛細血管拡張などの副作用が起こる可能性。
- 免疫抑制外用剤: 皮膚の刺激、赤み、炎症などの副作用22)。
- メトロニダゾール: まれに皮膚の刺激が起こる23)。
- イソトレチノイン: 重篤な副作用として胎児奇形のリスクがああるので、内服中には厳密な避妊必が要。その他、皮膚の乾燥やコレステロール値異常などの副作用。
主要な治療薬とその副作用
薬の種類 | 主な副作用 |
---|---|
抗真菌外用薬 (ニゾラール) | 皮膚の刺激、赤み、かゆみ |
ステロイド外用薬 | ざ瘡、多毛、皮膚の 菲薄化、毛細血管拡張 |
免疫抑制外用薬 | 皮膚の刺激、赤み、炎症 |
メトロニダゾール(ロゼックス) | まれに皮膚の刺激 |
イソトレチノイン | 胎児奇形のリスク、皮膚の乾燥 |
脂漏性皮膚炎の治療は症状をやわらげることを目的としているので、いずれも根本的な治療とは言えず、継続的な治療が必要となります。
そのため治療薬のコストや、定期的な医師の診察が必要となることもデメリットと言えるでしょう。
以上の点をふまえ、治療薬を使用する際は、副作用やデメリットについて十分に理解いただいたうえ、適切に使用するようにしてください。
自己判断での治療や、指示を超える用法・容量の使用は避け、治療に関する疑問や不安がある場合には、主治医に相談されることをおすすめします。
参考文献
21) 医薬品医療機器情報提供ホームページ ニゾラールクリーム2%
22) Borda, LJ, Wikramanayake TC. Seborrheic Dermatitis and Dandruff: A Comprehensive Review. J Clin Investig Dermatol. 2015; 3(2):10.13188/2373-1044.
23) Seckin D, et al. Metronidazole 0.75% gel vs. ketoconazole 2% cream in the treatment of facial seborrheic dermatitis: a randomized, double-blind study. J Eur Acad Dermatol Venereol. 2007;21(3):345-350.
保険適用について
脂漏性皮膚炎の治療薬の多くは健康保険が適用されます。以下は、保険適用についてまとめた表です。
保険適用 | 保険適用外 |
---|---|
抗真菌外用薬 (ニゾラール) | 免疫抑制外用薬(プロトピック) |
ステロイド外用薬 ・シャンプー | メトロニダゾール(ロゼックスゲル) |
光線療法 | イソトレチノイン |
ビタミンB2、B6内服薬 |
脂漏性皮膚炎の治療は、慢性の経過をたどることを配慮して患者さんの希望や症状の状況に応じて選択されます。
保険適用外の治療は金銭的な負担も考慮し、納得のうえで治療を受けるようにしましょう。 治療に関する具体的な治療費については、直接ご相談ください。