鏡を見るたびに気になるニキビ。「早く治したい」「潰してしまいたい」という衝動に駆られることはありませんか?しかし、自己流でニキビを潰す行為には、さまざまなリスクが伴います。
この記事では、ニキビを自分で潰すことの危険性、もし潰す場合の注意点、そして何よりも大切なニキビ跡を残さないための対処法について、詳しく解説します。正しい知識を身につけ、健やかな肌を目指しましょう。
この記事の執筆者

小林 智子(こばやし ともこ)
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士
こばとも皮膚科院長
2010年に日本医科大学卒業後、名古屋大学医学部皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了後、アメリカノースウェスタン大学にて、ポストマスターフェローとして臨床研究に従事。帰国後、同志社大学生命医科学部アンチエイジングリサーチセンターにて、糖化と肌について研究を行う。専門は一般皮膚科、アレルギー、抗加齢、美容皮膚科。雑誌を中心にメディアにも多数出演。著書に『皮膚科医が実践している 極上肌のつくり方』(彩図社)など。
こばとも皮膚科関連医療機関
ニキビを自分で潰すことの危険性
目立つニキビを前にすると、つい指で潰したくなる気持ちはよく分かります。しかし、その行為が肌に与える影響は想像以上に大きいことがあります。自己判断でニキビを潰すことには、いくつかの重大な危険性が潜んでいます。
これらのリスクを理解することが、ニキビケアの第一歩です。
細菌感染のリスク
私たちの手指や爪の間には、目に見えない多くの細菌が存在します。不潔な手でニキビを潰すと、毛穴の傷口からこれらの細菌が侵入し、二次感染を引き起こす可能性があります。
感染すると、ニキビはさらに悪化し、治癒までの期間が長引くだけでなく、より深刻な皮膚トラブルにつながることもあります。特に、黄色ブドウ球菌などの細菌は、炎症を強くする原因となります。
また、ニキビを潰す際に使用する器具が清潔でない場合も同様のリスクがあります。ピンセットや針などを自己判断で使用することは、かえって肌を傷つけ、感染の機会を増やすことになりかねません。
炎症が悪化する可能性
ニキビを無理に潰そうとすると、毛穴の壁が破壊されたり、皮脂や角質、膿などの内容物が皮膚の深部に押し込まれたりすることがあります。
これにより、炎症が周囲の組織に広がり、ニキビがより大きく、赤く、痛みを伴うものに悪化するケースが少なくありません。炎症が強くなると、その分、肌へのダメージも大きくなり、回復にも時間がかかります。
特に炎症が進行している赤ニキビや黄ニキビは、内部に膿や炎症物質を多く含んでいるため、潰すことで炎症を広げやすい状態にあります。
炎症を悪化させる要因
要因 | 説明 | 対策の方向性 |
---|---|---|
不適切な圧迫 | 毛穴の壁を破壊し、内容物を深部へ押し込む | 無理な力を加えない |
細菌の侵入 | 傷口から細菌が入り込み、さらなる炎症を引き起こす | 清潔な状態を保つ |
炎症物質の拡散 | 潰すことで炎症物質が周囲の組織に広がる | 炎症の強いニキビは触らない |
ニキビ跡が残る原因
ニキビを潰す行為が最も避けられるべき理由の一つが、ニキビ跡のリスクです。炎症が真皮層にまで及ぶと、皮膚組織がダメージを受け、コラーゲン線維が破壊されたり、異常な形で再生されたりします。
その結果、クレーターのような凹凸のある跡や、赤み、色素沈着といった形でニキビ跡が残ってしまうのです。
一度できてしまったニキビ跡、特に凹凸のあるものは、セルフケアだけで完全に消すことは非常に困難です。そのため、ニキビ跡を作らないためには、まずニキビを悪化させないこと、そして無理に潰さないことが重要になります。
周囲の皮膚へのダメージ
ニキビを潰そうとすると、ニキビそのものだけでなく、その周りの健康な皮膚にも不要な刺激や圧力がかかります。これにより、周囲の皮膚バリア機能が低下したり、新たなニキビができやすい環境を作ってしまったりすることがあります。
また、無理な力を加えることで、毛細血管が傷つき、内出血や赤みが長引く原因にもなり得ます。
肌は非常にデリケートな組織であり、一部への過度な刺激が広範囲に影響を及ぼすことを理解しておく必要があります。
「正しい潰し方」は存在するのか?
「ニキビを潰すのは良くない」と分かっていても、「専門家なら正しく潰してくれるのでは?」「自分でできる正しい潰し方があるなら知りたい」と考える方もいるでしょう。
ここでは、医療機関で行われる処置と自己処理の境界線、そしてニキビの状態に応じた判断基準について解説します。
医療機関での面皰圧出とは
皮膚科などの医療機関では、「面皰圧出(めんぽうあっしゅつ)」という治療法が行われることがあります。これは、専用の器具を用いて、毛穴に詰まった皮脂や角質(コメド)を排出する処置です。
医師や看護師などの専門家が、皮膚の状態やニキビの種類を正確に見極め、滅菌された器具を使って衛生的な環境下で行います。
面皰圧出は、主に白ニキビや黒ニキビといった初期段階のニキビに対して行われ、ニキビの進行を防ぎ、炎症性ニキビへの悪化を抑える効果が期待できます。
しかし、すべてのニキビに適しているわけではなく、炎症が強いニキビには行わないのが一般的です。
面皰圧出の概要
項目 | 内容 | 備考 |
---|---|---|
対象ニキビ | 白ニキビ、黒ニキビ(非炎症性) | 炎症性ニキビは原則対象外 |
実施者 | 医師、看護師など医療従事者 | 専門知識と技術が必要 |
使用器具 | 面皰圧出器(コメドプレッシャーなど) | 滅菌処理されたものを使用 |
自己判断による潰し方の限界
医療機関での面皰圧出は専門的な技術と知識、そして衛生管理のもとで行われます。これを自己判断で真似しようとしても、同様の効果を得ることは難しく、むしろリスクを高めることになります。
ニキビの種類を正確に判断すること、適切な器具を選び正しく使うこと、そして何より無菌的な操作をすることは、専門家でなければ困難です。
「ネットで見た方法だから大丈夫」といった安易な判断は禁物です。誤った方法でニキビを潰すと、前述のような細菌感染や炎症の悪化、ニキビ跡のリスクを高めるだけになってしまいます。
潰しても良いニキビの見極め方(初期段階の白ニキビなど)
基本的にはニキビを自分で潰すことは推奨されませんが、もし仮に、ごく初期の段階で、毛穴の出口がわずかに開いており、内容物(白い角栓)が押し出されやすい状態の白ニキビであれば、理論上は比較的リスクが低いと言えるかもしれません。
しかし、この「見極め」自体が非常に難しく、誤った判断をする可能性が高いです。
多くの場合、自分で「潰せそうだ」と感じるニキビでも、実際には皮膚の深い部分で炎症が始まっていることがあります。そのため、安易に「このニキビなら大丈夫」と判断するのは避けるべきです。
自己処理を考える際のニキビの状態(あくまで参考)
- 毛穴の先端に白い芯が見えている
- 赤みや腫れ、痛みがほとんどない
- ごく初期の段階である
上記の条件に当てはまるように見えても、自己処理は推奨されません。あくまで一般論であり、個々の肌状態やニキビの状況によってリスクは変動します。
潰してはいけないニキビ(炎症性ニキビ、黄ニキビなど)
赤く腫れていたり、痛みを伴ったりする炎症性のニキビ(赤ニキビ)や、膿を持っている黄ニキビは、絶対に自分で潰してはいけません。これらのニキビは、毛穴の奥で炎症が活発に起きている状態です。
無理に潰すと、炎症をさらに悪化させ、細菌感染のリスクを高め、深刻なニキビ跡を残す原因となります。
特に黄ニキビは、膿が溜まっているため一見潰しやすそうに見えますが、毛穴の壁がもろくなっており、潰すことで膿や炎症物質が周囲の組織に広がりやすい状態です。これらのニキビは、触らずに専門医に相談することが賢明です。
どうしても自分でニキビを潰したい場合の注意点
前述の通り、ニキビを自分で潰すことは基本的に推奨されません。しかし、それでも「どうしても今すぐ何とかしたい」という状況があるかもしれません。
もし、万が一、自己責任において行う場合には、以下の注意点を守り、リスクを最小限に抑える努力が必要です。ただし、これらの注意点を守ったとしても、完全にリスクを回避できるわけではないことを強く認識しておいてください。
事前準備:手指や器具の消毒
最も重要なのは、徹底した衛生管理です。まず、手指を石鹸で丁寧に洗い、清潔な状態にします。爪の間も忘れずに洗いましょう。
もし面皰圧出器(コメドプレッシャー)のような器具を使用する場合は、使用前後に必ずアルコール消毒を行います。器具がない場合は、清潔なガーゼやコットンを使用し、直接指で触れないようにすることも一つの方法です。
ニキビとその周辺の皮膚も、低刺激性の洗顔料で優しく洗い、清潔なタオルで水分を拭き取った後、消毒用エタノールなどで軽く消毒します。ただし、アルコールに過敏な方は注意が必要です。
消毒のポイント
対象 | 消毒方法 | 注意点 |
---|---|---|
手指 | 石鹸で十分に洗浄後、アルコール消毒 | 爪の間も念入りに |
器具(使用する場合) | 使用前後にアルコール消毒 | 清潔な場所に保管 |
患部とその周辺 | 低刺激性洗顔料で洗浄後、消毒用エタノール等で消毒 | アルコール過敏症の方は注意 |
潰すタイミングの見極め
潰す対象として考えられるのは、炎症が起きておらず、毛穴の先端に白い芯(コメド)がはっきりと見え、皮膚表面近くに浮き上がっている状態のごく初期の白ニキビのみです。
赤みや腫れ、痛みがあるニキビ、膿が見える黄ニキビは絶対に避けてください。
また、入浴後など皮膚が温まり、毛穴が少し開いているタイミングは、比較的負担が少ないと言われることもありますが、これも一概には言えません。無理にタイミングを合わせるよりも、ニキビの状態を最優先に判断することが大切です。
潰す際の力加減と方法
清潔な指、または滅菌した器具(コメドプレッシャーなど)を使用します。器具を使う場合は、ニキビの中心に先端の輪を当て、軽い力で均等に圧をかけます。
指で行う場合は、清潔なガーゼやコットンを指に巻き、ニキビの周囲を優しく、均等な力で押し出すようにします。
重要なのは、無理な力を加えないことです。一度で内容物が出なくても、何度も強く押したり、爪で引っ掻いたりするのは絶対に避けてください。皮膚を傷つけ、炎症を悪化させる原因になります。
内容物が簡単に出てこない場合は、そのニキビは自分で処置するべきではないと判断し、諦める勇気も必要です。
潰した後の適切なケア
ニキビの内容物を排出した後は、再度、患部を優しく消毒します。その後、抗炎症作用のある軟膏や、ニキビ用の保護パッチなどを使用することも一つの方法です。
ただし、自己判断で薬を使用する場合は、薬剤師に相談するか、使用上の注意をよく読んでからにしましょう。
潰した後は、できるだけ触らないようにし、清潔な状態を保つことが重要です。メイクも、患部を避けるか、治癒するまでは控えるのが望ましいです。
ニキビを潰してしまった後の応急処置
意図せずニキビを潰してしまったり、つい自分で潰してしまったりした場合、その後のケアが非常に重要になります。適切な応急処置を行うことで、炎症の悪化やニキビ跡のリスクを少しでも軽減することができます。
患部の清潔保持
まず最も大切なのは、患部を清潔に保つことです。潰れたニキビの傷口から細菌が侵入すると、炎症が悪化し、治癒が遅れたり、ニキビ跡が残りやすくなったりします。
低刺激性の洗顔料をよく泡立て、優しく洗顔します。ゴシゴシこすらず、泡で汚れを吸着させるようなイメージで洗いましょう。洗顔後は、清潔なタオルで軽く押さえるように水分を拭き取ります。
可能であれば、消毒効果のある化粧水や、ノンアルコールの消毒液で軽く拭き取るのも良いでしょう。
炎症を抑えるための冷却
ニキビを潰した後は、患部が熱を持ったり、赤みが増したりすることがあります。これは炎症反応の一つです。このような場合は、清潔なガーゼやタオルで包んだ保冷剤などを短時間当てることで、炎症を和らげる効果が期待できます。
ただし、冷やしすぎは血行を悪くする可能性もあるため、1回あたり数分程度にとどめ、様子を見ながら行いましょう。直接氷を当てるのは刺激が強すぎるため避けてください。
冷却時の注意点
ポイント | 具体例 | 理由 |
---|---|---|
清潔なものを使用 | 清潔なガーゼ、タオルで保冷剤を包む | 細菌感染を防ぐため |
短時間で行う | 1回あたり数分程度 | 冷やしすぎによる血行不良を避けるため |
直接当てない | 氷などを直接肌に当てない | 凍傷や過度な刺激を避けるため |
保湿ケアの重要性
ニキビができた肌は乾燥しやすく、バリア機能が低下していることがあります。潰してしまった後は特に、肌が敏感になっているため、保湿ケアが重要です。化粧水で水分を補給し、乳液やクリームで油分を補い、水分の蒸発を防ぎましょう。
使用するスキンケア製品は、低刺激性で、ノンコメドジェニックテスト済み(ニキビができにくいことを確認済み)のものを選ぶと良いでしょう。オイルフリーの製品や、セラミド、ヒアルロン酸などの保湿成分が配合されたものがおすすめです。
刺激を避ける生活習慣
潰してしまったニキビは、非常にデリケートな状態です。物理的な刺激を極力避けることが、早期回復と跡を残さないために大切です。
避けるべき刺激
- 頻繁に触る、掻く
- 髪の毛が患部に触れる
- 刺激の強い化粧品の使用
- きついマスクの摩擦
また、紫外線もニキビやニキビ跡を悪化させる大きな要因です。外出時は日焼け止めを塗る、帽子や日傘を利用するなど、紫外線対策をしっかり行いましょう。
ニキビ跡を残さないための重要なポイント
ニキビが治った後に残る「ニキビ跡」は、多くの方にとって大きな悩みの一つです。ニキビ跡には、赤み、色素沈着、クレーターのような凹凸など、さまざまな種類があります。
これらの跡を残さないためには、ニキビができた初期の段階からの適切な対応が何よりも重要です。
早期治療の開始
ニキビ跡を防ぐ上で最も効果的なのは、ニキビができてしまったら、できるだけ早い段階で適切な治療を開始することです。
炎症が軽微なうちに、または炎症が起こる前にケアを始めることで、炎症が真皮層まで及ぶのを防ぎ、皮膚組織へのダメージを最小限に抑えることができます。
自己判断でケアを続けるのではなく、ニキビがなかなか治らない、繰り返しできる、炎症が強いといった場合は、早めに皮膚科を受診し、専門医のアドバイスを受けることを強く推奨します。
医療機関では、ニキビの種類や状態に合わせた外用薬や内服薬の処方、専門的な処置などを受けることができます。
紫外線対策の徹底
紫外線は、ニキビそのものを悪化させるだけでなく、ニキビ跡の色素沈着(シミ)の大きな原因となります。
炎症を起こした肌はメラニンが生成されやすい状態にあり、そこに紫外線が当たることで、茶色っぽいシミのような跡が残りやすくなります。
ニキビがある時もない時も、日頃から紫外線対策を徹底することが大切です。日焼け止めは、SPF値やPA表示を確認し、シーンに合わせて適切なものを選びましょう。
また、2~3時間おきに塗り直すことも忘れずに行ってください。帽子や日傘、UVカット効果のある衣類なども活用すると効果的です。
紫外線対策の具体例
対策方法 | ポイント | 補足 |
---|---|---|
日焼け止めの使用 | SPF30・PA++以上を目安に、こまめに塗り直す | 肌に優しいノンケミカル処方も検討 |
物理的な遮光 | 帽子、日傘、サングラス、UVカット衣類 | 日差しの強い時間帯は特に注意 |
生活習慣 | 紫外線の強い時間帯の外出を控える | 室内でも窓際では紫外線に注意 |
ターンオーバーを促すスキンケア
肌のターンオーバーとは、古い角質が剥がれ落ち、新しい皮膚細胞に生まれ変わる周期のことです。このターンオーバーが正常に行われることで、ニキビ跡の赤みや軽度の色素沈着は徐々に薄くなっていきます。
ターンオーバーを促すためには、適切な保湿ケアで肌のバリア機能を保つこと、ピーリング効果のある化粧品を肌の状態に合わせて取り入れること(ただし、やりすぎは禁物)、そしてバランスの取れた食事や質の高い睡眠を心がけることが重要です。
ただし、炎症が強いニキビがある場合は、ピーリングなどの刺激の強いケアは避けましょう。
バランスの取れた食事と睡眠
健康な肌を維持し、ニキビやニキビ跡の改善を促すためには、体の内側からのケアも非常に大切です。特に、バランスの取れた食事と質の高い睡眠は、肌の再生能力に大きく関わっています。
ビタミンC(抗酸化作用、コラーゲン生成促進)、ビタミンB群(皮脂バランス調整、皮膚の新陳代謝促進)、ビタミンE(血行促進、抗酸化作用)、亜鉛(皮膚の修復)などを積極的に摂取しましょう。
一方で、高脂肪食や高糖質食の過剰な摂取は、皮脂の分泌を増やしニキビを悪化させる可能性があるため注意が必要です。
また、睡眠不足は成長ホルモンの分泌を妨げ、肌のターンオーバーを乱す原因となります。毎日同じ時間に寝起きするなど、規則正しい生活リズムを整え、十分な睡眠時間を確保するよう心がけましょう。
ニキビの種類とそれぞれの対処法
「ニキビ」と一言で言っても、その状態や進行度によっていくつかの種類に分けられます。それぞれの種類に応じた適切な対処法を知ることが、ニキビを悪化させず、きれいに治すための鍵となります。
ここでは代表的なニキビの種類とその特徴、基本的な対処法について解説します。
白ニキビ(閉鎖面皰)
白ニキビは、毛穴の出口が閉じた状態で、内部に皮脂や角質が詰まっている初期段階のニキビです。ポツンとした白い点に見え、炎症や痛みは伴いません。この段階であれば、比較的治りやすく、跡も残りにくいとされています。
対処法としては、毛穴の詰まりを解消することが中心となります。角質ケア効果のある洗顔料や化粧水を使用し、丁寧に洗顔することが大切です。保湿もしっかり行い、肌のバリア機能を保ちましょう。
医療機関では、面皰圧出の対象となることがあります。自分で潰すのは、前述の通りリスクが伴います。
黒ニキビ(開放面皰)
黒ニキビは、毛穴の出口が開いており、詰まった皮脂や角質が空気に触れて酸化し、黒く見える状態のニキビです。毛穴に黒い点々として現れ、白ニキビ同様、通常は炎症や痛みを伴いません。
対処法は白ニキビと基本的には同じで、毛穴の詰まりを取り除くケアが中心です。洗顔やピーリング効果のあるスキンケア製品の使用が考えられます。こちらも医療機関では面皰圧出の対象となることがあります。
無理に押し出そうとすると毛穴を傷つける可能性があるため注意が必要です。
白ニキビ・黒ニキビのケアポイント
ケアの種類 | 具体的な方法 | 目的 |
---|---|---|
洗顔 | 角質ケア成分配合の洗顔料で優しく洗う | 毛穴の詰まり除去、予防 |
保湿 | ノンコメドジェニックの保湿剤を使用 | 肌のバリア機能維持 |
角質ケア | ピーリング効果のある化粧品(肌状態による) | 古い角質の除去促進 |
赤ニキビ(炎症性丘疹)
赤ニキビは、毛穴の中でアクネ菌が増殖し、炎症が起きて赤く腫れ上がった状態のニキビです。触ると痛みを感じることが多く、この段階からニキビ跡が残りやすくなります。
対処法としては、まず炎症を鎮めることが最優先です。抗炎症作用のある外用薬(市販薬または処方薬)を使用します。自分で潰すのは絶対に避け、刺激を与えないように注意深くスキンケアを行いましょう。
悪化させないためには、早期に皮膚科を受診することが望ましいです。
黄ニキビ(膿疱)
黄ニキビは、赤ニキビの炎症がさらに進行し、毛穴の中に膿が溜まって黄色く見える状態のニキビです。炎症が強く、ニキビの中心に黄色い膿点が見えます。
この段階のニキビは、潰すと細菌が周囲に広がりやすく、また、深いニキビ跡(クレーターなど)を残すリスクが非常に高いです。
対処法は、赤ニキビと同様に炎症を抑えることが基本ですが、より慎重な対応が必要です。絶対に自分で潰さず、速やかに皮膚科を受診してください。医療機関では、抗生物質の内服や外用、排膿処置などが行われることがあります。
ニキビケアにおける誤解と正しい知識
ニキビケアに関しては、さまざまな情報が溢れており、中には誤った認識や古い情報も少なくありません。ここでは、よくあるニキビケアの誤解を解き、正しい知識を身につけることで、より効果的なニキビ対策を目指しましょう。
「ニキビは青春のシンボル」という誤解
「ニキビは思春期特有のもので、放っておけば自然に治る」という考え方は、必ずしも正しくありません。確かに思春期はホルモンバランスの変化により皮脂分泌が活発になり、ニキビができやすい時期です。
しかし、大人になってからもストレスや生活習慣の乱れ、不適切なスキンケアなどによって「大人ニキビ」に悩まされる人は多くいます。
また、ニキビはれっきとした皮膚の炎症性疾患であり、放置することで悪化したり、ニキビ跡が残ったりする可能性があります。年齢に関わらず、ニキビができたら早期に適切なケアを行うことが重要です。
洗顔のしすぎは逆効果?
ニキビの原因の一つが皮脂の過剰な分泌であるため、「とにかく皮脂を落とそう」と一日に何度も洗顔したり、ゴシゴシ強くこすったりする方がいます。しかし、過度な洗顔は肌に必要な皮脂まで奪ってしまい、皮膚のバリア機能を低下させます。
バリア機能が低下すると、肌は乾燥しやすくなり、かえって皮脂の分泌を促したり、外部からの刺激に弱くなったりして、ニキビを悪化させる可能性があります。
洗顔は、朝晩の2回、低刺激性の洗顔料をよく泡立てて優しく行うのが基本です。洗いすぎに注意し、肌の潤いを保つことを心がけましょう。
適切な洗顔の頻度と方法
項目 | 推奨 | 避けるべきこと |
---|---|---|
頻度 | 1日2回(朝・晩) | 1日に何度も洗う |
方法 | よく泡立てて優しく洗う | ゴシゴシこする、熱いお湯で洗う |
洗顔料 | 低刺激性、ノンコメドジェニック | 洗浄力の強すぎるもの(肌質による) |
油分カットだけでは解決しない
ニキビ肌の方は、化粧品に含まれる油分を敬遠しがちです。確かに、油分の多い化粧品が毛穴を詰まらせ、ニキビの原因になることもあります。しかし、肌にとって適度な油分は、水分の蒸発を防ぎ、バリア機能を維持するために必要です。
完全に油分をカットしてしまうと、肌が乾燥して硬くなり、かえって毛穴が詰まりやすくなったり、バリア機能が低下して刺激を受けやすくなったりすることがあります。
「オイルフリー」や「ノンコメドジェニックテスト済み」の製品を選びつつ、化粧水で水分を補給した後、乳液やクリームで適度な油分を補い、肌の水分と油分のバランスを整えることが大切です。
スキンケアの油分コントロール
- 「オイルフリー」製品の活用
- 「ノンコメドジェニックテスト済み」表示の確認
- 肌質に合わせた保湿剤の選択
睡眠不足とストレスの影響
睡眠不足やストレスは、ホルモンバランスの乱れや免疫力の低下を引き起こし、ニキビを悪化させる大きな要因となります。
肌のターンオーバーは主に睡眠中に行われるため、睡眠時間が不足すると肌の再生が滞り、ニキビが治りにくくなったり、跡が残りやすくなったりします。
また、ストレスは皮脂の分泌を促すホルモンの分泌を増加させることが知られています。
質の高い睡眠を十分にとること、自分なりのストレス解消法を見つけて実践することなど、生活習慣全体を見直すことが、ニキビの予防・改善につながります。
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よくある質問 (FAQ)
ニキビの悩みやケア方法について、多くの方が疑問に思う点をQ&A形式でまとめました。ニキビ治療やセルフケアの参考にしてください。
- 潰したニキビから血が出たらどうすればいいですか?
-
まず、清潔なティッシュやガーゼで優しく押さえて止血してください。無理に血を絞り出そうとすると、さらに皮膚を傷つける可能性があります。血が止まったら、患部を低刺激性の消毒液で軽く消毒し、清潔な状態を保ちます。
その後は、できるだけ触らず、刺激を与えないように注意しましょう。赤みや腫れがひどい場合や、数日経っても改善しない場合は、皮膚科を受診することをおすすめします。
- ニキビパッチは効果がありますか?
-
ニキビパッチには、患部を保護し、外部からの刺激や細菌の付着を防ぐ効果があります。また、製品によっては、炎症を抑える成分や、滲出液を吸収する成分が含まれているものもあります。
特に、潰してしまった後や、炎症性のニキビを物理的に保護したい場合には有効な場合があります。 ただし、パッチを貼ることで毛穴が塞がれ、かえってアクネ菌が増殖しやすい環境を作ってしまう可能性もゼロではありません。
使用する場合は、清潔な肌に使用し、長時間貼りっぱなしにせず、製品の使用方法を守ることが大切です。また、根本的な治療にはならないため、炎症が強い場合や多発する場合は皮膚科医に相談しましょう。
ニキビパッチ使用のポイント
メリット デメリット・注意点 物理的保護(摩擦、汚れ防止) 根本治療ではない 外部からの細菌侵入防止 長時間の使用は蒸れの原因に (製品により)有効成分の浸透補助 肌に合わない場合がある - 皮膚科ではどのようなニキビ治療が受けられますか?
-
皮膚科では、ニキビの種類、重症度、肌質などに応じて、さまざまな治療法を組み合わせて行います。代表的な治療法としては、アダパレンや過酸化ベンゾイルなどの外用薬、抗生物質やビタミン剤などの内服薬の処方があります。
また、必要に応じて、面皰圧出(コメド圧出)、ケミカルピーリング、イオン導入、レーザー治療など、専門的な処置が行われることもあります。
自己判断で市販薬を使い続けるよりも、早期に専門医の診断を受け、適切な治療を開始することが、ニキビをきれいに治し、ニキビ跡を防ぐための近道です。
皮膚科での主なニキビ治療法
- 外用薬(アダパレン、過酸化ベンゾイル、抗菌薬など)
- 内服薬(抗菌薬、ビタミン剤、漢方薬など)
- 面皰圧出
- ケミカルピーリング
- ニキビ跡の色素沈着は治りますか?
-
ニキビ跡の色素沈着(炎症後色素沈着)は、肌のターンオーバーによって徐々に薄くなっていくことが期待できます。ただし、完全に消えるまでには数ヶ月から1年以上かかることもあり、個人差が大きいです。
セルフケアとしては、紫外線対策を徹底すること、美白有効成分(ビタミンC誘導体、トラネキサム酸など)が配合された化粧品を使用すること、肌のターンオーバーを促すために保湿をしっかり行い、バランスの取れた食事や十分な睡眠を心がけることが大切です。
なかなか改善しない場合や、より早く効果を実感したい場合は、皮膚科でハイドロキノン外用薬やトレチノイン外用薬の処方、ケミカルピーリング、レーザー治療などの相談をしてみるのも良いでしょう。
以上
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