薄毛は男性特有の悩みと思われがちですが、実は多くの女性も薄毛や抜け毛に悩んでいます。女性の薄毛は様々な要因が複雑に絡み合って発症することがあり、その種類も多岐にわたります。

この記事では、女性に見られる代表的な17種類の薄毛・脱毛症について、それぞれの特徴的な症状やご自身でできるセルフチェックの方法を詳しく解説します。
ご自身の状態を正しく理解し、適切なケアや専門医への相談を検討する上での参考にしてください。
▼当院で治療している薄毛の種類▼
休止期脱毛症 | びまん性脱毛症 | FAGA(女性男性型脱毛症) |
産後の抜け毛(産後脱毛症) | 牽引性脱毛症 | 円形脱毛症 |
内分泌性脱毛症 | 更年期の抜け毛(閉経期脱毛症) | 薬剤性脱毛症 |
栄養不足による脱毛症 | 脂漏性脱毛症 | 前頭部線維化脱毛症(FFA) |
毛孔性扁平苔癬性脱毛症 | 円板状エリテマトーデス性脱毛症 | 禿髪性毛包炎 |
抜毛症(トリコチロマニア) | 粃糠性脱毛症 |
休止期脱毛症
休止期脱毛症の概要
休止期脱毛症は、毛髪の成長サイクルが乱れ、成長期にある毛髪が一斉に休止期に移行することで生じる脱毛症です。通常、全毛髪の約10%が休止期にありますが、この割合が大幅に増加すると、全体的に髪が薄くなったように感じます。
多くの場合、原因となる出来事から2~3ヶ月後に脱毛が始まります。
主な症状
主な症状は、頭部全体のびまん性の脱毛です。特定の部位だけでなく、全体的に髪のボリュームが減少します。シャンプー時やブラッシング時の抜け毛の量が急激に増えることで気づくことが多いです。
頭皮に炎症やかゆみを伴うことは稀です。

セルフチェックのポイント
以下の点をチェックしてみましょう。最近、大きなストレスや体調変化がなかったか、抜け毛の毛根部分に白い塊(毛球)が付着しているか(これは正常な休止期の毛根です)、などを確認します。
急激なダイエットや出産なども誘因となることがあります。
休止期脱毛症の症状チェック
チェック項目 | 症状の目安 | 考えられること |
---|---|---|
抜け毛の量 | 1日に100本以上、特にシャンプー時に多い | 休止期への移行が亢進 |
脱毛の範囲 | 頭部全体が均一に薄くなる | びまん性の脱毛 |
頭皮の状態 | 通常、炎症やフケは少ない | 他の皮膚疾患との鑑別点 |

びまん性脱毛症
びまん性脱毛症とは
びまん性脱毛症は、女性の薄毛の代表的なタイプの一つで、頭部全体の髪の毛が均等に薄くなる状態を指します。
特定の部位が禿げるのではなく、全体のボリュームが失われ、分け目が目立ったり、地肌が透けて見えやすくなったりします。
進行は比較的緩やかであることが多いです。
症状の特徴
髪のハリやコシがなくなり、細く弱々しい毛が増えるのが特徴です。抜け毛の増加もみられますが、休止期脱毛症ほど急激ではない場合もあります。

頭皮にかゆみや痛みを伴うことは少ないですが、進行すると精神的なストレスを感じる方もいます。
自分でできる確認方法
鏡で分け目を確認し、以前より地肌が目立つようになっていないか、髪全体のボリュームが減っていないかなどを定期的に観察します。髪を束ねたときの太さが細くなったと感じる場合も注意が必要です。
びまん性脱毛症の主な所見
所見 | 具体的な状態 | セルフチェック時の注意点 |
---|---|---|
髪の密度 | 頭部全体の毛髪密度が低下 | 分け目や頭頂部が特に目立ちやすい |
毛髪の質 | 髪が細く、弱々しくなる | ハリ・コシの低下を感じる |
抜け毛 | 徐々に増加することがある | 排水溝や枕元の抜け毛量を確認 |

FAGA(女性男性型脱毛症)
FAGAの病態
FAGAはFemale Androgenetic Alopeciaの略で、女性男性型脱毛症とも呼ばれます。
男性のAGA(男性型脱毛症)と同様に、男性ホルモンの影響が関与していると考えられていますが、女性の場合は男性ほど顕著な薄毛にはなりにくい傾向があります。
頭頂部や前頭部の髪が薄くなることが多いです。
症状の現れ方
頭頂部の分け目が広がる、髪のボリュームが減る、地肌が透けて見えるといった症状が現れます。生え際が後退することは男性のAGAに比べて少ないですが、髪の毛が細く短くなる「軟毛化」が特徴です。

進行すると、頭頂部を中心に広範囲に薄毛が目立つようになります。
FAGAのセルフチェック
頭頂部の髪の毛と側頭部や後頭部の髪の毛の太さや密度を比較してみましょう。頭頂部の髪が明らかに細く、密度が低い場合はFAGAの可能性があります。
また、家族(特に母親や父方の女性)に同様の薄毛の方がいるかも参考になります。
FAGAの進行パターンと確認箇所
確認箇所 | 初期症状の例 | 進行時の所見 |
---|---|---|
頭頂部 | 分け目が目立つ、ボリューム低下 | 地肌の透け感が広がる |
前頭部 | 髪のハリ・コシがなくなる | 生え際付近の軟毛化 |
毛髪全体 | 髪が細くなる | 全体の密度低下 |
- 分け目が以前より広がった
- 髪全体のボリュームが減った
- 頭頂部の地肌が透けて見える

産後の抜け毛(産後脱毛症)
産後の抜け毛とは
出産後に一時的に抜け毛が増加する現象で、「産後脱毛症」や「分娩後脱毛症」とも呼ばれます。
妊娠中に女性ホルモンの分泌量が増加し、毛髪の成長期が維持されますが、出産後にホルモンバランスが急激に元に戻ることで、成長期にあった毛髪が一斉に休止期に入り、抜け落ちるために起こります。
症状と期間
通常、出産後2~3ヶ月頃から抜け毛が目立ち始め、半年から1年程度で自然に回復することが多いです。前頭部や頭頂部を中心に、全体的に髪が薄くなることがあります。

一時的なものであることが多いですが、抜け毛の量に驚き、不安を感じる方も少なくありません。
セルフチェックと心構え
出産後数ヶ月で抜け毛が増えてきた場合、まずは産後の抜け毛を疑います。特に他の症状(頭皮の異常な炎症など)がなければ、ホルモンバランスの変化による一時的なものである可能性が高いです。
過度に心配せず、栄養バランスの取れた食事と十分な睡眠を心がけることが大切です。
産後の抜け毛の確認ポイント
確認ポイント | 目安 | 一般的な経過 |
---|---|---|
抜け毛開始時期 | 出産後2~3ヶ月頃 | ホルモンバランスの急変による |
抜け毛の箇所 | 前頭部、頭頂部、全体的 | びまん性に抜けることが多い |
回復までの期間 | 通常6ヶ月~1年程度 | 自然に軽快することが多い |

牽引性脱毛症(けんいんせいだつもうしょう)
牽引性脱毛症の原因
牽引性脱毛症は、髪の毛が長時間にわたって強く引っ張られることで、毛根に負担がかかり、毛が抜けたり、生えにくくなったりする脱毛症です。
ポニーテールやきつい編み込み、エクステンションなど、特定の髪型を長期間続けることが主な原因となります。
症状の特徴
生え際や分け目など、髪が強く引っ張られる部分の毛が薄くなります。初期には、髪をほどいたときに軽い痛みや赤みを感じることがあります。進行すると、その部分の毛が細くなったり、生えてこなくなったりします。
毛穴が炎症を起こすこともあります。

自分でできるチェックと予防
いつも同じ場所で髪をきつく結んでいないか、エクステンションやヘアピースを長期間使用していないかなどを確認します。髪型を頻繁に変えたり、髪を強く引っ張らないようにしたりすることが予防につながります。
頭皮マッサージで血行を促すことも良いでしょう。
牽引性脱毛症のサイン
サイン | 具体的な状態 | 対処のヒント |
---|---|---|
生え際の薄毛 | 特に前髪やこめかみ部分が後退 | 髪型を変える、結び方を緩める |
分け目の拡大 | いつも同じ分け目で地肌が目立つ | 分け目を変える |
頭皮の痛み・赤み | 髪をほどいた後や、結んでいる最中 | 髪への負担を軽減する |
- いつも同じ髪型をしている
- 髪を強く結ぶことが多い
- エクステンションを長期間使用

円形脱毛症
円形脱毛症の病態
円形脱毛症は、自己免疫反応の異常により、リンパ球が毛根を攻撃してしまうことで発症すると考えられている脱毛症です。突然、円形または楕円形の脱毛斑ができます。1ヶ所だけの場合もあれば、多発することもあります。
年齢や性別を問わず発症します。
症状の多様性
典型的な症状は、境界明瞭な円形の脱毛斑です。脱毛斑の大きさは様々で、数ミリ程度のものから頭部全体に及ぶもの(全頭型)、さらには眉毛やまつ毛、体毛など全身の毛が抜けるもの(汎発型)まであります。

脱毛斑の皮膚は、通常、赤みやフケなどの異常は見られません。爪に点状のへこみや横筋が現れることもあります。
セルフチェックのポイント
頭皮を触ってみて、コインのような形の脱毛部分がないか確認します。合わせ鏡を使ったり、家族に見てもらったりすると発見しやすいです。初期には軽いかゆみや違和感を伴うこともありますが、無症状のことも多いです。
抜け毛の毛根部が細くなっている「感嘆符毛」が見られることもあります。
円形脱毛症の所見と確認点
所見 | 特徴 | 確認時のポイント |
---|---|---|
脱毛斑の形状 | 円形または楕円形、境界明瞭 | 頭皮全体をくまなくチェック |
脱毛斑の表面 | 通常、皮膚に異常なし(平滑) | 赤み、フケ、湿疹の有無 |
自覚症状 | 無症状が多いが、軽度のかゆみも | 違和感の有無を確認 |

内分泌性脱毛症
内分泌異常と脱毛
内分泌性脱毛症は、ホルモンバランスの乱れが原因で起こる脱毛症の総称です。甲状腺ホルモンや性ホルモンなどの異常が毛髪の成長に影響を与え、薄毛や抜け毛を引き起こします。原因となる内分泌疾患の治療が重要です。
代表的な原因疾患と症状
甲状腺機能亢進症(バセドウ病)や甲状腺機能低下症(橋本病)では、びまん性の脱毛が見られることがあります。多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)では、男性ホルモンの影響でFAGAに似た症状が出ることがあります。

その他、副腎皮質ホルモンの異常なども脱毛の原因となり得ます。
セルフチェックと受診の目安
脱毛以外に、原因となる内分泌疾患特有の症状(体重の急激な変化、動悸、倦怠感、月経不順など)がないか確認します。これらの症状とともに脱毛が見られる場合は、内科や婦人科、内分泌科の受診を検討しましょう。
血液検査などでホルモン値を調べることが診断に繋がります。
内分泌異常に伴う脱毛のチェック項目
関連する可能性のある疾患 | 脱毛以外の主な症状例 | 脱毛の特徴 |
---|---|---|
甲状腺機能異常 | 体重変化、動悸、倦怠感、発汗異常 | びまん性脱毛、毛髪の質の変化 |
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS) | 月経不順、にきび、多毛 | 頭頂部中心の薄毛(FAGA様) |
高プロラクチン血症 | 乳汁分泌、月経不順 | びまん性脱毛の可能性 |

更年期の抜け毛(閉経期脱毛症)
更年期とホルモンバランスの変化
更年期(一般的に40代後半から50代前半)に起こる抜け毛や薄毛は、女性ホルモン(特にエストロゲン)の急激な減少が大きく関わっています。
エストロゲンは毛髪の成長を促し、ハリやコシを保つ働きがあるため、その減少が毛髪の質の低下や成長サイクルの乱れを引き起こします。
症状の現れ方
びまん性脱毛症やFAGAに似た症状が現れることが多いです。頭頂部や分け目が薄くなったり、髪全体が細くボリュームダウンしたりします。抜け毛の増加だけでなく、髪のうねりやパサつきといった髪質の変化を感じる人もいます。

ホットフラッシュや気分の落ち込みなど、他の更年期症状と併発することもあります。
セルフチェックと対策のヒント
40代後半以降で、他の明らかな原因がないのに薄毛や抜け毛が気になり始めたら、更年期の影響を考えます。他の更年期症状の有無も参考にしましょう。
生活習慣の見直し(バランスの取れた食事、質の良い睡眠、適度な運動、ストレス管理)が大切です。
更年期における毛髪変化のサイン
変化のポイント | 具体的な状態 | 考えられる背景 |
---|---|---|
髪のボリューム | 全体的に少なくなる、分け目が目立つ | エストロゲン減少による成長期短縮 |
髪質 | 細くなる、ハリ・コシ低下、うねり | 毛髪のタンパク質合成への影響 |
抜け毛の量 | 徐々に増加、または変化なしでも薄毛進行 | 休止期毛の割合増加 |

薬剤性脱毛症

薬剤による脱毛の概要
薬剤性脱毛症は、特定の医薬品の副作用として起こる脱毛です。原因となる薬剤の服用中止または変更により改善することが多いですが、薬剤の種類や使用期間、個人の体質によって脱毛の程度や回復状況は異なります。
抗がん剤による脱毛がよく知られていますが、それ以外の薬剤でも起こり得ます。
脱毛を引き起こす可能性のある薬剤
抗がん剤の多くは、細胞分裂が活発な毛母細胞に作用し、成長期脱毛を引き起こします。その他、抗凝固薬、高血圧治療薬、脂質異常症治療薬、抗うつ薬、抗てんかん薬、インターフェロン製剤など、様々な薬剤で休止期脱毛が報告されています。
すべての人が副作用として脱毛を経験するわけではありません。
セルフチェックと医師への相談
新しい薬を飲み始めてから、あるいは長期間服用している薬がある中で抜け毛が増えた場合、薬剤性脱毛症の可能性を考えます。自己判断で薬を中止せず、必ず処方した医師や薬剤師に相談してください。
薬の変更や減量が可能かどうか、医師が判断します。
薬剤性脱毛症の確認事項
確認事項 | 内容 | 対応のポイント |
---|---|---|
薬剤の服用歴 | 脱毛開始時期と薬剤服用開始時期の関連 | お薬手帳などで確認 |
脱毛のパターン | 成長期脱毛か休止期脱毛か(薬剤による) | 医師の診断が重要 |
他の副作用の有無 | 脱毛以外の体調変化 | 総合的に医師に伝える |
- 抗がん剤
- 一部の降圧薬
- 抗凝固薬

栄養不足による脱毛症
栄養と毛髪の健康
栄養不足による脱毛症は、毛髪の成長に必要な栄養素が不足することで起こる脱毛症です。特にタンパク質、亜鉛、鉄分、ビオチンなどのビタミンB群の欠乏が影響しやすいと言われています。
過度なダイエットや偏った食生活、消化吸収不良などが原因となります。
主な症状と関連栄養素
髪が細くなる、パサつく、ツヤがなくなる、切れやすくなるなどの髪質の変化とともに、びまん性の脱毛が見られることがあります。爪がもろくなったり、皮膚が乾燥したりといった他の症状を伴うこともあります。

鉄欠乏性貧血がある女性では、脱毛が起こりやすいことが知られています。
食生活のセルフチェック
最近、極端な食事制限をしていないか、インスタント食品や外食に偏っていないか、肉・魚・大豆製品・緑黄色野菜・海藻類などをバランス良く摂取しているか振り返ってみましょう。
必要に応じて血液検査で栄養状態を確認することも有効です。
栄養欠乏と毛髪への影響
不足しやすい栄養素 | 毛髪への影響(例) | 多く含む食品(例) |
---|---|---|
タンパク質 | 毛髪の主成分、不足すると細毛・弱毛 | 肉、魚、卵、大豆製品 |
亜鉛 | 毛髪の合成に関与、不足すると脱毛 | 牡蠣、レバー、牛肉 |
鉄分 | 毛母細胞への酸素供給、不足すると脱毛 | レバー、赤身肉、ほうれん草 |

脂漏性脱毛症(しろうせいだつもうしょう)
脂漏性皮膚炎と脱毛
脂漏性脱毛症は、脂漏性皮膚炎が頭皮に発症し、その炎症や過剰な皮脂が毛穴を塞いだり、毛髪の成長環境を悪化させたりすることで起こる脱毛症です。
頭皮の赤み、かゆみ、フケ(湿ったものや黄色っぽいもの)などが主な症状です。
症状の特徴
頭皮がベタつき、フケが多くなります。特に皮脂の分泌が多い前頭部や頭頂部、生え際などに症状が出やすいです。炎症が強いと、抜け毛が増えたり、髪が細くなったりします。

マラセチアという常在菌(カビの一種)の増殖が関与していると考えられています。
頭皮状態のセルフチェック
頭皮を鏡で見て、赤みがないか、ベタついたフケや黄色っぽいかさぶたのようなものがないか確認します。強いかゆみや、洗髪してもすぐに頭皮が脂っぽくなる場合は注意が必要です。
生活習慣の乱れやストレス、不適切なヘアケアも悪化要因となります。
脂漏性脱毛症の頭皮サイン
頭皮のサイン | 具体的な状態 | 考えられる原因 |
---|---|---|
フケ | 黄色っぽく湿ったフケ、または乾燥した細かいフケ | 皮脂の過剰分泌、マラセチア菌の増殖 |
赤み・かゆみ | 頭皮の炎症、持続的なかゆみ | 皮膚炎の存在 |
ベタつき | 洗髪後もすぐに頭皮や髪が脂っぽくなる | 皮脂腺の活動亢進 |

前頭部線維化脱毛症(FFA)
FFAの概要
前頭部線維化脱毛症(Frontal Fibrosing Alopecia, FFA)は、主に閉経後の女性に見られる進行性の瘢痕性脱毛症の一種です。
前頭部から側頭部にかけての生え際が帯状に後退していくのが特徴で、眉毛の脱毛を伴うことも多いです。
原因は完全には解明されていませんが、自己免疫的な要因やホルモンの関与が考えられています。
症状の進行と特徴
生え際が徐々に後退し、その部分の皮膚は滑らかで光沢を帯び、毛穴が見えにくくなります。脱毛部位の毛包周囲に赤みや軽い鱗屑(フケのようなもの)が見られることもあります。

進行は緩やかですが、一度失われた毛包は再生しないため、早期の診断と対応が重要です。
セルフチェックのポイント
前髪の生え際が以前より後退していないか、特に額の左右の角の部分やこめかみにかけて薄くなっていないかを確認します。眉毛の外側(特に1/3程度)が薄くなったり抜けたりしていないかも重要なサインです。
生え際の皮膚が硬くなったり、つっぱる感じがしたりすることもあります。
FFAの初期サインと確認箇所
確認箇所 | 初期サインの例 | 進行時の特徴 |
---|---|---|
前頭部の生え際 | 産毛の消失、わずかな後退 | 帯状の明らかな後退、皮膚の平滑化 |
眉毛 | 外側の毛が薄くなる、抜けやすくなる | 眉毛全体の菲薄化、消失 |
脱毛部の皮膚 | 毛孔周囲の赤み、軽いかゆみ | 皮膚の光沢、毛孔の消失 |

毛孔性扁平苔癬(LPP)性脱毛症
LPPの病態
毛孔性扁平苔癬(もうこうせいへんぺいたいせん:Lichen Planopilaris, LPP)は、毛包を標的とする炎症性の瘢痕性脱毛症です。リンパ球が毛包を攻撃し、破壊することで永久的な脱毛が生じます。
頭頂部や側頭部に好発し、単発または多発性の脱毛斑を形成します。
原因は不明ですが、自己免疫疾患の一つと考えられています。
症状の特徴
脱毛斑の辺縁では、毛孔周囲に赤みや鱗屑、角栓(毛穴の詰まり)が見られることがあります。脱毛部位の皮膚は萎縮し、瘢痕化して光沢を帯びることがあります。かゆみやヒリヒリとした痛みを伴うことも少なくありません。

進行すると脱毛斑(だつもうはん)が拡大・融合することがあります。
セルフチェックと注意点
頭皮に不規則な形の脱毛斑があり、その周りの毛穴に赤みやフケのようなものが付着していないか確認します。脱毛部分の皮膚が硬くなったり、テカテカ光ったりしていないかも見ます。
かゆみや痛みが続く場合は、早めに皮膚科専門医に相談することが大切です。
LPPの主な皮膚所見
所見 | 具体的な状態 | 自覚症状の例 |
---|---|---|
脱毛斑 | 不規則な形状、瘢痕化、皮膚萎縮 | 特になし、または軽度の違和感 |
毛孔周囲 | 発赤、鱗屑、毛孔角栓 | かゆみ、ヒリヒリ感、圧痛 |
残存毛髪 | 脱毛斑内に孤立して残る毛髪 | ― |

円板状エリテマトーデス(DLE)性脱毛症
DLEと脱毛
円板状エリテマトーデス(Discoid Lupus Erythematosus, DLE)は、皮膚に限局して症状が現れる慢性的な自己免疫疾患の一種です。頭皮に発症すると、毛包が破壊されて瘢痕性の脱毛を引き起こすことがあります。
全身性エリテマトーデス(SLE)の一症状として現れることも、DLE単独で発症することもあります。
症状の現れ方
境界明瞭な円板状の赤い局面(盛り上がり)として始まり、表面には厚い鱗屑(フケ)が付着し、毛穴が角栓で詰まることがあります。

進行すると局面の中心部が萎縮し、色素沈着や色素脱失、瘢痕化を伴う脱毛斑となります。
日光曝露部位に好発するため、頭皮以外にも顔面や耳にも同様の皮疹が見られることがあります。
セルフチェックと鑑別点
頭皮に赤い盛り上がりのある皮疹があり、フケが厚くこびりついている、毛穴が詰まっている、といった所見がないか確認します。皮疹部分にかゆみや痛みを伴うこともあります。
円形脱毛症と異なり、脱毛斑の表面に明らかな皮膚の変化(赤み、鱗屑、萎縮など)が見られるのが特徴です。
DLEによる頭皮病変の特徴
病変の特徴 | 初期の所見例 | 進行後の所見例 |
---|---|---|
皮疹の形状 | 円板状の赤い局面、軽度の腫脹 | 中心部の萎縮、辺縁の活動性 |
表面の状態 | 厚い鱗屑、毛孔角栓 | 瘢痕化、色素異常(沈着・脱失) |
自覚症状 | かゆみ、軽度の痛み | 症状が軽快または持続 |

禿髪性毛包炎(とくはつせいもうほうえん)
禿髪性毛包炎とは
禿髪性毛包炎(Dissecting cellulitis of the scalp または Perifolliculitis capitis abscedens et suffodiens)は、頭皮に多発性の膿瘍(膿のたまり)や結節(しこり)を形成し、それらが癒合・トンネル化して瘢痕性の脱毛を引き起こす稀な慢性炎症性疾患です。
主に若い成人男性に多いですが、女性にも発症します。
症状の経過
初期には、毛穴に一致した痛みを伴う小さなおでき(毛包炎)として始まります。次第に複数の毛包炎が深部でつながり、波動を触れる膿瘍や硬い結節を形成します。

これらが破れて膿や血液が排出されることもあります。治癒と再発を繰り返し、最終的には不規則な形の瘢痕性脱毛斑を残します。
セルフチェックと早期発見の重要性
頭皮に痛みを伴うおできやしこりが繰り返しでき、なかなか治らない、あるいは膿が出るような場合はこの疾患を疑います。特に後頭部や頭頂部に好発します。
早期に適切な治療を開始しないと、広範囲の瘢痕性脱毛に至る可能性があるため、疑わしい症状があれば速やかに皮膚科を受診することが重要です。
禿髪性毛包炎の主な症状
症状 | 特徴 | 注意点 |
---|---|---|
膿疱・結節 | 痛みを伴う、多発性、深在性 | 徐々に拡大・癒合することがある |
排膿・出血 | 膿瘍が自壊して膿や血液が出る | 感染のリスク、悪臭を伴うことも |
瘢痕性脱毛 | 炎症が治癒した後に不規則な脱毛斑 | 毛包破壊による永久脱毛 |
- 痛みを伴うおできが多発
- しこりができる
- 膿が出る

抜毛症(トリコチロマニア)
抜毛症の概要
抜毛症(トリコチロマニア)は、自分自身の毛髪を繰り返し引き抜いてしまう精神疾患の一種です。この行為を止めたいと思っていても、衝動を抑えられないことが多いです。
主に学童期から思春期に発症しやすいですが、成人でも見られます。ストレスや不安が誘因となることがあります。
症状と行動の特徴
不規則な形の脱毛斑が特徴で、毛髪の密度が低下し、短い切れ毛や途中で折れた毛が目立ちます。本人が無意識に、あるいは特定の状況下(勉強中、テレビを見ている時など)で毛を抜くため、脱毛斑の境界は不明瞭なことが多いです。

頭髪だけでなく、眉毛やまつ毛を抜く場合もあります。
セルフチェックと周囲の気づき
自分で毛を抜く癖に気づいているか、特定の状況で無意識に髪を触ったり引っ張ったりしていないか確認します。脱毛斑に様々な長さの毛が混在している、毛根から抜かれた毛ではなく途中で切れた毛が多い、といった所見も参考になります。
本人が行為を否認することもあるため、家族など周囲の人が気づくことも重要です。
抜毛症のサインと確認ポイント
サイン | 具体的な状態 | 確認時の留意点 |
---|---|---|
脱毛斑の形状 | 不規則、境界不明瞭、まだら状 | 利き手側の頭髪に多い傾向 |
残存毛の状態 | 様々な長さの毛、切れ毛、折れ毛 | 毛根から抜けていない毛が多い |
本人の行動 | 髪を触る、ねじる、引っ張る癖 | 無意識の行為であることも |

粃糠性脱毛症(ひこうせいだつもうしょう)
粃糠性脱毛症とは
粃糠性脱毛症は、大量の乾いたフケ(粃糠様落屑)を伴う脱毛症です。頭皮の乾燥やターンオーバーの異常などが原因でフケが過剰に発生し、これが毛穴を塞いだり、頭皮環境を悪化させたりすることで抜け毛を引き起こすと考えられています。
脂漏性脱毛症が湿ったフケであるのに対し、こちらは乾燥したフケが特徴です。
症状の特徴
主な症状は、頭皮全体の乾燥と、細かい米ぬかのような乾いたフケが大量に出ることです。頭皮にかゆみを伴うことも多く、掻くことでさらに頭皮が傷つき、炎症が悪化して脱毛が進行する場合があります。

髪全体が薄くなるびまん性の脱毛が見られることが多いです。
セルフチェックと頭皮ケア
肩や枕に細かいフケが大量に落ちていないか、頭皮が乾燥してカサカサしていないか、強いかゆみがないかなどを確認します。
洗浄力の強すぎるシャンプーの使用や、頻繁すぎる洗髪は頭皮の乾燥を助長することがあるため、適切なヘアケアを心がけることが大切です。保湿を意識した頭皮ケアも有効です。
粃糠性脱毛症の頭皮状態
頭皮の状態 | 具体的な症状 | 考えられる要因 |
---|---|---|
フケ | 乾燥した細かいフケが多量、米ぬか様 | 頭皮の乾燥、ターンオーバー異常 |
乾燥 | 頭皮全体のカサつき、つっぱり感 | 皮脂分泌低下、保湿不足 |
かゆみ | 持続的なかゆみ、掻破による炎症 | 乾燥、フケによる刺激 |
- 乾燥した細かいフケが多い
- 頭皮がカサカサする
- 頭皮にかゆみがある

まとめ
女性の薄毛や脱毛症には、この記事で解説したように非常に多くの種類があり、それぞれ症状やご自身でチェックする際のポイントが異なります。
抜け毛が増えた、髪が薄くなったと感じたら、まずはご自身の状態を冷静に観察し、どのタイプに当てはまる可能性があるか考えてみましょう。
しかし、自己判断は禁物です。気になる症状があれば、早めに皮膚科専門医にご相談ください。医師は専門的な知識と検査に基づいて正確な診断を行い、それぞれの状態に合わせた適切なアドバイスや治療法を提案します。
早期発見・早期対応が、健やかな髪と頭皮を取り戻すための第一歩です。
薄毛には様々な原因が考えられます。ご自身の抜け毛や薄毛の原因と検査方法について詳しく知りたい方は、こちらの「薄毛(女性)の原因と検査について」に関する記事も合わせてご覧ください。
原因を理解することで、より適切なケアや対策を見つける手助けになります。
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