最近、抜け毛が増えた、頭皮のかゆみやフケが気になる…。それはもしかしたら「粃糠性脱毛症」のサインかもしれません。特に女性はホルモンバランスの変化やストレス、生活習慣など様々な要因で頭皮トラブルを抱えやすいものです。

この記事では、粃糠性脱毛症の原因から症状、自分でできるチェック方法、皮膚科での治療法、そして日常生活での予防とケアについて詳しく解説します。
一人で悩まず、正しい知識を身につけて健やかな髪と頭皮を取り戻しましょう。
つらい抜け毛、もしかして?粃糠性脱毛症について知りましょう
粃糠性脱毛症は、頭皮の異常、特に大量のフケを伴う脱毛症の一種です。フケが毛穴を塞ぎ、頭皮環境が悪化することで炎症が起き、健康な髪の成長が妨げられると考えられています。
この状態が続くと、抜け毛が増え、髪全体が薄く感じられるようになることがあります。男性だけでなく、女性にも見られる症状であり、早期の対応が大切です。
粃糠性脱毛症とは何か

粃糠性脱毛症の「粃糠(ひこう)」とは、米ぬかのように細かく乾燥したフケを指します。この細かいフケが頭皮全体に広がり、毛穴を塞いでしまうことが特徴です。
毛穴が塞がれると、皮脂や汗の排出がうまくいかず、細菌が繁殖しやすい環境になります。これにより頭皮に炎症が生じ、毛根がダメージを受けて抜け毛が進行します。初期にはかゆみやフケの増加といった症状が現れることが多いです。
フケと脱毛の関連性
フケ自体が直接的に脱毛を引き起こすわけではありませんが、大量のフケは頭皮環境の悪化を示唆する重要なサインです。
フケには乾燥性のものと脂性のものがあり、粃糠性脱毛症では主に乾燥性の細かいフケが多く見られます。このフケが毛穴を塞ぐと、毛髪の正常なサイクルが乱れ、成長期にある髪の毛までもが抜けやすくなることがあります。
また、フケによるかゆみで頭皮を掻きむしってしまうと、物理的な刺激でさらに毛が抜けたり、頭皮に傷がついて炎症が悪化したりする悪循環に陥ることもあります。
他の脱毛症との違い
脱毛症には様々な種類があり、それぞれ原因や症状、治療法が異なります。例えば、円形脱毛症は自己免疫疾患が関与していると考えられ、突然円形に毛が抜けるのが特徴です。
男性型脱毛症(AGA)は男性ホルモンの影響が大きく、主に前頭部や頭頂部から薄毛が進行します。これに対し、粃糠性脱毛症は頭皮のフケや炎症が主な原因であり、頭部全体にびまん性の脱毛が見られることが多いのが特徴です。
正確な診断のためには、皮膚科専門医の診察を受けることが重要です。
女性に多い脱毛症の特徴
女性の薄毛や脱毛は、男性とは異なる特徴を持つことがあります。女性型脱毛症(FAGAまたはFPHL)では、頭頂部を中心に髪の分け目が広がるように薄くなることが多いです。
また、出産後のホルモンバランスの変化による「分娩後脱毛症」や、過度なダイエット、ストレス、甲状腺疾患などが原因で起こる脱毛もあります。
粃糠性脱毛症も、頭皮の乾燥や不適切なヘアケア、ストレスなどが誘因となり、女性にも発症しやすい脱毛症の一つと言えます。
これって粃糠性脱毛症?気になるサインを見逃さないで
粃糠性脱毛症(ひこうせいだつもうしょう)は、初期には自覚しにくいこともありますが、いくつかの特徴的なサインがあります。これらのサインに早めに気づき、適切な対応をすることが、症状の悪化を防ぐために大切です。
日々の頭皮の状態をチェックする習慣をつけましょう。
初期症状をチェック

粃糠性脱毛症の初期には、以下のような症状が現れることがあります。一つでも当てはまる場合は注意が必要です。
- 以前よりフケの量が増えた(特に乾いた細かいフケ)
- 頭皮にかゆみを感じることが多くなった
- シャンプーやブラッシング時の抜け毛が増えた気がする
- 頭皮が乾燥しやすく、つっぱる感じがする
頭皮のフケとかゆみ
粃糠性脱毛症の最も代表的な初期症状は、乾燥した細かいフケの増加と、それに伴う頭皮のかゆみです。
フケは頭皮のターンオーバーが乱れることで発生しますが、粃糠性脱毛症の場合は特に角質が剥がれやすくなり、パラパラとしたフケが目立つようになります。
かゆみは、乾燥や炎症によって引き起こされることが多く、我慢できずに掻いてしまうと頭皮を傷つけ、さらに症状を悪化させる可能性があります。
抜け毛の量と質の変化
抜け毛の量が増えることも、粃糠性脱毛症の重要なサインです。特に、以前と比べてシャンプー時や朝起きた時の枕元の抜け毛が明らかに増えた場合は注意が必要です。
また、抜けた毛が細く短い、いわゆる「未熟な毛」が多い場合も、毛髪の成長サイクルが乱れている可能性を示唆します。健康な髪が育ちにくい頭皮環境になっているサインかもしれません。
進行すると現れる症状
初期症状を放置していると、粃糠性脱毛症は徐々に進行し、より深刻な症状が現れることがあります。脱毛が目立つようになり、地肌が透けて見える範囲が広がってくることもあります。
頭皮の赤みや炎症
フケや乾燥、かゆみが続くと、頭皮は炎症を起こしやすくなります。炎症が起きると、頭皮が赤みを帯びたり、ヒリヒリとした痛みを感じたりすることがあります。この炎症が毛根にダメージを与え、脱毛をさらに促進させる原因となります。
炎症が慢性化すると、治療にも時間がかかるようになるため、早期のケアが求められます。
毛穴の詰まりと髪の細り
粃糠性脱毛症では、剥がれ落ちた角質(フケ)や過剰な皮脂、汚れなどが毛穴に詰まりやすくなります。毛穴が詰まると、髪の毛の正常な成長が妨げられ、新しく生えてくる髪が細くなったり、十分に成長する前に抜け落ちてしまったりします。
その結果、髪全体のボリュームが失われ、薄毛が進行しているように感じられます。
頭皮トラブルのサイン
サイン | 具体的な症状 | 考えられる状態 |
---|---|---|
フケの増加 | 乾燥した細かいフケ、肩に落ちるフケ | 頭皮の乾燥、ターンオーバーの乱れ |
かゆみ | 持続的なかゆみ、夜間のかゆみ | 乾燥、炎症、アレルギー反応 |
赤み | 頭皮の一部または全体の赤み | 炎症、刺激、血行不良 |
フケやかゆみだけじゃない?女性特有の髪の悩みと粃糠性脱毛症
女性の髪の悩みは、見た目の問題だけでなく、心理的なストレスにもつながることがあります。
粃糠性脱毛症は、フケやかゆみといった直接的な症状に加えて、女性特有のライフスタイルの変化や感受性と深く関わっている場合があります。
ホルモンバランスと頭皮環境

女性の体は、月経周期、妊娠、出産、更年期など、生涯を通じてホルモンバランスが大きく変動します。これらのホルモンバランスの変化は、頭皮環境にも影響を与え、皮脂の分泌量や頭皮の水分量を変化させることがあります。
特にエストロゲンの減少は、頭皮の乾燥を招きやすく、粃糠性脱毛症の誘因となることがあります。
妊娠・出産と髪の変化
妊娠中はエストロゲンなどの女性ホルモンが増加し、髪の毛の成長期が延長されるため、一時的に髪が豊かになることがあります。しかし、出産後はホルモンバランスが急激に変化し、多くの女性が「分娩後脱毛症」を経験します。
この時期に頭皮ケアを怠ると、粃糠性脱毛症を併発したり、症状が悪化したりする可能性があります。産後の抜け毛や頭皮トラブルは一時的なことが多いですが、長引く場合は皮膚科医に相談しましょう。
更年期と頭皮の乾燥
更年期に入ると、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌量が大幅に減少し、心身に様々な変化が現れます。頭皮においては、コラーゲンの減少や水分保持能力の低下により、乾燥が進みやすくなります。
頭皮の乾燥はバリア機能の低下を招き、外部からの刺激に敏感になったり、フケやかゆみが生じやすくなったりします。これが粃糠性脱毛症の発症や悪化につながることがあります。適切な保湿ケアが重要です。
ストレスと髪への影響
現代社会において、仕事や家庭、人間関係など、女性が抱えるストレスは多岐にわたります。過度なストレスは自律神経のバランスを乱し、血行不良を引き起こすことがあります。
頭皮への血流が悪くなると、毛根に必要な栄養素が十分に行き渡らず、健康な髪の成長が妨げられます。
また、ストレスは免疫機能の低下を招き、頭皮の常在菌であるマラセチア菌の異常繁殖を助長し、脂漏性皮膚炎や粃糠性脱毛症の一因となることもあります。
生活習慣と頭皮の健康
睡眠不足、偏った食事、喫煙、過度な飲酒などの不規則な生活習慣も、頭皮環境に悪影響を与えます。
特に、髪の主成分であるタンパク質や、髪の成長をサポートするビタミン、ミネラルが不足すると、髪が細くなったり、抜けやすくなったりします。バランスの取れた食事と十分な睡眠は、健やかな頭皮と髪を育むために必要です。
女性のライフスタイルと頭皮トラブル
ライフイベント/習慣 | 頭皮への影響 | 関連する可能性のある症状 |
---|---|---|
妊娠・出産 | ホルモンバランスの急変 | 一時的な脱毛、頭皮の敏感化 |
更年期 | エストロゲン減少による乾燥 | フケ、かゆみ、髪のハリ・コシ低下 |
過度なストレス | 血行不良、免疫力低下 | 抜け毛増加、炎症、フケ |
もしかして私も?自宅でできる簡単セルフチェック

皮膚科を受診する前に、ご自身で頭皮の状態をチェックしてみることも有効です。以下の項目を確認し、当てはまるものが多い場合は、粃糠性脱毛症(ひこうせいだつもうしょう)の可能性を考えてみましょう。
ただし、セルフチェックはあくまで目安であり、正確な診断は専門医による診察が必要です。
頭皮の状態を観察する
鏡を使って、頭皮の色や状態を観察してみましょう。特に分け目や生え際、頭頂部などを念入りにチェックします。
- 頭皮が全体的に赤い、または部分的に赤みがある
- 頭皮がカサカサして乾燥している
- 細かいフケが髪の毛や肩に落ちている
- 毛穴の周りが赤くなっていたり、プツプツとした湿疹があったりする
フケのタイプと量
フケには、乾燥してパラパラとした「乾性フケ」と、ベタベタとして湿り気のある「脂性フケ」があります。粃糠性脱毛症では、主に乾性フケが多く見られます。
洗髪後数時間でフケが目立つようになるか、黒い服を着ると肩にフケが落ちるのが気になるかなどを確認しましょう。以前と比べてフケの量が明らかに増えている場合は注意が必要です。
頭皮の色と弾力
健康な頭皮は青白い色をしており、適度な弾力があります。頭皮が赤みを帯びている場合は炎症が起きている可能性があり、黄色っぽくくすんでいる場合は血行不良や皮脂の酸化が考えられます。
指で頭皮を軽くつまんでみて、硬く動きにくい場合は、血行が悪くなっているか、乾燥が進んでいるサインかもしれません。
抜け毛の状態をチェック
シャンプー時やブラッシング時、朝起きた時の枕など、抜け毛の状態も確認しましょう。
抜け毛の本数と毛根の形
1日に抜ける髪の毛は50本から100本程度が正常範囲とされていますが、これを大幅に超える場合は注意が必要です。また、抜けた毛の毛根部分を観察してみてください。健康な毛根は、マッチ棒の先端のように丸く膨らんでいます。
毛根が細く尖っていたり、毛根に白い付着物(角栓様物質)がついていたりする場合は、毛穴の詰まりや頭皮環境の悪化が考えられます。
セルフチェック項目
チェック項目 | はい | いいえ |
---|---|---|
最近、乾いた細かいフケが目立つ | ||
頭皮にかゆみを感じることが多い | ||
シャンプー時の抜け毛が増えた | ||
頭皮が赤っぽい、または炎症がある | ||
髪の毛が以前より細くなった気がする |
上記の表で「はい」が多いほど、粃糠性脱毛症の可能性が高まります。気になる場合は早めに皮膚科を受診しましょう。
なぜ?粃糠性脱毛症を引き起こすさまざまな要因
粃糠性脱毛症(ひこうせいだつもうしょう)は、単一の原因で発症するわけではなく、複数の要因が複雑に絡み合って引き起こされると考えられています。主な原因を理解することで、適切な予防や対策につなげることができます。
頭皮の乾燥とバリア機能の低下
健康な頭皮は、皮脂膜と角質層によって外部の刺激から守られています。しかし、頭皮が乾燥すると、このバリア機能が低下し、外部からの刺激(紫外線、花粉、化学物質など)を受けやすくなります。
また、乾燥は頭皮のターンオーバーを乱し、未熟な角質細胞が剥がれ落ちやすくなるため、フケが発生しやすくなります。これが粃糠性脱毛症の引き金となることがあります。
乾燥を招く要因
頭皮の乾燥は、空気の乾燥(特に冬場)、洗浄力の強すぎるシャンプーの使用、熱いお湯での洗髪、ドライヤーの当てすぎ、加齢による皮脂分泌の減少などが原因で起こります。
また、体質的に乾燥肌の人も頭皮が乾燥しやすい傾向にあります。
不適切なヘアケア

毎日のヘアケアが、知らず知らずのうちに頭皮に負担をかけていることがあります。間違ったシャンプーの選び方や洗い方、スタイリング剤の使いすぎなどは、頭皮環境を悪化させ、粃糠性脱毛症の原因となり得ます。
シャンプーの選び方と洗い方
洗浄力の強すぎるシャンプー(高級アルコール系など)は、頭皮に必要な皮脂まで洗い流してしまい、乾燥を助長することがあります。特に乾燥肌や敏感肌の方は、アミノ酸系やベタイン系などのマイルドな洗浄成分のシャンプーを選ぶとよいでしょう。
また、洗髪時には爪を立てずに指の腹で優しくマッサージするように洗い、すすぎ残しがないようにしっかりと洗い流すことが大切です。すすぎ残ったシャンプー剤は、頭皮への刺激となり、かゆみや炎症、フケの原因になります。
スタイリング剤やパーマ・カラーの影響
ヘアワックスやスプレーなどのスタイリング剤が頭皮に直接付着したり、毛穴に詰まったりすると、炎症を引き起こすことがあります。
また、パーマ液やカラーリング剤に含まれる化学物質も、頭皮への刺激となり、乾燥やかぶれ、アレルギー反応を起こす可能性があります。
これらの施術を頻繁に行う場合は、頭皮への負担を考慮し、信頼できる美容室で相談するか、施術間隔を空けるなどの工夫が必要です。
頭皮に負担をかけるヘアケア習慣
習慣 | 頭皮への影響 | 考えられる結果 |
---|---|---|
熱いお湯での洗髪 | 皮脂の過剰な除去、乾燥 | フケ、かゆみ、バリア機能低下 |
洗浄力の強いシャンプー | 必要な皮脂の除去、刺激 | 乾燥、炎症、フケ |
すすぎ残し | 化学物質の残留、刺激 | かゆみ、炎症、毛穴詰まり |
皮膚の常在菌バランスの乱れ
私たちの皮膚には、多くの種類の常在菌が存在し、バランスを保ちながら皮膚の健康を維持しています。しかし、何らかの原因でこのバランスが崩れると、特定の菌が異常繁殖し、皮膚トラブルを引き起こすことがあります。
マラセチア菌の関与
マラセチア菌は、皮脂を栄養源とするカビ(真菌)の一種で、誰の頭皮にも存在する常在菌です。通常は問題を起こしませんが、皮脂の分泌が過剰になったり、免疫力が低下したりすると異常に増殖し、フケやかゆみ、炎症を引き起こすことがあります。
これは脂漏性皮膚炎の原因としてよく知られていますが、粃糠性脱毛症においても、マラセチア菌の関与が疑われる場合があります。特に、脂っぽいフケと乾燥したフケが混在する場合などは注意が必要です。
生活習慣を見直そう 粃糠性脱毛症を招くNG習慣と改善ポイント

粃糠性脱毛症の予防や改善には、日々の生活習慣を見直すことが非常に重要です。食事、睡眠、ストレス管理など、頭皮環境に影響を与える要素は多岐にわたります。
ここでは、特に注意したいNG習慣と、その改善ポイントを紹介します。
食生活の乱れと栄養不足
髪の毛は、私たちが摂取する栄養素から作られています。偏った食生活や無理なダイエットは、髪の成長に必要な栄養素の不足を招き、頭皮環境の悪化や抜け毛の原因となります。
髪の成長に必要な栄養素
健康な髪を育むためには、タンパク質、ビタミン、ミネラルをバランス良く摂取することが大切です。
特に、髪の主成分であるケラチンを構成するタンパク質(肉、魚、大豆製品など)、頭皮の新陳代謝を促すビタミンB群(レバー、緑黄色野菜など)、抗酸化作用があり頭皮の老化を防ぐビタミンC・E(果物、ナッツ類など)、髪の成長に欠かせない亜鉛(牡蠣、牛肉など)は積極的に摂りたい栄養素です。
頭皮環境を悪化させる食習慣
NG習慣 | 頭皮への影響 | 改善ポイント |
---|---|---|
脂質の多い食事 | 皮脂の過剰分泌、毛穴詰まり | 揚げ物やスナック菓子を控え、良質な油(魚油、オリーブオイルなど)を適度に摂る |
糖質の過剰摂取 | 皮脂分泌の増加、糖化による頭皮の老化 | 甘いものや炭水化物の摂りすぎに注意し、食物繊維を多く摂る |
過度なダイエット | 栄養不足による髪の成長不良 | バランスの取れた食事を心がけ、極端な食事制限は避ける |
睡眠不足とストレス
睡眠中には成長ホルモンが分泌され、細胞の修復や再生が行われます。睡眠不足が続くと、成長ホルモンの分泌が減少し、頭皮の新陳代謝が悪化してしまいます。
また、ストレスは自律神経のバランスを崩し、血行不良や免疫力の低下を引き起こし、頭皮環境に悪影響を与えます。
質の高い睡眠をとるために
質の高い睡眠を確保するためには、規則正しい生活リズムを心がけ、就寝前にカフェインやアルコールの摂取を控える、寝る前にスマートフォンやパソコンの使用を避けるなどの工夫が有効です。
自分に合ったリラックス方法を見つけ、心身の緊張を和らげることも大切です。
ストレスマネジメントの重要性
ストレスを完全に無くすことは難しいですが、上手に付き合っていく方法を見つけることが重要です。適度な運動、趣味の時間を楽しむ、友人や家族と話す、瞑想やヨガを取り入れるなど、自分なりのストレス解消法を実践しましょう。
ストレスが原因で頭皮トラブルが悪化していると感じる場合は、専門医やカウンセラーに相談することも考えてみてください。
喫煙・飲酒の習慣
喫煙は血管を収縮させ、全身の血行を悪化させます。頭皮への血流も低下するため、毛根に十分な酸素や栄養が届きにくくなり、髪の成長を妨げます。
また、タバコに含まれる有害物質は、体内のビタミンCを破壊し、活性酸素を増加させるため、頭皮の老化を早める原因にもなります。
過度な飲酒は、肝臓に負担をかけ、栄養素の代謝を妨げるほか、睡眠の質を低下させることもあります。適度な量を心がけることが大切です。
一人で悩まず専門機関へ 粃糠性脱毛症の検査と診断

フケやかゆみ、抜け毛といった症状が気になる場合や、セルフケアを続けても改善が見られない場合は、自己判断せずに皮膚科を受診することをおすすめします。
専門医による正確な診断と、個々の状態に合わせた適切な治療が、症状改善への近道です。
皮膚科での診察の流れ
皮膚科では、まず問診で症状(いつから、どんな症状か、既往歴、生活習慣など)を詳しく聞き取ります。
その後、視診や触診で頭皮の状態(フケのタイプ、炎症の有無、毛穴の状態、脱毛の範囲など)を詳細に確認します。必要に応じて、さらに詳しい検査を行うこともあります。
問診と視診
問診では、症状の具体的な内容や経過、普段のヘアケア方法、食生活、睡眠時間、ストレスの状況、家族歴などを詳しく伝えます。
視診では、医師がマイクロスコープなどを用いて頭皮や毛髪の状態を拡大して観察し、フケの質、毛穴の詰まり具合、炎症の程度、毛髪の太さや密度などを評価します。これらの情報をもとに、脱毛の原因を推測します。
必要な検査とその内容
症状や診察所見に応じて、以下のような検査が行われることがあります。
- ダーモスコピー検査 特殊な拡大鏡で頭皮や毛穴の状態を詳細に観察します。
- 毛髪検査(トリコグラム) 抜けた毛髪や採取した毛髪を顕微鏡で観察し、毛根の状態や毛周期の異常などを調べます。
- 血液検査 貧血や甲状腺機能異常、栄養状態など、全身的な要因が関与していないかを確認します。
- 皮膚生検(まれに実施) 診断が難しい場合や、他の皮膚疾患との鑑別が必要な場合に、局所麻酔をして頭皮の一部を採取し、病理組織学的に検査します。
検査の種類と目的
検査名 | 検査内容 | 主な目的 |
---|---|---|
ダーモスコピー | 拡大鏡による頭皮・毛穴の観察 | 炎症、フケ、毛穴の状態評価 |
毛髪検査 | 毛根・毛幹の顕微鏡観察 | 毛周期異常、毛髪構造の確認 |
血液検査 | 血液成分の分析 | 全身疾患、栄養状態の確認 |
診断のポイント
粃糠性脱毛症の診断は、特徴的な症状(乾燥性の細かいフケ、かゆみ、びまん性の脱毛)や、頭皮の視診所見、各種検査結果を総合的に判断して行われます。
他の脱毛症(脂漏性皮膚炎に伴う脱毛、円形脱毛症、女性型脱毛症など)との鑑別が重要になります。特に、脂漏性皮膚炎は症状が似ている部分もありますが、脂漏性皮膚炎では脂っぽいフケが多く、炎症が強い傾向があります。
正確な診断に基づいて、適切な治療方針が立てられます。
希望の光はある?粃糠性脱毛症との向き合い方と治療法
粃糠性脱毛症(ひこうせいだつもうしょう)は、適切な治療とセルフケアを行うことで、症状の改善が期待できる脱毛症です。原因となっている頭皮環境の悪化を取り除き、正常な状態に戻すことが治療の基本となります。
皮膚科での治療と並行して、生活習慣の見直しも重要です。
皮膚科で行われる主な治療法
皮膚科では、症状の程度や原因に応じて、以下のような治療法を組み合わせて行います。
外用薬による治療

頭皮の炎症やかゆみを抑えるために、ステロイド外用薬(ローションタイプやクリームタイプ)が処方されることがあります。
ステロイドは炎症を強力に抑える効果がありますが、長期間の使用や自己判断での使用は副作用のリスクもあるため、医師の指示に従って正しく使用することが大切です。
また、フケの原因となるマラセチア菌の増殖を抑えるために、抗真菌薬(ケトコナゾールなど)を含むローションやシャンプーが処方されることもあります。
頭皮の乾燥が強い場合には、保湿剤(ヘパリン類似物質など)を使用して頭皮のバリア機能を高める治療も行います。
内服薬による治療

かゆみが強い場合には、抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬の内服で症状を和らげることがあります。
また、頭皮の新陳代謝を促したり、炎症を抑えたりする目的で、ビタミン剤(ビタミンB群、ビタミンC、ビオチンなど)や漢方薬が処方されることもあります。
ただし、内服薬だけで脱毛症が治るわけではなく、あくまで補助的な治療として用いられることが多いです。
その他の治療法
上記以外にも、医療機関によっては、頭皮への栄養補給や血行促進を目的とした育毛メソセラピー(注射やエレクトロポレーションで有効成分を頭皮に直接導入する方法)や、LED照射療法などが行われることもあります。
これらの治療は、保険適用外となる場合が多いため、事前に医師とよく相談することが必要です。また、症状によっては、アミノ酸系の薬用シャンプーの指導も行われます。
主な治療薬と期待される効果
薬剤の種類 | 主な成分例 | 期待される効果 |
---|---|---|
ステロイド外用薬 | 吉草酸ベタメタゾンなど | 頭皮の炎症・かゆみの抑制 |
抗真菌外用薬 | ケトコナゾール、ミコナゾール | マラセチア菌の増殖抑制、フケ改善 |
保湿剤 | ヘパリン類似物質、尿素 | 頭皮の乾燥改善、バリア機能向上 |
治療期間と注意点
粃糠性脱毛症の治療期間は、症状の重症度や個人の体質、生活習慣などによって異なります。数ヶ月で改善が見られる場合もあれば、半年以上の治療が必要となることもあります。根気強く治療を続けることが大切です。
治療中は、医師の指示通りに薬を使用し、定期的に診察を受けるようにしましょう。自己判断で薬の使用を中止したり、量を変更したりすると、症状が悪化したり再発したりする可能性があります。
また、治療効果を高めるためには、後述するセルフケアも並行して行うことが重要です。
健やかな頭皮と髪のために 日常でできる予防とケア
粃糠性脱毛症(ひこうせいだつもうしょう)の治療効果を高め、再発を防ぐためには、日々のセルフケアが非常に重要です。正しいヘアケア方法を実践し、頭皮に優しい生活習慣を心がけることで、健やかな頭皮環境を維持することができます。
正しいシャンプー方法
毎日のシャンプーは、頭皮を清潔に保つ基本ですが、間違った方法で行うと逆効果になることもあります。以下のポイントに注意して、優しく丁寧に洗いましょう。
シャンプー選びのポイント
自分の頭皮タイプに合ったシャンプーを選ぶことが大切です。乾燥しやすくフケが出やすい場合は、アミノ酸系やベタイン系などの洗浄力がマイルドで保湿成分が配合されたシャンプーを選びましょう。
脂性肌でベタつきやすい場合は、適度な洗浄力がありつつも、頭皮への刺激が少ないものを選びます。
香料や着色料、防腐剤などが多く含まれているものは、敏感な頭皮には刺激となることがあるため、成分表示を確認することも有効です。皮膚科で相談し、サンプルを試してみるのも良いでしょう。
- アミノ酸系シャンプー:マイルドな洗浄力、保湿効果
- ベタイン系シャンプー:低刺激、ベビーシャンプーにも使用
- 薬用シャンプー(抗真菌成分配合など):医師の指示で使用
効果的な洗髪の手順
洗髪は以下の手順で行うと、頭皮への負担を減らしつつ汚れを効果的に落とすことができます。
- ブラッシング:洗髪前に髪のもつれを解き、ホコリや汚れを浮かせます。
- 予洗い:38℃程度のぬるま湯で頭皮と髪を十分に濡らし、表面の汚れを洗い流します。
- シャンプー:シャンプーを手のひらでよく泡立ててから、髪ではなく頭皮を中心に指の腹でマッサージするように優しく洗います。爪を立てないように注意しましょう。
- すすぎ:シャンプー剤が残らないように、時間をかけて丁寧にすすぎます。特に生え際や耳の後ろはすすぎ残しやすい部分です。
- コンディショナー・トリートメント:髪の毛を中心に塗布し、頭皮には直接つけないようにします。その後、しっかりとすすぎます。
- タオルドライ:ゴシゴシこすらず、タオルで優しく押さえるように水分を拭き取ります。
- ドライヤー:頭皮から20cm以上離し、同じ場所に熱風が集中しないように動かしながら乾かします。完全に乾かすことで雑菌の繁殖を防ぎます。
頭皮マッサージと保湿ケア

頭皮マッサージは血行を促進し、毛根に栄養を届けやすくする効果が期待できます。また、乾燥が気になる場合は、頭皮専用の保湿剤を使用することも有効です。
血行促進のためのマッサージ
指の腹を使って、頭皮全体を優しく揉みほぐすようにマッサージします。特に、硬くなりやすい頭頂部や側頭部を念入りに行うと良いでしょう。シャンプー時や、リラックスしている時に行うのがおすすめです。
ただし、炎症が強い時や、かゆみがひどい時は、刺激になることがあるので控えましょう。
頭皮の保湿方法
洗髪後、ドライヤーで髪を乾かした後に、頭皮用のローションやエッセンスを使って保湿します。乾燥が気になる部分を中心に、指で優しくなじませます。
セラミドやヒアルロン酸、コラーゲンなどの保湿成分が配合された製品を選ぶと効果的です。ベタつきが気になる場合は、オイルフリーの製品を選びましょう。
日常でできる頭皮ケアのポイント
ケアの種類 | ポイント | 期待できる効果 |
---|---|---|
シャンプー | 頭皮に優しい成分、正しい洗い方 | 頭皮の清浄、フケ・かゆみ予防 |
頭皮マッサージ | 指の腹で優しく、血行促進 | 栄養供給促進、リラックス効果 |
頭皮保湿 | 洗髪後、専用ローションで保湿 | 乾燥予防、バリア機能サポート |
紫外線対策と生活習慣の改善
紫外線は頭皮にダメージを与え、乾燥や炎症を引き起こす原因となります。外出時には帽子や日傘を利用して、頭皮を紫外線から守りましょう。
また、バランスの取れた食事、十分な睡眠、適度な運動、ストレスを溜めない生活を心がけることが、健やかな頭皮環境を維持し、粃糠性脱毛症の予防・改善につながります。
よくある質問(FAQ)
ここでは、粃糠性脱毛症(ひこうせいだつもうしょう)に関して患者様からよく寄せられる質問とその回答をまとめました。
- 粃糠性脱毛症は治りますか?
-
はい、粃糠性脱毛症は適切な治療とセルフケアを行うことで、多くの場合、症状の改善や治癒が期待できます。原因となっている頭皮の乾燥や炎症、フケなどをコントロールし、頭皮環境を正常化することが治療の目標です。
ただし、治療期間には個人差があり、根気強く取り組むことが大切です。皮膚科専門医の指示に従い、生活習慣の見直しも併せて行いましょう。
- どのようなシャンプーを使えば良いですか?
-
頭皮の状態によって適したシャンプーは異なりますが、一般的には洗浄力がマイルドで頭皮への刺激が少ないアミノ酸系やベタイン系のシャンプーが推奨されます。
乾燥が強い場合は保湿成分配合のもの、フケやかゆみが気になる場合は抗真菌成分(ミコナゾール硝酸塩など)や抗炎症成分(グリチルリチン酸ジカリウムなど)が配合された薬用シャンプーも選択肢の一つです。
ただし、薬用シャンプーは症状や原因に合わせて選ぶ必要があるので、自己判断せず皮膚科医に相談することをおすすめします。医師が頭皮の状態を診て、適切なシャンプーをアドバイスします。
- 治療にはどのくらいの期間がかかりますか?
-
治療期間は、症状の重症度、発症からの期間、個人の体質、生活習慣の改善度合いなどによって大きく異なります。
軽症であれば数週間から数ヶ月で改善が見られることもありますが、慢性化している場合や症状が重い場合は、半年以上の治療が必要になることもあります。
大切なのは、途中で諦めずに医師の指示通りに治療を継続することです。定期的な通院で頭皮の状態をチェックし、治療法を調整していくことが改善への近道です。
- 食生活で気をつけることはありますか?
-
はい、食生活は頭皮環境に大きく影響します。健康な髪と頭皮のためには、バランスの取れた食事が基本です。
特に、髪の主成分であるタンパク質(肉、魚、卵、大豆製品)、頭皮の新陳代謝を助けるビタミンB群(レバー、緑黄色野菜、ナッツ類)、抗酸化作用のあるビタミンC・E(果物、野菜、ナッツ類)、髪の成長に必要な亜鉛(牡蠣、牛肉、海藻類)などを積極的に摂取しましょう。
一方で、脂質の多い食事や糖質の過剰摂取は皮脂の分泌を増やし、頭皮環境を悪化させる可能性があるため控えるように心がけてください。
- ストレスも脱毛の原因になりますか?
-
はい、過度なストレスは粃糠性脱毛症を含む様々な脱毛症の誘因や悪化因子となります。ストレスは自律神経のバランスを乱し、頭皮の血行不良を引き起こしたり、免疫力を低下させたりします。
これにより、毛根への栄養供給が悪くなったり、頭皮の常在菌のバランスが崩れて炎症が起きやすくなったりします。
適度な運動、趣味、十分な睡眠などでストレスを上手にコントロールすることが、頭皮の健康維持にもつながります。
粃糠性脱毛症の症状について、さらに詳しい情報や具体的な症例写真をご覧になりたい方は、こちらの「粃糠性脱毛症の症状」をご参照ください。
より深くご理解いただくための一助となれば幸いです。
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