円板状エリテマトーデス(DLE)は、自己免疫疾患の一種であり、主に皮膚に症状が現れます。特に頭皮に発症した場合、毛包が破壊されてしまうことで「瘢痕性脱毛」という永続的な脱毛を引き起こすことがあります。

この記事では、DLEによる脱毛症の原因、症状、診断、治療法、そして日常生活での注意点について詳しく解説します。
早期発見と適切な対応で、大切な髪を守りましょう。
円板状エリテマトーデス(DLE)性脱毛症とは?(概要)
円板状エリテマトーデス(Discoid Lupus Erythematosus、以下DLE)は、慢性的な皮膚の病気で、免疫システムが誤って自身の体を攻撃してしまう自己免疫疾患の一つと考えられています。

DLEが頭皮に発生すると、毛を作り出す組織である毛包が炎症によって破壊され、その結果として髪の毛が生えてこなくなることがあります。これをDLE性脱毛症と呼びます。
この脱毛症の特徴は、一度毛包が完全に破壊されると、その部分からは髪の毛が再生しにくい「瘢痕性脱毛(はんこんせいだつもう)」という状態になる点です。
そのため、早期に発見し、炎症を抑える治療を開始することが、脱毛の進行を食い止め、髪の毛を守るために非常に重要です。
DLEは全身性エリテマトーデス(SLE)という全身の臓器に影響が出る可能性のある病気の一症状として現れることもありますが、多くは皮膚のみに症状が限定される皮膚エリテマトーデスとして発症します。
頭皮以外にも、顔面(特に頬、鼻、耳)、首、手の甲など日光に当たりやすい部位に症状が出やすい傾向があります。
DLE性脱毛症の主な特徴
特徴 | 説明 | 注意点 |
---|---|---|
瘢痕性脱毛 | 毛包が破壊され、永続的な脱毛が生じる。 | 早期治療が進行抑制の鍵。 |
慢性経過 | 症状が長期間にわたり持続、または再発しやすい。 | 根気強い治療とケアが必要。 |
日光の影響 | 紫外線が悪化要因となることがある。 | 日常的な遮光対策が重要。 |
DLEと瘢痕性脱毛
瘢痕性脱毛は、毛包が炎症や外傷などによって破壊され、線維組織に置き換わってしまうことで起こる脱毛です。毛包が瘢痕化すると、髪の毛を再生する能力が失われるため、その部分の脱毛は永続的になります。
DLE性脱毛症は、この瘢痕性脱毛を引き起こす代表的な疾患の一つです。炎症が活動的な初期の段階で適切な治療を行うことで、瘢痕化の範囲を最小限に抑えることを目指します。
頭皮の健康を保ち、これ以上の毛包破壊を防ぐことが治療の焦点となります。
気づきやすい頭皮・髪の変化(症状)
DLE性脱毛症の初期症状は、気づきにくいこともありますが、注意深く観察することでいくつかの変化を見つけることができます。これらのサインを見逃さず、早めに皮膚科専門医に相談することが大切です。
初期に見られる頭皮のサイン
初期には、頭皮に赤い発疹(紅斑)や、少し盛り上がった円形または不整形の局面が現れることがあります。これらの病変部は、しばしばカサカサとした鱗屑(りんせつ:フケのようなもの)を伴います。

かゆみや軽い痛みを伴うこともありますが、自覚症状が全くない場合もあります。特に、髪の毛に隠れて見えにくい後頭部や側頭部にも発生することがあるため、定期的な頭皮チェックが推奨されます。
DLE性脱毛症の頭皮症状
- 境界明瞭な円形~楕円形の紅斑
- 表面の鱗屑(フケ様の付着)
- 毛穴の角栓(毛孔角栓)
- かゆみや圧痛(個人差あり)
脱毛の進行と見た目の変化
炎症が続くと、毛包が徐々に破壊され、脱毛斑が出現します。初期の脱毛はまばらであることもありますが、進行すると脱毛斑が拡大し、融合することもあります。病変の中心部は皮膚が萎縮してややへこみ、白っぽく見えることがあります。
一方、病変の辺縁部では炎症がまだ活動的で赤みを帯びていることがあります。このような特徴的な見た目から、DLE性脱毛症が疑われることがあります。
髪の分け目が以前より目立つようになった、特定の場所の髪が薄くなったと感じたら注意が必要です。
脱毛が進行した場合の頭皮所見

所見 | 詳細 | 関連症状 |
---|---|---|
脱毛斑 | 円形または不整形に髪が抜ける | 瘢痕化により永続的になる可能性 |
皮膚萎縮 | 病変中心部の皮膚が薄く、へこむ | テカテカとした光沢を伴うことも |
色素沈着・脱失 | 病変部が茶色っぽくなったり、白っぽくなったりする | 炎症後の変化として現れる |
セルフチェックの仕方:脱毛変化を見逃さないコツ
DLE性脱毛症は早期発見が重要ですが、初期症状は自分では気づきにくいこともあります。ここでは、ご自身で頭皮の状態をチェックする際のポイントをいくつか紹介します。
定期的なセルフチェックで、小さな変化も見逃さないようにしましょう。
頭皮全体を観察するポイント
洗髪後やブラッシングの際に、鏡を使って頭皮全体をくまなく観察する習慣をつけましょう。特に、自分では見えにくい頭頂部、後頭部、側頭部は、手鏡を合わせ鏡にするなど工夫してチェックします。

以下の点に注意して観察してください。
- 赤みや発疹がないか
- フケのようなカサカサした部分がないか
- 特定の場所だけ髪が薄くなっていないか
- 地肌が硬くなったり、逆にへこんだりしていないか
指の腹で優しく頭皮を触ってみて、普段と違う感触がないか確認することも有効です。もし気になる変化があれば、自己判断せずに皮膚科を受診しましょう。
写真記録の活用
頭皮の状態を定期的に写真で記録しておくことも、変化に気づくための有効な手段です。同じ照明条件下で、同じ角度から撮影するように心がけると、比較がしやすくなります。
特に気になる部分があれば、その部分をアップで撮影しておくと良いでしょう。数週間ごと、あるいは1ヶ月ごとに撮影し、過去の写真と比較することで、わずかな変化も客観的に捉えることができます。
これらの記録は、皮膚科を受診した際に医師に状態を伝える上でも役立ちます。
セルフチェック時の注意点
項目 | 具体的な方法 | 頻度 |
---|---|---|
視診 | 鏡を使い頭皮全体(特に見えにくい部分)の赤み、鱗屑、脱毛を確認 | 週に1回程度 |
触診 | 指の腹で頭皮を優しく触り、硬さやへこみ、痛みがないか確認 | 週に1回程度 |
写真記録 | 気になる部分や頭皮全体を定期的に撮影し、変化を比較 | 月に1回程度 |
原因:炎症と免疫反応が招く脱毛のメカニズム

DLE性脱毛症のはっきりとした原因はまだ完全には解明されていませんが、免疫システムの異常が深く関わっていると考えられています。遺伝的な要因や環境因子が複雑に絡み合い、発症に至ると推測されています。
免疫システムの誤作動
私たちの体には、細菌やウイルスなどの外敵から身を守るための免疫システムが備わっています。しかし、何らかの理由でこの免疫システムに異常が生じると、自分自身の正常な細胞や組織を攻撃してしまうことがあります。
これを自己免疫反応と呼びます。DLEでは、この自己免疫反応が皮膚、特に毛包の細胞に向けられることで炎症が引き起こされます。この慢性的な炎症が毛包を徐々に破壊し、結果として瘢痕性の脱毛が生じます。
一部の患者さんでは、DLEが全身性エリテマトーデス(SLE)という、より広範な自己免疫疾患の部分症状として現れることもあります。そのため、皮膚症状だけでなく、全身的な検査が必要となる場合もあります。
遺伝的素因と環境因子
DLEの発症には、特定の遺伝的素因が関与している可能性が指摘されています。家族内でエリテマトーデスを発症した方がいる場合、発症リスクが一般よりやや高まることが知られています。
ただし、遺伝的素因を持つ人すべてが発症するわけではなく、何らかの環境因子が引き金となって発症すると考えられています。 環境因子としては、紫外線(日光)が最も重要なものの一つです。
紫外線はDLEの症状を誘発したり、悪化させたりすることが知られています。その他、特定の薬剤、ウイルス感染、喫煙、精神的ストレスなどが関与する可能性も研究されていますが、まだ不明な点が多いのが現状です。
このため、原因不明とされることも少なくありません。
DLE発症に関わる可能性のある因子
因子カテゴリー | 具体的な因子(例) | 関連性 |
---|---|---|
免疫異常 | 自己抗体の産生、T細胞の異常活性化 | 直接的な発症要因 |
遺伝的素因 | 特定のHLA型など | 発症しやすさに関与 |
環境因子 | 紫外線、薬剤、ウイルス感染、喫煙、ストレス | 発症の誘因・悪化因子 |
検査:脱毛の程度と活動性を評価する診断プロセス
DLE性脱毛症の診断は、主に皮膚科専門医による視診、ダーモスコピー検査、そして皮膚生検によって行われます。これらの検査を通じて、脱毛の範囲や炎症の活動性、他の脱毛症との鑑別を行います。
視診とダーモスコピー検査

まず、医師が脱毛斑の形状、色調、鱗屑の有無、毛孔の状態などを詳細に観察します。ダーモスコピーは、特殊な拡大鏡を用いて皮膚の表面や浅い部分の状態をより詳しく観察する検査です。
この検査により、DLEに特徴的な毛孔の角栓(毛穴の詰まり)、血管の拡張やパターン、色素沈着の様子などを非侵襲的に確認することができます。これにより、他の脱毛症(例えば円形脱毛症など)との区別がある程度可能になります。
確定診断のための皮膚生検
DLE性脱毛症の確定診断には、皮膚生検が最も重要な検査となります。これは、局所麻酔をした上で、病変部から小さな皮膚組織を採取し、顕微鏡で詳細に調べる検査です。
皮膚生検によって、毛包周囲のリンパ球浸潤、表皮基底層の液状変性、真皮のムチン沈着など、DLEに特徴的な病理組織学的所見を確認します。
また、採取した皮膚組織を用いて蛍光抗体直接法(ループスバンドテスト)を行うこともあります。これは、皮膚組織内に免疫グロブリンや補体といった自己抗体が沈着しているかどうかを調べる検査で、DLEの診断補助に役立ちます。
皮膚生検で確認される主な所見
- 表皮の萎縮、基底層の液状変性
- 毛包周囲へのリンパ球主体の細胞浸潤
- 毛包の破壊、瘢痕化
- 真皮のムチン沈着
血液検査の役割
DLE性脱毛症の診断において、血液検査は補助的な役割を果たします。全身性エリテマトーデス(SLE)への移行の可能性を評価するために、抗核抗体などの自己抗体の有無や、炎症反応の程度を示すCRP値、血沈などを調べることがあります。
ただし、皮膚症状のみに限局するDLEの場合、これらの血液検査で異常が見られないことも少なくありません。
治療:皮膚炎コントロールと毛根保護の選択肢
DLE性脱毛症の治療目標は、頭皮の炎症を早期に鎮静化させ、毛包の破壊と瘢痕化の進行を食い止めることです。そして、可能な限り脱毛範囲の拡大を防ぎ、残っている毛髪を保護することを目指します。
治療法は、症状の範囲や重症度、活動性に応じて選択されます。
ステロイド外用薬とタクロリムス外用薬

軽症から中等症のDLEに対しては、まずステロイド外用薬(塗り薬)が第一選択となります。ステロイドには強力な抗炎症作用があり、病変部の炎症を抑える効果が期待できます。
ステロイドの強さや剤形(ローション、軟膏など)は、症状の程度や部位に応じて医師が選択します。
ステロイド外用薬で効果が不十分な場合や、副作用(皮膚萎縮、毛細血管拡張など)が懸念される場合には、非ステロイド系の免疫抑制外用薬であるタクロリムス外用薬が用いられることもあります。
タクロリムスは、ステロイドと同様に免疫反応を抑えることで炎症を鎮めます。
主な外用治療薬
薬剤の種類 | 主な作用 | 使用上の注意点(例) |
---|---|---|
ステロイド外用薬 | 強力な抗炎症作用、免疫抑制作用 | 長期連用による皮膚萎縮、医師の指示通り使用 |
タクロリムス外用薬 | 免疫抑制作用(カルシニューリン阻害) | 使用初期の刺激感、日光への感受性増大の可能性 |
ステロイド局所注射

限局した範囲の病変で、外用薬だけでは効果が不十分な場合には、ステロイドの局所注射が行われることがあります。これは、病変部に直接ステロイドを注射することで、より強力に炎症を抑える治療法です。
効果は高いですが、注射部位の皮膚萎縮や陥凹といった副作用のリスクもあるため、医師が慎重に判断します。
内服治療(ヒドロキシクロロキンなど)
広範囲に病変が及ぶ場合や、外用治療で効果が得られない重症例、あるいは全身性エリテマトーデス(SLE)への移行が疑われる場合には、内服治療が検討されます。代表的な内服薬として、抗マラリア薬であるヒドロキシクロロキンがあります。
ヒドロキシクロロキンは免疫調整作用を持ち、DLEの皮膚症状改善に有効性が示されています。
その他、症状に応じてステロイド内服薬や免疫抑制剤が使用されることもありますが、これらの薬剤は全身的な副作用のリスクも伴うため、皮膚科専門医による慎重な判断と管理のもとで使用します。
予防:再燃を防ぐ生活習慣と紫外線対策
DLE性脱毛症は慢性的な経過をたどることが多く、一度症状が改善しても再燃する可能性があります。そのため、治療によって炎症を抑えるだけでなく、再燃を防ぐための日常生活における注意が重要になります。
紫外線対策の徹底(遮光)

紫外線はDLEの最も重要な増悪因子の一つです。日常生活において、徹底した紫外線対策(遮光)を行うことが、症状の悪化や再燃の予防に繋がります。
外出時には、季節や天候に関わらず、帽子(つばの広いもの)、日傘、サングラスを使用しましょう。頭皮には、刺激の少ないスプレータイプやローションタイプの日焼け止めを使用することも有効です。
衣類も、長袖や襟付きのものを選ぶなどして、皮膚への紫外線暴露をできるだけ避ける工夫が大切です。特に日差しの強い時間帯(午前10時から午後2時頃)の外出は、可能な限り控えるようにしましょう。
具体的な紫外線対策
- 帽子の着用(広つば推奨)
- 日傘の使用
- 頭皮用日焼け止めの使用
- 長袖・襟付きの衣服
- 日中の紫外線が強い時間帯の外出を避ける
生活習慣の見直し
バランスの取れた食事、十分な睡眠、適度な運動は、免疫機能を正常に保つために重要です。
特定の食品がDLEを直接的に改善するという科学的根拠はまだ十分ではありませんが、健康的な食生活は体全体の調子を整え、皮膚の健康にも良い影響を与えます。
また、精神的なストレスも免疫系に影響を与え、DLEを悪化させる可能性があります。趣味やリラックスできる時間を持つなど、上手にストレスをコントロールする方法を見つけることも大切です。
喫煙はDLEのリスクを高め、治療効果を低下させる可能性があるため、禁煙することが強く推奨されます。
生活習慣で心がけたいこと
項目 | 具体例 | 期待される効果 |
---|---|---|
食事 | バランスの取れた栄養摂取、抗酸化物質を多く含む食品 | 免疫機能の維持、皮膚の健康促進 |
睡眠 | 質の高い睡眠を7-8時間程度 | 免疫バランスの調整、ストレス軽減 |
禁煙 | 喫煙をしない | 症状悪化リスクの低減、治療効果の向上 |
再発リスクと経過観察:長期的に髪を守るために
DLE性脱毛症は、症状が改善した後も再発する可能性があるため、長期的な視点での管理と定期的な経過観察が重要です。医師の指示に従い、根気強く治療とケアを続けることが、髪と頭皮の健康を守るために必要です。
定期的な皮膚科受診の重要性

症状が落ち着いているように見えても、自己判断で治療を中断したり、通院をやめたりするのは避けるべきです。医師は、見た目だけでなく、ダーモスコピーなどを用いて炎症の微細な兆候がないかを確認します。
再発の早期発見・早期対応が、瘢痕性脱毛の進行を最小限に抑える鍵となります。受診間隔は症状の安定度によって異なりますが、医師の指示通りに定期的なフォローアップを受けるようにしましょう。
有棘細胞癌のリスクについて
まれではありますが、DLEの慢性的な病変から有棘細胞癌(ゆうきょくさいぼうがん)という皮膚がんが発生することが報告されています。これは長期間にわたる炎症と組織修復の過程が関連していると考えられています。
特に、何年も治らない、あるいは潰瘍化してきたような病変には注意が必要です。定期的な診察は、このような悪性変化の早期発見にも繋がります。何か気になる変化があれば、速やかに医師に相談してください。
経過観察におけるチェックポイント
観察項目 | 頻度(目安) | 異常時の対応 |
---|---|---|
頭皮の赤み、鱗屑、脱毛の再燃 | 医師の指示通り(数ヶ月に1回など) | 速やかに皮膚科受診 |
新しい皮疹の出現 | 医師の指示通り | 速やかに皮膚科受診 |
既存病変の形状や色の変化、潰瘍化 | 医師の指示通り、および自己チェック | 速やかに皮膚科受診(有棘細胞癌の可能性も考慮) |
DLE性脱毛症との付き合いは長くなることもありますが、適切な治療とセルフケアを継続することで、症状をコントロールし、QOL(生活の質)を維持することは十分に可能です。
不安なことや疑問点は遠慮なく医師に相談し、二人三脚で治療に取り組んでいきましょう。
よくある質問
- DLE性脱毛症は遺伝しますか?
-
DLEそのものが直接的に遺伝するわけではありませんが、発症しやすい体質(遺伝的素因)は受け継がれる可能性があります。家族にエリテマトーデスの方がいる場合、一般の方よりは発症リスクがやや高まると言われています。
しかし、遺伝的素因があっても必ず発症するわけではなく、紫外線などの環境因子が加わって発症すると考えられています。
- DLE性脱毛症の治療で髪は元通りに生えてきますか?
-
DLE性脱毛症は瘢痕性脱毛を引き起こすため、毛包が完全に破壊されて瘢痕化してしまった部分からは、残念ながら髪の毛の再生は難しいのが現状です。
治療の主な目的は、炎症を早期に抑え、これ以上毛包が破壊されるのを防ぎ、脱毛範囲の拡大を食い止めることです。早期に治療を開始すれば、まだ破壊されていない毛包からの発毛は期待できる可能性があります。
- 治療はどのくらいの期間続けますか?
-
DLEは慢性的な病気であり、症状が改善しても再燃することがあります。そのため、治療期間は個人差が大きく、数ヶ月で落ち着く方もいれば、年単位で治療や経過観察が必要になる方もいます。
医師が症状の活動性や範囲、治療への反応性を見ながら、治療計画を調整していきます。自己判断で治療を中断せず、根気強く続けることが大切です。
- 日常生活で特に気をつけることは何ですか?
-
最も重要なのは紫外線対策です。日光(紫外線)はDLEを悪化させる最大の誘因ですので、季節を問わず、帽子、日傘、日焼け止めなどでしっかりと遮光してください。
また、禁煙、十分な睡眠、バランスの取れた食事、ストレス管理も、症状の安定化に役立ちます。頭皮への物理的な刺激(強くこする、掻くなど)も避けるようにしましょう。
- DLEは全身性エリテマトーデス(SLE)に移行しますか?
-
A5 皮膚症状のみのDLE患者さんのうち、約5~10%が将来的に全身性エリテマトーデス(SLE)に移行する可能性があると報告されています。ただし、多くの方は皮膚に限局したまま経過します。
SLEへの移行が疑われる症状(原因不明の発熱、関節痛、倦怠感、内臓の異常など)が現れた場合は、速やかに医師に相談し、必要な検査を受けることが重要です。
皮膚科での定期的な経過観察は、このような変化を早期に捉えるためにも役立ちます。
円板状エリテマトーデス(DLE)による脱毛以外の皮膚症状や、より詳細な診断基準については、こちらの記事「円板状エリテマトーデス(DLE)性脱毛症の症状」で解説しています。DLEの全体像を理解するために、合わせてお読みください。
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