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前頭部線維化脱毛症(FFA)とは

前頭部線維化脱毛症(FFA)とは
Dr.小林智子

この記事では、特に女性の薄毛の悩みの一つである前頭部線維化脱毛症(FFA)について、その概要から症状、原因、診断、治療法、予防に至るまで詳しく解説します。

FFAは進行性の脱毛症であり、早期の理解と適切な対応が重要です。ご自身の状態を把握し、専門医への相談を検討する際の一助となれば幸いです。

はじめに – 前頭部線維化脱毛症とは【概要】

前頭部線維化脱毛症(Frontal Fibrosing Alopecia, FFA)は、主に閉経後の女性に見られる進行性の脱毛症の一種です。髪の生え際、特に前頭部から側頭部にかけて帯状に後退していくのが特徴で、眉毛や体毛の脱毛を伴うこともあります。

この脱毛症は「瘢痕性脱毛症」に分類され、毛包(毛を作り出す組織)が破壊されて瘢痕組織に置き換わるため、一度進行すると毛髪の再生が難しいとされています。そのため、早期発見と進行を遅らせる治療が非常に大切になります。

多くの女性がこの症状に悩んでおり、皮膚科や専門医への相談が増えています。

FFAの主な特徴

前頭部線維化脱毛症の女性のイメージ

FFAは他の脱毛症と区別されるいくつかの特徴を持っています。生え際の後退はゆっくりと進行することが多いですが、進行速度には個人差があります。また、脱毛部位の皮膚にかゆみやヒリヒリ感、赤みを伴うこともあります。

FFAの主な特徴一覧

特徴点詳細
主な発症層閉経後の女性に多いが、若い女性や男性にも発症例あり
脱毛部位前頭部・側頭部の生え際、眉毛、まつ毛、体毛
進行性ゆっくりと進行するが、進行を止めることが重要

瘢痕性脱毛症としてのFFA

瘢痕性脱毛症は、毛包が炎症によって破壊され、その部分が線維化(硬くなること)し、永久に毛が生えてこなくなる脱毛症の総称です。FFAはこの一種であり、毛包周囲のリンパ球性炎症が関与していると考えられています。

炎症が続くと毛包幹細胞が失われ、毛髪の再生能力が失われるため、早期に炎症を抑える治療介入が求められます。

こんなサインに要注意 – 初期〜進行期の症状

FFAの症状は、初期には気づきにくいこともありますが、いくつかのサインに注意することで早期発見につながる可能性があります。進行度合いによって症状の現れ方も異なります。

見逃さないで 初期症状のサイン

FFAの初期症状としては、まず髪の生え際、特に額のM字部分やこめかみあたりが少しずつ後退し始めることが挙げられます。

初期症状のサイン

以前よりも額が広くなったように感じたり、ヘアバンドやカチューシャで隠していた部分の髪が薄くなったりすることで気づくことがあります。

また、眉毛の外側3分の1が薄くなるのも、FFAに特徴的な初期症状の一つです。この段階では、かゆみや赤みといった自覚症状は軽微か、全くない場合もあります。

FFA初期症状のチェックポイント

部位初期のサイン備考
髪の生え際前頭部・側頭部のわずかな後退以前より額が広く感じる
眉毛外側の脱毛、薄くなる特に眉尻から薄くなることが多い
皮膚の状態軽度のかゆみ、赤み、または無症状脱毛部位の毛穴が目立たなくなることも

進行すると現れる症状

FFAが進行すると、生え際の後退はより顕著になり、帯状に数センチメートルにわたって後退することもあります。脱毛部位の皮膚は、毛穴が消失してつるつるとした瘢痕状の見た目になるのが特徴です。

進行期の症状

また、顔面のうぶ毛(額や頬)の減少や、まつ毛、腋毛、陰毛といった体毛の脱毛も広範囲に見られることがあります。かゆみ、ピリピリとした痛み、圧痛などの自覚症状が強まることもあります。

進行期に見られる主な症状

  • 生え際の大幅な後退(前頭部、側頭部)
  • 脱毛部位の皮膚の瘢痕化(つるつるした見た目)
  • 眉毛全体の脱毛、または著しい減少
  • 顔面のうぶ毛の減少
  • まつ毛、その他の体毛の脱毛
  • 脱毛部位のかゆみ、痛み、赤みの持続・悪化

自宅でできるセルフチェック3ステップ

FFAの早期発見には、ご自身での定期的なチェックが役立ちます。以下の簡単な方法で、生え際や眉毛の状態を確認してみましょう。

ただし、セルフチェックはあくまで目安であり、気になる点があれば速やかに皮膚科専門医の診断を受けることが重要です。

生え際ラインの変化を鏡で確認

まず、正面から鏡を見て、額の生え際ラインに変化がないか確認します。特に、以前と比べて額が広くなったと感じるか、M字部分の切れ込みが深くなったか、こめかみ部分が後退していないかを注意深く観察します。

定期的に同じ場所、同じ照明条件下で写真を撮っておくと、変化に気づきやすくなります。

眉毛の濃さや形の変化をチェック

次に、眉毛の状態を確認します。眉毛全体の濃さが薄くなっていないか、特に眉の外側(眉尻側)が抜けて短くなっていないかを見ます。FFAでは眉毛の脱毛が初期から見られることが多いため、重要なチェックポイントです。

洗顔時やメイク時に抜け毛が増えていないかも注意しましょう。

頭皮の感覚やかゆみの有無

最後に、生え際周辺の頭皮に、かゆみ、ヒリヒリ感、赤み、または触った時の違和感がないかを確認します。FFAでは、炎症に伴ってこれらの症状が現れることがあります。

特に症状がなくても、毛穴が目立たなくなったり、皮膚が硬く感じられたりする場合も注意が必要です。

セルフチェックのポイントまとめ

チェック項目確認する点
生え際ライン額の広さ、M字部分、こめかみの後退具合
眉毛全体の濃さ、眉尻の脱毛、形の変化
頭皮の感覚かゆみ、ヒリヒリ感、赤み、硬さ、毛穴の状態

なぜ起こる? 主な原因と誘因

前頭部線維化脱毛症(FFA)の正確な原因はまだ完全には解明されていませんが、いくつかの要因が複雑に関与していると考えられています。遺伝的素因、自己免疫反応、ホルモンバランスの変化、環境因子などが挙げられます。

遺伝的要因の可能性

FFAの患者さんの中には家族歴(血縁者にも同様の症状が見られること)が報告されるケースがあり、何らかの遺伝的素因が関わっている可能性が指摘されています。

原因と誘因

特定の遺伝子が直接的な原因として特定されているわけではありませんが、体質的にFFAを発症しやすい方がいると考えられています。

自己免疫反応の関与

FFAの病変部では、毛包周囲にリンパ球を中心とした炎症細胞の浸潤が見られます。これは、免疫系が誤って自身の毛包組織を攻撃してしまう「自己免疫反応」が起きていることを示唆しています。

この免疫反応が毛包を破壊し、瘢痕化を引き起こす主要な原因と考えられています。

ホルモンバランスの変化と影響

FFAは閉経後の女性に多く見られることから、女性ホルモン(エストロゲンなど)の減少といったホルモンバランスの変化が発症や進行に関与している可能性が考えられています。

しかし、若い女性や男性にも発症例があるため、ホルモン因子だけでは説明できない部分もあります。

環境因子やライフスタイルの影響

近年、日焼け止めに含まれる特定の化学物質や、化粧品、ヘアケア製品に含まれる成分などがFFAの誘因となる可能性が一部で議論されています。ただし、これらとFFAとの直接的な因果関係はまだ確立されておらず、さらなる研究が必要です。

その他、ストレスや食生活などのライフスタイルも、免疫系やホルモンバランスに影響を与えることで間接的に関与する可能性は否定できません。

FFAの考えられる原因・誘因

要因概要関連性
遺伝的素因家族内発症の報告あり体質的な発症しやすさ
自己免疫反応毛包への免疫細胞の攻撃炎症と瘢痕化の主因
ホルモンバランス閉経期との関連を示唆女性ホルモンの影響
環境因子化学物質、紫外線など(研究段階)誘因となる可能性

専門医が行う検査プロセス

ダーモスコピーによる頭皮検査

FFAの診断は、主に皮膚科の専門医によって行われます。問診、視診、ダーモスコピー検査、そして場合によっては皮膚生検などを組み合わせて総合的に判断します。正確な診断方法を理解しておくことは、適切な治療への第一歩です。

問診による情報収集

医師はまず、患者さんの症状(いつから、どの部位に、どんな変化があったか)、既往歴、家族歴、使用している薬剤や化粧品、生活習慣などについて詳しく尋ねます。これにより、FFAの可能性や他の脱毛症との鑑別のための情報を得ます。

特に、生え際の後退や眉毛の脱毛の自覚、かゆみなどの症状の有無は重要な情報となります。

視診と触診による頭皮状態の確認

次に、脱毛部位の視診と触診を行います。生え際の後退の範囲やパターン、脱毛部位の皮膚の色調(赤み、色素沈着など)、毛穴の有無、瘢痕化の程度、炎症の兆候(フケ、かさぶたなど)を詳細に観察します。

眉毛やその他の体毛の状態も確認します。

ダーモスコピー検査(拡大鏡検査)

ダーモスコピーは、特殊な拡大鏡を用いて頭皮や毛穴の状態を詳細に観察する検査です。FFAに特徴的な所見として、毛包周囲の赤み、毛幹周囲の鱗屑(フケのようなもの)、毛孔の消失、白色の瘢痕などが観察されます。

この検査は非侵襲的であり、診断の精度を高めるのに役立ちます。

ダーモスコピーでの主な所見

  • 毛包周囲紅斑(Perifollicular erythema)
  • 毛幹周囲鱗屑(Perifollicular scaling)
  • 毛孔の消失
  • 象牙色の白色瘢痕
  • うぶ毛の減少・消失

皮膚生検による組織学的診断

診断が難しい場合や、他の瘢痕性脱毛症との鑑別が必要な場合には、皮膚生検を行うことがあります。これは、局所麻酔下に脱毛部位の皮膚を少量採取し、顕微鏡で組織学的な変化を調べる検査です。

FFAでは、毛包周囲のリンパ球浸潤、毛包上皮の空胞変性、毛包漏斗部の線維化などの特徴的な所見が確認されます。これにより確定診断に至ります。

FFAの主な診断方法

検査方法目的主な確認点
問診症状や背景情報の収集発症時期、進行度、自覚症状
視診・触診脱毛範囲や皮膚状態の評価生え際後退、瘢痕化、炎症
ダーモスコピー毛穴や毛包周囲の詳細観察毛孔消失、毛包周囲紅斑・鱗屑
皮膚生検組織学的変化の確認(確定診断)リンパ球浸潤、線維化

治療 – 薬物療法と生活アプローチの選び方

前頭部線維化脱毛症(FFA)の治療目標は、主に炎症を抑制し、脱毛の進行を遅らせることにあります。残念ながら、現時点では完全に治るかという問いに対して、破壊された毛包を再生させて元の状態に戻す根本的な治療法は確立されていません。

しかし、早期に適切な治療を開始することで、症状の進行を止めたり、緩和したりすることが期待できます。治療は、薬物療法と生活習慣の見直しを組み合わせて行うのが一般的です。

薬物療法によるアプローチ

FFAの薬物療法では、毛包周囲の炎症を抑えることが中心となります。使用される薬剤には、外用薬、内服薬、局所注射などがあります。

薬物療法のイメージ

ステロイド外用薬・局所注射

炎症を抑える効果が高いステロイドは、FFA治療の第一選択肢の一つです。比較的症状が軽い場合は、強力なステロイド外用薬を脱毛部位に塗布します。

炎症が強い場合や、外用薬の効果が不十分な場合には、ステロイドの局所注射(病変部への直接注射)を行うこともあります。これにより、より直接的に炎症を抑制する効果が期待できます。

免疫抑制剤(内服・外用)

ステロイドで効果が不十分な場合や、副作用の懸念がある場合には、タクロリムスやピメクロリムスといったカルシニューリン阻害薬(免疫抑制剤)の外用薬が用いられることがあります。

また、症状が広範囲であったり、進行が速い場合には、ヒドロキシクロロキンやメトトレキサートなどの内服の免疫抑制剤を検討することもありますが、これらは副作用のリスクも考慮し、専門医が慎重に判断します。

その他の薬物療法

その他、5αリダクターゼ阻害薬(フィナステリドやデュタステリドなど、主に男性型脱毛症治療薬)が、特に閉経後の女性のFFAに対して有効であったとする報告もあります。

これは、アンドロゲン(男性ホルモン)がFFAの病態に関与している可能性を示唆するものですが、女性への使用は適応外であり、効果や安全性についてはまだ議論の余地があります。必ず専門医と相談の上で使用を検討します。

FFAの主な薬物療法

薬剤の種類主な作用使用方法例
ステロイド抗炎症作用外用、局所注射
免疫抑制剤(カルシニューリン阻害薬など)免疫反応の抑制外用、内服
5αリダクターゼ阻害薬抗アンドロゲン作用(研究段階)内服(慎重投与)

生活習慣の見直しと補助的アプローチ

薬物療法と並行して、生活習慣を見直すことも、FFAの進行を遅らせるためには大切です。

生活アプローチ(ヘアケア・紫外線対策など)

紫外線対策の徹底

紫外線は皮膚の炎症を悪化させる可能性があるため、帽子や日傘、低刺激性の日焼け止めを使用して、頭皮や顔面への紫外線曝露を避けることが推奨されます。特に生え際は露出しやすいため注意が必要です。

優しいヘアケア

刺激の強いシャンプーやヘアケア製品の使用を避け、頭皮を優しく洗うことを心がけます。頻繁なパーマやカラーリングも頭皮への負担となるため、控えるか、間隔をあけるなどの配慮が必要です。

ストレス管理とバランスの取れた食事

過度なストレスは免疫系に影響を与える可能性があるため、適度な休息やリラクゼーションを取り入れ、ストレスを溜め込まないようにしましょう。

また、抗炎症作用のある食品を意識するなど、バランスの取れた食事も体全体の健康維持に繋がり、間接的に症状の安定に寄与する可能性があります。

再発を防ぐ予防行動ガイド

FFAの治療によって炎症が落ち着き、進行が停止したとしても、再発のリスクが完全になくなるわけではありません。そのため、日頃から再発を防ぐための予防行動を意識することが重要になります。

これには、継続的な専門医のフォローアップと、日常生活での注意点の遵守が含まれます。

定期的な専門医の診察

症状が安定した後も、定期的に皮膚科専門医の診察を受けることが大切です。医師は頭皮の状態をチェックし、再発の兆候がないかを確認します。もし再発の兆しが見られた場合でも、早期に対処することで進行を最小限に抑えることができます。

診察の頻度は症状の安定度によって異なりますが、医師の指示に従いましょう。

頭皮への刺激を避ける生活

日常生活において、頭皮への物理的・化学的刺激を極力避けることが予防につながります。

刺激を避けるための具体的な注意点

  • きつく髪を結ぶヘアスタイルを避ける(牽引性脱毛のリスクも軽減)
  • 頭皮マッサージは優しく行うか、炎症時は避ける
  • 刺激の少ないシャンプー、コンディショナーを選ぶ
  • ヘアカラーやパーマは頻度を減らす、または専門医に相談する
  • 帽子やヘルメットによる長時間の圧迫や摩擦に注意する

紫外線防御の継続

紫外線はFFAの活動性を高める可能性があるため、治療後も引き続き紫外線対策を徹底することが推奨されます。

外出時には帽子を着用する、日当たりの強い時間帯の長時間の外出を避ける、頭皮にも使用できる日焼け止め製品を利用するなどの工夫をしましょう。

紫外線対策

FFA再発予防のための行動指針

行動指針具体的な内容
専門医との連携定期的な診察、早期の異常報告
頭皮ケア低刺激製品の使用、過度な物理的刺激の回避
紫外線対策帽子、日焼け止めなどによる継続的な防御
生活習慣ストレス管理、バランスの取れた食事

続けやすいセルフケア&サポート体制

FFAと診断された後も、日常生活でのセルフケアや精神的なサポートは、QOL(生活の質)を維持し、治療効果を高める上で非常に重要です。

病院での治療と並行して、ご自身でできるケアや利用できるサポートについて知っておきましょう。

精神的なケアとストレスマネジメント

脱毛症は外見に影響を与えるため、精神的な負担を感じる女性は少なくありません。

不安や悩みを一人で抱え込まず、信頼できる家族や友人に話を聞いてもらったり、必要であればカウンセリングや心理療法の専門家のサポートを求めることも考えましょう。

メンタルケアや家族・友人の支え、サポートグループのイメージ

また、趣味やリラクゼーションを通じてストレスを上手に発散することも大切です。

ウィッグやヘアスタイルの工夫

生え際の後退が気になる場合、ウィッグ(部分ウィッグやフルウィッグ)を使用したり、ヘアスタイルを工夫したりすることで、外見上の悩みを軽減できます。

最近では自然に見える高品質な医療用ウィッグも多くあり、専門のサロンで相談することも可能です。また、前髪を作る、分け目を変えるなどの工夫で、気になる部分をカバーできます。

カモフラージュ方法の選択肢

方法特徴ポイント
ウィッグ部分・全体をカバー素材や装着感、自然さを重視
ヘアスタイル前髪、分け目の工夫美容師と相談
ヘアアクセサリーヘアバンド、スカーフ等おしゃれを楽しみながらカバー
眉毛メイクアイブロウペンシル、パウダー、アートメイク眉毛の脱毛に対応

信頼できる情報源からの情報収集と患者会

FFAに関する情報はインターネット上にも多くありますが、中には不正確なものや誇大な広告も含まれている可能性があります。皮膚科専門医や公的機関が発信する信頼できる情報を参考にしましょう。

また、同じ悩みを持つ人々が集まる患者会やサポートグループに参加することで、情報交換をしたり、精神的な支えを得られたりすることもあります。

受診から改善までのロードマップ

受診、検査、治療、継続管理の流れ

FFAの疑いを感じてから、専門医の診察を受け、治療を開始し、症状の改善や安定を目指すまでには、いくつかの段階があります。一般的な流れを理解しておくことで、安心して治療に取り組むことができます。

ステップ1 皮膚科専門医への初期相談

生え際の後退や眉毛の脱毛など、FFAを疑う症状に気づいたら、まずは皮膚科、特に脱毛症の診療経験が豊富な専門医を受診しましょう。初診では、詳しい問診、視診、ダーモスコピー検査などが行われ、FFAの可能性が評価されます。

ステップ2 診断の確定と治療方針の決定

検査結果に基づき、医師がFFAの診断を確定します。診断が確定したら、患者さんの症状の程度、進行状況、年齢、ライフスタイルなどを考慮して、最適な治療方針(薬物療法の種類、生活指導など)を決定し、丁寧に説明します。

この際、治療の目標や期待できる効果、副作用などについて十分に話し合い、納得のいく治療法を選択することが重要です。

ステップ3 治療の開始と定期的な経過観察

決定した治療方針に基づき、治療を開始します。外用薬の塗布、内服薬の服用、局所注射などが含まれます。治療効果が現れるまでには時間がかかることが多いため、焦らずに継続することが大切です。

治療開始後も、定期的に専門医の診察を受け、治療効果の評価や副作用のチェック、必要に応じた治療法の調整を行います。

治療と経過観察のポイント

  • 医師の指示通りに治療を継続する
  • 定期的な診察を欠かさない
  • 治療効果や副作用について正直に医師に伝える
  • 生活習慣の改善にも取り組む

ステップ4 症状安定後の維持療法と長期管理

治療によってFFAの進行が抑制され、症状が安定してきたら、再発を防ぐための維持療法に移行することがあります。これには、薬剤の減量や使用頻度の調整、あるいは定期的な経過観察のみで様子を見る場合などがあります。

引き続き、紫外線対策や頭皮への刺激を避ける生活を心がけ、長期的な視点で良好な状態を維持することを目指します。

よくある質問

FFAは遺伝しますか?

FFAの正確な原因はまだ不明ですが、家族内での発症例も報告されており、何らかの遺伝的素因が関与している可能性は考えられています。

しかし、必ずしも遺伝するわけではなく、他の多くの要因(自己免疫、ホルモン、環境因子など)が複雑に絡み合って発症すると推測されています。

治療期間はどのくらいですか? 治る可能性はありますか?

FFAの治療期間は、症状の進行度や治療への反応によって個人差が大きいです。治療の主な目的は炎症を抑え、進行を遅らせることであり、数ヶ月から数年単位で継続することが一般的です。

「治るか」という点については、一度破壊され瘢痕化した毛包は再生が困難なため、完全に元の状態に戻ることは難しいとされています。しかし、早期治療により進行を止め、現状を維持することは十分に可能です。

治療費は保険適用されますか?

FFAの診断や、炎症を抑えるためのステロイド外用薬・局所注射、一部の免疫抑制剤などの基本的な治療は、皮膚科において保険診療の範囲内で行われることが多いです。

ただし、使用する薬剤の種類や、自由診療のクリニックでの治療、未承認薬の使用などは保険適用外となる場合があります。具体的な費用については、受診する病院やクリニックに事前に確認することが大切です。

日常生活で特に気をつけることは何ですか?

日常生活では、頭皮への刺激を避けること、紫外線対策を徹底することが重要です。具体的には、優しいシャンプーを選び、髪をきつく縛らない、帽子や日傘で紫外線を防ぐなどです。

また、バランスの取れた食事、十分な睡眠、ストレスを溜めない生活も、体の免疫バランスを整える上で間接的に良い影響を与える可能性があります。

他の脱毛症との違いは何ですか?

FFAは、生え際が帯状に後退し、眉毛の脱毛を伴うことが多い瘢痕性脱毛症である点が特徴です。円形脱毛症は円形や楕円形の脱毛斑が生じ、多くは瘢痕を残さずに治癒する可能性があります。

女性型脱毛症(FAGA/FPHL)は頭頂部を中心にびまん性に薄毛が進行し、瘢痕化は通常伴いません。正確な診断は専門医による診察が必要です。

あわせて読みたい記事

前頭部線維化脱毛症(FFA)の具体的な症状や、ご自身に当てはまるサインがないかさらに詳しく知りたい方は、「前頭部線維化脱毛症(FFA)の症状」をご一読ください。

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