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牽引性脱毛症(けんいんせいだつもうしょう)の治療と予防

牽引性脱毛症(けんいんせいだつもうしょう)の治療と予防

ポニーテールや編み込みなど、特定のヘアスタイルを長期間続けることで、毛根に持続的な物理的ストレスがかかり、髪が抜けてしまう牽引性脱毛症。特に女性に多く見られますが、適切な対策と治療法で改善が期待できます。

Dr.小林智子

この記事では、牽引性脱毛症の具体的な治療法と、日常生活でできる予防策について、皮膚科クリニックの視点から詳しく解説します。

牽引ストレスを減らすゆるめヘアスタイルへのシフト

牽引性脱毛症の最も直接的な原因は、髪を強く引っ張るヘアスタイルによる毛根への物理的な負担です。したがって、治療と予防の基本は、この牽引ストレスを軽減することにあります。

ゆるめヘアスタイルの女性イラスト

日々のヘアスタイルを見直し、頭皮と毛根に優しい「ゆるめ」のスタイルへ移行することが重要です。

ヘアスタイルの見直しによる頭皮負担の軽減

毎日同じ位置で髪をきつく結んだり、重いエクステンションをつけたりする習慣は、特定の部位の毛根に集中的な負担をかけ続けます。この持続的な引っ張る力が、毛包の炎症や萎縮を引き起こし、脱毛につながるのです。

髪を強く引っ張るスタイル(きついポニーテール)との比較図

ヘアスタイルを定期的に変える、結ぶ位置をずらす、または髪を下ろす日を設けるだけでも、頭皮への負担は分散され、改善につながります。

ヘアスタイル変更のポイント

具体的にどのようなヘアスタイルが推奨されるのでしょうか。ポイントは「締め付けない」「引っ張らない」ことです。

ヘアスタイル変更のポイント(いろいろな髪型の例)
  • 低めの位置でのゆるいポニーテールやお団子
  • 締め付けの少ない編み込み
  • 髪を下ろしたダウンスタイル
  • ショートヘアやボブスタイル

これらのスタイルは、毛根にかかる物理的な力を最小限に抑えるのに役立ちます。特に、睡眠時は髪を完全にほどくか、非常にゆるく束ねることが頭皮の休息につながります。

ヘアスタイル変更に伴う心理的側面への配慮

長年続けてきたヘアスタイルを変えることに抵抗を感じる方もいるかもしれません。しかし、牽引性脱毛症の治療と予防のためには、この変化が大きな意味を持ちます。

新しいヘアスタイルが、髪と頭皮の健康を取り戻すきっかけとなることを理解し、前向きに取り組むことが大切です。クリニックでは、患者さんのライフスタイルや好みに合わせた、負担の少ないヘアスタイルの提案も行っています。

医師や専門家と相談しながら、自分に合ったスタイルを見つけることが改善への近道です。

ヘアスタイルと頭皮への影響比較

ヘアスタイル頭皮への負担度推奨される頻度
きついポニーテール/お団子高い避ける/ごく短時間
タイトな編み込み/コーンロウ非常に高い避ける
ゆるいポニーテール/お団子(低め)低い適宜
ダウンスタイル/ショートヘア非常に低い推奨

負担ゼロへ導くヘアアクセサリー選びと使用法

ヘアスタイルと同様に、使用するヘアアクセサリーも頭皮への負担に大きく関わります。アクセサリーの種類や使い方を見直すことで、髪を引っ張る力を減らし、牽引性脱毛症の予防と改善につなげることができます。

頭皮に優しいアクセサリーの選択基準

ヘアアクセサリーを選ぶ際は、素材、形状、重さを考慮することが重要です。金属製の硬いクリップや、ゴムがきついヘアバンドは、髪と頭皮に強い圧力をかける原因となります。

頭皮に優しいヘアアクセサリーのイラスト
  • 素材:布製シュシュ、シリコン製やコイル状のヘアゴムなど、柔らかく滑りにくい素材を選ぶ。
  • 形状:髪を点で固定するのではなく、面で支えるような幅広のヘアバンドやクリップを選ぶ。
  • 重さ:重い飾り付きのアクセサリーは避け、軽量なものを選ぶ。

アクセサリー使用時の注意点

適切なアクセサリーを選んでも、使い方を誤ると頭皮への負担は避けられません。以下の点に注意して使用しましょう。

注意点具体的な行動理由
締め付けすぎないヘアゴムは緩めに結ぶ。ヘアバンドは締め付け感のないものを選ぶ。血行不良や毛根への直接的な圧迫を防ぐため。
長時間使用しない帰宅後や就寝時はアクセサリーを外す。頭皮と毛根に休息時間を与えるため。
同じ位置での固定を避ける毎日少しずつ結ぶ位置や分け目を変える。特定部位への負担集中を防ぐため。

エクステンションやウィッグの適切な利用

ヘアエクステンションやウィッグは、髪のボリュームアップやスタイルチェンジに便利ですが、牽引性脱毛症のリスクを高める可能性もあります。

特に、編み込み式や接着式のエクステンションは、自毛に直接的な引っ張る力を加え続けるため、注意が必要です。使用する場合は、軽量なものを選び、装着期間を短くする、定期的に専門家によるチェックを受けるなどの対策が求められます。

クリップ式の部分ウィッグなども、連日同じ場所につけるのは避け、頭皮への負担を考慮した使い方を心がけましょう。医師に相談し、自分の頭皮状態に合った利用法を確認することが賢明です。

デイリー頭皮ケアとマッサージで環境を整える

牽引による物理的なストレスだけでなく、頭皮環境の悪化も脱毛を助長する要因となります。日々の適切な頭皮ケアとマッサージは、血行を促進し、毛根が健全に機能するための土台を整える上で重要です。

頭皮マッサージ・デイリーケア方法のイラスト

正しいシャンプー方法と頭皮の清浄

頭皮を清潔に保つことは、毛穴の詰まりや炎症を防ぎ、健康な髪の成長をサポートします。しかし、洗いすぎや強い洗浄成分は、頭皮の乾燥やバリア機能の低下を招く可能性もあります。

シャンプー選びと洗い方のコツ

ポイント内容目的
シャンプー剤アミノ酸系など、マイルドな洗浄成分のものを選ぶ。頭皮への刺激を抑え、必要な皮脂まで奪わないようにする。
洗い方指の腹を使って優しくマッサージするように洗う。爪を立てない。頭皮を傷つけず、血行を促進する。
すすぎシャンプー剤が残らないよう、時間をかけて丁寧にすすぐ。毛穴詰まりや頭皮トラブルの原因を防ぐ。
乾燥洗髪後はすぐに、優しくタオルドライし、ドライヤーで根本から乾かす。雑菌の繁殖を防ぎ、頭皮を健やかな状態に保つ。

頭皮マッサージによる血行促進効果

頭皮マッサージは、硬くなった頭皮をほぐし、毛根への血流を増加させる効果が期待できます。血行が改善されると、髪の成長に必要な栄養素や酸素が毛母細胞に行き渡りやすくなります。

指の腹を使って、頭全体を優しく揉みほぐすように行いましょう。特に、生え際、頭頂部、側頭部、後頭部を意識して、心地よいと感じる強さで行うことが大切です。

シャンプー時や、リラックスタイムに取り入れるのがおすすめです。ただし、強くこすりすぎると、かえって頭皮を傷つけたり、抜け毛を誘発したりする可能性があるので注意が必要です。

簡単な頭皮マッサージの手順

自宅で簡単にできるマッサージ方法を紹介します。

  1. 指の腹を使い、生え際から頭頂部に向かって、小さな円を描くように優しく揉み上げる。
  2. 側頭部(耳の上あたり)に指の腹を当て、同様に頭頂部に向かって揉み上げる。
  3. 後頭部(首の付け根あたり)から頭頂部に向かって、指で頭皮全体をつかむように揉みほぐす。
  4. 最後に、頭全体を指の腹で軽くタッピングする。

各ステップを数分ずつ、リラックスして行いましょう。毎日続けることで、頭皮環境の改善が期待できます。

内服薬で毛根を守り炎症を抑える

牽引性脱毛症の治療において、ライフスタイルの改善や外用薬と並行して、内服薬が用いられることがあります。内服薬は、体の中から毛根の健康をサポートし、脱毛の原因となる炎症を抑える働きが期待できます。

内服薬やサプリメントで毛根を守るイメージ

ただし、内服薬の使用は医師の診断と処方が必要です。

抗炎症作用を持つ内服薬の役割

牽引による物理的な刺激は、毛包周囲に微細な炎症を引き起こすことがあります。この炎症が慢性化すると、毛根の機能が低下し、脱毛が進行する可能性があります。

抗炎症作用を持つ内服薬は、この炎症反応を抑制し、毛包を保護する目的で使用されることがあります。どのような薬剤が適しているかは、個々の症状や体質によって異なるため、必ず医師に相談してください。

毛髪の成長をサポートする栄養補助

髪の主成分であるタンパク質(ケラチン)の合成に必要なアミノ酸、ビタミン、ミネラルなどを補給するサプリメントも、内服アプローチの一つと考えられます。特に、ビタミンB群、亜鉛、鉄などは、毛髪の健やかな成長に関与しています。

ただし、これらはあくまで補助的な役割であり、特定の栄養素の過剰摂取は逆効果になることもあります。バランスの取れた食事を基本とし、必要に応じて医師や管理栄養士に相談の上、サプリメントの利用を検討しましょう。

内服薬・サプリメント使用時の留意点

種類主な目的注意点
抗炎症薬毛包周囲の炎症抑制医師の処方が必要。副作用の可能性も考慮。
栄養補助サプリメント(ビタミン、ミネラル等)毛髪の成長に必要な栄養素の補給食事の補助。過剰摂取に注意。医師への相談推奨。
その他(血行促進薬など)頭皮の血流改善など医師の判断に基づく処方が必要。

内服薬による治療は、自己判断せず、必ず皮膚科クリニックの医師による診断のもとで行うことが重要です。医師は、患者さん一人ひとりの状態を評価し、最も適切な治療法を提案します。

外用薬による血行促進と発毛サイクル回復

牽引性脱毛症の治療において、外用薬は重要な選択肢の一つです。特に、頭皮の血行を促進し、乱れた発毛サイクルを正常化させる効果が期待できる薬剤が用いられます。代表的な成分としてミノキシジルがあります。

ミノキシジル外用薬の効果と女性への適用

ミノキシジルは、もともと高血圧の治療薬として開発されましたが、副作用として発毛効果が見られたことから、脱毛症治療薬として転用されました。

頭皮に直接塗布することで、毛細血管を拡張し、毛根への血流を増加させます。これにより、毛母細胞が活性化され、発毛が促進されると考えられています。

外用薬(ミノキシジルなど)を塗布するイメージ

女性の脱毛症治療においても、ミノキシジル外用薬は有効性が認められており、日本皮膚科学会のガイドラインでも推奨されています。女性の場合、男性よりも低い濃度の製剤(例:1%)から使用を開始することが一般的です。

ミノキシジル外用薬の使用方法

効果を最大限に引き出すためには、正しい使用方法を守ることが大切です。

項目内容ポイント
塗布回数通常1日2回(朝・晩)継続が重要。医師の指示に従う。
塗布量製品の指示に従う(例:1回1mL)多く塗っても効果は上がらない。
塗布場所薄毛が気になる部分の頭皮に直接塗布髪ではなく頭皮につける。
塗布後指の腹で軽くマッサージすると浸透しやすい場合がある。自然乾燥させる。すぐに洗い流さない。

その他の外用成分と期待される効果

ミノキシジル以外にも、頭皮環境を整えたり、毛髪の成長をサポートしたりする成分を含む外用薬や育毛剤があります。例えば、毛母細胞の活性化を助ける成分、抗炎症成分、保湿成分などが配合されているものがあります。

これらの製品は、ミノキシジルと併用できる場合もありますが、組み合わせによっては相互作用が生じる可能性もあるため、使用前に医師や薬剤師に相談することが推奨されます。

外用薬による治療は、効果が現れるまでに数ヶ月単位の時間が必要です。根気強く継続することが、発毛サイクル回復への鍵となります。

また、使用中に頭皮のかゆみ、かぶれ、発疹などの副作用が現れた場合は、すぐに使用を中止し、クリニックの医師に相談してください。

PRP・低出力レーザーなど医療処置で密度アップ

セルフケアや内服・外用薬だけでは改善が難しい場合や、より積極的な治療を希望する場合、クリニックではさらに進んだ医療処置を提供できます。毛髪の密度を高め、発毛を促すことを目的とした治療法です。

PRPやレーザー治療をイメージした医療処置シーン

PRP(多血小板血漿)療法の概要

PRP療法は、患者さん自身の血液から血小板を豊富に含む血漿(PRP)を抽出し、それを頭皮の薄毛が気になる部分に注入する再生医療の一つです。

血小板には多くの成長因子が含まれており、これらが毛母細胞や周辺組織を活性化し、毛包の機能回復や発毛を促進すると考えられています。自身の血液を使用するため、アレルギーや拒絶反応のリスクが低いのが特徴です。

複数回の治療が必要となることが一般的です。

低出力レーザー治療(LLLT)の働き

低出力レーザー治療(Low-Level Laser Therapy, LLLT)は、特定の波長の弱いレーザー光を頭皮に照射する治療法です。

このレーザー光が細胞内のミトコンドリアに作用し、細胞のエネルギー産生(ATP産生)を促進したり、血行を改善したりすることで、毛母細胞の活性化や毛髪の成長期延長につながるとされています。

痛みや熱感はほとんどなく、比較的安全性の高い治療法として、自宅用の照射機器も存在しますが、クリニックでの治療はより効果的な出力や照射方法が可能です。

主な医療処置の比較

治療法主な作用特徴
PRP療法成長因子による毛母細胞活性化、組織修復自己血液使用、複数回治療、注射による処置
低出力レーザー治療 (LLLT)細胞活性化、血行促進、抗炎症作用非侵襲的、痛み少ない、継続が必要
自毛植毛毛包ごと移植し、毛髪を再配置外科手術、効果が永続的、後頭部などから採取

これらの医療処置は、牽引性脱毛症の進行度や範囲、患者さんの希望やライフスタイルを考慮して、医師が最適なものを提案します。場合によっては、これらの治療法を組み合わせることもあります。

自毛植毛は、毛包が完全に失われてしまった部位に対する最終的な選択肢となることもありますが、まずは他の治療法で改善を目指すのが一般的です。

どの治療法が自分に適しているか、まずはクリニックで医師に相談してみましょう。

タンパク質・鉄分・睡眠—生活習慣で髪を育てる

髪の健康は、体全体の健康状態と密接に関連しています。特に、栄養バランスの取れた食事、十分な睡眠、ストレス管理といった生活習慣は、健やかな髪を育むための基盤となります。

生活習慣(栄養バランス・睡眠)の重要性を示すイメージ

牽引性脱毛症の治療効果を高め、再発を予防するためにも、日々の生活を見直すことが大切です。

髪の成長に必要な栄養素とその摂取

髪の毛の約90%は「ケラチン」というタンパク質で構成されています。そのため、良質なタンパク質の摂取は、強い髪を作るために必要です。肉、魚、卵、大豆製品などをバランス良く食事に取り入れましょう。

また、髪の成長にはビタミンやミネラルも欠かせません。特に重要な栄養素を以下に示します。

髪の健康に関わる主な栄養素

栄養素主な役割多く含まれる食品例
タンパク質髪の主成分(ケラチン)の材料肉、魚、卵、大豆製品、乳製品
鉄分酸素を毛根へ運ぶヘモグロビンの成分レバー、赤身肉、ほうれん草、ひじき、あさり
亜鉛ケラチンの合成を助ける、細胞分裂に関与牡蠣、牛肉、豚レバー、ナッツ類、卵黄
ビタミンB群頭皮の新陳代謝促進、皮脂バランス調整豚肉、レバー、うなぎ、マグロ、カツオ、玄米
ビタミンCコラーゲン生成補助、鉄分の吸収促進、抗酸化作用果物(キウイ、イチゴ)、野菜(パプリカ、ブロッコリー)
ビタミンE血行促進、抗酸化作用ナッツ類、植物油、アボカド、うなぎ

特定の食品だけを偏って食べるのではなく、多様な食品からバランス良く栄養を摂取することが重要です。特に女性は月経の影響で鉄分が不足しやすいため、意識的に摂取することが推奨されます。

睡眠の質と髪の成長サイクルの関係

髪の成長は、主に睡眠中に分泌される成長ホルモンによって促進されます。睡眠不足や質の低い睡眠は、成長ホルモンの分泌を妨げ、髪の成長サイクルを乱す原因となります。

毎日決まった時間に就寝・起床する、寝る前のカフェインやアルコールの摂取を控える、スマートフォンやパソコンの使用を就寝1時間前までに終えるなど、睡眠環境を整える工夫をしましょう。

質の高い睡眠を確保することは、頭皮環境の改善にもつながります。

ストレス管理と心身の健康維持

過度なストレスは自律神経のバランスを崩し、血管を収縮させて頭皮への血行を悪化させる可能性があります。また、ストレスホルモンが毛髪の成長サイクルに悪影響を与えることも指摘されています。

自分なりのリラックス方法を見つけ、ストレスを溜め込まないように心がけることが大切です。適度な運動、趣味の時間、友人や家族との会話、瞑想などが有効です。

心身ともに健康な状態を保つことが、髪の健康にもつながります。

遺伝子検査が導くあなた向け治療薬選び

近年、遺伝子情報を活用した個別化医療が進んでいます。脱毛症治療の分野でも、遺伝子検査によって、個々の体質や脱毛症のリスク、特定の治療薬への反応性を予測し、より効果的な治療法を選択しようとする試みが行われています。

脱毛症関連遺伝子と治療薬感受性

特定の遺伝子の変異が、脱毛症の発症リスクや進行パターン、さらにはミノキシジルなどの治療薬に対する効果の現れやすさ(感受性)に関連していることが研究で示唆されています。

遺伝子検査と治療薬のパーソナライズを示すイメージ

例えば、ミノキシジルの効果に関わる酵素(硫酸転移酵素)の活性には個人差があり、これは遺伝的要因に影響されると考えられています。

遺伝子検査を行うことで、自分がミノキシジルが効きやすい体質なのか、あるいは他のアプローチがより適している可能性があるのか、といった情報を得られる場合があります。

遺伝子検査の活用と限界

遺伝子検査は、唾液や口腔粘膜などから簡単にDNAを採取して行えます。検査結果は、医師が治療方針を決定する上での参考情報の一つとなります。

例えば、ミノキシジルに対する感受性が低いと予測される場合、他の治療法(内服薬、PRP療法、低出力レーザーなど)をより積極的に検討したり、併用療法を考えたりする際の判断材料になります。

ただし、遺伝子検査の結果が全てではありません。脱毛症の発症や治療効果には、遺伝的要因だけでなく、生活習慣、環境要因、ホルモンバランスなど、多くの要素が複雑に関与しています。

遺伝子検査はあくまで可能性を示すものであり、絶対的な予測ができるわけではないことを理解しておく必要があります。

遺伝子検査でわかること

検査項目例わかる可能性のある情報治療への活用例
アンドロゲン受容体遺伝子男性ホルモンへの感受性(AGAリスク関連)AGA治療薬選択の参考に
ミノキシジル代謝関連酵素遺伝子ミノキシジル外用薬の効果の現れやすさミノキシジル治療の導入判断、他の治療法検討の参考に
その他脱毛関連遺伝子特定の脱毛症タイプのリスク予防策や早期介入の検討材料に

遺伝子検査に関心がある場合は、実施しているクリニックの医師に相談し、検査の意義、わかること、限界について十分に説明を受けてから検討することが重要です。当クリニックでも遺伝子検査に関するご相談に応じています。

よくある質問

牽引性脱毛症は治りますか?

早期に原因となる牽引(髪を引っ張る行為)をやめ、適切な対策や治療を行えば、改善する可能性は高いです。

毛包が完全に破壊されて瘢痕化してしまうと、発毛は難しくなりますが、毛包が残っていれば、ヘアスタイルの変更、頭皮ケア、外用薬、内服薬、医療処置などによって、多くの場合、回復が期待できます。

諦めずに、まずは皮膚科クリニックの医師に相談することが大切です。

治療にはどのくらいの期間がかかりますか?

治療期間は、脱毛の進行度、原因となっている牽引の期間、選択する治療法、個人の反応性によって大きく異なります。ヘアスタイルの変更や頭皮ケアなどの基本的な対策だけでも、数ヶ月で改善が見られることもあります。

ミノキシジル外用薬などの薬物療法や、PRP療法、低出力レーザー治療などは、効果を実感するまでに通常3ヶ月から6ヶ月以上かかると言われています。根気強く治療を続けることが重要です。

治療費はどのくらいかかりますか?保険は適用されますか?

牽引性脱毛症の治療は、原因や症状に対する診断自体は保険適用となる場合がありますが、具体的な治療内容(特に美容目的とみなされることが多い発毛治療)の多くは、自由診療(保険適用外)となることが一般的です。

例えば、ミノキシジル外用薬(一部市販薬を除く)、内服の育毛補助薬、PRP療法、低出力レーザー治療、遺伝子検査、自毛植毛などは自由診療となります。

費用は治療法やクリニックによって異なりますので、治療を開始する前に、必ず費用について確認するようにしましょう。

市販の育毛剤ではだめなのでしょうか?

市販の育毛剤の中にも、頭皮環境を整えたり、血行を促進したりする成分が含まれているものがあります。軽度の症状や予防目的であれば、一定の効果を感じる方もいるかもしれません。

しかし、牽引性脱毛症のように明確な原因があり、ある程度進行している場合や、より確実な効果を求める場合は、やはり皮膚科クリニックでの診断と治療が推奨されます。

特にミノキシジル配合の発毛剤(医療用医薬品)は、医師の管理下で使用することが望ましいです。自己判断で市販品を使い続けるよりも、一度専門医に相談し、自分の状態に合った適切なアドバイスや治療を受ける方が、結果的に改善への近道となることが多いです。

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来院予約

当院(こばとも皮膚科:愛知県名古屋市栄)では、牽引性脱毛症の治療を行っております。

以下のページで現地住所(アクセス)や診療時間および来院予約をいただけます。院長は女医(皮膚科専門医)ですのでご安心して治療いただけると思います。

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