出産という大きな変化の後、多くの女性が経験するのが「産後の抜け毛」です。一時的なものとはいえ、鏡を見るたびに気になる方も多いでしょう。

この記事では、産後の抜け毛、いわゆる分娩後脱毛症の具体的な症状や原因、セルフチェックの方法について詳しく解説します。
抜け毛のピークはいつ頃なのか、どのくらいの期間続くのか、そしてどのような点に注意すれば良いのかを理解し、過度な心配をせず、適切なケアを行うための参考にしてください。
産後の抜け毛量が急増する3カ月目サインを見逃さない
出産後、しばらくは抜け毛が気にならなかったのに、ある時期から急に量が増えて驚くことがあります。これは産後脱毛症の典型的な始まり方です。
いつから始まる?産後脱毛症の一般的な開始時期

産後の抜け毛は、一般的に出産後2~3カ月頃から自覚し始める方が多いです。
妊娠中は女性ホルモンの分泌量が増え、髪の毛の成長期(アナゲン期)が通常より長く維持されます。これにより、本来抜けるはずだった髪の毛が抜けずに留まっている状態になります。
しかし、出産を終えると女性ホルモンの分泌量が急激に妊娠前の状態に戻ります。このホルモンバランスの大きな変化が原因となり、一斉に休止期(テロゲン期)に入った髪の毛が、数カ月後になってまとめて抜け落ちるのです。
これが「分娩後脱毛症」と呼ばれる現象です。
ホルモンバランスの変化とヘアサイクルの関係
髪の毛には、成長期・退行期・休止期というヘアサイクルがあります。妊娠中は女性ホルモン(特にエストロゲン)の影響で成長期が延長され、抜け毛が減ります。

産後はこのホルモンが急減するため、多くの毛髪が一気に休止期へと移行し、その結果として抜け毛が増加します。これは生理的な現象であり、多くの場合、時間経過とともに自然に回復します。
産後3カ月目が一つの目安となる理由
毛髪が休止期に入ってから実際に抜け落ちるまでには、通常2~3カ月程度のタイムラグがあります。そのため、出産直後ではなく、産後2~3カ月経った頃に抜け毛の増加を実感する方が多いのです。
この時期の抜け毛の増加は、産後脱毛症が始まったサインと捉えることができます。
産後脱毛症で目立ちやすい生え際・分け目・頭頂部の薄毛パターン
産後の抜け毛は、頭部全体で均一に起こるわけではなく、特定の部位で薄毛が目立ちやすい傾向があります。ご自身の状態を把握するために、どの部分が気になるか確認してみましょう。
抜け毛が集中しやすい部位とその特徴
特に薄毛が目立ちやすいのは、生え際(額のあたり)、分け目、そして頭頂部です。これらの部位は、もともと髪の毛の密度に対する視線が集まりやすく、少し髪が減っただけでも変化を感じやすい場所です。

鏡を見たときや、髪をかき上げたときに「地肌が透けて見えるようになった」と感じることが多いようです。
生え際の後退感
おでこが広くなったように感じたり、M字部分の剃り込みが深くなったように見えたりすることがあります。髪をアップにする際に特に気になる方が多いようです。
分け目の幅広がり
いつも同じ位置で髪を分けている方は、その分け目が以前よりくっきりと、幅広く見えるようになることがあります。地肌の露出が増えるため、薄くなったと感じやすい部位です。
頭頂部のボリュームダウン
頭のてっぺん部分の髪全体のボリュームが減り、地肌が透けて見えやすくなります。つむじ周りの薄毛として自覚されることもあります。
産後の薄毛パターンとFAGAの違い
産後の抜け毛は、多くの場合、頭部全体で毛量が減少し、特に前述の部位で目立つ「びまん性脱毛」のパターンをとります。これは一時的な休止期脱毛症の一種です。
一方で、FAGA(女性男性型脱毛症)は、男性のAGAと同様に、特定の部位(特に頭頂部や分け目)の髪が細く、軟毛化していくのが特徴で、進行性の脱毛症です。
産後の抜け毛が一向に改善しない、あるいは薄毛のパターンが異なる場合は、FAGAの可能性も考慮し、専門医に相談することが重要です。

シャンプー時の排水口チェック:一日何本で要注意?
毎日のシャンプーは、抜け毛の量を客観的に把握する良い機会です。排水口にたまる髪の毛の量に変化がないか、意識して確認してみましょう。

抜け毛の本数で判断するセルフチェック
健康な人でも、一日に50本から100本程度の髪の毛は自然に抜けています。これはヘアサイクルに伴う正常な現象です。しかし、産後脱毛症の期間中は、この本数が一時的に増加します。
通常の抜け毛本数との比較
産後の抜け毛のピーク時には、一日の抜け毛が200本、多い方では300本を超えることもあります。特にシャンプー時は、物理的な刺激も加わるため、一日の抜け毛の多くがこのタイミングで抜けると言われています。
排水口にたまる髪の量が「明らかに増えた」と感じる場合は、産後脱毛症のサインかもしれません。
抜け毛の本数を数える際の注意点
毎日正確に本数を数えるのは大変ですが、排水口にたまった髪の毛の「かたまりの大きさ」を、例えば指でつまんだ時の感覚や、見た目の量で比較するだけでも変化は把握できます。
「いつもより明らかに多い」状態が続くようであれば、抜け毛が増加していると考えられます。
抜け毛量のピークはいつまで続く?
産後の抜け毛は、一般的に産後4~6カ月頃にピークを迎えることが多いです。この時期を過ぎると、徐々に抜け毛の量は減少し始め、自然なヘアサイクルへと戻っていきます。
ただし、個人差が大きく、授乳の有無や栄養状態、ストレスなども影響するため、ピークの時期や期間は人それぞれです。
シャンプー選びと頭皮ケア
抜け毛が多い時期は、頭皮への負担が少ないアミノ酸系の洗浄成分を使用したシャンプーを選ぶなど、優しいケアを心がけることも大切です。ゴシゴシ洗わず、指の腹でマッサージするように洗いましょう。
ただし、シャンプー自体が直接的に抜け毛を減らすわけではありません。頭皮環境を健やかに保つことが、新しい髪の成長をサポートします。
抜け毛量の目安
状態 | 1日の抜け毛本数(目安) | 主な特徴 |
---|---|---|
通常時 | 50~100本 | ヘアサイクルによる自然な脱毛 |
産後脱毛症(初期~ピーク) | 100~300本以上 | シャンプー時やブラッシング時に顕著に増加 |
産後脱毛症(回復期) | 徐々に通常時に戻る | 抜け毛量が減少し、新しい毛が生え始める |
髪質の変化と「アホ毛」増加が示す産後脱毛症の進行度
抜け毛の量だけでなく、髪質そのものの変化や、短い毛(いわゆる「アホ毛」)の増加も、産後脱毛症の経過を示すサインとなることがあります。
産後に感じる髪質の変化とは
出産後は、ホルモンバランスの変化や、育児による生活習慣の変化(睡眠不足、栄養の偏り、ストレスなど)が複合的に影響し、髪質が変わったと感じることがあります。

例えば、「髪がパサつくようになった」「ツヤがなくなった」「うねりやすくなった」「細くなった気がする」といった変化です。
これらは、必ずしも脱毛症と直結するわけではありませんが、髪全体の健康状態が変化しているサインと捉えることができます。
髪のパサつきやツヤの低下
産後の体は、母乳生成などに多くの栄養を必要とします。
そのため、髪の毛にまで十分な栄養が行き渡りにくくなり、乾燥しやすくなったり、ツヤが失われたりすることがあります。バランスの取れた栄養摂取が重要です。
髪のうねりや細さの変化
ホルモンバランスの変化は、毛根の形状にも影響を与え、一時的に髪がうねりやすくなることがあります。また、全体的に毛量が減ることで、一本一本の髪が細くなったように感じる場合もあります。
「アホ毛」増加は回復の兆しか?
抜け毛が落ち着き始めると、新しい髪の毛(新生毛)が生えてきます。この生え始めの短い毛が、ピンピンと立ちやすく、「アホ毛」として目立つことがあります。

特に、生え際や分け目、頭頂部など、抜け毛が多かった部分で顕著に見られる傾向があります。
アホ毛の増加は、一見すると扱いにくく感じるかもしれませんが、実はヘアサイクルが正常化し、髪が再び成長し始めた証拠、つまり回復期に入ったサインと考えることができます。
アホ毛が示すヘアサイクルの回復
産後脱毛症で休止期に入っていた毛根から、新たに成長期の毛が生え始めた状態がアホ毛です。最初は細く短い毛ですが、時間とともに太く長く成長していきます。
この短い毛が増えてきたら、抜け毛の期間が終わりに向かっていると前向きに捉えましょう。
産後の髪質変化の期間
髪質の変化やアホ毛が目立つ期間は、抜け毛の期間と同様に個人差がありますが、多くの場合、産後半年から1年程度で徐々に落ち着いてきます。
新しい髪が生え揃うまでには時間がかかるため、焦らずに見守ることが大切です。
産後の髪の変化まとめ
変化の種類 | 考えられる原因 | 対処のポイント |
---|---|---|
パサつき・ツヤ低下 | 栄養不足、ホルモンバランス | バランスの取れた食事、保湿ケア |
うねり・くせ毛化 | ホルモンバランス、毛根の変化 | スタイリング剤の活用、優しいドライ |
アホ毛(短い毛)の増加 | 新生毛の成長(回復のサイン) | ヘアオイルやワックスで抑える、焦らない |
地肌の透け感セルフスコアリング法で早期変化を可視化
抜け毛の本数を数える以外にも、見た目の変化を客観的に記録する方法があります。地肌の透け具合を定期的にチェックし、変化を可視化してみましょう。
鏡を使った地肌のチェックポイント

明るい場所で、手鏡などを使いながら、特に気になる部分(生え際、分け目、頭頂部)の地肌の透け具合を確認します。毎回同じ場所、同じ明るさで確認することが、変化を捉える上で重要です。
チェックする主な部位
- 生え際(額との境界線)
- 分け目(普段分けているライン)
- 頭頂部(つむじ周辺)
セルフスコアリングの方法
地肌の透け具合を、自分なりに段階評価(スコアリング)して記録しておくと、変化が分かりやすくなります。例えば、以下のような簡単な基準で評価してみましょう。
地肌の透け感スコアリング(例)
スコア | 地肌の透け具合 | 目安 |
---|---|---|
1 | ほとんど気にならない | 産前や抜け毛が気にならない状態 |
2 | 光が当たると少し透ける | 分け目がやや目立つ、髪が濡れると透ける |
3 | 明らかに地肌が見える部分がある | 分け目が広い、頭頂部が薄く感じる |
4 | 地肌がかなり目立つ | 広範囲で地肌が透けて見える |
このスコアを、日付とともに手帳やアプリなどに記録しておきます。
例えば、「〇月〇日 分け目:スコア2、頭頂部:スコア1」のように記録し、1~2週間ごとに比較すると、抜け毛の進行度や回復の度合いを客観的に把握しやすくなります。
スコアリングの意義と注意点
このセルフスコアリングは、あくまで自分自身の変化を把握するための目安です。スコアが悪化したからといって過度に心配する必要はありません。産後の抜け毛は一時的なものであることが多いです。
しかし、スコアが長期間(例えば産後1年以上)改善しない、あるいは悪化し続ける場合は、他の原因(FAGAなど)も考えられるため、一度皮膚科専門医に相談することをお勧めします。
フケ・かゆみ・湿疹など頭皮トラブルを伴う産後の抜け毛ケース
産後の抜け毛と同時に、フケやかゆみ、湿疹といった頭皮トラブルが現れることもあります。抜け毛を悪化させる要因にもなり得るため、注意が必要です。

産後に頭皮トラブルが起こりやすい原因
産後は、ホルモンバランスの急激な変化に加え、慣れない育児による睡眠不足、ストレス、食生活の乱れなどが重なり、心身ともにデリケートな状態です。
これらの要因は、頭皮のバリア機能の低下や皮脂バランスの乱れを引き起こし、トラブルを招きやすくします。
ホルモンバランスの乱れによる影響
女性ホルモンの減少は、皮膚の乾燥を招きやすくします。頭皮が乾燥すると、バリア機能が低下し、外部からの刺激に敏感になったり、かゆみを感じやすくなったりします。
また、乾燥が原因で細かいフケ(乾性フケ)が増えることもあります。
生活習慣の変化による影響
育児による睡眠不足やストレスは、自律神経のバランスを乱し、血行不良や皮脂の過剰分泌を招くことがあります。
皮脂が過剰になると、毛穴が詰まりやすくなったり、皮脂を栄養源とするマラセチア菌が増殖して脂漏性皮膚炎(しろうせいひふえん)を引き起こし、ベタついたフケ(脂性フケ)やかゆみ、赤み、湿疹の原因となることがあります。
栄養バランスの偏り
産後の体は多くの栄養を必要としますが、育児に追われて食事がおろそかになりがちです。特に、ビタミンB群や亜鉛など、皮膚や髪の健康維持に必要な栄養素が不足すると、頭皮トラブルが起こりやすくなります。
頭皮トラブルがある場合の注意点と対策
フケやかゆみ、湿疹などの症状がある場合は、まず頭皮を清潔に保つことが基本です。しかし、洗いすぎはかえって乾燥を招いたり、刺激になったりすることもあるため注意が必要です。
低刺激性のシャンプーを選び、優しく洗い、すすぎ残しがないようにしましょう。
頭皮トラブルと抜け毛の関係
頭皮の炎症やかゆみは、それ自体がストレスになるだけでなく、無意識に掻いてしまうことで頭皮を傷つけ、毛根にダメージを与えてしまう可能性があります。また、毛穴の詰まりや炎症は、健康な髪の成長を妨げる要因にもなり得ます。
そのため、頭皮トラブルは放置せず、早めに対策をとることが、抜け毛の悪化を防ぐ上でも重要です。
頭皮トラブルの種類とセルフケア
トラブルの種類 | 主な症状 | セルフケアのポイント |
---|---|---|
乾燥・乾性フケ | 細かいフケ、かゆみ、つっぱり感 | 保湿成分配合のシャンプー、洗いすぎない |
脂漏性皮膚炎・脂性フケ | ベタつくフケ、かゆみ、赤み、湿疹 | 抗真菌成分配合シャンプー(医師相談推奨)、清潔保持 |
接触皮膚炎(かぶれ) | 赤み、かゆみ、ブツブツ、腫れ | 原因物質(シャンプー等)の使用中止、医師相談 |
セルフケアで改善しない場合や、症状が強い場合は、自己判断せずに皮膚科を受診しましょう。適切な診断と治療を受けることが大切です。
細く短い新生毛が現れる回復サインと経過観察の目安
抜け毛のピークを過ぎると、徐々に新しい髪の毛が生え始めます。この回復のサインを見逃さず、焦らずに経過を見守ることが大切です。
回復期に見られる髪の変化
産後脱毛症からの回復期には、いくつかの特徴的な変化が見られます。最も分かりやすいのは、抜け毛の量が徐々に減っていくことです。
シャンプー時の排水口の髪の量が、ピーク時に比べて明らかに少なくなってきたら、回復が始まっているサインと考えて良いでしょう。
新生毛(産毛)の出現
抜け毛が減ると同時に、生え際や分け目、頭頂部などに、細くて短い毛(新生毛、産毛)が生えてくるのが観察されます。

これが、いわゆる「アホ毛」として目立つこともありますが、ヘアサイクルが正常に戻り、新しい髪が成長を始めた証拠です。最初は頼りなく見えるかもしれませんが、時間とともに太く長く成長していきます。
髪全体のボリューム感の回復
新生毛が生え、既存の髪も成長を続けることで、徐々に髪全体のボリューム感が戻ってきます。地肌の透け感も少しずつ改善していくでしょう。
ただし、髪が伸びるスピードには限界があるため、元の状態に戻るまでには時間がかかります。
回復までの期間と経過観察のポイント
産後の抜け毛は、一般的に産後半年から1年程度で自然に回復することが多いです。しかし、回復のスピードには個人差があります。
回復期間の目安
時期 | 主な状態 |
---|---|
産後2~3カ月 | 抜け毛が増え始める |
産後4~6カ月 | 抜け毛がピークを迎えることが多い |
産後6カ月~1年 | 抜け毛が減少し、新生毛が生え始める(回復期) |
産後1年~1年半 | 多くの場合、元の毛量に近いくらいまで回復する |
経過観察で注意すべきこと
回復期に入っても、焦りは禁物です。髪の毛は1カ月に約1cm程度しか伸びません。新しい髪が生え揃い、全体のボリュームが回復するには、数カ月から1年以上の期間が必要です。過度な心配はストレスとなり、回復を妨げる可能性もあります。
バランスの取れた食事、十分な睡眠(できる範囲で)、ストレスケアを心がけ、気長に見守りましょう。
回復が見られない場合の対応
産後1年を過ぎても抜け毛が減らない、あるいは薄毛が進行しているように感じる場合は、産後脱毛症以外の原因(FAGA、甲状腺疾患、栄養不足など)が隠れている可能性も考えられます。
自己判断せず、皮膚科専門医に相談することを強く推奨します。適切な診断に基づいた治療や対策が必要です。
パートナーに気づかれやすい抜け毛のサインと客観的記録術
自分では気づきにくい変化も、身近なパートナーや家族は気づいていることがあります。客観的な視点を取り入れ、変化を記録することも有効です。
自分以外の人から見た抜け毛のサイン
毎日鏡を見ていると、少しずつの変化には慣れてしまい、客観的な判断が難しくなることがあります。しかし、一緒に生活しているパートナーや家族は、ふとした瞬間に変化に気づくことがあります。
パートナーが気づきやすい変化
- 床や枕に落ちている髪の毛の量が増えた
- シャワールームの排水口の詰まりが頻繁になった
- 髪をとかした後のブラシにつく毛の量が多い
- 後ろから見たときの分け目や頭頂部の地肌が目立つようになった
もしパートナーからこのような指摘があった場合は、気にしすぎと一蹴せず、産後脱毛症の可能性を考えてみましょう。
指摘されるとショックかもしれませんが、客観的な意見として受け止め、自身の状態を確認するきっかけにすることが大切です。
客観的な記録方法のすすめ
抜け毛の状態変化をより客観的に把握するために、定期的に写真を撮って記録する方法があります。スマートフォンなどで簡単にできるので、試してみてはいかがでしょうか。

写真記録のポイント
項目 | ポイント | 理由 |
---|---|---|
撮影場所・明るさ | 毎回同じ場所、同じ明るさで撮影する | 条件を揃えることで変化を比較しやすくする |
撮影アングル | 気になる部位(生え際、分け目、頭頂部など)を真正面、真上など、決まった角度から撮影する | 同じ角度からの比較が変化を捉えやすい |
撮影頻度 | 月に1回程度、決まった日に撮影する | 頻繁すぎると変化が分かりにくく、ストレスになる可能性も |
撮影者 | 可能であればパートナーなど、自分以外の人に撮ってもらう | 頭頂部など自分では撮りにくい部分も正確に記録できる |
撮影した写真は日付とともに保存し、数カ月単位で見返すと、抜け毛の進行度や回復の様子を客観的に確認できます。もし皮膚科を受診する際にも、これらの写真は医師にとって診断の助けとなる貴重な情報になります。
記録を活用したコミュニケーション
記録した写真やスコアをもとに、パートナーと現状を共有することも、精神的な負担を軽減する助けになります。
「最近抜け毛が多くて…」と漠然と話すよりも、「先月と比べて分け目がこれくらい変わったみたい」と具体的に示すことで、パートナーの理解も得やすくなるでしょう。
一人で悩まず、周囲のサポートを得ながら乗り越えていくことが大切です。
よくある質問
- 産後の抜け毛はいつまで続きますか?
-
一般的には、産後4~6カ月頃に抜け毛のピークを迎え、その後徐々に減少し、産後半年から1年程度で落ち着くことが多いです。
ただし、回復までの期間には個人差が大きく、授乳期間、栄養状態、ストレス、睡眠時間なども影響します。
産後1年以上経っても抜け毛が続く、あるいは悪化するような場合は、他の原因も考えられるため、皮膚科専門医への相談をお勧めします。
- 産後の抜け毛対策として自分でできることはありますか?
-
産後の抜け毛の主な原因はホルモンバランスの変化であり、完全に防ぐことは難しいですが、頭皮環境を整え、髪の成長をサポートするためにできることはあります。
まず、バランスの取れた食事を心がけ、特にタンパク質、ビタミン、ミネラル(亜鉛、鉄など)を意識して摂取しましょう。次に、十分な睡眠と休息を取り、ストレスを溜めないようにすることも大切です。
また、頭皮への負担が少ない優しいシャンプーを選び、ゴシゴシ洗わず、マッサージするように洗いましょう。過度なヘアカラーやパーマは、回復期には控える方が良い場合もあります。
産後のヘアケア基本ポイント
ポイント 具体的な内容 栄養バランス タンパク質、ビタミン、ミネラルを意識した食事 生活習慣 可能な範囲での十分な睡眠、ストレス管理 ヘアケア 低刺激シャンプー、優しい洗髪、頭皮マッサージ、過度な施術を避ける - 抜け毛がひどいのですが、治療は必要ですか?
-
産後の抜け毛(分娩後脱毛症)は、多くの場合、一時的な生理現象であり、特別な治療をしなくても自然に回復します。
しかし、抜け毛の量が非常に多い、長期間(産後1年以上)続く、頭皮に強いかゆみや湿疹がある、あるいは明らかに薄毛が進行していると感じる場合は、他の脱毛症(FAGAなど)や皮膚疾患、内科的な問題(甲状腺機能異常、貧血など)が隠れている可能性もあります。
このような場合は、自己判断せずに皮膚科専門医を受診し、正確な診断を受けることが重要です。必要に応じて適切な治療やアドバイスを行います。
- 授乳していると抜け毛は長引きますか?
-
授乳自体が直接的に抜け毛を長引かせるという明確な医学的根拠は確立されていません。
しかし、授乳中はプロラクチンというホルモンの分泌が高まり、これが排卵を抑制し、エストロゲンの回復を緩やかにする可能性は指摘されています。
また、授乳による母体の栄養消費や、夜間の授乳による睡眠不足、育児ストレスなどが複合的に影響し、結果的にヘアサイクルの回復が遅れる可能性は考えられます。
ただし、これも個人差が大きいため、一概には言えません。授乳中であっても、バランスの取れた食事や休息を心がけることが大切です。
産後の抜け毛の症状が理解できたとしても「原因」を究明しないことには対策できません。以下の記事で産後の抜け毛の原因について深く解説しておりますので一読ください。
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