女性の薄毛の悩みとして近年注目されるFAGA(女性男性型脱毛症)。「最近、抜け毛が増えた気がする」「髪のボリュームが減ってきたかも」と感じていませんか? FAGAは男性のAGAとは異なり、特有の症状の現れ方があります。

この記事では、FAGAの代表的な症状について詳しく解説します。ご自身の状態と照らし合わせ、早期発見・早期対応につなげるための参考にしてください。
進行性の脱毛症であるため、気になるサインがあれば早めに専門のクリニックへ相談することが大切です。
分け目が広がる初期サイン
FAGA(女性男性型脱毛症)の最も一般的な初期症状の一つが、髪の分け目が以前より目立つようになることです。
特に頭頂部の分け目周辺の毛髪密度が低下し、地肌が透けて見える範囲が広がります。これは、毛髪が細くなったり、本数が減少したりすることで起こります。

多くの女性が最初に「あれ?」と感じる変化であり、薄毛の進行を示唆する重要なサインです。
分け目の変化に気づく瞬間
日常生活の中で、ふとした瞬間に分け目の変化に気づくことがあります。例えば、鏡を見たとき、髪をセットしているとき、あるいは他人から指摘されたときなどです。
特に、明るい照明の下や、髪が濡れている状態では、分け目の広がりがより顕著に見えることがあります。初期段階ではわずかな変化ですが、注意深く観察することが重要です。
分け目の状態比較
状態 | 健康な頭皮 | FAGA初期症状 |
---|---|---|
分け目の幅 | 狭く、地肌はあまり見えない | やや広がり、地肌が透けて見える |
周辺の毛髪 | 太くしっかりしている | 細く、密度が低下している場合がある |
進行の感覚 | 特に変化を感じない | 徐々に広がっているように感じる |
頭頂部への影響
分け目の広がりは、特に頭頂部で顕著に見られる傾向があります。FAGAは頭頂部を中心に薄毛が進行することが多いため、分け目部分の変化は頭頂部の薄毛の始まりを示している可能性があります。
この段階で専門のクリニックに相談することで、早期の対策や治療を開始でき、改善の可能性が高まります。
FAGA特有のびまん性脱毛パターン
男性のAGA(男性型脱毛症)が生え際の後退や頭頂部の禿げ上がりといった局所的なパターンで進行することが多いのに対し、FAGA(女性男性型脱毛症)では頭部全体の毛髪が均等に薄くなる「びまん性脱毛」というパターンを示すのが特徴です。

特定の部位だけが極端に薄くなるのではなく、全体的にボリュームが失われていくように感じます。
びまん性脱毛とは
びまん性脱毛は、髪の毛一本一本が細くなったり(軟毛化)、毛髪の密度が全体的に低下したりすることで起こります。これにより、髪全体のボリューム感が失われ、スタイリングがしにくくなったり、地肌が透けて見えやすくなったりします。
FAGAの進行とともに、この傾向は強まります。
脱毛パターンの比較(AGA vs FAGA)
特徴 | AGA(男性型脱毛症) | FAGA(女性男性型脱毛症) |
---|---|---|
主な脱毛部位 | 生え際(M字)、頭頂部(O字) | 頭頂部、分け目中心に全体的 |
脱毛パターン | 局所的、パターン化 | びまん性(全体的) |
完全な禿げ上がり | 起こりやすい | まれ(完全に禿げることは少ない) |
女性における薄毛の多様性
女性の薄毛の原因はFAGAだけではありません。びまん性脱毛は、甲状腺疾患や栄養不足、ストレス、薬剤の影響など、他の原因でも起こりえます。
しかし、分け目や頭頂部を中心に密度低下が目立つ場合は、FAGAの可能性を考慮する必要があります。正確な原因特定のためには、クリニックでの診断が重要です。
前髪・こめかみの密度低下
FAGA(女性男性型脱毛症)は頭頂部のびまん性脱毛が特徴的ですが、症状が進行すると前髪やこめかみ部分の毛髪密度も低下してくることがあります。

男性のAGAのように生え際が大きく後退することは稀ですが、前髪が薄くなった、ボリュームが減った、こめかみ部分の地肌が目立つようになった、と感じる女性は少なくありません。
前髪の変化とその影響
前髪は顔の印象を大きく左右する部分です。そのため、前髪の密度低下や軟毛化は、見た目の変化として自覚しやすい症状と言えます。
「以前のように前髪が決まらない」「おでこが広く見えるようになった」といった悩みにつながることがあります。
前髪・こめかみのチェック項目
- 以前より前髪の量が減った
- 前髪のスタイリングが難しい
- こめかみ部分の髪が細くなった
- 髪をかきあげると地肌が目立つ
こめかみ部分の薄毛
こめかみ部分の毛髪は、もともと他の部位に比べて細い傾向がありますが、FAGAの影響でさらに密度が低下することがあります。髪をアップにした際などに、こめかみ部分の地肌の透け感が気になるようになるかもしれません。
部位別 FAGAの影響度(一般的な傾向)
部位 | 影響の受けやすさ | 主な症状 |
---|---|---|
頭頂部・分け目 | 高い | びまん性の密度低下、分け目の広がり |
前髪 | 中程度 | ボリューム減少、軟毛化 |
こめかみ | やや低い〜中程度 | 密度低下、地肌の透け感 |
後頭部 | 低い | 比較的影響を受けにくい |
女性男性型脱毛症による頭頂部ボリューム減少
FAGA(女性男性型脱毛症)において、最も顕著な症状が現れるのが頭頂部です。頭頂部の毛髪が全体的に細く少なくなることで、ボリューム感が失われます。

「髪がぺたんとしてしまう」「頭頂部が平らに見える」といった自覚症状が多く聞かれます。これは、FAGAが頭頂部の毛包に影響を与えやすい性質を持つためと考えられています。
ボリュームダウンのメカニズム
頭頂部のボリュームダウンは、単に抜け毛が増えるだけでなく、一本一本の髪の毛が細くなる「ミニチュア化(軟毛化)」が大きく関与しています。
髪の毛にハリやコシがなくなり、立ち上がりが悪くなるため、全体としてボリュームが失われたように見えます。FAGAの進行に伴い、この傾向は強まります。
頭頂部ボリューム変化の段階
段階 | 見た目の変化 | 自覚症状 |
---|---|---|
初期 | 分け目がやや目立つ | スタイリングがしにくい、ぺたんとする |
中期 | 頭頂部全体の地肌が透けて見える | 明らかにボリュームが減ったと感じる |
進行期 | 頭頂部の毛髪密度がかなり低い | 地肌が広範囲に見え、隠すのが難しい |
スタイリングへの影響
頭頂部のボリュームが減少すると、ヘアスタイルを維持することが難しくなります。ふんわりとしたスタイルを作ってもすぐに潰れてしまったり、分け目がパックリと割れてしまったりすることがあります。
このようなスタイリングの悩みも、FAGAのサインの一つと考えられます。
ボリュームダウン対策のヒント(日常ケア)
- 根元を立ち上げるようなドライヤーのかけ方
- 頭皮マッサージによる血行促進
- ボリュームアップ効果のあるスタイリング剤の使用(一時的)
ただし、これらは一時的な対策であり、根本的な薄毛の改善にはつながりません。FAGAが疑われる場合は、クリニックでの適切な診断と治療が必要です。
抜け毛本数の季節変動と連続性
抜け毛の本数は、健康な人でも季節によって多少変動します。特に秋口は抜け毛が増える傾向があると言われています。
しかし、FAGA(女性男性型脱毛症)の場合、特定の季節だけでなく、年間を通じて抜け毛が多い状態が続く、あるいは徐々に増加していく傾向が見られます。一時的な抜け毛の増加と、持続的・進行性の抜け毛を見分けることが重要です。
正常な抜け毛とFAGAによる抜け毛
健康な頭皮でも、ヘアサイクル(毛周期)により1日に50本から100本程度の髪の毛が自然に抜けています。これは新しい髪の毛が生えるための正常な現象です。
しかし、FAGAが進行すると、ヘアサイクルが乱れ、通常よりも多くの髪の毛が抜ける状態が慢性的に続くようになります。
抜け毛の目安
状態 | 1日の抜け毛本数(目安) | 特徴 |
---|---|---|
正常範囲 | 50~100本 | 季節変動あり、太い毛が多い |
FAGAの可能性 | 100本以上が続く、または増加傾向 | 細い毛や短い毛の割合が増える |
抜け毛の質にも注目
抜け毛の本数だけでなく、抜けた毛の質にも注目しましょう。FAGAが進行すると、ヘアサイクルの成長期が短縮され、十分に成長しきれない細くて短い髪の毛(軟毛)の割合が増加します。
シャンプー時やブラッシング時、枕などに細く短い抜け毛が目立つようになったら、FAGAのサインかもしれません。
抜け毛チェック時のポイント

- 排水溝に溜まる髪の毛の量
- 枕についている髪の毛の本数と太さ
- ブラッシング時に抜ける髪の毛の量と質
日々の抜け毛の状態を意識的に観察し、明らかな増加や質の変化が続く場合は、専門医に相談することをお勧めします。
毛髪のミニチュア化と太さの不均一化
FAGA(女性男性型脱毛症)の進行において中心的な役割を果たすのが、毛髪の「ミニチュア化(軟毛化)」です。
これは、髪の毛が十分に太く長く成長する前にヘアサイクルが終了し、細く短い、色素の薄い毛髪に置き換わっていく現象を指します。その結果、頭部全体の毛髪の太さが不均一になり、薄毛が目立つようになります。

ミニチュア化(軟毛化)とは
毛包(毛根を包む組織)がFAGAの影響を受けると、髪の毛を作り出す力が弱まります。これにより、本来であれば太く長く成長するはずの硬毛が、産毛のような細く短い軟毛へと変化していきます。
このミニチュア化が進むと、毛髪密度が同じでも、髪全体のボリュームは著しく低下します。
硬毛と軟毛(ミニチュア毛)の比較
特徴 | 硬毛(健康な毛髪) | 軟毛(ミニチュア化した毛髪) |
---|---|---|
太さ | 太い | 細い |
長さ | 長い | 短い |
色 | 濃い | 薄い、または無色に近い |
ハリ・コシ | ある | ない |
毛髪の太さのばらつき
FAGAが進行すると、頭皮に太い毛髪と細い毛髪(ミニチュア化した毛髪)が混在するようになります。これにより、髪全体の太さが不均一になります。特に頭頂部や分け目周辺でこの傾向が強く見られます。
手で髪に触れたときに、以前のような均一な太さやハリを感じられなくなることがあります。
太さの不均一化がもたらす影響
- 髪全体のボリュームダウン
- ハリ・コシの低下
- スタイリングの困難さ
- 地肌の透け感の増加
毛髪のミニチュア化と太さの不均一化は、FAGAの診断において重要な所見の一つです。マイクロスコープなどで頭皮を観察することで、これらの変化を確認できます。
女性男性型脱毛症で見られる毛周期短縮
私たちの髪の毛は、「成長期」「退行期」「休止期」という一定のサイクル(毛周期、ヘアサイクル)を繰り返しています。
FAGA(女性男性型脱毛症)では、この毛周期、特に髪が太く長く成長する「成長期」が短縮されることが、薄毛を引き起こす大きな原因となります。
正常な毛周期
健康な髪の毛の毛周期は、通常2年から6年程度の成長期を経て、数週間の退行期(成長が止まる期間)、そして数ヶ月の休止期(毛根が活動を休み、脱毛する期間)へと移行します。
休止期が終わると、また新しい毛髪が成長期に入ります。
毛周期の各段階
段階 | 期間(目安) | 状態 |
---|---|---|
成長期 | 2年~6年 | 毛髪が活発に成長する |
退行期 | 2~3週間 | 毛髪の成長が止まる |
休止期 | 3~4ヶ月 | 毛髪が抜け落ち、次の成長準備 |
FAGAによる毛周期の変化
FAGAを発症すると、主に頭頂部などの毛包で成長期が数ヶ月から1年程度に短縮されてしまいます。これにより、髪の毛は十分に太く長く成長する時間がないまま、早期に退行期・休止期へと移行してしまいます。
これが毛髪のミニチュア化(軟毛化)を引き起こし、結果として薄毛が進行します。
毛周期短縮の影響
- 毛髪が細く短くなる(ミニチュア化)
- 抜け毛が増加する(休止期毛の割合増加)
- 頭皮全体の毛髪密度が低下する
- 薄毛が進行する
FAGAの治療では、この短縮された成長期を正常な長さに戻すこと、あるいは維持することが目標の一つとなります。ミノキシジルなどの治療薬は、毛周期に作用し、成長期を延長させる効果が期待されます。
FAGA症状を見逃さないセルフチェックポイント
FAGA(女性男性型脱毛症)はゆっくりと進行するため、初期の変化に気づきにくいことがあります。しかし、早期に発見し対策を始めることが、改善のためには非常に重要です。
日頃からご自身の髪や頭皮の状態をチェックする習慣をつけましょう。
鏡を使ったチェック
定期的に鏡で頭皮の状態を確認しましょう。特に明るい場所で、分け目や頭頂部、前髪、こめかみなどを注意深く観察します。

鏡での確認項目
チェック項目 | 確認ポイント |
---|---|
分け目 | 以前より幅が広くなっていないか?地肌が目立たないか? |
頭頂部 | 髪全体のボリュームが減っていないか?地肌が透けて見えないか? |
前髪・こめかみ | 量が減ったり、細くなったりしていないか? |
髪全体の質感 | ハリやコシがなくなっていないか?細い毛が増えていないか? |
抜け毛のチェック
シャンプー時やブラッシング時、朝起きたときの枕などを確認し、抜け毛の量や質に変化がないかチェックします。
抜け毛の確認ポイント
- 抜け毛の本数が明らかに増えていないか?(1日100本以上が続く)
- 細くて短い毛(ミニチュア毛)の割合が増えていないか?
- 特定の季節だけでなく、抜け毛が多い状態が続いていないか?
スタイリング時のチェック
毎日のヘアセットの際に、髪の変化を感じ取ることができます。
スタイリング時の確認ポイント
- 髪がまとまりにくくなった、セットが決まらない
- ボリュームが出にくくなった、すぐにぺたんとなる
- 分け目がすぐに割れてしまう
これらのセルフチェックで気になる点があれば、自己判断せずに、一度皮膚科や薄毛治療専門のクリニックに相談することをお勧めします。専門医による正確な診断が、適切な対策への第一歩です。
遺伝や加齢、ホルモンバランスの乱れなど、原因に応じたアプローチが改善には必要です。
よくある質問
- FAGAの症状は急に現れますか?
-
A1. いいえ、FAGAの症状は通常、ゆっくりと進行します。多くの場合、数ヶ月から数年かけて徐々に分け目が目立ったり、頭頂部のボリュームが減ったりといった変化が現れます。
そのため、初期段階では自覚しにくいこともありますが、日々のセルフチェックで早期の変化に気づくことが大切です。
- 抜け毛が増えれば必ずFAGAですか?
-
A2. 抜け毛の増加はFAGAのサインの一つですが、抜け毛が増える原因は他にも様々あります(例:産後脱毛症、円形脱毛症、休止期脱毛症、薬剤の影響など)。
FAGAの場合は、抜け毛の増加と同時に、髪の毛が細くなる(ミニチュア化)、分け目や頭頂部が薄くなるといった特徴的な症状を伴うことが多いです。正確な診断のためには、クリニックでの診察が必要です。
- FAGAは完全に治りますか?
-
A3. FAGAは進行性の脱毛症であり、現在の医学では「完治」させることは難しいとされています。
しかし、ミノキシジル外用薬などの適切な治療を早期に開始し継続することで、薄毛の進行を抑制し、症状を改善させることは十分に可能です。
治療目標は、薄毛の進行を止め、可能な限り毛髪の状態を改善し、維持することになります。
- FAGAの症状は遺伝しますか?
-
FAGAの発症には遺伝的要因が関与すると考えられています。家族(特に母親や父方の祖母など)に薄毛の方がいる場合、FAGAを発症するリスクがやや高まる可能性があります。
ただし、遺伝的素因があっても必ず発症するわけではなく、ホルモンバランスや加齢、生活習慣など他の要因も複合的に関わって発症すると考えられています。
FAGAの症状についてご理解いただけましたでしょうか。もしFAGAかもしれないと感じたら、その原因やクリニックで行う検査について知ることも大切です。詳しい情報は以下の記事で解説していますので一読ください。
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