慢性腎臓病の進行や急性期の腎不全などを背景に、定期的な人工透析が必要となる方は少なくありません。人工透析食事に気を配ることは、からだの状態を保つうえでとても大切です。
とくに、人工透析食べてはいけないものを理解し、余分な電解質や毒素を体内にためこまない工夫を行うことが健康維持に役立ちます。
無理なく日常生活を送るためにも、具体的にどのような食品や調理法に注意すればよいか、一緒に確認していきましょう。
人工透析が必要になるメカニズム
人工透析がどういった経緯で必要となるのかを理解すると、日々の生活習慣の見直しや人工透析食べてはいけないものを意識しやすくなります。腎臓の働きが低下すると、老廃物や余分な水分を十分に排出できない状態に陥ります。
その状態を補う医療行為が人工透析です。以下では、腎臓と透析の基礎知識を改めて整理します。
腎臓の基本的な役割
腎臓は血液中の老廃物や電解質のバランスを保つために重要な働きを担います。血液をろ過しながら、ナトリウムやカリウム、リンなどの物質を適切に排出し、体内環境を安定に保つ仕組みです。
また、ホルモンの産生や血圧の調節などにも関与しています。腎臓が傷ついたり十分に機能しなくなったりすると、老廃物が蓄積しやすくなり、さまざまな合併症を引き起こす可能性があります。
腎機能が低下する原因
腎機能が低下する主な原因には、高血圧や糖尿病などの生活習慣病が挙げられます。高血圧による血管のダメージや、高血糖状態が続くことで起こる血管障害は、腎臓の細かい血管にも大きな影響を与えます。
こうした疾患を放置すると、腎臓だけでなく全身の臓器にも負担がかかり、最終的に透析が必要となる状態に進行するリスクがあります。
透析治療の概略
透析には血液透析と腹膜透析の2種類があります。血液透析は、血液をいったん体外に導き、ダイアライザーと呼ばれる装置で老廃物や余分な水分をろ過してから体内に戻す方法です。
一方、腹膜透析は、お腹の中にある腹膜をフィルターとして利用し、透析液を体内に注入しながら老廃物や余分な水分を除去する仕組みです。それぞれのライフスタイルや疾患の程度などによって、どちらの方法を選ぶかが決まります。
腎移植という選択肢
透析を受けている患者の中には、腎移植を視野に入れる方もいます。適合するドナーが見つかれば、機能する腎臓を移植することで、体外での透析が不要になる可能性があります。
ただし、ドナーの確保や免疫抑制剤の使用など、実現するまでには時間と準備が必要です。透析中も日頃の人工透析食事を心がけながら、担当医と相談して自分に合った治療法を検討することが大切です。
主な腎機能低下の原因と特徴
原因 | 特徴 | 主な対策 |
---|---|---|
高血圧 | 血管の硬化や損傷によって腎臓のろ過能力が下がる | 血圧管理と減塩 |
糖尿病 | 血糖コントロール不良により腎臓の微小血管が障害 | 血糖管理と適度な運動 |
薬剤性腎障害 | 抗生物質や鎮痛薬による腎臓への負担 | 医師の指示に従った投薬管理 |
自己免疫疾患 | 免疫異常が腎臓の組織を攻撃し機能が落ちる | 専門医による投薬と経過観察 |
体内の電解質と透析の役割
透析を通じて調整する要素として、カリウムやリン、ナトリウムなどの電解質があります。これらは普段から何気なく摂取している食事の影響を受けやすく、腎機能が低下していると排泄が難しくなる場合があります。
透析による老廃物除去は一時的な働きなので、日常的な食事内容を調整しないと効果が薄れがちです。
カリウムの役割と過剰摂取のリスク
カリウムは筋肉や神経の働きに影響を及ぼす重要な電解質ですが、透析患者が過度に摂取すると高カリウム血症を引き起こすリスクが上がります。これは心臓の拍動リズムを乱し、重症化すると心停止に至る可能性があります。
人工透析でカリウムを一定量は除去できても、日常の食事で過剰摂取が続くと状態が不安定になります。
リンと骨代謝の関係
リンは骨を構成するミネラルである一方、透析患者にとって注意が必要な電解質でもあります。リンが過剰になると血液中のカルシウム濃度に影響を与え、骨密度の低下や血管の石灰化が進む場合があります。
加工食品や乳製品、レトルト食品などにはリンが多く含まれていることが多いため、うまく調整しないと高リン血症になりやすいです。
ナトリウム過多が及ぼす悪影響
ナトリウムは体内の水分バランスを保つうえで重要ですが、過剰摂取すると血圧上昇やむくみなどの原因になります。
腎機能が低下している状態では、余剰のナトリウムをうまく排出できず水分をため込みやすくなるため、血圧のコントロールが難しくなります。人工透析食事では塩分の制限が必須事項として挙げられます。
適切な電解質管理の重要性
透析である程度の電解質を除去できても、その効果には限度があります。食習慣で摂取量をうまく抑えないと、電解質バランスが乱れやすくなるのが実情です。
人工透析食べてはいけないものを理解しながら、日常生活で自分自身が管理を続けていく姿勢が、透析効果を安定化させるうえでも大切です。
気にとめたい事項
- カリウムが多い果物や野菜は加熱や下茹でで含有量を抑える方法がある
- レトルトや加工食品にはリンやナトリウムが多い場合がある
- 日頃から血清カリウムやリン値をチェックし、主治医と相談する
- 食事指導の際には塩分だけでなくリンやカリウム量にも着目する
主要な電解質を多く含む食品例
電解質 | 食品例 | 摂取の注意点 |
---|---|---|
カリウム | バナナ、ほうれん草、アボカド | 加熱処理で一部を減らせる場合がある |
リン | 加工肉、乳製品、インスタント食品 | 過剰摂取が骨や血管に影響する |
ナトリウム | 漬物、干物、スナック菓子 | むくみや血圧上昇の原因となる |
マグネシウム | ナッツ類、海藻、豆腐など | 過度の摂取は下痢を誘発する可能性 |
人工透析食べてはいけないものの代表例
透析患者が控えるべき食品は多岐にわたりますが、とくにカリウムやリン、塩分が高い食品を過度に摂取しないように注意する必要があります。
食べたいものを一切口にしないわけではなく、食材の選び方や調理法を工夫して、できるだけ楽しみながらバランスを保つ考え方が重要です。
カリウムが豊富な果物や野菜
果物や野菜にはビタミンや食物繊維が多く含まれますが、カリウム含有量が高めなものもあります。バナナやメロン、キウイフルーツ、柿などが代表的です。ほうれん草やじゃがいもなども同様で、大量摂取すると高カリウム血症が懸念されます。
一方で、下茹でや水にさらすなどで含有量を下げられる場合もあるため、上手に調整すれば摂取の幅が広がります。
加工食品に潜む塩分とリン
ハム、ベーコン、ソーセージなどの加工肉やインスタント食品、レトルト食品には塩分とリンが多く含まれがちです。味付けを濃くし保存性を高める目的で、塩やリン酸塩が添加されるケースがあるからです。
高頻度で利用すると、血液中のリンやナトリウムの濃度が上昇しやすくなり、透析時の負担が増します。
乳製品の摂取
チーズやヨーグルト、牛乳などの乳製品はリンを多く含みます。適度な摂取はタンパク質やカルシウムの補給に役立ちますが、必要量を超えると高リン血症を招き、骨や血管への影響が心配です。
完全に避けるのではなく、医師や管理栄養士と相談して必要量を把握する方法をおすすめします。
塩分を多く含む調味料
しょうゆ、みそ、ソース、ドレッシングなどは塩分量が高くなりやすい調味料です。漬物や塩辛、佃煮などの副菜も同様で、塩分過多を引き起こしやすい要素になりがちです。
塩分を摂りすぎると循環器系への負担が増し、水分制限にも影響が出るため注意が必要です。
塩分・カリウム・リンの多い代表的な食品
食品群 | 例 | 注意点 |
---|---|---|
果物・野菜 | バナナ、アボカド、ほうれん草、じゃがいも | カリウム含有量が高い場合がある |
加工肉 | ハム、ベーコン、ソーセージ | 塩分とリンが多く、頻繁な摂取は避けたい |
乳製品 | チーズ、ヨーグルト、牛乳 | リンが多いため摂取量の管理が必要 |
調味料 | しょうゆ、みそ、ドレッシング | 塩分過多になりやすく、適度な使用が望ましい |
過度になりがちなポイント
- 塩分が気になる場合は香辛料やレモン汁で味の変化をつける
- 果物を食べるときは品目や量を工夫して一度に摂りすぎない
- 加工肉の利用回数を減らし、できるだけ生の肉や魚を調理する
- インスタント食品は緊急時以外なるべく控える
人工透析食事における塩分やカリウム管理
人工透析食事を考えるうえでは、どうしても制限を意識せざるを得ない場面があります。とはいえ、その制限を必要以上に重くとらえず、工夫を重ねながらコントロールする姿勢が、生活の質を維持するポイントになります。
特に塩分とカリウムの管理は、安定した透析効果を得るためにも大切です。
塩分調整の実践方法
減塩食を続けるのは簡単ではありませんが、だしや香辛料、酸味を活用すると塩味を控えた食事でも満足感を得られます。魚介類や昆布のだしを使うと味に深みが出るため、塩分依存を減らせる利点があります。
また、既製の調味料は塩分や添加物が多い傾向があるので、ラベルをよく確認する習慣を身につけておきましょう。
カリウムを減らす調理法
カリウムは水に溶けやすい性質があるため、野菜を下茹でするだけで含有量を下げることが期待できます。ほうれん草を茹でこぼしたり、野菜スープを作る際に一度下湯でしてから調理に使うなどのテクニックが有効です。
ただし、加熱しすぎるとビタミンなど他の栄養素を失いやすいので、短時間で仕上げる工夫も必要です。
塩分とカリウムのバランスを保つ考え方
塩分を抑えたい一方で、カリウムも過剰摂取にならないよう管理するためには、食材選びと調理法のバランスがポイントとなります。
たとえば、カリウム量が比較的少ない野菜や果物を選ぶ、減塩調味料を使うなど、小さな積み重ねが大きな差につながります。切り方や下処理の仕方を少し変えるだけでも、摂取量をコントロールしやすくなることがあります。
管理栄養士との連携
塩分やカリウムを毎日個人で管理するのは負担が大きいと感じることもあるでしょう。そうしたときに、管理栄養士や医療スタッフに相談することは大いに助けになります。
疑問点や体調の変化をこまめに伝え、プロのアドバイスを受けることで、長期にわたる透析生活においても安定を保ちやすくなります。
塩分やカリウムを抑えやすい調理の工夫
調理法 | 具体的な方法 | ポイント |
---|---|---|
下茹で | 野菜をさっと茹でて湯を捨てる | カリウムが溶け出しやすく、過度の摂取を防ぎやすい |
だしの活用 | 昆布やかつお節のだしで塩分を足さない味付け | 旨みで満足度を高め、塩分依存を減らせる |
香辛料や酸味の利用 | 唐辛子、コショウ、レモン、酢などを取り入れる | 塩味以外の風味を強化し、味の変化をつけやすい |
調味料の後がけ | 仕上げに少量ずつ加える | 全体に混ぜるよりも塩分量を抑えやすい |
生活に取り入れたい工夫
- まとめて野菜を下茹でして冷蔵保存し、調理時に追加する
- 減塩しょうゆや減塩みそを使うだけでなく、酸味や香味で物足りなさを補う
- 果物はミックスではなく単独で摂取量を管理する
- 家族と同じ献立でも、自分用だけ塩分を薄めに味付けして後から微調整する
透析患者の水分管理と注意点
塩分だけでなく、水分管理も透析治療を左右する大きな要素です。腎機能が低下した状態では、余分な水分を排出しづらくなるため、むくみや心不全などの合併症を引き起こしやすくなります。
透析中に除水量が大きすぎると血圧の急低下や筋けいれんを招くこともあるため、日常的に適正な水分量を把握することが望ましいです。
水分制限の基準
水分制限の目安は、1日の尿量にプラスして数百ミリリットル程度とされることが多いものの、体格や運動量、心疾患の有無などによって変わります。夏場や運動時にはさらに調整が必要です。
過度の制限は脱水や血液濃縮につながるため、主治医や管理栄養士と相談しながら無理のない範囲で行うことが大事です。
水分制限が厳しくなる理由
腎機能が極端に落ちている状態では、余分な水分とナトリウムを排出しきれず体内に残しやすくなります。これが高血圧や心臓への負担につながり、肺に水がたまる肺水腫を起こすリスクも高めます。
透析で水分を除去するにしても、大量に除水すると血圧が急激に変動し、不安定な症状を引き起こす要因になります。
水分摂取と食事の関係
塩分を多く摂ると喉の渇きが増すため、水分制限を実践しにくくなります。スープや果物、ゼリー類なども水分を含む点を見落とさず、食事全体でとりすぎないように把握しておくと管理しやすくなります。
塩分調整と水分管理は切り離せない関係であることを理解し、両面から対策を考えると良いでしょう。
むくみ・血圧への影響
水分過多は手足や顔のむくみだけでなく、血圧上昇や心臓への負担を増大させる原因になります。心不全のリスクも高まり、透析時の除水量が増えれば体へのストレスも上がります。
逆に水分が少なすぎると脱水や低血圧のリスクが高まり、透析時に気分不良を起こしやすくなるため、常にバランスを意識する必要があります。
水分制限と体への影響
状態 | 特徴 | 体調への影響 |
---|---|---|
水分過剰 | むくみ、血圧上昇、心臓や肺に負担がかかる | 心不全、肺水腫などのリスクが高まる |
水分不足 | 脱水症状、血圧低下、血液が濃縮され血栓リスクが上がる | めまい、倦怠感、透析中の不安定など |
適度な水分量 | 尿量や活動量に見合ったバランスで体内環境を保ちやすい | 血圧の安定、むくみの軽減 |
水分制限を楽にするアイデア
- 温かいお茶やスープは塩分を控えめにしてゆっくり飲む
- 利尿作用があるといわれる食材(きゅうりなど)を取り入れてみる
- 味付けを薄めにし、過度な渇きを感じにくい工夫をする
- 飲み物を小分けにして回数を増やし、一度に大量に飲まない
食事計画を立てるうえでの実践ガイド
人工透析食事には制限が多いイメージがありますが、計画性をもって取り組めば継続が難しくない場合もあります。日常生活にどう溶け込ませるかを考慮しつつ、自分の好みや家族の食卓と調和させる工夫も大事です。
献立作成の基本
主食・主菜・副菜をバランス良く組み合わせると、栄養の偏りを抑えやすくなります。主食に玄米や分づき米を使うと食物繊維が増え、主菜を魚や肉でローテーションすればタンパク質の摂取源を変えられます。
副菜で野菜を摂取する場合は、カリウムが多い食材の調理法を工夫することを忘れずに行いましょう。
タンパク質の取り方
透析患者はタンパク質の摂取量が課題になりがちです。透析導入前は制限する場合が多いですが、導入後は筋力や代謝を維持するために適度な量が必要となります。
肉や魚、卵、大豆製品など、多様な食材からタンパク質を摂取しつつ、リンやカリウムの量にも目を配る必要があります。
外食や市販惣菜を活用する場合
忙しい生活の中では、外食や市販の惣菜を利用せざるを得ないこともあります。その際は、可能な範囲で塩分やリン、カリウム量の表示を確認してください。
野菜を多めに摂るのは一見良さそうですが、カリウムが多い品目もあるため注意が必要です。味噌汁やスープ類、ソースが多いメニューは塩分が濃いことが多いので、汁を残すなどの工夫でリスクを下げることができます。
生活に根付かせるコツ
短期間だけ制限しても、長期的に続かなければ体調管理にはつながりにくいです。週に1回は献立をまとめて考えてみたり、食品の在庫を定期的にチェックしたりなど、継続しやすい体制づくりが大事です。
また、同じ制限を抱える方々や経験者との情報交換も良い刺激になり、モチベーション維持に役立ちます。
1日のサンプル献立例
食事の区分 | メニュー例 | ポイント |
---|---|---|
朝食 | ・ごはん(少なめ)・焼き鮭(塩分控えめ)・ほうれん草のおひたし(下茹で)・低脂肪ヨーグルト(量を調整) | ほうれん草を下茹でしてカリウムを減らすヨーグルトはリンに注意して量を調整 |
昼食 | ・うどん(薄味のだし)・かぼちゃの煮物(甘味を活かす)・フルーツ少量 | 麺類は汁を全部飲まないかぼちゃの煮物で甘味を活かし、塩分を控える |
夕食 | ・ごはん(普通量)・鶏肉のソテー(塩分控えめの下味)・キャベツのサラダ(ドレッシングは控えめ)・味噌汁(少量) | 鶏肉にレモンやハーブなどを使い塩分を抑える味噌汁の味付けを薄めにしてだしを活用 |
生活習慣と透析治療の関係
透析の効果を十分に引き出すには、食事だけでなく運動や睡眠、ストレス管理など、生活習慣全般を整えることがポイントになります。小さな習慣が積み重なると腎臓にも良い影響が期待でき、透析治療の質をより高めることにつながります。
適度な運動の意義
運動は血糖や血圧を安定させ、循環機能を高めます。
透析患者の場合、過度な運動は筋力低下や疲労を招きやすいので注意が必要ですが、ウォーキングや軽いストレッチなど無理のない範囲で継続すると、体力維持や食欲増進が見込める場合があります。
運動量の調整や種類については主治医に確認してください。
ストレス管理
長期間にわたる透析治療では、精神的なストレスをためこみやすくなります。過度のストレスは血圧上昇やホルモンバランスの乱れを誘発し、食欲不振などの症状も出やすくなります。
リラックスできる趣味を見つけたり、家族や友人とコミュニケーションをとったりして、ストレス発散の方法を確立することが大切です。
休養と睡眠
透析後は疲労を感じやすいため、十分な休養や睡眠を確保する習慣づくりが重要です。不規則な生活リズムが続くと血糖や血圧、ホルモン分泌などにも影響が及び、透析中の体調変化を招きやすくなります。
早めの就寝や休日の過ごし方など、少しずつ生活リズムを整える工夫を取り入れてみてください。
定期的な検査と受診
血液検査や心エコーなどの定期的な検査を受けると、自分の状態を客観的に把握できるため安心感が生まれます。検査結果をもとに医師や管理栄養士が指導を行うので、疑問点は随時相談する習慣をつけましょう。
数字の変動から、より具体的に食事や生活習慣の改善ポイントを見出しやすくなります。
生活習慣が透析治療に及ぼす影響
生活習慣の要素 | 具体的な影響 | 改善のヒント |
---|---|---|
運動不足 | 代謝低下、血糖・血圧コントロールの乱れ | 軽いウォーキングやストレッチの導入 |
睡眠不足 | ホルモンバランスの乱れ、疲労回復の遅れ | 早めの就寝と寝室環境の見直し |
ストレス | 血圧上昇、食欲不振、うつ状態など | 趣味やリラクゼーションで気分転換 |
不規則な食事 | 血糖や電解質バランスが不安定になる | 食事計画と定期的な体調チェック |
日常で取り入れたい心がけ
- 食後に軽いウォーキングなどを行い、血糖の急上昇を抑える
- 就寝前にスマホやテレビの視聴を控え、睡眠の質を高める
- ストレスを感じたら深呼吸やアロマなどでリラックスを図る
- 血液検査の結果は記録し、変化を追いながら対策を考える
よくある質問
透析治療や人工透析食事に関して寄せられる疑問をまとめました。事前に疑問を解消することで、透析への不安や負担を軽減し、より前向きな姿勢で治療と向き合うことができます。
- 透析中に食事や水分をとってもいいのでしょうか?
-
透析中は血液が体外を通るため、血圧が変動しやすいです。急に水分や糖分を摂取すると血圧低下や不整脈を引き起こす場合があるので、医療機関の指示を確認してください。
血糖コントロールが必要な方は、果糖タブレットなどを用意しておけば安心です。病院によっては少量の水分補給を認めているケースもあるので、看護師や担当医に相談すると良いでしょう。
- 調味料の量を毎回測るのが面倒なのですが、簡単な減塩のコツはありますか?
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計量スプーンやキッチンスケールを最初から活用すると、自宅で料理を続けるうちに自然と目分量の精度が上がります。
めんつゆやコンソメなどの濃縮調味料を使う場合は、パッケージの指示よりさらに薄めにしてみると塩分をより抑えられます。香味野菜や香辛料、だしのうまみで味に変化をつける方法も試してみてください。
- カリウムを減らすために野菜を茹でると、栄養が逃げてしまう気がします。どうすればいいですか?
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確かに長時間の加熱や茹でこぼしを複数回行うとビタミンなどが減りやすいです。しかし、短時間茹でる方法や電子レンジ加熱などを活用すると、カリウムをある程度抑えつつ栄養素の損失を減らせます。
切り方や湯量を工夫し、一度茹でこぼすだけでもカリウム量は下がる可能性があります。失われた栄養素は他の食材で補うなど、総合的にバランスを考慮することが大切です。
- 外食先で気をつけるポイントは何でしょうか?
-
外食時には塩分やカリウム、リンの多いメニューが多いので、可能であればメニューの栄養表示や公式サイトでの情報をチェックすると安心です。汁物やソース、ドレッシングは別添えにして少量ずつ使うだけでも摂取量を抑えやすくなります。
麺類はスープを飲み干さない、丼物は具材を選びやすい店を選ぶなど、小さな工夫で過度の塩分やカリウムを避けられます。飲み物もジュースやアルコールを避け、お茶や水をこまめに摂るようにすると良いでしょう。
外食で選びやすいメニュー例
メニュー | 注意したい要素 | 工夫 |
---|---|---|
うどん | スープの塩分 | すべて飲み干さずに具材を工夫し、天ぷらは控えめにする |
定食(焼き魚) | 魚の塩分・タレの甘味 | タレを少量にして、付け合わせ野菜のカリウムに注意 |
サンドイッチ | 加工肉の塩分・リン | チーズやハムを少なめにし、野菜を多めにする |
サラダ | ドレッシングの塩分 | 別添えにしてもらい、自分で少しずつかける |
外食をする機会があるからといって、すべてを我慢する必要はありません。量や味付けを意識していけば制限の範囲で楽しめる可能性があります。
飲み会などでアルコールを摂取する場合は、ビールやカクテル類が含むリンやカリウム、そして塩分が高いおつまみの組み合わせに気をつけるなどの配慮が必要です。
ノンアルコール飲料やウーロン茶などを取り入れ、飲酒量を抑えるだけでも体への負担を減らしやすくなります。
透析は長期的な治療であり、自己管理が大きな割合を占めます。
人工透析食事を初めて経験する方は、一時的に窮屈に感じることもあるでしょう。しかし、調理や食事のコツを覚えていくうちに、制限に慣れて自分なりのアレンジができるようになり、安定した体調を実感すると精神的にも前向きになれます。
主治医や管理栄養士、透析スタッフと積極的に情報交換を行いながら、自分に合う食生活を見つけていきましょう。
以上
透析センター(人工透析) | 大垣中央病院(医療法人社団豊正会 )
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