遺伝性ヘモクロマトーシスとは、遺伝的な要因によって体内に必要以上の鉄が蓄積してしまう疾患です。
鉄は赤血球の酸素運搬や酵素の構成成分として重要な役割を果たしますが、この病気では吸収された鉄の一部が排出されずに肝臓や膵臓、関節などの臓器に過度にたまり、深刻な臓器障害をもたらす恐れがあります。
初期には目立った症状がないことも少なくありませんが、病状が進行すると糖尿病や肝硬変、皮膚の色素沈着などを起こすため、正確な診断と適切な治療を早めに検討することが大切です。
遺伝性ヘモクロマトーシスの病型
遺伝性ヘモクロマトーシスにはいくつかの分類があり、鉄過剰による症状が発症する仕組みや関連遺伝子などによって病型が異なります。
原発性ヘモクロマトーシスと二次性ヘモクロマトーシスの違い
原発性ヘモクロマトーシスは、遺伝子変異など生まれつきの原因によって鉄吸収の調節機能が損なわれることで生じます。
対して、二次性ヘモクロマトーシスは輸血を繰り返す疾患(例:重症の貧血など)に伴って体内の鉄が増加したり、アルコール性肝障害など他の原因によって鉄蓄積が促進されたりするものです。
二次性ヘモクロマトーシスの場合は遺伝性ではないため、治療戦略も異なることが多く、まずは原発性かどうかを区別することがポイントになります。
HFE遺伝子とタイプ分類
遺伝性ヘモクロマトーシスの多くは、HFE遺伝子という遺伝子の変異(C282YやH63Dなど)と関連が深く、変異がある場合、腸管からの鉄吸収が必要以上に高まり、肝臓や他の臓器に鉄が沈着します。
HFE遺伝子の変異以外にも、トランスフェリン受容体2(TFR2)遺伝子などの異常によって発症するタイプも知られています。
若年発症型と成人発症型
ヘモクロマトーシスは中高年での発症が多いとされますが、中には幼少期や思春期に症状が目立ち始める若年発症型もあります。
若年発症型は、肝障害や成長障害などが早期に顕著に出ることがあるため、通常よりも早い段階で治療を始める必要があり、成人発症型は、長年かけて蓄積した鉄が徐々に臓器障害を起こすパターンが多いです。
臓器ごとの影響度合い
鉄が蓄積する主な臓器としては、肝臓、膵臓、心臓、関節、皮膚などが挙げられ、肝硬変や肝がんのリスクが高まるタイプもあれば、糖尿病や関節炎が先行して見つかるタイプもあるため、個々の病型を見極めることが欠かせません。
どの臓器に特に症状が出やすいかは遺伝子変異だけでなく生活習慣や他の疾患合併状況も関わります。
病型の概要
病型 | 主な遺伝子異常 | 発症年齢 | 特徴 |
---|---|---|---|
原発性 | HFE遺伝子(C282Yなど) | 成人期~高齢 | 肝臓障害、皮膚色素沈着、糖尿病など |
若年発症型 | TFR2やHAMP変異など | 幼少期~思春期 | 成長障害や早期肝硬変が目立つ場合あり |
二次性 | 非遺伝性(多量輸血など) | 症状により多様 | 基礎疾患の治療と鉄過剰のケアが両立 |
病型を正確に分類し、原因遺伝子を特定することは治療戦略や予後の見通しを立てるうえで重要です。
遺伝性ヘモクロマトーシスの症状
遺伝性ヘモクロマトーシスの症状は、主に過剰な鉄が蓄積する臓器の種類と蓄積量に左右され、初期段階では自覚症状がほとんどないことも多く、そのまま数年~十数年かけて病状が進行してしまうケースも珍しくありません。
肝臓への影響
肝臓は体内の鉄が最も蓄積しやすい臓器の1つで、肝機能障害の先駆症状としてだるさや倦怠感、食欲不振が慢性的に続くことがあります。
進行すると肝硬変や肝がんのリスクが高まり、黄疸や腹水、血小板減少による出血傾向など深刻な合併症へ発展します。
膵臓への影響
膵臓に鉄がたまると、インスリン分泌に支障が出て糖尿病を合併しやすくなり、ヘモクロマトーシス関連の糖尿病は、インスリン抵抗性というよりも膵β細胞の機能低下が主因と考えられ、血糖コントロールが難しくなるケースも見られます。
食事制限や薬物療法に加え、鉄のコントロールが欠かせません。
皮膚や関節への影響
皮膚への影響としては、鉄の沈着による色素増強が有名で、灰色~褐色系に肌が変化することがあり、また、関節、特に手の第2・第3中手指節関節に炎症が起き、こわばりや痛みを生じる場合があります。
関節症状はリウマチと混同されることもあるため、血液検査などの総合的な判断が必要です。
心臓や内分泌系への影響
心臓筋への鉄蓄積によって不整脈や心不全の原因となることがあり、さらに、内分泌腺が障害されると生殖機能の低下や性欲の減退、甲状腺機能の異常などが起きることがあります。
症状が多岐にわたるため、患者さん本人が複数の病院を転々としながらなかなか原因にたどり着かない状況が見られることもあります。
代表的な症状と原因臓器
臓器 | 代表的な症状・合併症 | 症状発現の特徴 |
---|---|---|
肝臓 | 肝機能障害、肝硬変、肝がん | 倦怠感や食欲不振が続きやすい |
膵臓 | 糖尿病 | インスリン分泌不全による高血糖 |
皮膚 | 肌の色素沈着 | 灰色~褐色系の着色が進む |
関節 | 関節痛、関節変形 | 手の指などに炎症が生じやすい |
心臓 | 不整脈、心不全 | 鉄蓄積が進むと循環不全を招きやすい |
内分泌腺 | 下垂体機能不全など | 性欲減退や月経異常が起こる可能性 |
原因
遺伝性ヘモクロマトーシスの原因は、遺伝的要素によって腸管での鉄吸収制御がうまく働かなくなることに起因し、食事で摂取する鉄が通常よりも多く吸収され、不要な分まで体内に蓄えられてしまうのです。
常染色体劣性遺伝と保因者
多くの遺伝性ヘモクロマトーシスは常染色体劣性遺伝の形式をとり、両親がともに変異遺伝子を1つずつ持っている「保因者」であった場合、その子どもが2つの変異遺伝子を受け継ぐ確率は25%程度です。
保因者自身は無症状か軽症であることが多いため、家系内に重症例が出るまで気づかないことも少なくありません。
常染色体劣性遺伝の遺伝パターン
- 両親がともに保因者:子どもが25%の確率で発症
- 片方の親のみ保因者:子どもが発症する可能性はほぼ低い
- 両親ともに非保因者:発症は起こらない
HFE遺伝子C282Y変異
欧米人の遺伝性ヘモクロマトーシスでは、HFE遺伝子のC282Y変異が最も多く見られる変異として知られていて、変異をホモ接合(両方の遺伝子がC282Y変異を持つ)で有している場合に重症化しやすいです。
ただし日本人を含むアジア圏ではこの変異が少なく、別の遺伝子異常や要因によって鉄過剰状態が起こるケースもあります。
ヘプシジンと鉄調節
ヘプシジンというホルモンが体内の鉄代謝を調節する重要な役割を担っていて、通常、体内の鉄量が増えすぎるとヘプシジンが増加し、腸管からの鉄吸収を制御します。
しかし遺伝的要因でこの仕組みが乱れると、ヘプシジンの産生・作用が低下して鉄吸収が暴走するような状態が続いてしまい、遺伝性ヘモクロマトーシスとしての症状が顕著に現れます。
生活習慣との複合要素
遺伝的に鉄吸収が増える素因があっても、必ずしも全員が重症化するわけではなく、食事の内容や飲酒の習慣、合併する肝疾患の有無などによって発症時期や重症度にばらつきが出ます。
過度の飲酒は肝障害を増幅させる恐れがあるため、潜在的に遺伝性ヘモクロマトーシスの素因を持つ人がアルコールを多量摂取すると、肝硬変や肝がんへの進行が加速するリスクが高いです。
遺伝要因と生活習慣・環境要因の関係
要素 | 具体例 | 影響 |
---|---|---|
遺伝子変異 | HFE遺伝子C282Y、H63Dなど | 腸管の鉄吸収増加 |
ヘプシジン産生障害 | HAMP遺伝子など | 過剰鉄吸収が加速 |
飲酒 | 長期の大量飲酒 | 肝障害進行、鉄過剰と相乗効果 |
食習慣 | 肉類や鉄分豊富な食材の大量摂取 | 症状の増悪につながる場合がある |
他の肝疾患 | B型肝炎、C型肝炎など | 肝臓への負担増大、発症リスク上昇 |
遺伝性ヘモクロマトーシスの検査・チェック方法
遺伝性ヘモクロマトーシスを疑った場合、血液検査をはじめとする各種の検査手法を組み合わせて診断を進め、肝機能の変化や鉄関連のパラメータ、画像検査などで総合的に病態を評価することが大切です。
血液検査(トランスフェリン飽和度とフェリチン)
鉄関連の指標として、まずトランスフェリン飽和度と血清フェリチン値がよく使われます。
トランスフェリン飽和度は、血液中のトランスフェリンという蛋白質のうち、どの程度が鉄を運搬しているかを示し、通常45%以下ですが、遺伝性ヘモクロマトーシスではこれがかなり高いです。
血清フェリチンは体内の鉄貯蔵量を反映する値で、何千ng/mLを超えるレベルになる場合もあります。
血清検査の主な項目
検査項目 | 意味 | 異常値の指標 |
---|---|---|
トランスフェリン飽和度 | 血液中のトランスフェリンに結合した鉄の割合 | 45%以上で疑い、60%以上でより強く示唆 |
血清フェリチン | 体内の鉄貯蔵量を間接的に反映 | 300ng/mL~1000ng/mL以上で注意 |
血清鉄 | 血中に存在する鉄の濃度 | 150μg/dL以上になるケースもある |
遺伝子検査
欧米ではHFE遺伝子C282Y変異の有無を調べる検査が一般的に行われ、陽性かどうかで診断の確立に大きく寄与します。
ただし日本やアジアではC282Y以外の変異が関与している場合が多いため、必要に応じて幅広い遺伝子スクリーニングが検討されることもあります。
画像検査(MRIや超音波検査)
過剰に蓄積した鉄の評価にMRIは有用とされ、肝臓や心臓にどの程度の鉄がたまっているかを定量的に推定する手法が報告されていて、また、検査やCT検査で肝硬変の有無や肝臓の形態異常を検出することも行われます。
早期の段階で画像検査を行うことで、肝硬変になる前に治療を開始する判断をしやすいです。
肝生検
肝生検(肝臓の組織を採取して調べる検査)は、かつては確定診断に用いられる代表的な方法でしたが、近年はMRIなどの非侵襲的検査の発展により、肝生検の必要性はやや減りつつあります。
ただし、肝生検では組織を直接観察することで鉄の沈着度合いや炎症、線維化の程度を詳細に把握できるため、診断が難しいケースや肝硬変・肝がんのリスク評価の場面で検討されることもあります。
一般的な検査手順
検査ステップ | 内容 | 目的 |
---|---|---|
1.一般血液検査・肝機能検査 | AST、ALTなど肝機能指標や貧血の有無をチェック | 基本的な肝機能障害や全身状態の把握 |
2.鉄関連指標の測定 | トランスフェリン飽和度、血清フェリチン、血清鉄などの測定 | 鉄過剰状態の可能性を強く示唆 |
3.遺伝子検査 | HFE(C282Y、H63Dなど)やTFR2などの変異を調べる | 原発性かどうかの確定と家族リスク評価 |
4.画像検査 | MRI、超音波、CTなどで肝臓や心臓、膵臓の状態を評価 | 鉄の蓄積度合いや臓器の損傷の有無を可視化 |
5.肝生検(必要に応じて) | 組織レベルで鉄沈着量や炎症・線維化を直接確認 | 診断の精密化、肝がんリスクの評価 |
治療方法と治療薬について
遺伝性ヘモクロマトーシスは、体内に蓄積した過剰な鉄を減らすことで臓器障害の進行を食い止めることが治療の要点です。
そのため、定期的な瀉血(しゃけつ)や鉄キレート薬の使用が中心となり、症状や病期に応じてその他の薬物療法や生活上の注意が加わります。
瀉血療法
瀉血は過剰な鉄を排出させる最も一般的な方法で、単純なしくみでありながら効果が高いです。一定量の血液を定期的に抜くことで体内の鉄量が徐々に減り、血液を再生するときに蓄積鉄も消費されます。
初期の段階では週1回程度の瀉血を行い、血清フェリチン値やヘマトクリット値を見ながら頻度を調整し、血中のヘモグロビン値が極端に低下しないようにしながら継続し、一定の目標値に到達したら間隔をあける方法がとられます。
項目 | 内容 | 注意点 |
---|---|---|
瀉血頻度 | 週1回~2回から開始し、フェリチン値が下がるに従って調整 | ヘモグロビン値の低下に注意しながら実施 |
1回の瀉血量 | 200~400mL程度(個人差あり) | 体格や貧血の有無を見ながら決定 |
目標とするフェリチン | 50ng/mL~100ng/mL程度が目標とされることが多い | 症状や合併症によって目標範囲は変化 |
メリット | 治療効果が高く、薬剤投与なしで鉄を排出できる | 比較的低コスト・シンプルな治療法 |
デメリット | 定期通院が必要、体力が低下しやすい場合がある | 高齢者や心疾患患者では慎重な管理が欠かせない |
鉄キレート薬
瀉血療法が難しい場合や、より迅速に鉄を排出したい状況では、鉄キレート薬(デフェロキサミン、デフェリプロン、デフェラシロックスなど)を使用し、体内の鉄と結合し、尿や便と一緒に排出させる効果を狙います。
ただし、費用が高額になるケースや副作用のリスクなどがあるため、主治医と相談して使用を検討することが大切です。
合併症に対する薬物治療
肝障害が進行している場合は肝保護薬や肝機能サポート薬を併用することがあります。
糖尿病が見られる場合には血糖降下薬やインスリン注射が必要となり、関節痛が激しい場合は痛み止めや抗炎症薬を用いるなど、症状や合併症に合わせたサポート治療が選択肢です。
生活習慣の指導
過剰鉄を招くような飲酒習慣はできるだけ控え、ビタミンCサプリメントの過剰摂取にも注意が必要で、ビタミンCは鉄の吸収を促進するため、遺伝性ヘモクロマトーシスでは主治医の指示を受けて必要量を守ることが望ましいです。
バランスのとれた食事や適度な運動を行いながら、肝機能や心臓の状態にも配慮することが長期的な健康管理に結びつきます。
遺伝性ヘモクロマトーシスの治療期間
遺伝性ヘモクロマトーシスは根本的に体質や遺伝子の問題が背景にあるため、一度確定診断がつくと生涯にわたって管理が必要になることが一般的です。
ただし、定期瀉血や鉄キレート薬の導入で体内の鉄量をコントロールすれば、症状の進行を食い止めたり合併症を軽減したりできる可能性があります。
急性期(初期)の集中的治療
フェリチンやトランスフェリン飽和度が著しく高い段階では、1~2週に1度の瀉血を集中的に行うことで鉄濃度を大きく下げ、目標範囲に近づけることを目指します。
急性期は数カ月から1年程度続く場合があり、血液検査のデータを見ながら頻度をこまめに調整することが必要です。
急性期~維持期の治療プロセス
期間 | 目的 | 療法とフォロー |
---|---|---|
急性期 | 過剰鉄を集中的に減少させる | 週1~2回の瀉血、血液検査でフェリチンを監視 |
中間期 | 目標フェリチンに近づいた状態を維持しながら調整 | 瀉血頻度を月1回などに減らす、症状をモニタ |
維持期 | フェリチン正常範囲を保ち、合併症の進行を防ぐ | 定期的な血液検査(3~6カ月おき)と年数回の瀉血 |
維持期
フェリチン値やトランスフェリン飽和度が改善し、症状が落ち着いてきたら、瀉血の間隔を延ばして長期的な維持管理に入ります。
月1回から数カ月に1回程度の瀉血に切り替え、血液検査は3~6カ月に1回行うといったペースになることが多いです。生活習慣に注意しながらこの維持期を継続することで、重篤な合併症のリスクを大幅に下げられる見込みがあります。
再燃の可能性
何らかの理由で瀉血を中断し、再び体内の鉄が蓄積すると症状が再燃するリスクがあり、特に肝機能が既に低下している場合や、アルコールの過剰摂取を再開した場合は要注意といえます。
定期的な血液検査とフォローアップを怠らないことで、病状悪化のサインに早めに対応することが大切です。
合併症への長期的な備え
肝硬変や肝がんのハイリスク状態にある場合は、画像検査や腫瘍マーカー(AFPなど)の定期検査が欠かせず、膵臓のダメージが強い人は糖尿病の治療を並行して行う必要があります。
治療期間は「一生涯にわたる鉄管理」と言い換えてもよく、主治医とのコミュニケーションを取りながら正しいペースで治療を続けることが重要です。
遺伝性ヘモクロマトーシス薬の副作用や治療のデメリットについて
治療の中心となる瀉血は、薬剤を使わずに過剰鉄を排出できる方法である一方、定期的に血液を抜くという肉体的・時間的な負担があります。
鉄キレート薬に頼る場合も同様に注意すべき副作用が見られる可能性があり、治療メリットとのバランスを考慮することが大切です。
瀉血療法によるリスク
瀉血そのものは比較的安全な手技ですが、血液を抜くことで一時的に血圧が下がり、めまいや倦怠感を感じることがあります。
貧血気味の方や高齢者、心臓疾患を持つ方は体への負担が大きくなりやすく、医師の管理下で慎重に行い、脱水を避けるための水分補給や、体調不良時の瀉血回避など柔軟な対応が大事です。
鉄キレート薬の副作用
デフェロキサミンやデフェリプロン、デフェラシロックスなどの鉄キレート薬は、鉄と結合して排出を促進しますが、腎機能や肝機能に負担がかかったり、消化器症状(吐き気、下痢など)を起こすることがあります。
服用形態(注射・内服)によっては投与の煩雑さも課題です。
合併症薬との相互作用
糖尿病に対して血糖降下薬、リウマチ様の関節炎に対して抗リウマチ薬などを併用している場合、それらの薬剤との相互作用が懸念されるケースもあり、総合的な服薬管理が求められます。
副作用の増強や効果の減弱を防ぐために、複数の診療科が連携して治療計画を立てることが必要です。
デメリット・副作用 | 具体的な症状 | 対策・ケア |
---|---|---|
瀉血に伴う倦怠感やめまい | 血液量の急な減少による低血圧や貧血 | 水分・塩分補給、検査値を見ながら慎重に実施 |
鉄キレート薬の腎機能障害や胃腸障害 | 嘔気、下痢、腎機能数値悪化など | 定期的な血液検査と服用量の調整、主治医との相談 |
治療スケジュールの負担 | 瀉血や診察に頻回に通院する必要 | 病院の予約枠や在宅ケアなど柔軟な対応を模索する |
遺伝性ヘモクロマトーシスの保険適用と治療費
以下に記載している治療費(医療費)は目安であり、実際の費用は症状や治療内容、保険適用否により大幅に上回ることがございます。当院では料金に関する以下説明の不備や相違について、一切の責任を負いかねますので、予めご了承ください。
検査費用の目安
トランスフェリン飽和度やフェリチンなどの血液検査は保険適用内で数千円~1万円程度の自己負担です。遺伝子検査に関しては、保険で認められている範囲の検査項目であれば数千円~数万円程度の負担になります。
瀉血療法の費用
瀉血は採血の要領に近いため、技術料や処置料としての自己負担が発生しますが、保険診療の範囲で行う場合には1回あたり数千円前後となることが多いです。
週1回のペースで行う初期段階では月に数回の処置費用がかかり、維持期に入ると頻度が減るため、その分の負担も軽くなります。
鉄キレート薬の費用
鉄キレート薬は薬価が比較的高額になることが多く、保険適用であっても毎月の自己負担が1万円以上になるケースが報告されています。
費用の目安
項目 | 自己負担の目安 | コメント |
---|---|---|
血液検査 | 数千円~1万円程度 | 項目数や医療機関により異なる |
遺伝子検査 | 数千円~数万円程度 | 保険適用範囲や検査内容に左右される |
瀉血処置 | 1回数千円前後 | 通院頻度が高い初期はトータル負担がやや大きい |
鉄キレート薬 | 毎月数千円~1万円以上になる場合あり | 薬剤の種類と用量、合併症の有無によって大きく変動 |
画像検査(MRIなど) | 数千円~1万円程度 | 部位や撮影回数で費用が異なる |
以上
参考文献
Sohda T, Takeyama Y, Irie M, Kamimura S, Shijo H. Putative hemochromatosis gene mutations and alcoholic liver disease with iron overload in Japan. Alcoholism: Clinical and Experimental Research. 1999 Apr;23:21S-3S.
Tamai Y, Hosotani M, Shigefuku R, Tsuboi J, Iwasa M, Okugawa Y, Nakagawa H. Novel mutation of transferrin receptor 2 causing hereditary hemochromatosis type 3 in a Japanese patient. Hepatology Research. 2025 Jan;55(1):155-60.
Hayashi H, Wakusawa S, Motonishi S, Miyamoto KI, Okada H, Inagaki Y, Ikeda T. Genetic background of primary iron overload syndromes in Japan. Internal medicine. 2006;45(20):1107-11.
Kawabata H. The mechanisms of systemic iron homeostasis and etiology, diagnosis, and treatment of hereditary hemochromatosis. International journal of hematology. 2018 Jan;107(1):31-43.
Takami A, Tatsumi Y, Sakai K, Toki Y, Ikuta K, Oohigashi Y, Takagi J, Kato K, Takami K. Juvenile hemochromatosis: a case report and review of the literature. Pharmaceuticals. 2020 Aug 15;13(8):195.
Yamakawa N, Oe K, Yukawa N, Murakami K, Nakashima R, Imura Y, Yoshifuji H, Ohmura K, Miura Y, Tomosugi N, Kawabata H. A novel phenotype of a hereditary hemochromatosis type 4 with ferroportin-1 mutation, presenting with juvenile cataracts. Internal Medicine. 2016 Sep 15;55(18):2697-701.
Kawaguchi T, Ikuta K, Tatsumi Y, Toki Y, Hayashi H, Tonan T, Ohtake T, Hoshino S, Naito M, Kato K, Okumura T. Identification of heterozygous p. Y150C and p. V274M mutations in the HJV gene in a Japanese patient with a mild phenotype of juvenile hemochromatosis: A case report. Hepatology Research. 2020 Jan;50(1):144-50.
Koyama C, Hayashi H, Wakusawa S, Ueno T, Yano M, Katano Y, Goto H, Kidokoro R. Three patients with middle-age-onset hemochromatosis caused by novel mutations in the hemojuvelin gene. Journal of hepatology. 2005 Oct 1;43(4):740-2.
Crownover BK, Covey CJ. Hereditary hemochromatosis. American family physician. 2013 Feb 1;87(3):183-90.
Pietrangelo A. Hereditary hemochromatosis. Biochimica et Biophysica Acta (BBA)-Molecular Cell Research. 2006 Jul 1;1763(7):700-10.