虚血性腎症

虚血性腎症

虚血性腎症とは、腎臓への血液供給が障害されることによって腎機能が低下し、さまざまな合併症を起こしやすくなる病気で、動脈硬化や血管の狭窄などによって腎臓への血流が十分に届かなくなり、慢性的な腎機能障害が生じます。

初期段階では自覚症状が乏しい一方で、進行すると高血圧の悪化、タンパク尿、むくみなどがみられ、さらに末期的には人工透析の検討が必要になることもあり得ます。

加齢や生活習慣病などによる血管トラブルとの関連が深く、早期発見と治療を行うことで腎臓を保護し、心血管イベントのリスクを下げる可能性が高まります。

目次

虚血性腎症の病型

虚血性腎症は、腎臓に至る血管が何らかの理由で狭くなり、血流が著しく低下することで腎機能障害を起こす病気であり、その病型を知ることは治療や予後を考えるうえで重要です。

多くの場合、高齢者や動脈硬化リスクを抱えた人に発症しやすいといわれ、原因となる病変の場所や進行度合いによっていくつかのタイプに分けられます。

腎動脈硬化型

腎動脈自体が動脈硬化を起こし、血管の壁が厚くなって内腔が狭くなるタイプです。

全身性の動脈硬化が進行している人は、心臓や脳だけでなく腎臓を養う血管にも異常が生じ、高血圧が先行している場合が多く、腎機能は徐々に低下していく傾向がみられます。

腎動脈狭窄型

腎動脈の一部が狭窄を起こし、局所的に血流が阻害されるタイプで、若い世代では線維筋性異形成が原因になることもありますが、高齢者や生活習慣病を抱える方ではやはり動脈硬化性病変が主な要因です。

狭窄が急激に悪化すると腎虚血が強まり、急性腎障害のような症状を呈することもあります。

腎小動脈レベルの虚血

腎臓の中に入り込んだ細い動脈、いわゆる腎小動脈が硬化や微小血栓によって詰まりやすくなり、腎実質全体へ影響を及ぼすタイプです。

糖尿病や高脂血症などによる細小血管障害の一環として発症することが多く、タンパク尿や軽度の血尿などをきっかけに発見される場合があります。

緩やかに進行することが多いものの、一度腎機能が損なわれると元に戻すのが難しい側面があります。

高度狭窄・閉塞型

腎動脈の主幹部や分岐部で高度な狭窄、あるいは閉塞に近い状態が起こり、腎臓への血流が著しく制限されるタイプで、急性腎不全に近い症状が出ることがあり、急激な血圧変動や排泄機能の低下を認めるケースがあります。

急性期に適切な処置を行わないと、腎組織の不可逆的ダメージを残す危険があります。

腎臓への血行障害の程度やどのレベルの血管に問題があるかによって進行度や症状が異なり、治療法を選択するうえでも大きな判断材料です。

代表的な虚血性腎症の病型

病型名主な要因特徴
腎動脈硬化型動脈硬化緩やかな進行、全身性リスクあり
腎動脈狭窄型動脈硬化、線維筋性異形成など部分的な血管狭窄が原因
腎小動脈レベルの虚血細小血管障害(糖尿病、高脂血症など)徐々に腎実質のダメージが蓄積
高度狭窄・閉塞型主幹部の動脈の重度狭窄、閉塞急性腎不全に近い症状もあり得る

虚血性腎症の症状

虚血性腎症の症状は、腎臓の血流不足に伴う慢性的な腎機能の悪化が主体ですが、他の臓器にも影響が及ぶケースがあります。

初期には目立った体調不良がないこともありますが、よく観察すると血圧上昇や疲労感がじわじわと増すなど、軽いサインが現れている場合もあります。

血圧の変化

腎臓は血圧をコントロールするホルモン(レニンなど)を分泌する重要な臓器で、虚血状態になると腎臓が血圧を上げる方向に働きかけるため、高血圧が悪化しやすい特徴があります。

高血圧治療を行ってもなかなか数値が下がらない場合に、腎血管性の要因を疑う医師も少なくありません。

タンパク尿や軽度の血尿

腎臓の糸球体や小さな血管がダメージを受けると、タンパク質が尿へ漏れ出すタンパク尿が発現し、初期段階では微量タンパク尿が見られる程度ですが、進行すると肉眼で確認できるほどではない微量血尿が判明することもあります。

尿検査を定期的に行うことで、症状がはっきりしないうちから異常のシグナルを捉えられる可能性があります。

倦怠感やむくみ

慢性的に腎機能が低下すると老廃物や余分な水分がうまく排泄されず、倦怠感や浮腫(むくみ)といった全身症状が生じるケースがあります。

むくみは下肢や顔に現れやすく、特に夕方から夜にかけて脚のだるさや靴がきつく感じられることがあり、こうした徴候に気づいて早めに検査を受けることで、病気の進行をくい止めるチャンスが得られます。

動悸や息切れ

高血圧が続くと心臓への負担が増すため、動悸や息切れを訴える人もいますが、虚血性腎症と直接結びついているというより、腎機能低下による血圧コントロールの乱れが心臓に影響を与えている状態と捉えるとわかりやすいです。

もし日常的な動作で呼吸が苦しくなったり、胸の圧迫感を伴うようなら、早急な診察を検討する価値があります。

虚血性腎症が疑われる代表的な症状

  • 高血圧の増悪や薬でのコントロール困難
  • たんぱく尿や微量血尿
  • むくみ、倦怠感
  • 動悸や息切れの頻度増加

症状と臨床的意義

症状臨床的な意味追加検査の必要性
高血圧悪化レニン分泌増加による血圧上昇血圧管理状況や腎血管評価
タンパク尿糸球体損傷や腎血流低下尿蛋白定量や腎臓画像検査
むくみ・倦怠感腎機能低下で水分排泄や老廃物除去が不十分血液検査(クレアチニン等)、利尿反応など
動悸・息切れ心血管系の負担増大心電図や心エコー、血圧変動のモニタリング

症状の程度や組み合わせによって、医師は虚血性腎症を疑い、さらに詳しい検査を提案することが多いです。

初期段階でも見逃しにくくするためのポイント

  • 健康診断の尿検査や血圧測定結果を過去と比較する
  • 夕方以降の足のむくみや朝起床時の顔のむくみが増えていないか観察する
  • 年齢や持病による血管リスクを意識し、定期的に腎機能をチェックする

初期症状が乏しいがゆえに、こうした日常的な観察が早期発見につながることがあります。

原因

虚血性腎症が生じる原因の多くは、動脈硬化を背景とした血管の狭窄や閉塞ですが、それに至るまでには多彩な要因が関係しています。

生活習慣病や加齢、さらには先天的な血管異常など、複合的なリスクファクターが絡んでいるケースが一般的です。原因をはっきりさせることで、再発や進行を防ぐための適切な対策を立てやすくなります。

動脈硬化

高血圧や高脂血症、糖尿病などによって加速する動脈硬化は、腎動脈や腎内の小動脈を含む全身の血管にプラークを形成し、血流を阻害します。

高齢化とともに動脈硬化は進行しやすく、特に喫煙習慣や肥満傾向がある人はリスクが高まることがわかっています。

血管炎や炎症性疾患

血管炎症候群や自己免疫疾患などによって、腎臓への血流が不十分になる場合もあります。

血管が炎症を起こして壁が厚くなり、狭窄や閉塞をきたすことがあるため、急性・慢性問わず腎機能が落ちていくリスクをはらみ、原因が自己免疫性の場合、ステロイドなどの免疫調整療法も考慮されることが多いです。

線維筋性異形成

線維筋性異形成は、血管壁に異常な構造を持つ先天性の病気で、若年の女性に多い傾向があり、腎動脈が瘤状にふくらんだり狭窄したりして、腎血流が阻害され、高血圧や腎機能低下を起こすケースがあります。

この疾患は必ずしも高齢者や生活習慣病と関連が強いわけではない点が特徴です。

心血管イベントの合併

心不全や大動脈瘤など、心血管系の大きな病気を抱える方は、全身の血行動態が乱れやすくなり、腎臓への血液供給が低下しやすいことがあります。

また、不整脈や血圧の急激な変動があると、腎臓が虚血状態になり、一時的に腎機能が悪化することもあり、心臓と腎臓は循環器系の中でも深く相互作用しているため、どちらかの病変が他方を悪化させる可能性があります。

虚血性腎症で主に見られる原因

  • 動脈硬化と関連した腎動脈の狭窄
  • 血管炎や自己免疫疾患による腎血流の低下
  • 線維筋性異形成などの先天性血管異常
  • 心不全や不整脈などによる全身血行動態の乱れ

原因と特徴

原因特徴注意点
動脈硬化高血圧・高脂血症・糖尿病などでリスク上昇全身性動脈硬化の一部として腎動脈が障害されやすい
血管炎や炎症性疾患自己免疫反応などで血管壁が厚くなり狭窄ステロイドなど免疫療法が検討される場合もある
線維筋性異形成若年女性に多い先天性血管障害血管造影で特有の「くびれ」などの形態がみられる
心血管イベントの合併心不全や不整脈で全身血流が低下腎臓と心臓の相互関係が悪循環を生む恐れがある

生活習慣の改善や基礎疾患のコントロールを行うことで、腎臓への虚血を減らすことが期待できるケースもあります。

虚血性腎症の検査・チェック方法

虚血性腎症を診断・評価するためには、血液や尿の検査だけでなく、腎臓や血管の状態を直接的、間接的に調べる画像検査などを総合的に行う必要があります。

腎動脈における血流の異常や腎機能の変化を正確に把握することで、病型や進行度に応じた治療戦略を立てることが可能です。

血液・尿検査

血液検査では、腎機能を示すクレアチニンや血中尿素窒素(BUN)、推定GFR(eGFR)の値をチェックし、また、電解質バランスの異常や貧血の程度を確認することも重要です。

尿検査では、タンパク尿や血尿の有無、尿中に含まれる老廃物量を評価します。これらの結果が慢性的に悪化し続けるようであれば、腎臓へ供給される血液の不足が疑われます。

画像検査(エコー、CT、MRIなど)

腎エコーでは腎臓の大きさや形状を把握し、左右差や萎縮などを確認できますが、動脈狭窄の詳細を把握するには限界があるため、CTアンギオやMRアンギオと呼ばれる血管造影を伴う画像検査が実施される場合があります。

これによって腎動脈の狭窄部位や狭窄の程度、プラークの有無などが明確になるため、治療方針を決める上で大いに役立ちます。

腎動脈造影

もっとも直接的な検査として、カテーテルを用いて腎動脈の造影を行う方法があり、これは血管内治療(ステント留置など)に移行する可能性がある場合にも行われ、実際に血管内を観察しながら狭窄を拡張する治療を併用できるのが利点です。

ただし侵襲性が高い検査なので、リスクとベネフィットを医師が総合的に判断して実施します。

レノグラムや腎シンチグラフィ

核医学を利用した検査で、腎臓の機能を側別に評価する方法で、造影剤を静脈注射し、その分布や排泄速度を画像として記録して、腎血流の状態や腎全体の働きを把握できます。

腎動脈狭窄がある場合は、狭窄側の腎機能が低下している様子がはっきり映る場合があるため、術前評価にも有用です。

主な検査

検査名内容特徴
血液・尿検査クレアチニン、BUN、eGFR、電解質、タンパク尿など腎機能の基本指標を捉える
腎エコー腎臓の大きさや形状を確認簡便で非侵襲的だが血管狭窄の評価は限定的
CTアンギオ、MRアンギオ腎動脈の形態や血流を詳細に把握狭窄度やプラークの位置がわかりやすい
腎動脈造影カテーテルで直接血管内を観察同時に治療(ステントなど)も視野に入る
レノグラム・腎シンチ核医学で腎機能を側別に評価狭窄側と健常側の機能差が把握しやすい

各検査の特徴を踏まえ、医師は患者さんの状態や合併症を考慮しながら、検査を組み合わせて総合的に判断することが一般的です。

検査時に留意しておきたいポイント

  • 造影検査では造影剤アレルギーや腎機能悪化リスクへの注意が必要
  • カテーテル検査は出血や血栓などのリスクを伴うため、持病や服用薬の確認が大切
  • 高齢者や糖尿病患者などは脱水に弱く、検査前後の水分管理が重要

虚血性腎症の治療方法と治療薬について

虚血性腎症の治療は、血流不足によって傷害を受けている腎臓への負担を軽減し、進行を食い止めることが目的で、大まかに分けると、血管の狭窄そのものに対するアプローチと、腎機能を守るための内科的治療があります。

血圧コントロール薬

虚血性腎症の多くは高血圧を伴います。アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬やアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)、カルシウム拮抗薬などで血圧を管理することは、腎臓への過度な圧負担を減らすうえで役立ちます。

ただし、腎動脈狭窄が重度のケースでは、ACE阻害薬やARBの使用により腎機能が急激に悪化するリスクがあるため注意が必要です。

血管拡張・再灌流のための処置

腎動脈が高度に狭窄している場合、経皮的腎動脈形成術(PTRA)やステント留置術などの血管内治療が検討されることがあり、細いバルーンやステントを使って狭くなった血管を拡げ、血流を再確保する方法です。

成功すると腎機能の改善や血圧コントロールが良好になる可能性がありますが、再狭窄や出血などの合併症リスクも伴うため、適応やタイミングを慎重に見極めることが大切になります。

スタチンなどの動脈硬化抑制

動脈硬化が原因の場合、LDLコレステロールを下げるスタチンなどの薬で進行を抑えることが期待されます。

高脂血症が強く関与していると考えられる人では、スタチン療法や食事指導を含む生活習慣改善によって、腎血管だけでなく全身の血管リスク軽減を同時に狙います。

利尿薬やその他補助薬

腎機能が低下して水分や塩分がうまく排泄できなくなると、むくみや心不全の悪化リスクが高まるため、適度に利尿薬を使用して体液量を調整し、血圧や心臓への負担を緩和します。

また、必要に応じて貧血改善のためのエリスロポエチン製剤や骨ミネラルを調整する薬が用いられる場合もあります。

主な治療薬

薬剤分類目的・特徴使用上の注意
ACE阻害薬 / ARB血圧コントロール、レニン-アンジオテンシン系の抑制腎動脈狭窄が重度の場合は注意
スタチンLDLコレステロール低減、動脈硬化抑制肝機能や筋症状のモニタリング
利尿薬余分な水分・塩分の排出促進脱水や電解質バランスに注意
血管拡張 / ステント留置術狭窄部位の拡張、血流再開手術に伴う出血・再狭窄リスクなど

虚血性腎症は全身の血管病変とも関連が深いため、腎臓だけでなく心血管リスク管理や生活習慣改善が合わせて行われることが多いです。

治療を成功に導くために重視されるポイント

  • 血圧を過度に下げすぎないように、腎灌流圧を確保する
  • コレステロール管理や体重管理など全身の動脈硬化リスクを低減する
  • 侵襲的な血管内治療は必要性とリスクを慎重に天秤にかける
  • 利尿薬や補助薬の使い方をこまめに医師と相談し、副作用を最小限に抑える

治療薬や処置の選択は患者さんの症状や血管病変の状態によって変わるため、専門医の診断とフォローアップが不可欠です。

虚血性腎症の治療期間

虚血性腎症に対する治療は、病状の進行度や原因となる血管病変の程度などによって長さが大きく変わり、中には、血管拡張術を受けた後も継続して薬物療法や生活習慣管理が求められるケースが多いです。

病期別の目安

初期の段階で発見され、血圧コントロールやスタチン療法など内科的管理がうまくいく場合、数か月から1年程度で安定することがあります。

ただし、動脈硬化の進行は加齢などで止まりづらく、完全に治癒を狙うのは難しいため、その後も定期的な通院とフォローが必要です。

進行して腎機能が大きく低下している場合は、長期的な透析や腎移植を視野に入れた管理を余儀なくされる可能性があります。

血管内治療後のフォローアップ

経皮的腎動脈形成術(PTRA)やステント留置術など、血管内治療を行った場合でも再狭窄のリスクがあるので、術後は数か月おきに画像検査や血液検査を行い、ステント周辺の状態や腎機能をチェックすることが大切です。

血圧管理を継続しながら、狭窄が再び進んでいないかを確認し、問題が見つかれば再度の処置が検討されることもあります。

生活習慣病管理の継続

虚血性腎症の背景には、高血圧や糖尿病、高脂血症などの生活習慣病が絡んでいることが多いため、こうした基礎疾患のコントロールを続ける限り、半永久的に治療や指導を受け続けるケースが一般的です。

特に動脈硬化は一朝一夕で解消できる問題ではなく、食事療法や適度な運動の習慣化などを継続して行う必要があります。

透析導入の可能性

治療が遅れたり合併症が重なったりして、腎機能が末期的に低下した場合、腎代替療法である透析導入が検討され、透析になった場合、基本的には週複数回の通院が必要です。

腎移植という選択肢もゼロではありませんが、全身状態や年齢的な要素、合併症の有無などから総合的に判断されることになります。

治療期間の目安

  • 内科的管理のみの軽症例:数か月~数年かけて安定化を目指す
  • 血管内治療後:再狭窄チェックと薬物療法を数年単位で継続
  • 進行例:一生涯にわたる生活習慣管理、場合によっては透析導入

治療期間に影響を与える主な要因

要因影響
動脈硬化の進行度重度であるほど長期管理が必須
血管内治療の成否成功しても再狭窄リスクがあり、定期的な検査が必要
生活習慣病のコントロール具合糖尿病や高血圧が悪化すると腎機能低下が加速しやすい
全身状態および合併症の有無心不全や脳卒中など併発すれば治療も複雑化しやすい

多くの場合、完全に治りきるというよりも病状をコントロールしながら共存していくスタイルが主流です。

虚血性腎症薬の副作用や治療のデメリットについて

虚血性腎症の治療では、複数の薬剤や処置を組み合わせるため、副作用やデメリットを理解しておく必要があります。治療が成功しても完治とは限らず、継続的な管理を要するケースが少なくありません。

血圧降下薬の副作用

ACE阻害薬やARBは、腎保護効果が期待される一方で、腎動脈狭窄が重度の場合、腎灌流圧をさらに低下させて急激に腎機能が悪化する危険があります。

高カリウム血症や咳などの副作用もあり、定期的に血中カリウムや腎機能をモニターしながら使う工夫が必要です。

血管内治療のリスク

ステント留置術やバルーン拡張術などの血管内治療には、再狭窄や血管損傷、合併症として出血や腎不全悪化の可能性が含まれます。

高齢者や複数の合併症がある患者では、手術そのものの侵襲リスクが高いため、メリットとの比較を医師と慎重に相談することが大切です。

利尿薬による電解質異常

利尿薬は余分な水分やナトリウムを排出して血圧とむくみの改善に貢献しますが、脱水や電解質バランスの崩れ、特に低カリウム血症などを引き起こす場合があります。

定期的な血液検査でナトリウム、カリウム、クレアチニンなどを確認し、必要に応じて用量を調整することが重要です。

長期治療による生活面の負担

薬剤や血管内治療だけではなく、長期にわたる通院や食事制限、運動療法など、患者自身の生活に大きな負担がかかる点は見逃せません。

特に腎機能が低下すると、食塩やタンパク質の制限が必要になることが多く、食事の楽しみが減ったり、外食や旅行がしづらくなったりする影響があります。

代表的な副作用やデメリット

  • ACE阻害薬 / ARB:急な腎機能悪化、高カリウム血症、咳
  • ステント留置術:再狭窄や血管損傷、手術侵襲によるリスク
  • 利尿薬:電解質異常、脱水リスク
  • 長期管理:通院や食事制限の継続負担

主な治療と想定される副作用

治療法・薬剤主な副作用・デメリット留意点
ACE阻害薬 / ARB腎機能悪化、高カリウム血症、咳など重度狭窄例では使い方に注意、血液検査を定期的に実施
ステント留置術血管損傷、再狭窄、出血のリスク高齢者や合併症がある人は手術適応を慎重に評価
利尿薬低カリウム血症、脱水など電解質を定期チェック、むくみ改善とバランスを取る
長期管理(食事制限)生活の自由度が減る、通院の手間栄養士や医療スタッフとの連携で無理なく継続する

保険適用と治療費

お読みください

以下に記載している治療費(医療費)は目安であり、実際の費用は症状や治療内容、保険適用否により大幅に上回ることがございます。当院では料金に関する以下説明の不備や相違について、一切の責任を負いかねますので、予めご了承ください。

検査費用の目安

血液検査や尿検査、腎エコー、CTやMRIなどは3割負担の自己負担額で数千円から1万円台です。腎動脈造影やカテーテル検査を行うと、入院や専門的な器具使用に伴い、数万円程度の費用になります。

治療薬や処方薬の費用

ACE阻害薬やARB、スタチン、利尿薬などの薬剤費は、1か月あたり数千円から1万円台になることが多いです(自己負担3割の場合)。

併用薬の種類や用量が増えるほど、薬剤費も高くなる傾向がありますが、複数の薬をまとめて処方されるため、医療機関や薬局で一定の指導・管理が行われます。

血管内治療・手術の費用

ステント留置術やバルーン拡張術などの血管内治療では、デバイスそのものの費用や手技に伴う入院費がかかります。

自己負担3割で考えた場合、10万円を超えることもありますが、施術範囲や使われるステントの種類によって変動するため、事前に医師や医療スタッフに概算を尋ねてください。

入院や継続通院の負担

急性期や合併症を伴う場合、数日から数週間の入院が必要になることがあり、その分入院費や食事代などが上乗せされます。退院後は定期外来で血液検査や画像検査を受けるため、月1回から数回程度の通院費が必要です。

代表的な費用目安

治療・検査項目自己負担の目安(3割負担の場合)注意点
血液・尿検査数千円~1万円台/回頻度が高いと累積コストが上がる
CT/MRI数千円~1万円超/回造影剤使用でリスク管理が必要
腎動脈造影、カテーテル検査数万円程度(入院日数による)手技リスクとコストのバランスを考慮
血管内治療(ステント等)10万円以上になる場合ありデバイス費用や入院費を含む
内服薬(ACE阻害薬等)月数千円~1万円台種類や組み合わせで変動
入院費1日数千円~1万円以上個室利用などで追加費用が発生することも

以上

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大垣中央病院・こばとも皮膚科

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