人工透析を受ける方へ|わかりやすく解説する治療の流れ

人工透析を受ける方へ|わかりやすく解説する治療の流れ

腎臓の機能が低下すると、体内の老廃物や余分な水分が排出しにくくなり、さまざまな不調を引き起こす可能性があります。こうした状況を改善する方法の一つが人工透析です。

負担が大きい治療という印象を持つ方もいらっしゃるかもしれませんが、医療スタッフと連携しながら正しい情報を得ることで、身体の状態を維持しやすくなります。

この記事では、人工透析にまつわる基本的な流れから治療を続けるうえでのポイント、さらに日常生活の注意点まで順番に紹介します。

目次

人工透析とは何かを理解するために

腎臓が担う役割は老廃物の排泄だけでなく、体液量や電解質のバランスを調整したり、血圧をコントロールしたりと多岐にわたります。

これらの機能が低下し、透析が必要な状態になるまでには時間がかかる場合があり、症状の進行を自覚しにくい場合も少なくありません。治療が必要とわかった際に正しく理解を深めることは大切です。

腎臓の働きと透析が必要となる理由

腎臓は腰のあたりに左右1つずつ存在し、血液中の老廃物や余分な水分をろ過して尿として排出する働きを持ちます。これによって血液の成分バランスが保たれ、健康的な状態を維持しやすくなります。

しかし、慢性腎臓病などで腎臓の機能が著しく低下すると、老廃物の排出や水分・電解質のコントロールが難しくなります。

腎臓の機能が一定以下まで低下した状態を「腎不全」と呼び、重度になると生命維持を目的に人工透析が求められる状況になります。

人工透析とはわかりやすく言うと何をするのか

人工透析とはわかりやすく説明すると、腎臓の代わりに血液をきれいにする治療です。血液を体外に導いて専用のフィルターを通す血液透析と、腹腔内に透析液を注入して老廃物を除去する腹膜透析があります。

医師が患者さんの全身状態や生活スタイルに合わせて、どの方法が適しているかを判断し、検査結果なども踏まえて治療計画を立てます。

人工透析を始めるタイミング

腎機能低下がある程度進行していても、生活習慣の改善や薬物療法で状態を安定させられる場合があります。しかし、腎不全の症状が強まって嘔気やむくみ、倦怠感が続く段階になると透析導入を検討することが多いです。

血液検査の結果や体調、さらに専門医の判断を踏まえ、透析を開始するタイミングを決めていきます。

治療前に知っておきたいポイント

治療を続けるにあたっては、定期的な通院・検査をこなしながら長期間にわたる管理が必要です。

身体面はもちろん、生活スタイルやお仕事などの社会生活面にも影響があるため、医師や看護師、管理栄養士と話し合いを重ねて計画を立てることが大切です。透析導入前に理解を深めておくと、スムーズな準備ができます。

人工透析に関連する主な検査項目

検査項目内容意義
血液検査血中の尿素窒素やクレアチニンなど腎機能の程度を把握する
尿検査尿蛋白や尿潜血など腎臓の状態や血尿の有無を確認
画像検査超音波検査やCTなど腎臓の形態的な異常や腫瘍の有無などを確認
心臓機能検査心電図や心エコーなど透析による循環器系への影響を事前にチェック

主な治療の流れと初診の受け方

人工透析に進むかどうかを判断するためには、専門科の受診と検査、さらに医師やコメディカルスタッフとの十分な相談が必要です。

透析導入が決まった後も、機器の準備やシャント造設などの手術が必要になるケースがありますので、流れを把握しておくと安心です。

初診時のカウンセリング内容

初診では、これまでの病歴や日常的な症状、生活習慣などを詳しく尋ねます。腎機能がどの程度低下しているのかや合併症の有無などを確認するために血液検査や尿検査を行い、画像検査も適宜実施します。

こうした情報をもとにして、主治医は透析導入の必要性や、導入するならば血液透析と腹膜透析のどちらが合っているかを検討します。

治療計画の作成プロセス

検査結果や患者さんの希望に応じて、おおまかな治療計画を立案します。血液透析を行う場合は、血管へ直接針を刺せるように腕の血管同士をつなぐ「シャント造設術」が必要となります。

腹膜透析を行う場合には、腹部にカテーテルを留置し、透析液を出し入れする手技を行えるようにします。それぞれの準備期間や手術の日程、術後の管理が計画に含まれます。

シャント造設術とは

血液透析を選択した場合に欠かせない処置がシャント造設術です。腕の静脈と動脈をつなぎ、血流を増やして透析に適した太さと強度を持つ血管を作ることを指します。

術後に安定したシャントができるまで数週間かかる場合があり、その間に血流を確保しやすい状態に育てます。この過程を経ることで、透析の際に十分な血液量を体外に取り出し、フィルターでろ過する環境を整えやすくなります。

腹膜透析用カテーテルの留置

腹膜透析を受ける場合は、腹部の隅に小さな穴を開けてカテーテルを挿入します。このカテーテルを使って透析液を体内へ注入し、腹膜を介して老廃物を引き出します。

カテーテルを正しく管理しないと感染リスクが高くなるため、医療スタッフの指導のもとで洗浄や交換作業を学び、トラブルを防ぐ必要があります。

治療準備に関わる概要

項目主な内容留意点
血液透析シャント造設静脈と動脈をつなぐ手術術後数週間は負担の少ない運動に留める
腹膜透析カテーテル留置腹部にカテーテルを留置し透析液の出し入れを可能にする感染防止に向けた日々のケアが重要
検査・診察日程血液検査や心機能検査、画像検査など定期的に実施し治療方針を再検討
  • 受診のタイミングが遅れると、急激に体調を崩すリスクが高まる
  • 医療スタッフとのコミュニケーションを積極的に図ると安心できる
  • 準備段階で疑問や不安を解消しやすくなる

血液透析の概要と手順

血液透析は、体外に取り出した血液を透析装置に通して老廃物や余分な水分を除去し、再び体内へ戻す方法です。病院や透析クリニックに定期的に通い、週に数回実施する形が一般的です。

治療時間は1回あたり4〜5時間ほどかかることが多く、患者さんの体調や病院の体制によって変わります。

血液透析の具体的な流れ

1回の血液透析を行う際の大まかな流れは、以下のようになります。

  1. 透析前の体調確認(血圧や体重測定、バイタルチェック)
  2. シャントや留置カテーテルへ針を刺して血液回路を接続
  3. 透析機器へ血液を循環させ、老廃物と余分な水分を取り除く
  4. 治療終了後、血液回路を外し、穿刺部位に止血処置を行う
  5. 透析終了後の状態を観察し、体調に問題がなければ帰宅

血液透析には一定の時間が必要となり、通院スケジュールの確保が大切になります。家族や職場の協力を得られるように、事前に相談しておくと治療を進めやすくなります。

シャント管理の重要性

血液透析ではシャントが正しく機能しなければ、十分な血液が透析装置に流れず効率が落ちてしまいます。シャント部位の血流が悪くなると、透析中に血栓ができたり、穿刺が難しくなったりする可能性が高まります。

シャント音が正常に聞こえるかを定期的にチェックしたり、腕を圧迫しすぎないように注意したりして血流を確保してください。

透析合併症のひとつ:透析低血圧

血液透析で注意する合併症としては、透析低血圧があります。急激に水分や老廃物を除去するため、循環血液量が減って血圧が下がり、めまいや倦怠感を感じやすくなることがあります。

医療スタッフと相談しながら、除水量の調整を行ったり、透析中のポジションや体温管理を工夫したりして乗り切ることが大切です。

透析スケジュールと生活リズム

血液透析は週に3回程度の通院が多いです。1回あたりの治療時間は長く、通院の移動時間も考えると1日がかりになる場合もあります。

日常のリズムに透析が加わるため、勤務先との相談や家族のサポートを受けながら継続しやすい環境を作る必要があります。

血液透析の大まかな特徴

項目ポイントメリットデメリット
頻度・時間週3回ほど、1回4〜5時間程度週のスケジュールが固定化し体調管理しやすい通院や治療時間の確保が必要
シャント管理血管を育てて穿刺しやすくする安定した血流を確保できれば透析効率が高いシャント障害が起きると緊急処置が求められる
合併症のリスク透析低血圧や血栓、心不全など医療スタッフの管理で早期発見が期待できる十分な注意を怠ると重症化の恐れがある
日常生活への影響透析日程が決まるので予定が立てやすい入院せず通院治療が可能仕事や家庭との両立のため調整が必要
  • 自分のライフスタイルや体調に応じた透析条件の相談が大切
  • シャント音のセルフチェックを習慣づけるとトラブルを防ぎやすい

腹膜透析の概要と手順

腹膜透析は、透析液を腹腔内に注入し、腹膜をフィルター代わりにして老廃物や余分な水分を吸着させ、透析液を排出する治療です。自宅で行える点が大きな特徴ですが、そのぶん衛生管理や手技の習得が必要になります。

患者さんによっては血液透析から腹膜透析、またはその逆へ移行するケースもあるため、メリットとデメリットを理解しておくと役立ちます。

腹膜透析の手技と基本的な流れ

腹膜透析を行う場合、腹部に留置したカテーテルを通じて透析液を注入します。一定時間おいて老廃物や余分な水分が腹膜を介して透析液に移動したら、次に透析液を体外に排出します。

自宅などで1日数回行う方式(CAPD)や、自動装置を使って就寝中に交換する方式(APD)があります。どちらを選択するかは、生活リズムや合併症リスク、腹膜機能などによって決まります。

在宅での管理と注意点

腹膜透析は自宅で行うため、患者さん自身が器具の取り扱いや感染対策を身につける必要があります。カテーテルの取り扱いを誤ると腹膜炎を起こすリスクが高まります。

透析液を交換するときは手を清潔に保ち、決められた手順を守りながら操作してください。定期的な受診と検査を継続し、腹膜の状態や栄養状態をチェックしていきます。

腹膜透析中に意識したい衛生管理

項目内容大切なポイント
手指の清潔保持洗浄や消毒を徹底して病原菌の侵入を防ぐ爪の長さや手荒れにも気を配う
交換手順の遵守透析液交換時の器具やチューブの接触順に注意複数のタオルや消毒液を準備する
カテーテル部位カテーテル挿入部の周囲を定期的に観察発赤や腫れ、痛みを早めに受診で確認
保管環境透析液やチューブなどの保管場所を清潔に保つ室温・湿度管理を行いホコリを減らす

腹膜透析ならではの生活調整

腹膜透析は自分のスケジュールに合わせて交換のタイミングを決めやすいという利点があります。身体への負担が比較的緩やかで、血圧低下などが起こりにくいことも特徴です。

一方で、透析液の交換を怠ると効果が十分に得られず、体液コントロールが難しくなります。自宅や職場で交換作業が必要となるため、プライバシーを確保できる環境を整えることが求められます。

血液透析との比較

腹膜透析と血液透析はそれぞれ特徴が異なり、どちらが自分に合っているかは医師やスタッフとの相談が不可欠です。

腎機能や合併症の有無、患者さん自身のライフスタイル、そして希望する治療のペースなど、総合的に判断して治療法を選択します。

  • 腹膜透析は自宅治療が主体で通院回数が少なくなる
  • 血液透析は医療スタッフの管理下で実施でき、緊急対応もしやすい
  • 透析効率や体力負担、生活への取り入れやすさに違いがある

透析中の注意点と快適に受ける工夫

人工透析は長時間、定期的に行う治療です。治療中は身体にストレスがかかりやすく、同じ姿勢が続くと疲労感や痛みを感じやすくなります。

また、血圧の変動などで体調が揺らぎやすい場面もあるため、自分に合った工夫を取り入れることが大切です。

血圧管理とこまめな声かけ

透析を受けている間、特に血液透析では血圧が下がりやすいため、定期的に測定を行います。治療中に不快感やめまい、吐き気などを感じた場合、遠慮せず看護師や主治医に知らせてください。

適切なタイミングで透析条件を調整するなどの対応がとりやすくなります。

透析中の過ごし方の工夫

血液透析では4〜5時間のベッド上での時間が多くなるので、いかにリラックスして過ごすかがポイントです。読書や音楽、タブレット端末で映像を楽しむなど、それぞれの好みに合わせた方法で気を紛らわせると心身の負担が和らぎます。

一方で、寝返りや大きく体勢を変えるのは針の位置に影響を与える可能性があるため注意が必要です。

治療中に取り入れやすいリラクゼーション例

  • 音楽鑑賞用のイヤホンを用意してお気に入りの音楽を聴く
  • 透析ベッドでの姿勢調整クッションを使用し、負担を軽減する
  • 軽めの書籍や電子書籍リーダーを使って読書の時間を設ける

体位と温度環境のコントロール

血液透析中は体位が固定されるため、背中や腰に負担がかかりやすいです。治療中でも許される範囲で背もたれの角度を調整したり、ひざ下にクッションを置いたりすると負担の軽減に役立ちます。

また、体温調節が難しくなるケースもあるため、室温が合わないと感じた場合にはスタッフに調整を依頼してください。

腹膜透析時の注意点

腹膜透析の場合は、透析液の注入や排出を行うタイミングで無理な姿勢にならないように心掛けてください。急に身体を動かすとチューブに引っかかったり、体位がずれることで透析液がスムーズに流れなかったりすることがあります。

身体への負担を抑えながら作業できる姿勢を確保しておくとスムーズに交換を実施できます。

快適に治療するための工夫まとめ

工夫の例内容ポイント
座り心地の改善クッションやブランケットを使用し腰や背中を支える同じ姿勢が続かないように少し調整する
環境の工夫好きな音楽や映像を持ち込む楽しみを作ることでストレス軽減
コミュニケーションの活性看護師やほかの患者と会話して気分を変える心配事などを早めにスタッフに伝えられる
適度な水分・塩分コントロール血圧低下や脱水、逆にむくみなどを防ぐため摂取量に注意透析前後での体重管理も欠かせない

定期的な検査と合併症予防について

透析は腎機能の代わりを担いますが、完全に同じ働きをするわけではなく、長期的な負担が身体に及ぶことも考慮しなければなりません。合併症を早期に見つけて対処するためにも定期検査が大切です。

合併症を防ぐための定期検査の内容

血液透析や腹膜透析を受ける方にとって、定期的な血液検査や画像検査、心機能検査などは重要な役割を果たします。慢性腎臓病が進行すると心臓や血管に負担がかかりやすく、高血圧や貧血、骨・ミネラル代謝異常などを起こす可能性があります。

こうした兆候を早めに捉え、食事療法や投薬で調整することが合併症の予防につながります。

骨・ミネラル代謝異常(CKD-MBD)への対処

透析患者さんには、骨量の低下や高リン血症、二次性副甲状腺機能亢進症などが起こりやすいとされています。これらは骨や血管の状態に悪影響を及ぼし、骨折リスクや動脈硬化の進行を招く可能性があります。

定期的な血中カルシウム、リン、PTH(副甲状腺ホルモン)などの測定を行い、必要に応じてリン吸着薬やビタミンD製剤の処方を受けるなどの対策をとってください。

合併症予防に関わる検査の例

検査名概要合併症との関連
血液生化学検査カリウムやリン、カルシウムなどの電解質バランスを確認骨・ミネラル代謝異常や心不整脈の把握
心臓超音波検査心臓の形態や動きを確認心不全や弁膜症の早期発見に役立つ
骨密度検査骨の密度を測定骨折リスクの評価
レントゲン検査胸部や腹部の状態を画像化心拡大や腹部の異常をチェック

血圧コントロールと生活習慣

透析中のみならず、日常の血圧管理も重要です。塩分の取りすぎは高血圧につながり、心臓や血管に負担をかけます。医療スタッフの指導のもと、適度な塩分制限や水分コントロールを行うと合併症のリスクを下げることにつながります。

適度な運動も血圧安定や体力維持に有用ですが、無理のない範囲で取り組み、医師と相談しながら進めてください。

定期受診のメリット

定期的な受診では、透析効率の評価やシャントの状態確認、腹膜の機能検査などを行います。トラブルを早期に把握して対処できれば、重症化の予防が可能です。

体調が良いからと受診を先延ばしにすると、見えない部分で合併症が進行する恐れがあるため、決められた診察日程はしっかり守ることをおすすめします。

  • 定期検査で心臓や血管の状態を把握すると安心感が得られる
  • 薬物療法で合併症をコントロールしやすい
  • 症状が軽微な段階で対応するほど負担を軽減しやすい

日常生活で心がけたいこと

透析を続けるうえでは、日々の生活習慣が治療効果に影響を与えることが多いです。体重コントロールや食事・水分摂取、運動習慣などに気を配りながら、快適に過ごすための工夫を取り入れてみてください。

食事面の注意と栄養管理

透析を受ける方は、タンパク質・カリウム・リン・塩分などを適切に摂取する必要があります。腎機能が低下すると、余分な栄養素が体外に排出しにくく、血中に蓄積しやすいためです。

管理栄養士と相談しながら、以下のような観点でバランスの良い食事を心がけると安心です。

  • タンパク質は不足しない程度に摂取し、筋肉量を維持する
  • フルーツや野菜はカリウムが多い品目を控えめにする工夫が必要
  • 加工食品の取りすぎは塩分とリンが過剰になりやすい
  • 外食をする場合は、塩分控えめのメニューや小鉢を選ぶようにする

水分摂取量のコントロール

透析が必要な方は腎臓での排出能力が低下しているため、過剰な水分摂取で体内に水分がたまりやすくなります。むくみや高血圧、心不全などの原因になる恐れがあるため、医師から指示のあった水分量を守ることが重要です。

季節や体調によって必要な水分量も変わるため、こまめに主治医へ相談してください。

体重管理のポイント

見直したい項目内容注意点
毎日の体重測定朝・晩など決まった時間に測定し増減を記録急激な増加や減少が続く場合は医師に相談
塩分摂取量1日6g未満を目指すなど医師・管理栄養士の指導を参考にする加工食品やスナック菓子の量に要注意
むくみの有無足首や顔の腫れ、朝起きた時のまぶたの状態を確認心不全や腎機能低下の兆候かを見極める

適度な運動と休養

透析を受けると疲労感が強くなりがちですが、軽度のストレッチや散歩などの適度な運動は心肺機能や筋力を維持するうえで意味があります。

無理なく続けられる運動メニューを医師やリハビリスタッフと相談して決定し、体調を見ながら継続することが大切です。透析の後は疲れを感じやすい場合もあるので、十分な休養を取り、体力を回復する時間を作ってください。

仕事や趣味との両立

透析は長期にわたる治療であり、日常生活に大きく関わります。仕事との両立を図る場合は、勤務形態や時間帯の融通を相談したり、在宅勤務などの選択肢が取れないか検討したりすることが必要です。

趣味や社会活動も継続することで精神的な支えが得られ、治療に前向きに取り組みやすくなります。適切な環境調整をすることで、より安定した状態で生活を営めます。

  • 生活リズムを一定に保ちやすくなるように工夫する
  • 周囲の理解を得ると精神的な負担が軽くなる
  • こまめに休養時間を確保し体調の波を管理する

よくある質問

透析という言葉に対して「大がかりな治療では」「自由度が低くなるのでは」と不安を感じる方も少なくありません。

ここでは、よく聞かれる疑問についてまとめます。疑問があるときは主治医や看護師、管理栄養士などの専門スタッフへ積極的に質問してください。

血液透析と腹膜透析はどちらが良い?

どちらが良いという絶対的な答えはありません。それぞれにメリットとデメリットがあり、生活スタイルや合併症の状況、患者さん自身の希望によって異なります。

血液透析は定期的な通院が必要ですが、医療スタッフのサポートを直接受けながら実施できます。腹膜透析は自宅中心の治療で、通院回数が少なく柔軟ですが、自分で感染管理などを行う手間があります。

食事制限はずっと厳しく続けなければいけない?

人工透析の導入後も、食事制限は継続することが基本となります。ただし、長期間にわたる制限で栄養不足やストレスが生じると逆効果です。

管理栄養士の指導を受けながら無理なく食習慣を続け、栄養バランスを保つと透析の効果を高め、合併症リスクを抑制しやすくなります。

旅行や外出はどの程度できる?

旅行や外出は事前に計画を練り、透析先の医療機関を確保できれば可能です。血液透析の場合は滞在先で受け入れてくれる施設を探し、予約を行う必要があります。

腹膜透析の場合は必要な器具や透析液を持ち運ぶ手段や保管場所を準備し、衛生管理に注意していれば外出や旅行を楽しむこともできます。医師と相談のうえで具体的なスケジュールを立ててください。

透析を受けると寿命はどう変わる?

透析を受け始めることで、腎機能が著しく低下している方でも体内の老廃物や余分な水分を排出できるようになります。これは、健康状態を維持するうえで非常に大切な役割です。

ただし、合併症のコントロールや食事・運動管理など総合的なケアが必要となり、個人差があります。医師の指示を守りつつ、定期受診と生活管理を怠らないことで、できる限り質の高い生活を続けやすくなります。

以上

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大垣中央病院・こばとも皮膚科

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