骨Paget病

骨Paget病

骨Paget病とは、骨の形成や吸収のサイクルが乱れ、局所的に骨が変形しやすくなる慢性的な疾患で、骨の肥厚や脆さが進行しやすい特徴があります。

加齢とともにリスクが高まることが多いと考えられ、骨に不自然な痛みや変形が生じるため、歩行や日常動作に支障をきたす可能性があります。

欧米では比較的よく知られた疾患であり、国内でも定期的な検査を受けながら早めの治療に取り組むことが大切です。

目次

骨Paget病の病型

骨Paget病には、骨のリモデリング過程(骨の生成と吸収のバランス)に異常をきたす複数のパターンがあり、自覚症状の強さや、どの骨が侵されるかによって病型が大きく異なり、治療方針や経過観察の頻度が変わります。

単一骨病型

単一骨病型は、病変が1か所の骨に限局するパターンで、大腿骨や脛骨、腰椎など、比較的大きな骨に生じやすい傾向がありますが、体のどの骨にも起こる病型です。

痛みが局所的に強まることが多く、日常生活では、その部位に負担がかかる動作(例えば脚に病変がある場合は歩行や立ち上がり)で違和感を強く覚えることがあります。

骨Paget病が疑われる部位の代表例

代表的な部位特徴的な症状や負担のかかる動作
大腿骨立ち上がりや歩行での痛み
脛骨歩行時の負荷増大
骨盤座位と立位を繰り返す動作
腰椎前屈や捻転など体幹の動作

このように、骨Paget病が単一骨に発症した場合でも、動作時の負荷により痛みを感じやすくなります。

多発骨病型

多発骨病型は、複数の骨が同時に変形しやすくなるパターンで、単一骨病型よりも広範囲に骨のリモデリング異常が及ぶため、症状が複雑になりやすいことが特徴です。

腰椎と大腿骨が同時に変形している場合は、歩行だけでなく、荷物を持ったり、階段を昇降したりする動作も難しくなることがあります。

多発骨病型に見られやすい変化

  • 複数部位の骨肥厚による可動域の制限
  • 痛みが広範囲におよぶための慢性的な疲労感
  • 骨盤や背骨の変形による姿勢異常

多発骨病型では、骨変形による神経圧迫などの二次的な症状が出やすい点にも注意が必要です。

症状が軽度な潜在性病型

画像検査や血液検査で骨Paget病の特徴的な所見が見つかったにもかかわらず、自覚症状がほとんどない場合もあり、これを潜在性病型と呼ぶび、偶然検査で見つかるケースが少なくありません。

痛みや変形がなくても、将来的に骨の形状変化や骨折リスクが高まる可能性を否定できないため、適度な経過観察が必要となる場合があります。

症状の程度と日常生活への影響度

病型・症状の程度主な影響
軽度(潜在性)自覚症状なし、定期検査で発覚
中等度時々起こる痛みと動作制限
重度継続的な痛み、著しい骨変形

上記のように、病型と症状の程度には相関がありますが、個人差が大きいため油断は禁物です。

急性進行と慢性進行

骨Paget病の進行速度にも個人差があり、急激に変形が進む場合と、数年単位でゆっくりと骨に変化が生じる場合があります。

急性進行タイプでは強い痛みが短期間に現れやすく、慢性進行タイプでは気づかないうちに骨が徐々に変形して姿勢や関節機能へ影響を及ぼすことがあります。

どちらのタイプも、痛みや変形が見過ごされると骨折や神経障害など二次的な問題を引き起こしやすいため、定期的なモニタリングが重要です。

症状

骨Paget病では、骨の形成と吸収に異常が起こることで、痛みや関節機能の制限、骨変形など、さまざまな症状がみられます。

ここでは代表的な症状を紹介し、それぞれが日常生活や姿勢、歩行などにどのような影響を与えるかを詳しく解説します。

骨の痛みと違和感

骨Paget病の初期段階では、鈍い痛みや、重苦しい感覚が続くことが多いです。特に夜間や長時間同じ姿勢でいるときに強まり、寝返りを打つときや起床時に痛みを感じやすくなります。

骨変形が進むと、痛みの範囲が広がり、日常動作を妨げる要因になる場合があります。

痛みの主な特徴

  • 動かし始めや夜間に強まりやすい
  • 持続的な鈍痛が慢性的に続く
  • 骨部位への圧迫に敏感になる

これらの特徴を軽視せず、痛みの経過をよく観察し続けることが大切です。

骨の変形と肥厚

骨Paget病の特徴の1つに、骨が厚くなったり、湾曲したりといった変形があり、大腿骨や脛骨、背骨などは体重負荷を受けやすいため、変形が顕著になりやすいです。

骨が肥厚して周囲の神経や血管を圧迫すると、しびれや循環障害が生じる恐れもあり、放置すると合併症が出やすくなります。

骨変形が及ぼす体の変化

骨変形が及ぼす影響具体的な例
姿勢の異常脊柱の曲がりや骨盤の傾き
関節への負担増加変形した骨が関節面の軸をずらし痛みを発症
神経圧迫肥厚した骨の突出で神経を刺激し、しびれを感じる

骨変形は本人の意識に関係なく少しずつ進む場合があるので、鏡で姿勢や脚の形をチェックしたり、家族など身近な人からの指摘に耳を傾けることも有用です。

関節周囲の痛みや炎症

骨変形が関節に近い場所に及ぶと、関節面のずれや摩擦が起こり、炎症を生じやすくなり、関節周囲が腫れたり、熱を持ったり、動かしづらさを感じたりすることがあります。

変形性関節症との鑑別が必要なケースもあり、専門家による診断が望ましいです。

骨折リスクの上昇

骨Paget病では、骨が肥厚する一方で、内部構造が脆くなり、力学的に不均衡な状態の骨は、思わぬ衝撃や負荷によって骨折を起こすリスクが高まります。

長期的な放置や治療を受けないまま骨変形が進むと、軽微な転倒でも骨折する恐れがあり、寝たきりに近い状態になる可能性も否定できません。

骨折リスクを高める要因

  • 骨の内部構造の乱れ
  • 変形による体重バランスの不均衡
  • 筋力低下や反射速度の低下

要因が重なると骨折の危険度が上がるため、骨Paget病の治療とあわせて日常生活の動作や姿勢に意識を向けることが大切です。

骨Paget病の原因

骨Paget病の明確な原因はまだ解明が十分に進んでいるとはいえませんが、遺伝的な要因やウイルス感染説など、いくつかの仮説が提唱されています。

遺伝的要因

骨Paget病は家族内での発症が確認されることがあり、遺伝的素因が関与すると考えられていて、骨のリモデリングに関わる遺伝子に変異が生じることで、骨吸収と再形成のバランスが崩れやすくなると推察されます。

親や祖父母などの近親者に骨Paget病の診断例がある場合、自分も発症するリスクが高まる可能性があるため、意識して骨の健康管理を行うことが大切です。

骨Paget病の発症リスクを高める要因

発症リスクを高める要因特徴
家族歴親族に同様の病気を持つ方がいる
高齢加齢に伴う骨リモデリング異常の頻度上昇
欧米系の人種背景欧米での患者数が相対的に多い

表からもわかるように、欧米系の人種に多いといわれる骨Paget病は、遺伝要因が強く関係する場合があると示唆されています。

ウイルス感染説

パラミクソウイルスなど特定のウイルス感染が骨Paget病の原因に関与しているという説もあります。

ウイルスが骨の形成を担う細胞や吸収を担う細胞に影響を与え、機能を乱す結果、骨の異常なリモデリングを引き起こす可能性が指摘されています。

ただし、因果関係を断定するにはさらなる研究が必要とされ、現在のところ1つの仮説として位置づけられている段階です。

加齢と骨リモデリングの乱れ

骨のリモデリングは生涯を通じて行われる重要なプロセスですが、加齢とともにバランスがくずれやすくなる傾向が見られます。

年を重ねるほど、骨芽細胞や破骨細胞の働きが変化し、骨Paget病のようなリモデリング異常を起こしやすくなり、また、加齢による骨量減少や骨粗鬆症との関係も指摘されています。

骨Paget病の好発年代や性別の傾向

特徴傾向
好発年代50歳以降での発症が多め
性差男性がやや多いという報告がある
発症率欧米で高く、日本では比較的少ない傾向

生活習慣との関係

明確な因果関係はまだ特定されていないものの、栄養バランスの乱れや運動不足、過度な飲酒や喫煙など、生活習慣が骨の健康に及ぼす影響は見逃せません。

骨Paget病にかぎらず、骨全体の健康を維持するためには、適度な運動とバランスのよい食事、過度なアルコール摂取や喫煙を控えることなどが骨を強化するうえで重要です。

骨の健康を保つうえで大切な習慣

  • 適度な重量負荷運動(散歩や軽い筋力トレーニングなど)
  • カルシウムやビタミンDを意識した食事
  • 不必要に大量のアルコールを摂らない
  • タバコの本数を減らすか禁煙を検討する

骨Paget病の検査・チェック方法

骨Paget病が疑われる場合、複数の検査を組み合わせて診断を行うことが多いです。症状だけでは判別が難しいケースや、骨粗鬆症など他の骨疾患との鑑別が必要な場合もあるため、正確な検査が大切になります。

血液検査(骨代謝マーカー)

骨Paget病の疑いがあるとき、血液検査で骨代謝マーカーを測定することがよく行われ、アルカリフォスファターゼ(ALP)は、骨形成の活性化に伴い値が上昇しやすいため、骨Paget病の指標として重要です。

正常範囲を大きく超えた場合、骨の形成が過度に進んでいる可能性を示唆しますが、肝臓や他の臓器由来のALPもあるため、総合的な判断が必要になります。

代表的な骨代謝マーカーと特徴

検査項目特徴
血清ALP (アルカリフォスファターゼ)骨形成の活性化で上昇
血清OC (オステオカルシン)骨形成状態を示すタンパク質
血清NTX, CTX骨吸収の程度を示すマーカー

X線検査

骨の形状変化を直接確認するため、単純X線撮影は欠かせません。骨Paget病に特徴的な骨の肥厚や変形、骨梁(こつりょう)の走行異常などがX線画像に現れます。

X線検査は比較的簡便に行え、骨の状態をある程度網羅的に確認できますが、初期段階の軽微な変化を見つけにくい場合もあるため、医師はほかの検査と組み合わせながら総合的に診断することが多いです。

骨Paget病とX線所見の関連性

  • 骨密度の局所的な上昇や肥厚
  • 骨の変形による輪郭の乱れ
  • 筋肉の付着部付近の異常な硬化

これらの所見が確認されると、骨Paget病の可能性が高まります。

骨シンチグラフィ

骨シンチグラフィでは、放射性医薬品を注射して全身の骨の代謝状態を画像として捉え、骨Paget病のある部位は代謝が活発になっているため、造影剤が集積して高いシグナルを示します。

X線検査では異常がわかりにくい早期病変や、症状のない部位にもシンチグラフィで代謝異常が見つかることがあります。

骨シンチグラフィのメリットとデメリット

メリットデメリット
全身の骨を一度に評価できる放射性医薬品を使用するため被ばくあり
早期の代謝異常を検出しやすい画像の解釈に専門的知識が必要
痛みの原因部位を特定しやすい詳細な形状の把握は苦手

骨シンチグラフィは、全身的な病変の有無を確認するうえで役立ち、複数の骨が同時に侵されているかどうかを調べる際に有用です。

MRIやCT検査

MRIやCT検査は、骨の内部構造や軟部組織への影響を詳細に把握するために行われ、特にMRIは、骨髄や関節、筋肉への広がりを調べるのに適しており、圧迫が疑われる神経や血管の状態も評価しやすい点が利点です。

CT検査では、骨の形状や硬さ、病変部の三次元的なイメージが得られ、手術の検討などにも役立ちます。

MRIとCTそれぞれの特徴

  • MRI
    • 軟部組織や骨髄の変化を捉えやすい
    • 放射線被ばくがない
    • 撮影に時間がかかり、金属が体内にある場合は注意が必要
  • CT
    • 骨の硬さや変形を高精度に評価できる
    • 撮影時間が比較的短い
    • 放射線被ばくがある

検査の結果を総合して、骨Paget病の診断を確定させ、病変の広がりや重症度を把握することが重要です。

治療方法と治療薬について

骨Paget病の治療は、骨リモデリングの異常な活性を抑え、痛みなどの症状を軽減し、骨折リスクを減らすことが大きな目的です。

症状が軽い場合は経過観察だけで済むこともありますが、痛みが強くなったり、骨変形が進んでいる場合は薬物療法や外科的治療を検討します。

ビスホスホネート製剤による骨吸収抑制

骨Paget病の薬物療法の中心にあるのが、ビスホスホネート製剤で、破骨細胞の活動を抑えることで、過剰な骨吸収を制御し、骨の変形や痛みを緩和する効果が期待できます。

内服薬や点滴製剤など、複数の製剤があり、症状や患者さんの体力、合併症の有無などを踏まえたうえで選択します。

代表的なビスホスホネート製剤

製剤名形態特徴
アレンドロネート内服週に1回服用、食事の影響を受けやすい
リセドロネート内服週に1回服用、胃腸障害のリスクあり
ゾレドロネート点滴 (年1回など)投与回数が少なく長期効果が期待できる

服用時の注意点として、ビスホスホネート製剤は内服後30分程度は横にならない方がよい、食事前に服用すると吸収が良いなど、守るべきルールがあるため医師や薬剤師の指示をよく確認しましょう。

カルシトニン製剤

カルシトニン製剤は、破骨細胞の活動を抑えると同時に痛みを軽減する作用があるため、骨Paget病の疼痛管理を補助する目的で用いられることがあります。

ビスホスホネート製剤の効果が十分に得られない場合や、併用することで相乗効果を狙い、注射や点鼻薬の形態があり、患者さんの状態に合わせて使用頻度や投与法を調整することが必要です。

手術療法

高度な骨変形や、神経圧迫による麻痺などが懸念される場合は手術療法を検討することがあります。

骨の変形した部位を切除し、人工骨や金属プレートで骨を補強する、あるいは関節の機能を改善するための置換術を行うなど、多様なアプローチが選択可能です。

手術後はリハビリテーションを丁寧に行い、骨の安定性と機能を取り戻します。

手術療法の主なメリットとデメリット

メリットデメリット
痛みや変形の根本的な改善が見込める手術侵襲が大きく、リハビリ期間が長引く場合あり
重度の神経圧迫を除去できる手術によるリスク(感染や血栓など)がある
骨折リスクの高い部位を補強できる年齢や健康状態により適応が制限される

手術の適応を決定する際は、骨Paget病の進行度や全身状態、リスクと効果のバランスを医師と十分に相談することが大切です。

補助療法

薬物療法や手術療法とあわせて、理学療法士によるリハビリテーションや装具の使用なども検討され、筋力強化や歩行指導などのリハビリを行うと、骨に過度な負担をかけずに体を動かすコツが身に付き、日常生活の質を高めやすくなります。

特定の部位に痛みが強い場合、温熱療法や低周波治療などで痛みを和らげることを目指すこともあります。

リハビリテーションを続ける際に意識しておきたいポイント

  • 筋力維持や柔軟性向上を目的とした適度な運動
  • 無理のない姿勢や動作を習得するエルゴノミクスの視点
  • 痛みを抑えつつ可動域を保つためのストレッチ

骨Paget病の治療期間

骨Paget病の治療期間は、病気の進行度や発症部位、治療法などさまざまな要因に左右されます。

痛みが少なく、軽度な変化であれば、短期的な薬物療法や経過観察を中心に進める場合がありますが、多発骨病型や高度な変形を伴う場合は、長期的な治療や継続的なモニタリングが必要になることがあります。

軽度から中等度の場合

骨Paget病の症状が軽度で痛みもわずか、あるいは自覚症状がほとんどない潜在性病型であれば、ビスホスホネート製剤を数か月から1年程度服用し、骨代謝マーカーの改善を確認しながら経過を追うパターンが多いです。

症状が安定し、痛みや骨変形の進行がみられなければ、薬の量を調整したり、投与を一時的に中断することも検討します。定期的なX線検査や骨代謝マーカーの測定を行い、変化を早期に察知して対処することが重要です。

治療期間に関する目安

症状の程度治療期間の目安
軽度数か月~1年程度の薬物療法と経過観察
中等度1~2年ほど投薬を継続し、随時調整する

軽度や中等度であれば薬物療法中心で比較的早期にコントロールできる場合があります。

重度の場合

骨変形が強く、痛みが慢性化して日常生活に大きな支障が出る場合は、長期にわたる治療を視野に入れる必要があります。

ビスホスホネート製剤などの薬物療法を継続しながら、必要に応じて手術療法を組み合わせ、術後のリハビリ期間は数か月から1年以上です。

神経圧迫がある場合は、手術によって神経の通り道を確保し、骨の変形を矯正することで症状を緩和する方針をとることがあります。

治療目標の設定と継続モニタリング

骨Paget病は症状の緩和と骨変形の進行抑制が大きな治療目標で、治療の進行度合いや、副作用の有無、患者さんの生活の質を考慮しながら、短期的・中期的・長期的目標を設定します。

治療を途中で自己判断で中断してしまうと、骨変形や痛みが再燃する可能性が高まるため、医師の指示に従い定期的な検査と診察を受け続けることが重要です。

治療期間を通じて意識したいポイント

  • 治療前に目標とゴールを明確にする
  • 副作用や痛みの変化を細かく記録し医師に伝える
  • 計画的な通院と検査で再燃や別の合併症を見逃さない

副作用や治療のデメリットについて

骨Paget病の治療薬は長い目でみると有効性が高く、痛みや変形の進行を抑える力が期待できますが、薬の種類や体質によっては副作用が起こることがあります。

また、薬物療法や手術療法に伴う負担やリスクも存在するため、治療のメリットとデメリットをよく理解しておくことが大切です。

ビスホスホネート製剤の副作用

ビスホスホネート製剤は骨吸収抑制の効果が強い一方で、内服薬の場合、胃腸障害や食道炎などが起こることがあり、点滴製剤を使用すると、投与後に一時的な発熱や全身倦怠感を感じる方もいます。

長期使用によって顎骨壊死という稀な合併症リスクが報告されており、歯科の治療状況や口腔ケアの状態を注意深くチェックしながら投与を続けることが必要です。

ビスホスホネート製剤の代表的な副作用

副作用主な症状
胃腸障害胸やけ、吐き気、腹痛など
発熱・倦怠感点滴投与後に一過性のインフル様症状
顎骨壊死(まれ)口腔内の腫れや骨露出、感染など

副作用を軽減するために、投与方法や投与間隔、口腔ケアの徹底などを医師と相談してください。

カルシトニン製剤の副作用

カルシトニン製剤は、痛みを和らげる効果が期待されますが、注射部位の痛みや発赤、点鼻薬の場合は鼻粘膜への刺激などがみられることがあります。

投与初期に一時的な吐き気やめまいを感じる方もいるため、新しい治療薬を開始するときは体調を注意深く観察し、異変があればすぐに医療機関へ連絡することが望ましいです。

手術療法のリスクとデメリット

骨Paget病が進行し、手術療法を選択する場合は、手術侵襲や合併症リスクを考慮しなければなりません。高齢者や基礎疾患を持つ方では、麻酔や術後の感染、血栓などのリスクが上昇する可能性があります。

さらに、術後にはリハビリが必要となり、回復までに長い期間を要する場合があり、手術そのものが成功しても、変形が完全に矯正されないケースもあるため、医師としっかり話し合ってメリットとリスクを見極めることが大切です。

骨Paget病の保険適用と治療費

お読みください

以下に記載している治療費(医療費)は目安であり、実際の費用は症状や治療内容、保険適用否により大幅に上回ることがございます。当院では料金に関する以下説明の不備や相違について、一切の責任を負いかねますので、予めご了承ください。

主な検査の費用

骨Paget病の診断や経過観察に欠かせない検査には、X線検査、骨シンチグラフィ、MRI、CTなどがあります。

検査名自己負担の目安 (保険適用)
X線検査約1,000円~2,000円
骨シンチグラフィ約4,000円~7,000円
MRI約5,000円~10,000円
CT約3,000円~5,000円

治療薬の費用

ビスホスホネート製剤の費用目安

製剤形態1か月あたりの自己負担の目安 (保険適用)
内服 (週1回)約1,000円~2,000円
点滴 (年1回など)1回の投与で3,000円~7,000円程度

カルシトニン製剤は、注射や点鼻薬など形態によって費用が異なりますが、こちらも同様に月数千円程度の負担になることが多いです。

手術費用

高度な骨変形の矯正や神経圧迫の除去などで手術が必要になった場合、入院費や手術費、麻酔費などを含めて数万円から十数万円程度の自己負担が発生することが一般的です。

手術内容自己負担の目安 (保険適用)
骨固定術やプレート装着約5万円~10万円
人工関節置換など約10万円~15万円

術後にはリハビリテーションも伴うため、リハビリ費用を含めて入院期間が長引くほど出費がかさみます。

通院治療と経過観察の費用

骨Paget病の治療では、長期的なフォローアップが重要です。通常、数か月ごとに通院して検査や診察を受け、薬の処方を継続します。

通院のたびに数千円程度の負担が発生すると考えられるため、年間を通した治療費を把握して、家計の計画を立てると安心です。

以上

参考文献

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大垣中央病院・こばとも皮膚科

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